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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
183/283

頂上の者達の戦い

 山をも越える巨体の四つ首の大蛇が寝ている。

 その前に、寝ているカミーユを持った帝が降り立つ。


「ついにこの時が来た。我らの国を復興する時が。そして、あやつに復讐をする時が。」


 そう言った帝の足下に魔法陣が現れる。

 すると、カミーユの体が浮いていく。


「こやつは、大地の魔力を無尽蔵に集める。これを貴様に繋げれば、無尽蔵に力を放つ事が出来るだろう。まさに、これ以上もない素体だ。」


 浮いたカミーユは、巨体の大蛇へと向かう。

 そして、巨体の大蛇の中へと消えていく。


「さぁ目覚めよ。そして暴れよ。我らの意のままに。」


 その言葉と共に、巨体の大蛇の目が覚めていく。

 その順に、四つの首が上がっていく。

 そうして、完全に復活した巨体の大蛇が空へと吠える。

 それを見た帝が笑う。


「完璧だ。では始めようか。我らの復習を!」


 そう言って、両手を広げて巨体の大蛇を見上げる。

 そして、それに答えるように巨体の大蛇がまた吠える。

 そこから離れた場所に、オルティが着地する。


「間に合わなかったかー。これでも飛ばしたんだけど。」


 動く巨体の大蛇を見て手遅れを察するオルティ。

 カミーユは既に巨体の大蛇の中だ。

 すると、オルティの存在に気づいた帝が振り向く。


「貴様か。武将達はどうした?」

「今頃、うちの仲間が相手してるよ。」

「そうか。まぁ良い。丁度、試し相手が欲しかった事だ。」


 足止めが出来なかった武将達を咎める様子はない。

 そのお陰で、巨体の大蛇を試せるのだから。

 早速、帝は巨体の大蛇へと指示を出す。


「やれ。」


 その指示に従うように、一体の巨体の大蛇が吠える。

 すると、それに答えるようにオルティの下の地面が浮き上がる。


「おっと。」


 その地面は、複数の欠片となって落ちていく。

 そこにいるオルティを飲み込むように。

 しかし、オルティはそれを足場に上へと目指す。


「流石。あの時と変わらぬ威力なこった。」

「余裕だな。それだけでは終わらぬぞ?」


 帝が笑うと同時に、一体の巨体の大蛇の口がオルティに向く。

 そして、先程と同じように吠える。


「知ってるさ。」


 次の瞬間、巨体の大蛇の後ろから大きな津波が現れる。

 その津波は、オルティを襲うように襲いかかる。

 それに対し、オルティはパドルを振るう。


「道を開けな…っと。」


 その一振で、津波を左右に分ける。

 すると、オルティを避けるように津波が過ぎていく。


「良いぞ良いぞ! ほら、次だ!」


 今度は、別の巨体の大蛇が吠える。

 すると、地面から沢山の樹が生えて四方に拡散。

 その迫り来る樹を、オルティがパドルで払う。


「どうした? こんなもんかい?」

「言われんでも、期待に添えてやろう!」


 オルティが煽るまでもなく、次の巨体の大蛇が吠える。

 すると、オルティを飲み込むように地面からマグマが吹き荒れる。

 それをオルティがパドルで払うも…。


「こんなもので…いや、上かなっ。」


 上を見ると、マグマが吹き飛ばした土や樹が降ってくる。

 それらは、全体をマグマで覆っている。


「気づけたなら、こっちのもんさっ。」


 落ちてくる瓦礫を、パドルで吹き飛ばす。

 落ちてくる前に気づけば、対処は可能だ。

 しかし、そんなオルティへと巨体の大蛇が吠える。


「なら、一度にはどうかな?」


 パドルを払ったオルティに、先程の津波が帰ってくる。

 更には、再び浮いた地面や樹やマグマも現れる。

 そして、今度は一斉にオルティを襲う。


「同じ事さっ。何度来てもねっ!」


 それでも、それらの物をまとめて払うオルティ。

 何がどのように来ようが、オルティには関係ないのだ。

 そうして、朽ちた樹の上に着地する。


「どうにかなったけど、こりゃ酷いな。」


 その目に映るのは、荒れ狂う大地だ。

 見渡す限りの地面は崩壊。

 その間からは、マグマが走る。

 そこから伸びる樹は、朽ちても尚伸びる。

 そして、その周辺の水場には荒々しく津波が走る。

 その大地はは、もはや人が立ち入れる場所ではない。

 この光景を見た帝が宙に浮いて笑う。


「どうだ? こいつさえいれば、この程度の大陸など一瞬だ。」

「知ってる。以前見たからね。あの時は、これに吹雪とか雷やらも混ざってたからまだマシな方だけど。」


 この光景は、以前に戦った時に見慣れたものだ。

 今更、驚くような光景ではない。

 しかし、これでもまだ足りないと言うのだ。

 それには帝も同意する。


「確かに。それが無いのは口惜しいか。しかし、これでも充分やってのけるだろう。」

「残念だけど、うちらがさせないけどね。」

「ほう? なら、見せて貰おうか。さぁ行け!」


