生徒会メンバー達の夢です
セイラに連れられ魔法学校へと訪れる俺達。
そのまま、校内にある広間へと俺達は案内される。
そんな俺達を、生徒会のメンバー達が手招きする。
「会長! こっちだよー! こっちこっち!」
「皆さん、待ってますよ。」
「早く始めてしまいましょう。」
「えぇ、今行くわ。行きましょう、皆さん。」
早足で歩くセイラの後を追う。
食料が並べられた机を囲う生徒達を避け奥の机へ。
そうして、同じく食事が並んだ机へと辿り着く。
「皆さん、ようこそ。ゆっくり楽しんでいって下さいね。」
「えぇ、ありがとうございます。」
メンバーのソリューによる挨拶を丁寧に返すカミーユ。
それを見届けたセイラが机から離れる。
「では、行って来るわね。」
「えぇ。」
そのまま、高い台へと向かうセイラ。
そこで何かをするのだろう。
それに気づいた生徒達が声を上げる。
「会長早くー。」
「待ちきれないわよ。」
「はいはい。すぐに始めるから落ち着きなさい。」
「はーい。」
生徒達を落ち着かせつつも、高い台へ立つセイラ。
その場所から、今か今かと待つ生徒達を見渡す。
「えー、さて。皆さん、復興のお手伝いお疲れ様です。まだこれから忙しくはなりますが、一旦一段落という事で打ち上げを先にする事となりました。えーと…。」
「会長緊張してるー?」
「はい。余計な事は言わないでね。」
会場に笑い声が響き渡る。
セイラも生徒達も楽しそうに笑っている。
それで緊張が解けたのか、セイラは続ける。
「とにかく、今日は楽しんでいきましょう。では、乾杯。」
「「「かんぱーい!」」」
今度は会場に歓声が響き渡る。
そして、待ちわびたかのように会話をしながら食事へと始める。
そんな生徒達を見届けたセイラは、俺達の机へと戻ってくる。
「慕われてるじゃないか。」
「おちょくられてるような気もするけどね。」
「それも含めてだと思うぞ?」
「そうね。ありがたい事だわ。」
良い関係だよね。
微笑ましいよ。
慕われていてこそ、軽口を言い合える。
まさに、良い関係だからこそのやり取りだ。
そんなセイラは、恥ずかしそうだ。
「さぁ、私達も食べましょう。食事が冷めるわ。」
「そうだな。いただこう。」
食事はどれも温かそうなものばかりだ。
こうしている間にも、食事が冷めてしまう。
すると、メンバーのフューリーが椅子を持ってくる。
「はい、にゃんすけさん。これに乗って下さいね。」
にゃー。
ありがとー。
届かないから助かるよ。
食料がある机の高さは人の腰程だ。
俺の身長では届かない。
なので、椅子に乗って机の上を見る。
おー、おいしそー。
じゅる。
「落ち着け、にゃんすけ。だが、美味しそうなものばかりなのは確かだが…。」
並んでいるのは、何かを揚げたようなもの。
更に、何かを揚げたようなもの。
揚げ物、揚げ物、そして野菜。
見渡す限りの揚げ物と少しの野菜が並んでいる。
「こってりしたのが多いな。」
「だって学生だもの。これぐらいのものじゃないと抗議が来るぐらいよ。」
「そ、そうか。」
この年ぐらいだとそうなるよね。
俺も好きだから構わないけど。
むふー。
ここにいる者は、年頃の若者達だ。
お洒落な軽食よりも、お腹に来る物を好むのは不思議ではない。
しかし、それだけではない。
「もう食べて良い? そろそろ、お腹が限界なんだけどー。」
「そうね、いただきましょう。皆さんも、遠慮なさらずに。」
「そうだな。食べよう。」
各々が、串に刺さった揚げ物を口に入れていく。
その顔は、とても満足そうだ。
特に、メンバーのアクティが一気に口に放り込む。
「あー、空いたお腹にガツンとくるねー。」
「はしたないですよ。アクティ。」
「しかたないじゃん。久し振りのまともな食事だし。」
「その上、王都中を駆け回りましたからね。多少は許してあげても良いと思うけど。」
