頂上の者達の戦い
山をも越える巨体の四つ首の大蛇が寝ている。
その前に、寝ているカミーユを持った帝が降り立つ。
「ついにこの時が来た。我らの国を復興する時が。そして、あやつに復讐をする時が。」
そう言った帝の足下に魔法陣が現れる。
すると、カミーユの体が浮いていく。
「こやつは、大地の魔力を無尽蔵に集める。これを貴様に繋げれば、無尽蔵に力を放つ事が出来るだろう。まさに、これ以上もない素体だ。」
浮いたカミーユは、巨体の大蛇へと向かう。
そして、巨体の大蛇の中へと消えていく。
「さぁ目覚めよ。そして暴れよ。我らの意のままに。」
その言葉と共に、巨体の大蛇の目が覚めていく。
その順に、四つの首が上がっていく。
そうして、完全に復活した巨体の大蛇が空へと吠える。
それを見た帝が笑う。
「完璧だ。では始めようか。我らの復習を!」
そう言って、両手を広げて巨体の大蛇を見上げる。
そして、それに答えるように巨体の大蛇がまた吠える。
そこから離れた場所に、オルティが着地する。
「間に合わなかったかー。これでも飛ばしたんだけど。」
動く巨体の大蛇を見て手遅れを察するオルティ。
カミーユは既に巨体の大蛇の中だ。
すると、オルティの存在に気づいた帝が振り向く。
「貴様か。武将達はどうした?」
「今頃、うちの仲間が相手してるよ。」
「そうか。まぁ良い。丁度、試し相手が欲しかった事だ。」
足止めが出来なかった武将達を咎める様子はない。
そのお陰で、巨体の大蛇を試せるのだから。
早速、帝は巨体の大蛇へと指示を出す。
「やれ。」
その指示に従うように、一体の巨体の大蛇が吠える。
すると、それに答えるようにオルティの下の地面が浮き上がる。
「おっと。」
その地面は、複数の欠片となって落ちていく。
そこにいるオルティを飲み込むように。
しかし、オルティはそれを足場に上へと目指す。
「流石。あの時と変わらぬ威力なこった。」
「余裕だな。それだけでは終わらぬぞ?」
帝が笑うと同時に、一体の巨体の大蛇の口がオルティに向く。
そして、先程と同じように吠える。
「知ってるさ。」
次の瞬間、巨体の大蛇の後ろから大きな津波が現れる。
その津波は、オルティを襲うように襲いかかる。
それに対し、オルティはパドルを振るう。
「道を開けな…っと。」
その一振で、津波を左右に分ける。
すると、オルティを避けるように津波が過ぎていく。
「良いぞ良いぞ! ほら、次だ!」
今度は、別の巨体の大蛇が吠える。
すると、地面から沢山の樹が生えて四方に拡散。
その迫り来る樹を、オルティがパドルで払う。
「どうした? こんなもんかい?」
「言われんでも、期待に添えてやろう!」
オルティが煽るまでもなく、次の巨体の大蛇が吠える。
すると、オルティを飲み込むように地面からマグマが吹き荒れる。
それをオルティがパドルで払うも…。
「こんなもので…いや、上かなっ。」
上を見ると、マグマが吹き飛ばした土や樹が降ってくる。
それらは、全体をマグマで覆っている。
「気づけたなら、こっちのもんさっ。」
落ちてくる瓦礫を、パドルで吹き飛ばす。
落ちてくる前に気づけば、対処は可能だ。
しかし、そんなオルティへと巨体の大蛇が吠える。
「なら、一度にはどうかな?」
パドルを払ったオルティに、先程の津波が帰ってくる。
更には、再び浮いた地面や樹やマグマも現れる。
そして、今度は一斉にオルティを襲う。
「同じ事さっ。何度来てもねっ!」
それでも、それらの物をまとめて払うオルティ。
何がどのように来ようが、オルティには関係ないのだ。
そうして、朽ちた樹の上に着地する。
「どうにかなったけど、こりゃ酷いな。」
その目に映るのは、荒れ狂う大地だ。
見渡す限りの地面は崩壊。
その間からは、マグマが走る。
そこから伸びる樹は、朽ちても尚伸びる。
そして、その周辺の水場には荒々しく津波が走る。
その大地はは、もはや人が立ち入れる場所ではない。
この光景を見た帝が宙に浮いて笑う。
「どうだ? こいつさえいれば、この程度の大陸など一瞬だ。」
「知ってる。以前見たからね。あの時は、これに吹雪とか雷やらも混ざってたからまだマシな方だけど。」
