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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
184/283

目指せ、巨体の大蛇の中へです

 揃った四人は、巨体の大蛇に絡む鎖へと降り立つ。

 そして、フィーは目の前に現れたその姿を見る。


「この中にカミーユが…。」


 この巨体の中にカミーユがいる。

 そこにいるだろうカミーユへと想いを馳せる。

 そんなフィーの肩をオルティが掴む。


「すまないね。本当なら、その前に止めて上げたかったんだけどね。」

「いや、捕まったのなら助ければ良いだけだ。その為に、私を連れて来たんだろう?」

「ま、そういう事だね。」


 フィーの目的は、カミーユを連れ戻す事だ。

 それが無理なら、フィーを連れてくる必要はない。

 それでも連れてきたのは、諦めていないという何よりの証拠だ。


「それじゃ、キュリアちゃん。説明しちゃって頂戴な。」

「はいはーい。良いかい? フィーちゃん。私達の目的は、カミーユちゃんを助けてこいつを追い返す事だよん。」


 こちらの勝利の条件は二つだ。

 一つは、中のカミーユを助ける事。

 もう一つは、巨体の大蛇が悪さをする前に追い返す事だ。


「倒さなくて良いのか?」

「そうしたいんだけど。無理なんだよねー。」

「俺達で九人でようやく首一本だからな。」

「ここにいるメンバーでは到底無理かな。」


 首が一本無いのは、前の戦いでの戦果だ。

 しかし、それだけなのだ。

 それ以上となると、この数では不可能だ。


「では、追い返す方法はあるんだな?」

「まあね。幸いにも、こいつは召喚陣から出きって無い。つまり、反転の魔法で弄れば向こうに召喚させれるってわけだよん。」


 巨体の大蛇は、こっちに出ようとしている。

 ならば、向こうに出るように向きを反転させれば良い。

 そうすれば、元いた場所へと召喚されるだろう。


「なら、後はカミーユを助ければ良いだけか。」

「その通りだよん。これの中に入って、カミーユちゃんを連れ戻す。ただ、入れるのは一人だけなんだよね。しかも、カミーユちゃんと深い関わりがある人物がね。」


 連れ戻すには、巨体の大蛇の中に入る必要がある。

 しかし、誰でも良いという訳でもない。

 それには、きちんとした理由がある。


「どうして、深い関わりが必要なんだ?」

「今のカミーユちゃんは、こいつに心を飲まれかけてるだろうからね。だから、それ以上の強い心で引っ張らないといけないんだよん。」

「ユリーシャの時みたいにか?」

「察しが良くて助かるよん。」


 あの時は、コロとユリーシャの心を繋いで奪い返した。

 つまり、あの時と同じ事をする気のようだ。

 だからこそ、それが出来る人物が必要なのだ。


「カミーユちゃんの昔の話は聞いた事があるよん。その上で、フィーちゃんが彼女に固執するのを見てピンと来たね。あの子を助けるには、君の力が必要だってね。出来るかい?」

「その為に立ち上がった。その為にここまで来た。迷いなど無い。」


ガタッ!


 俺もいるよ!


