新たな大陸へです
猫です。
只今、波に揺られています。
見渡す限りの青い海を流れる船の上。
今、どこにいるかも分からない。
更には、どこに向かうかも分からない。
ただ、一つ言える事とすれば。
「やはり、海は良いな。心が洗われるようだ。そうだろ? にゃんすけ。」
にゃー。
だよねー。
隣で同じく海を眺める相方もまた海を堪能する。
体の中を流れる風が疲れた体を癒してくれる。
そんな環境に身を任せつつ、俺達の放浪旅は続くのだった。
そんな俺達を見た者は、興味本位で話しかけてくる。
「おや、旅人かい?」
「あぁ。先ほど自分の国を初めて出た所だ。」
「そうかいそうかい。じゃあ、初めての国渡りだね? 良い旅になると良いね。」
「あぁ、ありがとう。そっちも、良い旅を。」
にゃー。
良い旅をー。
友好的な者達が多いのか、会う度に挨拶をかけてくる。
その度に、先程のように挨拶を返しているのだ。
「新しい国か。どんな場所なんだろうな。見た事もないご飯があると良いが。」
にゃ。
興味深いね。
気候によっては食べ物も変わってくるもんね。
「でもまぁまずは、港のご飯だ。久し振りの魚介類だぞ。」
にゃー。
そろそろ、海藻類も食べたいかなー。
「あぁ、楽しみだな。はたして、どんな魚料理が……っと、いかんいかん。最近、食べ物の事しか考えなくなってる気がする。」
にゃ。
仕方ないよ。
それが人間のさがってものなんだから。
素直になって良いんだよ?
食べ物を楽しんできたせいか、真っ先にその事が浮かんでしまう。
その事に焦るも、ついつい涎が出てしまう。
そんなこんなで、船での出会いを楽しんでいた時だった。
「よう。あんたらも宝探しかい?」
「ん? 宝探し?」
何それ。
宝?
武器を携えた男が、俺達へと話しかけてきた。
しかし、言っている意味が分からない。
その言葉に首を傾げると、その男は溜め息をついて首を書く。
「なんだ、違うのか。もしそうなら、仲間に引き入れようと思ってたんだがな。」
「すまないな。私達はただの旅人だ。」
「そうか。まぁ、違うなら良いんだ。邪魔したな。」
そう言い残し、男はどこかに去っていく。
そしてまた、違う人に話しかけている。
同じように仲間に誘っているのだろう。
「何だったんだ? 宝探しって言っていたが。」
にゃあ?
さぁ?
検討もつかないよ。
「んー。まぁ、そうだよなぁ。そもそも、私達は行き先すら分からないからなぁ。」
フィーの言う通り、俺達は行き先が分からない。
何故かと言うと、旅先を人に委ねたからだ。
なので、分からないのも当然だ。
悩むフィーは、ふと船の甲板を見る。
「そういえば、武器を持った奴らが多いな。護衛かと思ったが、少し多すぎるよな?」
にゃ。
確かに。
何か話してる?
甲板では、武器を持った者達が頻繁に話しあっている。
警護の話をしている可能性も否定は出来ない。
しかし、それにしては多すぎる。
「それだけ、この先が危険なのか。宝探しとやらのせいなのか。気になるところではあるのだが。」
俺達にも関係があるのは間違いないからね。
果たして、何が待ち受けているのやら。
行き先が同じである以上、関係が無いとは言えないだろう。
だからといって、考えて答えが出る話ではない。
そんな事もあり、フィーは考えるのを止め空を見る。
「まぁ、着けば分かるさ。楽しみはその時に取っておこう。だろう?」
にゃー。
だよねー。
せっかくの船旅なんだしね。
考えを止めたとたん、思考が風と共に流れていく。
今はただ、青に染まる海と心地良い風に浸りたいのだ。
そうして、俺達は再び手すりにもたれるのだが…。
ガターーーーン!
「うおっ!?」
にゃあっ!?
何かにぶつかったように、大きく船が揺れる。
それにより、俺達含む甲板にいた者達がよろめく。
中には、倒れた者もいるようだ。
「なんだなんだ!?」
「どっかに乗り上げでもしたか?」
「いや、そのようには感じないが。」
一瞬のうちに、甲板の上が騒々しくなる。
どこかにぶつかったにしては、問題なく船は進み続けている。
なので、原因を探すが見つからない。
「何もない…か。でっかい魚にでもぶつかったか?」
「なんだよ。ヒヤヒヤさせやがって。」
海の上でぶつかったとすれば、魚ぐらいしかありえないだろう。
その事実に、落ち着きを取り戻す者達。
そして、そんな光景を見た俺達も一息つく。
「そうか。魚がぶつかっただけか。それもそうだ。旅に出たら毎回何かに巻き込まれるなんてある筈もないだろう。」
にゃっ。
そうだよ。
そんなまさかねー。
旅に出る度に、何かの騒動に巻き込まれてきた。
しかし、本来ならありえない事なのだ。
「だろう? 少しばかり、過敏になってしまっているだけだろうな。しかし、今回こそは、そうはいくまい。今度こそ、充実した旅を…。」
今回こそはと決意を込める。
筈だったが、言い切る前に甲板が騒がしくなる。
「お、おい! 船引っ張られてないか?」
「嘘だろ! 航路からどんどん外れていくぞ!」
その言葉に、甲板の者達が船の先へと集まっていく。
そんな事態に、フィーの気分が下がっていく。
「したかった…んだけどなぁ。」
そううまくはいかないみたいだね。
「はぁ…今度はなんだ? 何が襲ってきたんだ?」
原因を探ろうと、周りを見渡す俺達。
すると、一際豪華な服装の船員が慌てて駆ける姿が目に入る。
「仕方ない。帆を畳め! 急ぐんだ!」
「了解!」
船員達によって、船の帆が畳まれていく。
しかし、それでも船は進路を変えずに進んでいく。
「駄目だ! 止まらない!」
「何故だ! 帆を畳んでいるのに何故進むんだ!」
風を受ける帆はもうない。
それなのに、変わらぬ速度で進んでいく。
更に、次第に強くなる波が船をうつ。
「うおっと。どうなってるんだ? 一体っ。」
それにより、再び船が大きく揺れる。
慌ただしくなる甲板に、乗客達も慌て出す。
「あんた、船長か? 何が起きてんだ!」
「波が乱れている。こんな荒れかたははじめてだ。舵もきかん。」
波が荒れては、舵ではどうする事も出来ないのだ。
それでも手段は他にある筈だ。
男の代わりにフィーが提案する。
「オールで止められないのか? 進路が傾いているならオールで止められるだろう。」
「勿論やっている。出来る事は全てだ。その上でこれなんだ。」
船長は無能ではない。
役割を果たす為に、出来る手は全てうっているのだ。
それでも船は止まらない。
もはや、術もなく見続ける事しか出来ないのだ。