崩壊した王都では、まともな食事を取る事などは叶わない。
そのせいで、空腹な生徒達はとても多い。
それだけでなく、肉体労働もしたのだ。
「大変だったみたいだな。」
「そりゃね。土の魔法や水の魔法みたいなのは、そこら中で需要があるし。」
「お陰で、生徒達の誘導で一日中走りっぱ。くたびれたよねー。」
「まぁでも、先生が魔法学校の卒業生を集めるまでの辛抱ね。」
今いるの、生徒だけだもんね。
それだけで王都全体をまかなうとか、大変な筈だよ。
整地には、どうしても土が必要だ。
なので、ゼロから土を作れる魔法使いが求められる。
それによる重労働で、体も心もくたくたなのだ。
それを聞いたカミーユが頭を下げる。
「皆さんの尽力には、感謝しています。」
「良いよ良いよ。カミーユちゃん。気にしないでねー。」
「ちょっ、失礼でしょ! 王族の方なのですよ?」
「いえ、お気になさらず。」
「ほらほら。だってさ…むぐっ。」
「あんたが言うな。」
アクティの口に揚げ物をくわえさせて黙らせるソリュー。
その光景を見た一同が笑い出す。
そんな中、アクティはムグムグと口を動かし飲み込む。
「でも、あれだねー。早く復興を終わらせて、元の研究に戻りたいよ。」
「だね。向こうでの勉強も途中だったし。」
「そもそも、向こうはもう跡形も残ってませんが。」
「うんうん、それなんだよねー。」
木っ端微塵だもんね。
一つも残ってないんだろうね。
勉強を続けるには、向こうの研究所に戻る必要がある。
しかし、その研究所はもうない。
これでは、勉強の続きは出来ない。
それを聞いたセイラが溜め息をつく。
「また一から。って事よね。」
「でも、やるしかないでしょうね。」
「ここで終わらせたく無いですからね。」
「うんうん。折角、目指した夢だからねー。」
崩壊した以上は、また一からの始まりだ。
それでも、生徒会のメンバーは諦めない。
その理由があるからだ。
「夢か。そういえば、聞いてなかったな。どうして、魔科学の研究を選んだんだ?」
「え? そんなの決まってるわ。魔科学を学ぶ者の夢なんて皆同じなんですもの。」
「同じ? それは一体?」
魔科学を学ぶ者が目指すもの。
誰もが同じその場所を目指す。
聞かれた生徒会のメンバーが目を合わせる。
「それは…。」
「「「「空を飛ぶ!」」」」
「ですよ。」
楽しそうに声を合わせる生徒会のメンバー。
それは、誰もが夢見る永遠のテーマだ。
それを聞いたフィーが疑問を持つ。
「空を飛ぶ? それが、皆の夢なのか?」
「そうよ。魔科学の始まりは、空に憧れた魔法使いから始まったんだから。」
「その副産物として、生活を支える研究が始まった。」
「それでも、皆目指している筈だよー。」
「空に憧れるのは、皆さん同じの筈ですから。」
素敵な夢だね。
憧れるのも分かるよ。
今はまだ、叶えられる程の技術はない。
それでも、その気持ちは誰しもが持っている。
魔科学の研究をする者にとっては当たり前の事だ。
「といっても、まだ夢の中の夢だけどね。」
「良いんじゃないか。目指す者がここにいる。なら、いつかは叶えられるだろう?」
「そうね。いつか絶対に叶えてみせるわ。勿論、一番最初に飛ぶのは私達よ。」
「そうこなくてはな。」
にゃー。
頑張ってね。
皆なら出来る筈だよ。
目指す者達がいるのなら、夢はいつか叶うだろう。
夢とはそういうものなのだから。
生徒会のメンバー達は、同意するかのように微笑む。
「さ、そうと決まれば、今は目の前の事よ。たらふく食べて、また明日から頑張りましょう。」
「一からコツコツだね。」
「うんうん。って事でおかわりー。」
「あんたは少し遠慮なさい。」
そうしてまた、その光景を見た一同が笑う。
そんな風に笑いつつも、夢に向かう決心をする生徒会のメンバーだった。