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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
聖なる宝と古き英雄 ヴィオリズ王国編
194/283

日常破る異常事態です

 一連の話を聞いていたフィーが動き出す。

 誰もいない船の横へと向かっていく。


「本当に分からないのか? 何もないのに異常が起こるとは思えないが。」


にゃ。


 俺もそう思うけど。


「少し探ってみるか。にゃんすけ、頼めるか?」


にゃっ。


 潜るって事だね。

 やってみるよっ。


 手すりに飛び乗った俺は、息を吸って飛び込んでみる。

 潜るのは初めてではないのでいける筈だが。


ドボン。


 音と共に海へと潜る俺。

 すると、フワリと体が浮く感じが伝わる。


 成功っと。

 相変わらず、水中でも目を開けられる。

 今なら分かるけど、肉体じゃないからかな。


 俺の正体は聖獣だ。

 水中に適応出来てるのも、それによるものだろう。

 その体をいかして、海の中を調べてみる。


 どれっと。

 ん?


 水中を見渡していると、何かが動くのが見えてくる。

 そこにあるのは、複数の影だ。

 それらの影が、点を中心にその周りを回っている。


 もしかして、渦を作ってる?

 そうかも。

 でも、水上からだと見えなかったよね?

 大きい渦だから?


 渦の大きさは、確認できない程大きいようだ。

 渦を作っている影を見て、ようやく分かる程だ。

 それゆえに、渦が出来ていると視認出来なかったのだろうか。

 原因を探るべく、影を凝視していた時だった。


…………。


 あ……。


 そのうちの一匹と目が合った。

 次の瞬間だった。


ギョーーーーーーーーッ!


 ぬあーーーーーーっ!?


 その一匹が、何かを叫んだ。

 すると、近くの数匹が立ち止まり俺を見る。


ギョギョーーーーッ!


 俺めがけて一斉に突っ込んでくる影達。

 その正体は、立派なヒレを持った魚だ。


 ウォーーーーッ!?


 それから逃げるように、慌てて泳ぎ出す。

 それにより、一度は避ける事が出来た。

 しかし、相手は水中のエキスパートだ。


ギョーーーーーーーー!


 ちょっ、まっ。


 逃げる先に、魚が突っ込んでいる。

 それを必死に避けていく。

 しかし、きりがない。


 うおっ。

 こうなったら。


 目を細めて影を見る。

 すると、複数の魚に点が浮かび上がる。


 ここだっ!


 魚の点を蹴り次の点へ。

 そこから更なる点へと向かう。


 それっ、ポイントダッシュ!


 得意の蹴りで魚を蹴飛ばしていく。

 そうして、迫る魚を蹴っていく。


 ほいっと、決まった。

 これを繰り返せば…。


 攻撃を食らう事はないだろう。

 そう思った時だった。

 更なる数の魚が襲い来る。


ギョーーーーーーーーーッ!


 ギャーーーーーーーー!?


 流石の俺も、この数の相手は蹴飛ばせない。

 そこで俺は、作った爆発を蹴り上へと目指す。



 その上では、フィーが海を見下ろしながら俺を待っていた。


「騒々しいな。何か起きているのか?」


 水中での出来事を感じ取ったのだろう。

 そのまま様子を探るべく、水中を見ていたのだが。


にゃーー……。


「ん?」


 水中の中から、影が迫ってくる。

 そして、その影が大きくなると同時に涙目俺が水上へと飛び出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーっ!?


「にゃんすけ! 無事だったっ…。」


 そう言いかけたと同時に、大量の魚も飛び出してくる。


ギョギョーーーーッ!


「うわーーーーーーーーーーっ!?」


 咄嗟に俺を掴んで駆け出すフィー。

 そんなフィーを追うように魚が雪崩れ込む。


「ぬおおおおおおおおおおおおっ!」


 逃げて逃げて逃げてーーーっ!


 全力のダッシュだ。

 魚を避け続けて甲板へとダイビング。

 それと同時に、騒ぎに気づいた者達がフィーを見る。

 


「な、なんだぁ?」


 滑り込むように飛んで来たフィーに視線が集まる。

 その中で、フィーが顔を上げて叫ぶ。


「魔物だ! 魚の魔物が元凶だ!」

「魚の魔物だぁ?」

「だったら話は早いな。とっととぶっ飛ばしてやろうや。」


 ここにいる者達は、武器を携えた者達だ。

 魔物ごときにびびらないだろう。


「出てこい! 魔物ども…。」


 勢いよく腰の剣を引き抜く。

 しかし、その勢いはすぐに萎れてしまう。

 何故なら、空を埋め尽くす程の魚が船に影を落としたからだ。


ギョーーーーッ!


「「「ぎゃーーーーーーーーー!」」」


 ぎゃーーーーーーーーー!



