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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
192/283

未来を見据えて旅立ちました〈完〉

 次の日、俺達は芸術の町を出た。

 馬車に揺られながら会話を弾ませる。

 その途中、馬車の荷台から外を見る。


「見て下さい。海ですよ。もうすぐ到着です。」

「そうか、遂にか。」


にゃ。


 遂にだね。

 この大陸から離れるその時が。


 目の前に広がる大海原を眺める。

 そうしている間にも、馬車は目的地へと走っていく。

 それは、この大陸と離れる時が来ている事をあらわす。


「見えてきましたよ。目的地の港です。」


 アイナの言葉に、馬車の前を見る俺達。

 そこには、複数の建造物が見える。

 それと共に、海に浮かぶ複数の船も見えてくる。

 そんな場所へと、馬車が入っていく。

 そのまま馬車は、馬車を止める場所にて止まる。


「到着しましたよ。」

「ありがとう。」


にゃー。


 ありがとー。


 アイナにお礼を言って馬車から降りる俺達。

 そして、アイナに後の事を任せた俺達は船へと向かう。


「えーと、私達が乗る船はと。」


にゃ。


 どれだろうね。


 船は沢山あるので、どれに乗るかは分からない。

 なので、事前に貰ったチケットを見て確認する。


「もう少し横か。」


 チケットを頼りに、歩きながら探す俺達。

 乗り場の数字を確認しては歩くを続ける。

 そんな俺達へと、カミーユが近づく。


「フィーさん、どうです? 見つかりました?」

「もう少し…お、ここだな。」


 ここ?


 チケットに書かれた番号と同じ数字の乗り場を見つける。

 そして、そこに停まっている船を見る。


「これが今日乗る船か。」

「時間の方は大丈夫ですか?」

「あぁ、まだ余裕はある。」


 早くについてしまったのか、出航まで時間はある。

 なので、それまで時間を過ごさなくてはならない。


「さて、何をして過ごそうか。」

「なら、一緒にお茶でもいかが?」

「ん?」「え?」


にゃ?


 誰?


 何処からか聞こえた声に、同時に振り向く俺達。

 そこには、オルティが立っていた。


「やっほー。」


 そう言いながら、軽く手を振るオルティ。

 その振る舞いは、相変わらずの気だるさだ。



 それから俺達は、近くの食事処へと案内される。

 そんな俺達を、キュリアとリュノが歓迎する。


「おっ、こっちだよーん。」

「やっと、来た、ね。」


 席に着いている二人は、落ち着くように椅子に体を預けている。

 ここについてから、かなりの時間が経っているのだろう。


「お前達もいたのか。」

「まあね。皆で仲良く会議だよん。ささ、君達も座りなよん。」


 キュリアに促されるように座る俺達。

 俺達が席に着くと、オルティが続くように座る。

 それを見たフィーが話を切り出す。


「お前達、各地の魔法陣を防いでいた筈だろ? ここにいて良いのか?」

「それなら、無事に終わったよ。だから、こうして寛いでるってこった。」


 ここにいる三人は、開いた魔界とを繋ぐ魔法陣を防ぎに各地を飛び回っていた。

 それが終わってから、この場所に合流したのだろう。


「しかし、どうしてここに? 合流なら王都で良いのでは?」

「そうするつもりだったんだけどね。君達が旅立ったと聞いて追いかけてきたんだよ。」

「私達にか?」


にゃ?


 何か用なのかな?


 一度は王都へと戻ったようだ。

 しかし、俺達を探しに追いかけて来たようだ。

 何か用事があるのだろう。


「そうだよ。まぁ、事後報告的な感じかな。君達も関係者なんだし知っておいた方が良いかなって。」

「それはまぁそうだが。」


にゃ。


 うん、そうだね。


 今回の事件に関わる者として、どう方が付いたのかは知る権利がある。

 それを、わざわざ伝えに来たのだろう。


「まずは、消えた武将の屍だけど。残念ながら、見つかんなかったかな。」

「お前達でも見つけられなかったか。」

「そうなんだよね。多分だけど、魔界にでも回収されたかな?」

「もしくは、しぶとく、生き残ってて、逃げ帰ったか、だね。」


 こっちにいない以上は、魔界にいると考えるべきだろう。

 しかし、生きているのか死んでいるのかは分からない。

 どっちにしろ、探しても見つけられる可能性は無いだろう。


「まぁ念のため探索は続けるけど。」

「はい。我々王家も探索をしていくつもりです。」

「それは助かるね。」


 万が一の可能性がある。

 その為にも、探索を続ける必要がある。


「んじゃ、次は閉じた魔法陣の件かな。」

「閉じたのなら説明する必要はないだろ?」

「それはまぁそうなんだけど。ま、いっか。」

「ん?」


 どういう事?


