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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
聖なる宝と古き英雄 ヴィオリズ王国編
197/283

出発です

「いよっし。良い買い物が出来たぜ。」

「同じくだよ。流石、金目当てなだけあって質の良いもん仕入れてんねぇ。」


 共に宝島に挑む者達が、新調した武器を確認する。

 どれも、そこそこ質の良い武器だ。

 それだけ、商人側としても貴族の金を当てにしてるのだろう。


「しかも、これがただって言うんだ。やる気もみなぎるってもんだ。」

「おう。負ける気がしねぇぜ。」


 予想以上の武器の出来に盛り上がっている。

 そんな者達に、スーツ姿の人物がにっこりと笑う。


「その分、期待しておりますよ。」

「分かってらぁ。期待しておけよ。」

「えぇえぇ。しておりますとも。」


 スーツ姿の人物もまた上機嫌だ。

 彼らの頼もしい姿に、可能性を感じているのだろう。

 そうして、一通り確認をし終えた者達に男が呼びかける。


「皆、準備は出来たようだな。良いか? 俺達の目的は聖なる宝を見つける事だ。命を捨てる気でいるとは言える、戦力は無駄に減らすつもりはねぇ。だから、無理な戦いはなるべくしねぇ。良いな?」

「おうともさ! 分かってるぜ、リーダー!」

「いよっ、リーダー! 指揮は任せたかんな!」

「頑張れよ、リーダー! 命預けたからな、リーダー!」

「リーダーリーダーうるせぇよ! よろしくな!」


 仲が良くて何よりだねー。


 一同の間に、どっという笑いが起こる。

 リーダーと呼ばれている男は、仲間を集めていた男だ。

 どうやら、船での指揮を見て任されたようだ。


「さぁ、命張る時間だ! 行くぞ!」

「「「おおおおおおおおっ!」」」


 気分が盛り上がっているままに、島の奥へと向かう一同。

 生え茂る森の中へと入っていく。

 そのまま、道なき道を歩いていく。

 その最中、フィーが横を歩くウィルへと語りかける。


「あんたも来たんだな。」

「金が出るからな。それに。」

「それに?」

「後ろの荷物の分も出して貰ったからな。」


 そう言って、いつの間にか担いでいた荷物を指さすウィル。

 しっかりと貰うものは貰っているようだ。

 そんな商人を見たフィーは呆れた目で見る。


「ちゃっかりしてるな。」

「売り時を逃さないのが商の国の者の特技だ。」

「そ、そうか。で、その荷物の中は役に立つのか?」

「………。」

「おいっ!?」


 使えないんだね。

 そういえば、家庭で使うような物しかなかったような。


 覚えている限りだと、戦いに役立つ物は取り扱っていなかった筈だ。

 実際に、問われたウィルはそっぽを向いた。

 つまり、そういう事だろう。

 そんな会話をしていると、リーダーの男が横に並ぶ。


「よう。そういえば、あんたらの名前を聞いてなかったな。」

「フィーだ。で、こっちはにゃんすけだ。」


にゃ。


 にゃんすけです。

 よろしくです。


「そうか。俺はローグだ。分かんねぇ事があったら何でも言ってくれ。」

「そうか。なら早速だが、あんた達はハンターか?」

「まあな。多分だが、ここにいる奴らの殆どがそうだろうよ。」

「なるほど。だから、魔物にも臆せず戦えてたのだな。」


 分かりやすいね。


 一般の人間が魔物と戦う事は難しい。

 なので、魔物にもを見れば逃げるのが普通だ。

 そう考えると、逃げずに戦った者達はハンターと言えるのだ。


「はっ。そういうあんただってハンターだろ? さっきの戦いを見れば分かるさ。でも珍しいな。ハンターが旅なんてするとはな。」

「私はただ世界を見て回るのが夢なんだ。たまには、そんなハンターがいたって良いだろう?」

「はっはっはっ、違いねぇ。夢は見てなんぼだからな。」


にゃ。


 だよね。

 誰だって同じだもんね。

 

 ここにいる者達もまた、夢を見てここにいる。

 なので、フィーの夢を笑う者などここにはいないだろう。

 その代わり、夢を邪魔する者達は等しく存在する。


「おい! 魔物だ!」

「はっ。偉そうに、こっちを待ち受けてやがるぜ。」


 一同の視線の先には、複数の二足歩行の肉食の獣が立っている。

 それを確認したローグは、武器を抜いて前に出る。


「おっし。何はともあれ、まずはここを乗り越えてからだな。お前ら! この島での初陣だ! 気張って行けよ!」

「「「おう!」」」


 ローグの声に合わせて、一同が一斉に武器を手に取り駆け出す。

 そんな一同は、我先にと魔物へと斬りかかる。


「ひゃっはーっ! 武器があったらこっちのもんだ!」

「もうあんたらなんかには、てこずらないさ!」


 そう言いながら、先程の鬱憤を晴らすかのように斬っていく。

 時には、空から大きな鳥のような魔物も現れるが…。


「空からの奇襲は見慣れてんだよ!」


 弓といった遠距離武器のハンターが貫いていく。

 どこから来ようともお構いなしだ。

 そのお陰か、相手の瞬く間に数を減らしていく。

 その勢いは、フィーが出そびれる程だ。


「凄いな。出る幕がない。というか、若干意識がぶち上がってないか?」

「それだけ武器がない戦いが嫌だったのだろう。頼りになるじゃないか

。」


 脳内麻薬って奴だね。

 見ててちょっと怖いんですけど。


 狂ったように暴れる一同を眺めるだけのフィーと俺とウィル。

 もはや、止められる者などいるはずもない。

 こうしている間にも、一同は魔物を蹴散らしながら進んでいく。


「さて、こうしていると置いていかれるな。俺達も急ごう。」

「だな。私達も負けてはいられん。」


にゃにゃっ!


 ぜんそくぜんしーんっ!


 一同に負けじと、俺達も前線に出る。

 狩られずにいる魔物を、俺が蹴ってフィーが斬る。

 斬られた魔物は、船を襲った魚のように液体となって消えていく。


「やはり、話通りだ。死体が残らない。」


にゃん。


 ほんとだね。

 なんかゲームみたい。

 経験値は出なさそうだけど。


 死体が残らないのは、死ねば消えるゲームを彷彿させる。

 そんな違和感を感じながらも、魔物を見つけては斬っていく。


「不思議なものだな。だからといって容赦はしないがな。」


にゃ!


 同じく!


 魔物を斬っては次の魔物へ。

 その度に、一同のボルテージも上がっていく。


「おらおら! どうした宝島!」

「こんなのに他の奴らがやられたって? 笑わせてくれるっ!」

「もっとだ! もっとよこ……。」


 と、何かを言いかけた所で動きを止める。

 何故なら、周りの樹と同等の大きさの魔物が現れたからだ。


「に、逃げろーーーーっ!」

「「「おおおおおおおっ!」」」


 それを見た瞬間、一斉に踵を返して走り出す。

 この転換の早さには、たまらずフィーが叫んでしまう。


「おおおおおおおい!? さっきまでの威勢はっ!?」

「それはそれぇ! これはこれぇ!」

「勝てない相手は逃げるが勝ちよぉ!」


 あらら。

 頼りになるならやらないやら。

 

 あまりの潔さに、清々しく感じる程だ。

 しかし、引き際を見極めるのもハンターの腕なのだろう。


「あーもう。何が何やらだなっ!」


 そんなもんなのかもね。

 現実は。


 やけくそになりつつも、遅れないように駆け出すフィーと俺なのだった。



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