「そうだな。私達なら出来るよな。」


 助けないのなら、ここまで来る事は無かった。

 今更考えると言うのは愚問だろう。

 それを聞いたオルティが満足そうに頷いた。


「良い返事だ。なら、私達で全力でサポートだね。」

「言われなくてもだな。」

「きっちりと送って上げるからねー。」


 実力者の三人が名乗り出る。

 これほど頼りになる事は無いだろう。

 その時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ。


 激しい揺れが、辺りへと広がる。

 そして、鎖に捕らわれた筈の巨体の大蛇が動き出す。

 それによる振動は、鎖の上のフィー達にも伝わる。


「う、動き出したぞっ。」

「ちょっとまずいかな。止められる?」

「無理! 正直、止めれてるだけでも奇跡だからね?」


 これだけの巨体を抑えるには、相当な力が必要だ。

 しかし、それが出来るのなら頭を抱えて悩んではいない。

 すると、更に鎖が激しく動く。


「これ以上はもたないけどどうする?」

「こうなったら、無理に大人しくさせるしかないな。」

「だねー。これからの事は、戦いながら話すよ。良い?」

「いつでも構わんっ。早く止めるぞ!」


 鎖がほどける前にね。

 さぁ、行こー。


 このままだと、助けるどころではななくなってしまう。

 その為、無理にでも止める必要があるだろう。

 そうして、四人が一斉に飛び込む。


「一人で相手をするのは無理だからね。合わせて行くよ!」


 オルティの言葉に頷いた三人が、一つの首へと飛び込む。

 そして、各々が武器を叩き込んでいく。

 それでも、通らずに弾かれる。


「あらら、魔法の力は効かないかー。」

「これでも、あの時と比べて相当弱ってんだけどねぇ。」

「確かにね。カミーユちゃんにかけたリミッターがこれにも影響してるのかな?」


 カミーユには、取り込む魔力を制御するリミッターがかけられている。

 そのカミーユを取り込んだ事により、巨体の大蛇の魔力にも影響しているのだろう。

 それでも、この圧倒的な質量を抑えるには至らない。


「小手先は効かないか。じゃあ、ぶん殴るまでだな。」

「右に同じかな。」

「それが一番だよん。一斉にねっ!」


 そう言いながら、武器の魔力を火力へと変える実力者の三人。

 そうして、一斉にその力を叩き込む。

 それと同時に、後ろのフィーへと呼びかける。


「フィーちゃん! 任せたよ!」

「あぁ!」


 後ろで見ていたフィーが前に出る。

 そうして、一回転して長剣を叩き込む。

 それでもびくともしない。


「効いてないっ。固すぎる。」

「そりゃね。固いというかなんというか。」

「質量で押されてるって感じだろ?」

「確かにな。なら、こっちも質量だっ。」


 フィーが剣を上に掲げる。

 そして、その剣に纏う鬪気を大きくさせていく。

 それに合わせて、フィーの剣も大きくなっていく。


「更にここから圧縮っ!」


 なにも、大きければ良いものではない。

 大きくなった剣の大きさが半分になる。

 それでも、その質量は倍になる。


「このまま行くぞ!」


 やっちゃえ!


 その大きな剣を、巨体の大蛇へと叩き込む。

 すると、それを受けた巨体の大蛇が怯む。

 しかし、すぐにフィーへと首を振るう。


「くうっ。」

「させねぇよ。ショット!」


 横からの、リュノの攻撃が巨体の大蛇の横顔を叩く。

 それにより、相手の頭突きが逸れる。


「ほれ、やっちまいな。」

「助かるっ!」


 空かした相手の顔へと、大きな剣を叩き込む。

 更に、そこから剣を振り上げる。

 それにより、その首を奥へと追いやる。

 それを見たキュリアが叫ぶ。


「良いよ! そのまま全部怯ませて! そうすれば、あいつの中へと繋げられるからね!」


 全ての首を怯ませる事によって、巨体の大蛇の力も弱まる。

 そうする事によって、ようやく中へと潜り込めるのだ。

 そうしている間にも、もう一つの首が迫ってくる。


「来いっ!」


 迫る頭へと剣を振り下ろすフィー。

 そうして、剣と頭がぶつかり合う。

 それでも、フィーが押されていく。


「ぐううっ。」


 頑張れ!

 

 応援をするも、次第に剣が押されていく。

 この剣でも、巨体の大蛇との差は埋められない。

 すると、それを見たキュリアが動く。


「ほら、プレゼントだよんっ。」


 そう言いながら、空中に複数の剣を出現させるキュリア。

 その一つ一つが、キュリアが持つ剣と同じものだ。


「受け取ってねっ!」

 キュリアが指を鳴らすと同時に、それらの剣が一斉に巨体の大蛇を襲う。

 すると、その剣が刺さる度に巨体の大蛇が押され始める。


「ここまでしないと消せないかっ。でもチャンスだよ!」

「分かった!」


 相手を押していくフィーは、そのまま相手の首を押しきる。

 更に、そこで右からの一振り。

 そして、左からの一振り。

 最後に、振り上げての一撃で首を奥へと追いやる。


「よし! 次だ!」


 二つの首を追いやったフィーへと、もう一つの首が襲いかかる。

 すると、その首を横へと受け流す。


「貰った!」


ガタッ!


 違う!

 上だよ!


「ん?」


 俺の声に反応したフィーが上を見上げる。

 すると、そこには魔力の塊を口に溜めた首があった。


「しまっ。」

「おっと。よそ見は厳禁でっ。」


 飛び込んだオルティが、その首へと鎖を巻く。

 そして、下に向けて鎖を引っ張る。

 すると、その首が逸らしたばかりの首に直撃。

 それにより、二つの首を巻き込む爆発が起きる。


「自分の攻撃にやられるなんて情けないってね。ほら、今だよ!」

「任せろ!」


 項垂れる二つの首へと、大きな剣を振るうフィー。

 片方の首を振り上げると、もう片方の首にも振り上げる。

 そうして持ち上がった首へと一回転。

 二つの首を左右に吹き飛ばす。


「やったぞ! こっからどうする!」

「ちょっと待って。今、カミーユちゃんとこれを繋いだ魔方陣をっと。…乗っ取った!」


 次の瞬間、フィーの前に魔法陣が現れる。

 その奥には、捕まっているカミーユが見える。

 どうやら、気を失っているようだ。


「カミーユ! …どうすればいいっ?」

「そのまま飛び込んじゃって!」

「分かった! 行くぞ!」


 うんっ。

 カミーユの所までっ!