 曖昧な言い方に疑問を持つ俺達。

 しかし、これ以上の説明をするつもりはなさそうだ。

 そうして、次の説明に移る。


「そんじゃ、次は大きな蛇の件かな。中にいた何かについて調べてみたけど、特に成果は無し。これに関しては、情報が少なすぎてね。」 

「そうか。仕方あるまいな。」

「まぁ、あんだけの規模の召喚陣はそうそう出来ないから安心してな。」


 安心と言われてもね。

 まだ存在してるのは確かだし。


 存在しているのなら、また来る可能性はある。

 安心しろと言われても難しいだろう。


「ま、こんな所かな。これで伝えられる事は全部だよ。」

「なんだ、たいした情報は無かったな。」

「ま、要は安心してってこった。君達が安心して旅立てるようにってね。」


 問題ないと伝える為の事後報告だろう。

 オルティ達もまた、フィーの事を心配していたのだ。

 しかし、フィーはもう心配なんてしていない。


「気づかい助かる。しかし、私は皆を信頼する事にしたからな。」

「あらら。杞憂だった訳だね。でも、安心したよ。思ったよりも強いじゃない?」

「一人ではない事に気づいただけさ。頼りになる友がいる事にな。」


 そうだね。

 友だからこそ分かる事もあるんだよ。


 一緒に過ごし、絆を深めたからこそ分かるのだ。

 仲良くなった友の皆は、この程度で挫けるような者達ではないと。

 ならば、心配する必要など無いだろう。


「良い出会いをしたみたいだね。」

「あぁ。私は恵まれているな。出会った者達に感謝だ。」


 絆を深められたのも、出会った者達のお陰だ。

 出会いが悪ければ、こう上手くは行かなかっただろう。

 そんな良い出会いに感謝をしていると、何処からか鐘の音が聞こえてくる。


「そろそろ時間か。行くとしよう。」

「そうですね。乗り遅れてはいけませんから。」


にゃ。


 うん、急ごう。


 出航に遅れては、旅に出る事が出来なくなる。

 その為にも、早めに向かう方が良いだろう。

 そうして、店を出た俺達は乗り場へと向かう。

 オルティ達もまた、見送りに来てくれる。


「じゃあね、フィーちゃん。また会おうねー。」

「うん、その時まで、お元気、で。」

「何かあったら、うちらの仲間に頼ると良いからね。フィーちゃんの事は伝えてあるから協力してくれる筈だからね。」

「あぁ。世話になったな。」


にゃー。


 なんだかんだ世話になったよね。

 ありがとー。


 オルティ達もまた、良い出会いの一つだ。

 その事に感謝をしつつ別れを済ます。

 そして、今度はカミーユを見る。

 すると、お付きの者が奥から来る。


「間に合いましたか。私達も見送らせてもらいます。」

「ありがとう。」

「うむ。獣よ、次こそ決着をつけるからな?」

「それまでに腕を磨いておくと良い。」


にゃ。


 こっちこそ。

 もう何を争ってたか忘れたけどね。

 

 お付きの者と別れを告げる。

 短い付き合いだけど、共に戦いを生き抜いた同士だ。

 そして、今度こそカミーユと向き合う。


「フィーさん、貴方の旅が良きものになるように祈っています。」

「こっちもだ。頑張れよ、お姫様?」


にゃっ。


 頑張ってね。


「はい。この大陸を、必ず良きものにして見せます。」

 カミーユと別れを告げる。

 その言葉に、偽りなどはない。

 必ず、その役目を果たしてくれるだろう。

 そうして別れを告げた俺達は船へと向かう。

 その際、入り口で並んで止まる。


「良いか? にゃんすけ。同時に乗るぞ?」


にゃ。


 良いよ。

 一緒にだね。


 目の前にあるのは、大陸とのお別れの線だ。

 そこを越えれば、後戻りは出来ない。

 する必要もない。

 そんな線を、俺達は…。


「せーの!」


にゃ!


 せーの!


 二人同時に乗り越える。

 新しい旅への第一歩だ。

 それを迎えるように、汽笛の音が響く。


「にゃんすけ、新たな旅だ。楽しみだな。」


にゃっ。


 うん。

 どんな出会いが待ってるんだろうね。


 次の旅へと妄想は膨らむばかりだ。

 そんな俺達を乗せた船が動き出す。

 すると、カミーユが叫ぶ。


「フィーさん! にゃんすけさん! またいつか! 絶対に!」

「あぁ! その時はまた探検だ! 良いな? 約束だぞ!」


にゃっ!


 約束だね!

 だから、またいつか!


 カミーユ達に見送られながら、船が陸から離れていく。

 それが見えなくなった頃、俺達は船が向かう先を見る。

 そして、その先にあるものを見据える。


「待ってろ未来。私達は止まらないからな。」


にゃ。


 道が続く限りね。


 それは、未来という名の道だ。

 どこまでも続く先の見えない道。

 皆が歩き始めた可能性の道。


「さぁ行こう! 新たな冒険の始まりだ!」


にゃー!


 行こー!


 未来を見据える俺達は、どこまでも進んでいく。

 波に乗って、風に乗って、どこまでも進んでいく。 

お付き合い頂きありがとうございます。

これにて、大陸編は終わります。

これからのお話を書くかは未定ですが、その時はまたお付き合いして頂けるなら幸いです。

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