この光景は、以前に戦った時に見慣れたものだ。
今更、驚くような光景ではない。
しかし、これでもまだ足りないと言うのだ。
それには帝も同意する。
「確かに。それが無いのは口惜しいか。しかし、これでも充分やってのけるだろう。」
「残念だけど、うちらがさせないけどね。」
「ほう? なら、見せて貰おうか。さぁ行け!」
帝が巨体の大蛇へと指示を出す。
しかし、反応はない。
その様子に、帝が疑問を持つ。
「ん? どうしたというのだ?」
帝が巨体の大蛇を見る。
その顔は、疲れたように項垂れている。
まるで、魔力切れを起こしたかのように。
「魔力が切れた? 何故だ。無限とも言えるバッテリーを与えたというのに。」
「はてさて、何ででしょうねぇ。」
「ん? 何か知って…いや、貴様の仕業か。」
「それも、さぁね。」
しらばっくれるオルティ。
答える義理は無い。
それでも、帝が原因に気づく。
「その仕草からして、何かしたのは間違いない。しかし、奴は近づきもしていない。ならば、原因はバッテリーの方だな?」
「さあて。彼女を物扱いするあんたに言う気は無いよ。」
「つまり、当たりと。ならば、原因を見つけて取り除くまでっ。」
オルティに無理なら、最初から仕組まれていたと考えるのが普通だ。
その原因さえ分かれば、取り除く事が出来るだろう。
そうして、カミーユの下へと向かう帝だが…。
「入れ替え。」
「ぬうっ!?」
オルティの魔法で、帝とオルティの場所が入れ替わる。
それにより、オルティへと迫る事となった帝へとパドルが振るわれる。
それを受けた帝は、大きく後ろへと滑る。
そして、下の樹へと着地したオルティがパドルを構える。
「うちを無視して出来るとでも?」
「ぐうっ。ならば、貴様を倒して向かうまでだ。」
「やってみな。さぁおいで。遊びの時間だよ。」
そう言いながら、空間をなぞるオルティ。
すると、なぞった箇所が裂ける。
そして、その箇所から兎のようなものが顔を出す。
「遊ぶのー?」
「そう、遊びの時間だよ。」
「わーい、やったー!」
その兎のようなものが、空間から飛び出す。
そのまま楽しそうにオルティの周りを跳ねる。
すると、オルティの腕へと着地する。
「装身。」
その言葉と共に、兎とパドルが一つになり槍へと姿を変える。
そうして出来た槍をオルティが構える。
「さて、暴れようか。」
そう言いながら、前へと出るオルティ。
その間、周りの空間が槍へと集束されていく。
それにより、集めた空間にかかるエネルギーが槍の力へと変わる。
しかし、それを見た帝も動く。
「すぐに終わらせるっ。雷よ!」
迫るオルティへと、雷を放つ帝。
目では追いつけない程の速さの雷が飛んでいく。
それでも、雷を槍で払いながらオルティは突き進む。
「そんなんじゃ、止まってあげないけどっ?」
「ぬかせっ。雷よ!」
帝が雷を前方へと溜める。
そして、その雷でオルティの槍を受け止める。
そうしてぶつかり合う雷と槍。
「口だけか?」
「そっちこそっ。ほらっ、拡散しなっ!」
その言葉と共に、槍先に溜まった空間が広がる。
その溜めた空間が、力となって放出される。
それを受けた帝は、後ろへと吹き飛ぶ。
「ぐうっ。まだまだっ!」
それでも、宙で耐えたと同時に雷を放つ帝。
今度は、複数の雷がオルティへと迫る。
「よっと。」
その雷を避けていくオルティ。
時には槍で払って雷を防ぐ。
しかし、その隙に帝が大きな雷の塊を作る。
「貰った! 雷の竜よ来たれ!」
そう言いながら、竜の形をした雷が駆ける。
その竜の雷は、真っ直ぐにオルティへと向かう。
「こいつを受け止めれるかな?」
「その必要は無いけどねっ。」
そう言いながら、槍を投げるオルティ。
その槍は、雷の竜を貫いて真っ直ぐに飛ぶ。
そして、その先にいる帝へと向かうが…。
「はっ。避ければ良いだけだろう。」
何も、真正面から受ける必要はない。
それを避けた帝の横を槍が抜ける。
それと同時に、帝とオルティが入れ替わる。
「入れ替え。」
入れ替わったと同時に槍を掴むオルティ。
そして、再び帝へと槍を投げる。
「そう嫌がらないでって、ねっ。」