 それらの魚が船へと雪崩れ込み、人を飲み込んでいく。

 その勢いで、一度船が沈み跳ね上がる。

 それにより、人や魚が宙へと浮かぶ。

 人と魚の悲鳴の大合唱。

 甲板が一瞬にして地獄と化してしまったのだった。


「な、なんだってんだーーーーーっ。ぐえっ。」


 宙に浮いた者達が、甲板へと叩きつけられていく。

 雪崩れ込んだ魚は、ほとんど海へと帰っていく。

 しかし、一部の魚は残ったままだ。

 その中で、フィーが起き上がる。


「船旅が。楽しい船旅が…。」


 もう諦めるしかないね。

 残念。


「はぁ。っと、それどころではないか。大丈夫か。えーと、確か、さっきの。」

「あー、さっきの旅人か。くそっ、俺は大丈夫だが。流された奴とかはいないか?」

「あぁ、大丈夫そうだが。」


 その人物は、宝探しの仲間を探していた者だ。

 その者に聞かれたフィーが海へと視線を移す。

 見たところ、海に落ちた者はいないようだ。

 代わりに…。


「うん、代わりにあんた達の剣が落ちてるがな。」

「お、俺の武器がーーーーっ!」


 急いで駆け寄るも手遅れだ。

 無慈悲にも、剣は船を離れて流れていく。

 それを見送った男は、ガックリと項垂れる。


 あーあ。

 嫌だよ? 取りに行くの。


 その横では、同じように武器を落とした者達が見送っている。

 しかし、その時だった。


「お、おい! 魚が暴れてるぞ!」


 甲板の魚達は、今にも飛びかからんと暴れている。

 しかし、武器を落とした者達にとっては大した事ではない。


「それがどうした! どうせ陸上では何も出来ねぇんだ。くそっ。こいつらを売っぱらって新しい武器でも新調してやろうか、この野郎っ。」


 怒りのままに暴れる魚を睨み付ける。

 それと同時に、一匹の魚が足を生やして立ち上がる。

 そうして、男と魚の視線が合う。


「あ………立ってるううううううう!?」


 ほんとだーーーーっ!?


 あまりの衝撃に、武器の事など忘れてしまう。

 そんな男を見て、魚もまた叫ぶ。


ギョエーーーーーッ!


 足を生やした魚は、叫んだ男へと駆け出す。 

 そのまま、縦横無尽に追いかけっこを始める。


「なんでこっちに来んだーーーっ! おい! 誰か!」


 逃げ回りながらも、他の者達へと目配せをする。

 すると、どの者達もそっと目を逸らす。


「おいっ! ふざけるなーーーーーっ!」

「ちょっ。こっち来んな!」

「うるせぇ! 楽はさせねぇぞ!」


 怒号と共に、逃げ惑う者達。

 その後を、足が生えた魚が追いかける。

 その様子を見て、フィーが納得したように顔を上げる。


「なるほど! 世の中には、走る魚もいるのだな!」


 そこ!?


「ちげぇよ! いきなり生えたの見てただろ! ってか、あんたも剣士ならどうにかしてくれよ!」

「おっと。そうだったったな。」


 思い出したかのように白銀の剣を抜くフィー。

 それと同時に、前へと踏み出す。


「あまり斬りたくない見た目だがっ。」


 気持ち悪い見た目に気後れしつつも、一気に距離を詰める。

 それに向こうが気づくも、既に剣が届く範囲だ。


「はっ!」


 相手の胴体への一閃。

 それを受けた相手は真っ二つ。

 その筈だったが…。


「なっ。」


 斬った魚は、ドロッとした液体となって散らばっていく。

 そこに原型は全くない。

 その光景に、一同が驚きの声を上げる。


「き、消えただと?」

「まさか、そんな筈は。じゃあ、魚じゃなかったってのかよ。」


 あまりの光景に、驚きを隠せない。

 一方、武器を持っていた者達は眉を潜めている。


「お、おい。消える魔物といやぁ。」

「あぁ。宝島の魔物の特徴の筈だろ?」


 どうやら、何かを知っているようだ。

 それを聞いたフィーと俺は、その言葉に反応する。


「宝島? それって、さっき言ってたのか?」


にゃ?


 宝探しのだよね?


 どちらにも宝という言葉が入っている。

 関係が無いとは思えない。

 その言葉に疑問を持っていた俺達だったが。


ギョ、ギョ、ギョギョッ。


 甲板にいた魚達が、次から次へと足を生やして立ち上がる。

 そして、固まったまま見てくる者達と目が合う。


ギョギョーーーーーーッ!


「「「ぎゃーーーーーーーーー!?」」」


 こうして、第二回戦が始まるのだった。

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