 一気に魔法陣へと飛び込むフィー。

 そして、カミーユの下へと一直線に飛んでいく。

 しかし、そんなフィーへと黒いもやが集まってくる。


『カエレ。』

「誰だ!」

『カエレ。』

「誰だと聞いているだろう!」

『カエレ。』


 質問には答えずに、同じ言葉が返ってくる。

 こっちの相手をするつもりは無いようだ。

 それならばと、無視して一気に突っ込む。


『カエレ。』

「断る!」

『カエレ。』


 誰なの? 一体。

 邪魔をしないで!


 声が聞こえる度に進めなくなってくる。

 黒いもやが邪魔をしているのだ。

 それでも、フィーは無理に進んでいく。

 その度に、黒いもやも押し返してくる。


『カエレ。カエレ、カエレ、カエレ。』


 もやが増えていく度に、声が増えていく。

 その声は、フィーを拒むように増えていく。

 そして…。


『カエレ!』


 その声が聞こえたと同時に、フィーが押される。

 それでも、フィーは突き進む。

 しかし、後ろへと押されていく。

 そんなフィーは、耐えつつもカミーユへと手を伸ばす。


「ぐうっ、カミーユっ。」


 手を伸ばすも届かない。

 むしろ、その距離が離れていく。


「カミーユっ。」


 抵抗するも押されていく。

 あまりの強さに、全く歯が立たない。

 そして遂に、フィーから俺の仮面が剥がれる。


「カミーユーーーーー!」


 心装ではなくなったフィーと俺は、一気に外へと放り出される。

 そして、そんな俺達へと無慈悲にも魔力の塊が迫る。

 それにより、カミーユの姿が隠れる。

 直後、激しい爆発が俺達を襲う。


ドゴーーーーーーン。


 激しい爆発音。

 立ち込める噴煙。

 その中から、長剣を投げ捨て俺を抱えたフィーが現れる。

 リュノが構える斧に足をかけて。


「行けるかい?」

「あぁ、おもいっきり頼む!」

「おし。んじゃ、行ってこい!」


 リュノが斧を振るう。

 すると、その勢いでフィーと俺が飛ぶ。

 そのまま一直線に飛んでいく。

 その横を、キュリアが並んで飛ぶ。


「まさか、抵抗されるなんてね。でも大丈夫。次は、本気で繋げるからね。」


 そう言いながら、止まったキュリアが手を構える。

 すると、魔法陣までの間が光に包まれる。

 そこへと飛んでいくフィーと俺。

 しかし、それを邪魔するように魔力の塊が現れる。


「オルティ!」

「あいよ!」


 鎖を束ねてパドルへと変えたオルティが、魔力の塊の前に飛び出す。

 そして、放たれた魔力の塊へとパドルを叩き込む。


「こんなのも返せなくて、No.3は名乗れないよねっと!」


 そう言いながら、三つの魔力の塊を打ち返す。

 すると、それらの魔力の塊が巨体の大蛇の首へと直撃する。

 その間にも、再び魔法陣へと迫っていく。


「「「行けっ!」」」


 三人の言葉と共に、フィーと俺が魔法陣へと突っ込む。

 すると、やはり黒いもやが押し寄せる。


「今度は負けんっ!」


 そう言いながら、お面になった俺を頭にかける。

 そうして突き進むも、再びもやが押してくる。

 しかし、そのもやを光の道が振り払う。


「こんなにも、私を支えてくれる者達がいる。ならば、負ける道理など何処にあるのか。いや、無い!」


ガタッ。


 そうだねっ。

 俺達には、一緒に戦ってくれる人がいる。

 勿論、それだけじゃないよね。


「あぁ、言いたい事は何となく分かる。私達にっ…。」


 俺達にっ…。


「出来ない事はないっ!」


 出来ない事はないよっ!


 そうして、もやを突き抜けながら進んでいく。

 それを止められるものはいない。

 すると、再び声が聞こえてくる。


「カエレ。」

「カエレ。」

「カエレ。」

「カエレ。」


 今度は、声色が違う複数の声だ。

 それでも、それを無視して突き進む。


「誰かは知らんが、私達は止まらんぞ。」


 絶対にね。


「止まってやるものか。守る者がある限りな!」


 そう言いながら、再びカミーユへと手を伸ばす。

 今度は邪魔をする者はいない。

 そして遂に…。


「今行くぞ! カミーユ!」


 そうして、巨体の大蛇の中へと入り込む。

l

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