投げた槍は、帝を目指して飛んでいく。
それに対して、帝が雷を手に溜める。
「断るとも。」
その槍へと、雷で受け止める帝。
すると、一気に距離を詰めたオルティが槍を掴んで押し込む。
しかし、それを見た帝が笑う。
「かかったな。雷の竜よ!」
「なっ。」
溜めた雷を竜の姿へと変える。
そして、その竜の口でそのままオルティを襲う。
この距離では逃げれない。
それでも、オルティが笑う。
「んてねっ。」
魔法で、竜との距離を伸ばすオルティ。
そんなオルティの目の前で、竜の口が閉じる。
「残念だったね。」
「哀れな。読んでおるさ。」
その言葉と共に、雷の竜を貫くように新たな雷が現れる。
雷の竜は、視界を遮る為に出したものだ。
それでも、オルティが槍の先に溜めた力を放つ。
「哀れだね。読んでるよ。」
放った力は、一直線に飛んでいく。
溜めたエネルギーが、ビーム状に飛んでいく。
その力が、雷を払い帝へと向かうが…。
「何を読んでいると?」
横に飛びでた帝が、その力を避ける。
それと同時に、オルティへと雷を放つ。
「それはこっちの台詞かなっ。」
その雷を払ったオルティは、魔法で距離を縮める。
それに対して、帝はもう片方に溜めていた雷を放つ。
「はっ!」「はっ!」
そのままぶつかり合う両者。
お互いの力をぶつけるも、大きく弾けて吹き飛ぶ。
「やるねぇ。」
「まだだっ。魔獣化!」
その身を獣へと、かつ雷をその身で纏う帝。
それと同時に、その姿がかき消える。
そんな帝は、あちこちに姿を現しながらオルティへと迫る。
「クラエッ!」
どこからともなく現れた帝が、オルティへと雷を放つ。
それに気づいたオルティは、その方へと槍を振るう。
「ハッ!」
「くっ。」
なんとか受ける事が出来た。
それでもすぐに、帝の姿が消える。
それと同時に、空中のあちこちで雷が弾ける。
そして、その度に雷がオルティを襲う。
「ほっ、はっ、よっと。」
軽いステップで避けていくオルティ。
避ける事自体は難しくない。
すると、槍の中の兎がその光景を見る。
「きゃっきゃっ、綺麗だねっ。」
「そうだねぇ。っと。」
会話しながらも、避け続けるオルティ。
兎と一緒に、この光景を見る。
そんなオルティの背後に帝が現れる。
「ズイブント、ヨユウダナ?」
そうして、再び雷を放つ帝。
しかし、寸前で気づいたオルティが槍を振るう。
そうして受け止めたオルティが笑う。
「懐かしいね。昔を思い出すよ。」
「シラン。イチイチオボエテナドイナイッ。」
「ふーん。つまり、それぐらい悔しかったと。」
その言葉に、眉をしかめる帝。
すると、一度下がって距離を取る。
そして、一気に溜めた雷を解き放つ。
「オボエテイナイト、イッテイルダロウッ!」
図星なのだろうか、怒りのままに雷を放つ帝。
次の瞬間、帝とオルティが入れ替わる。
「ほい、入れ替わり。学ばないねぇ。」
「ソッチガナ。」
「ん?」
その言葉に疑問を持つオルティ。
次の瞬間、後ろから熱波に気づく。
「まさかっ。」
振り向くと、巨体の大蛇の口に溜めっている魔力の塊に気づく。
一つの首からとは言え、その大きさは凄まじい。
そして、それに気づいた時には既に放たれていた。
「ちょおっ!?」
咄嗟に、その魔力の光線へと槍を振るうオルティ。
それを受け止めるも、耐えるのに必死で動けない。
そんなオルティへと、帝が雷を溜める。
「オマエノイレカエハ、ツカッタスグニハツカエナイノダロウ?」
「はっ、正解っ。」
オルティへと雷の竜を放つ帝。
前には魔力の光線で、その後ろからは雷の竜。
前後からの挟み撃ちだ。
「やるじゃん!」
それでもオルティが槍を振るう。
それにより、魔力の光線を反射し後ろの雷の竜へとぶち当てる。
「どう? こっちもやるもんでしょ?」
「アァ。デハ、コレナラドウカナ?」
帝の声と同時に、光線を受けた雷の竜が砕ける。
すると、その砕けた雷の竜が複数の矢となって四方に分かれる。
「イカズチのヤヨ!」
複数の雷の矢がオルティへと迫る。
それに対して、オルティが槍を振るう。
「今更その程度で!」
槍にぶつかった雷の矢は、あっさりと霧散する。
と思いきや、散った雷が四方に分かれていく。
「ソノテイドガナンダッテ? イカヅチノアミヨ!」
そうしてオルティを囲ように分かれた雷から線が伸びていく。
その雷の線は、オルティへと襲いかかる。
「くっ。流石にきついけどっ。」
それでもオルティは、槍で大きく振るって雷を払う。
すると、今度は至るところに雷が散らばっていく。
「ヤルナッ。デモ、モウオシマイダ! ナニセ…。」
散らばった雷同士が繋がっていく。
そして、牢のような姿に変わる。
「フセグコトナドデキナイノダカラナァ! イカヅチノロウヨ!」
前後左右、あらゆる角度から雷が迫る。
もはや、槍で払うどころではない。
「ははっ。やるじゃん。」
どうにもならない状況に、オルティは笑うしかない。
そんなオルティを巻き込むように、四方からの雷がオルティを貫く。
その光景に帝が笑う。
「ヤッタカ。」
あれほどの雷を受けたのだ。
無事では済まないだろう。
そう思った次の瞬間、煙の中から鎖が伸びていく。
「魔装、アチェット・コーツ。」
その言葉と共に、煙の中から現れるオルティ。
その手からは、一本の鎖が握られている。
「そんじゃま、こっちも本気で行きますか。」
「行け行けゴーゴー!」
鎖を持った手を振ったオルティが前に出る。
それと同時に、鎖の先を帝へと投げつける。
「おらっと。」
「ハッ。」
それを避ける帝。
すると、鎖がその横を抜ける。
そんな帝をオルティが見る。
「どうして避けるのさ。」
「ソレニフレルト、ソンザイガコテイサレルノダロウ? ウケルハズナドナイ。」
「それはまぁそうなんだけどね?」
触れた相手を、その場に固定する鎖。
少し触れただけで、終わってしまうような代物だ。
そんなものに、わざわざ触ってくれはしないだろう。
それならば、当たるまで振れば良い。
「それなら、こっちから当てに行くよっ。」
そう言いながら、再び鎖の先を投げるオルティ。
すると、鎖が伸びながら帝へと向かう。
「オソイナ。」
それでも、軽々しく避けられてしまう。
やはり、雷相手に投擲の速度は敵わない。
「ヨウハ、フレナケレバイイダケダ。」
「それでも、前回のあんたは負けたけどね?」
その言葉と共に、通過した鎖が方向を変える。
そうして、帝を後ろから襲いかかる。
「クドイッ! イカズチヨ!」
その鎖を避けたと同時に雷を放つ帝。
それに対して、オルティが反対の方の鎖を掴んで振るう。
すると、それに触れた雷が消える。
「その程度かなっ?」
そのまま、雷を消した方を投げるオルティ。
その鎖を帝が避けようとするが…。
「キエタ!?」
帝の前で、鎖の先が消えたのだ。
すると、帝の横で鎖の音が聞こえてくる。
「ヨコカ!」
その鎖の音に、急いで飛び退く帝。
その直後、どこからか現れた鎖が帝の近くを通る。
そして、また鎖の先がどこかに消える。
「クッ、ドコカラダッ。」
「後ろかな?」
その言葉通り、帝の後ろから鎖が現れる。
そして、また鎖の先が消えてしまう。
「さてさて次は、何処でしょう。」
「クッ、ナメヤガッテ。イカズチヨ!」
このままだと、何も出来ないと悟ったのだろう。
隙を見つけた帝が、オルティへと雷を放つ。
しかし、どこからか飛び出した鎖が雷を消す。
そうしてまた、何処かに鎖先が消える。
「あらら、残念。」
「クソッ。」
そうしている間にも、鎖が帝へと襲いかかる。
消えては現れての繰り返し。
しかも、通った鎖は残っている。
「クッ、ニゲバガッ。」
逃げた先には、鎖が待ち受けている。
それを避ける先にも鎖。
そして、帝が逃げる度に鎖が増えていく。
その度に、逃げる場所が減っていく。
そんな帝の背後に、オルティが現れる。
「こっちだよ。」
「ナッ。」
急に現れたオルティは、反対の方向の鎖を振るう。
それに対して、帝が光速で鎖の外へと逃げていく。
それを見たオルティは、鎖が走る真ん中に着地する。
「ねぇ、驚いたでしょ。前回の戦いでは見せなかったもんね。」
「クッ、ダカラシラヌトッ。」
「あれ? まだしらばっくれるんだ。そりゃそうか、戦いが終わるまで待ちぼうけだったもんねぇ。」
触れただけで戦えなくなる。
そうなれば、戦うどころではない。
それを、前回の戦いで目の前の帝が受けてしまったのだ。
悔しくて何も出来ない惨めさで、記憶の隅に追いやったのだろう。
「シュミガワルイチカラダ。シカシ、ウケナケレバモンダイハナイ。ヨケツヅケレバ、イズレショウキハアラワレル。」
「へぇ、じゃあやって貰おうじゃん? ほい、入れ替えっと!」
「ッ!?」
オルティの魔法で、帝とオルティが入れ替わる。
オルティは走る鎖の外。
そして、帝は鎖の中。
そうして、オルティが何処からか現れた鎖を掴む。
「逃げるもんなら逃げてみなっ。ほらっ。」
そう言いながら、鎖を引っ張るオルティ。
それに合わせて、鎖が一つの塊になろうとする。
それにより、鎖同士の隙間が小さくなっていく。
更には、小さくなるのに合わせて空間そのものが帝を押し潰す。
「どうしたんだい? 避け続けるんじゃないのかな?」
「クソガアッ! フザケルナーーーッ!」
怒りのままに、雄叫びを上げる帝。
それに合わせて、体中の雷が解き放たれる。
「コレイジョウ、ヒトゴトキニ、ナメラレルワケニハイカナイッ!スベテマトメテキエサレーーーーー!」
叫ぶと同時に、雷の威力が上がっていく。
そして、迫る鎖を押し退ける。
そのまま押し続けると、遂に鎖を吹き飛ばす。
「まじかっ。結構頑丈な筈だったんだけどねぇ。」
「フハハッ。ザンネンダッタナッ。コレゾショウキ! ミツケタリィッ!」
そう叫びながら、オルティへと突っ込む帝。
オルティには、防げる程のの鎖は無い。
それでも、避けたオルティが鎖の塊へと着地する。
「勝機を見つけたのは、こっちの台詞っ。」
そう言いながら、オルティが帝へと鎖を放つ。
しかし、帝は呆気なく避けてしまう。
「オソイッ、ソノテイドノクサリ。コワクモナントモナイ。」
「それはどうかな?」
「ナニッ?」
鎖を克服されたと言うのに、オルティは余裕な表情をしている。
それを見て疑問を持つ帝の後ろへと指をさす。
「う、し、ろ。」
「ウシロダト?」
その方を素直に見る帝。
すると、後ろの巨体の大蛇へと鎖が絡まっているのが見える。
「マ、マサカッ。」
「そのまさかだね。」
それに気づいた二人の前で、巨体の大蛇に絡まる鎖が伸びていく。
それだけでなく、至る所から鎖が現れる。
そして、それらが巨体の大蛇に絡まると大きくなっていく。
「ヤ、ヤメロ! セッカクテニイレタチカラガ!」
「おっと。他所の心配をしている場合かな?」
「ナッ、シマッ…。」
気づいた時にはもう遅い。
帝の体に鎖が巻き付く。
そして、巨体の大蛇のように身体中に鎖が巻き付いていく。
「カアアアウオアアイッ。」
「どうだい? 久し振りの鎖の味は。」
「ウフアエウアッ。ハアエ!」
「離せと言われて、離す奴がいるかい?」
鎖に絡まれた体は、指一つ動かせない。
動かせないと言うより動かない。
まるで、動くというものが存在しないかのように。
「あんたの負けだよ。帝。前回は生かしたけど、今回はそうはいかない。前回、邪魔をした大蛇もあの様だからね。それじゃ、人間を舐めた事を後悔しながら散ってくれな。」
「マアアッ! マアアエウ!」
「それじゃ、さようならってね。」
その言葉と共に、帝に絡む鎖が動き出す。
片方の先から片方の先へと滑っていく。
その度に、鎖が帝の体を擦っていく。
「コオエイオ!」
当然、この程度では終わらない。
次第に鎖の速さが速くなる。
その度に、鎖が熱を帯びていく。
そして、帝の体を焼き斬っていく。
「コオエイオエッ。コオエイオエーーーーッ!」
そう叫んだ直後、帝の体が複数に裂ける。
そして、硬直したままの形で四方に散らばる。
「さようなら。古き思い出と一緒にね。」
そう言いながら、帝へと背を向けるオルティ。
そんなオルティの近くに、三つの影が降り立つ。
「やぁオルティ。帝は倒したかい?」
「倒したばっかだよ。フィーちゃんが来る前に、帝と大蛇の動きを止める。無事に完了って事で。」
「りょーかい。それじゃ、次はとうとうカミーユちゃんの救出と行きますかね。」
フィー、オルティ、キュリア、リュノ。
遂に揃った四人が、鎖に捕らわれた巨体の大蛇を見上げる。