 帝が巨体の大蛇へと指示を出す。

 しかし、反応はない。

 その様子に、帝が疑問を持つ。


「ん? どうしたというのだ?」


 帝が巨体の大蛇を見る。

 その顔は、疲れたように項垂れている。

 まるで、魔力切れを起こしたかのように。


「魔力が切れた? 何故だ。無限とも言えるバッテリーを与えたというのに。」

「はてさて、何ででしょうねぇ。」

「ん? 何か知って…いや、貴様の仕業か。」

「それも、さぁね。」


 しらばっくれるオルティ。

 答える義理は無い。

 それでも、帝が原因に気づく。


「その仕草からして、何かしたのは間違いない。しかし、奴は近づきもしていない。ならば、原因はバッテリーの方だな?」

「さあて。彼女を物扱いするあんたに言う気は無いよ。」

「つまり、当たりと。ならば、原因を見つけて取り除くまでっ。」


 オルティに無理なら、最初から仕組まれていたと考えるのが普通だ。

 その原因さえ分かれば、取り除く事が出来るだろう。

 そうして、カミーユの下へと向かう帝だが…。


「入れ替え。」

「ぬうっ!?」


 オルティの魔法で、帝とオルティの場所が入れ替わる。

 それにより、オルティへと迫る事となった帝へとパドルが振るわれる。

 それを受けた帝は、大きく後ろへと滑る。

 そして、下の樹へと着地したオルティがパドルを構える。

 

「うちを無視して出来るとでも?」

「ぐうっ。ならば、貴様を倒して向かうまでだ。」

「やってみな。さぁおいで。遊びの時間だよ。」


 そう言いながら、空間をなぞるオルティ。

 すると、なぞった箇所が裂ける。

 そして、その箇所から兎のようなものが顔を出す。


「遊ぶのー?」

「そう、遊びの時間だよ。」

「わーい、やったー!」


 その兎のようなものが、空間から飛び出す。

 そのまま楽しそうにオルティの周りを跳ねる。

 すると、オルティの腕へと着地する。


「装身。」


 その言葉と共に、兎とパドルが一つになり槍へと姿を変える。

 そうして出来た槍をオルティが構える。


「さて、暴れようか。」


 そう言いながら、前へと出るオルティ。

 その間、周りの空間が槍へと集束されていく。

 それにより、集めた空間にかかるエネルギーが槍の力へと変わる。

 しかし、それを見た帝も動く。


「すぐに終わらせるっ。雷よ!」


 迫るオルティへと、雷を放つ帝。

 目では追いつけない程の速さの雷が飛んでいく。

 それでも、雷を槍で払いながらオルティは突き進む。


「そんなんじゃ、止まってあげないけどっ?」

「ぬかせっ。雷よ!」


 帝が雷を前方へと溜める。

 そして、その雷でオルティの槍を受け止める。

 そうしてぶつかり合う雷と槍。


「口だけか?」

「そっちこそっ。ほらっ、拡散しなっ!」


 その言葉と共に、槍先に溜まった空間が広がる。

 その溜めた空間が、力となって放出される。

 それを受けた帝は、後ろへと吹き飛ぶ。


「ぐうっ。まだまだっ!」


 それでも、宙で耐えたと同時に雷を放つ帝。

 今度は、複数の雷がオルティへと迫る。


「よっと。」


 その雷を避けていくオルティ。

 時には槍で払って雷を防ぐ。

 しかし、その隙に帝が大きな雷の塊を作る。


「貰った! 雷の竜よ来たれ!」


 そう言いながら、竜の形をした雷が駆ける。

 その竜の雷は、真っ直ぐにオルティへと向かう。


「こいつを受け止めれるかな?」

「その必要は無いけどねっ。」


 そう言いながら、槍を投げるオルティ。

 その槍は、雷の竜を貫いて真っ直ぐに飛ぶ。

 そして、その先にいる帝へと向かうが…。


「はっ。避ければ良いだけだろう。」


 何も、真正面から受ける必要はない。

 それを避けた帝の横を槍が抜ける。

 それと同時に、帝とオルティが入れ替わる。


「入れ替え。」

 入れ替わったと同時に槍を掴むオルティ。

 そして、再び帝へと槍を投げる。


「そう嫌がらないでって、ねっ。」


 投げた槍は、帝を目指して飛んでいく。

 それに対して、帝が雷を手に溜める。


「断るとも。」


 その槍へと、雷で受け止める帝。

 すると、一気に距離を詰めたオルティが槍を掴んで押し込む。

 しかし、それを見た帝が笑う。


「かかったな。雷の竜よ!」

「なっ。」


 溜めた雷を竜の姿へと変える。

 そして、その竜の口でそのままオルティを襲う。

 この距離では逃げれない。

 それでも、オルティが笑う。


「んてねっ。」


 魔法で、竜との距離を伸ばすオルティ。

 そんなオルティの目の前で、竜の口が閉じる。


「残念だったね。」

「哀れな。読んでおるさ。」


 その言葉と共に、雷の竜を貫くように新たな雷が現れる。

 雷の竜は、視界を遮る為に出したものだ。

 それでも、オルティが槍の先に溜めた力を放つ。


「哀れだね。読んでるよ。」


 放った力は、一直線に飛んでいく。

 溜めたエネルギーが、ビーム状に飛んでいく。

 その力が、雷を払い帝へと向かうが…。


「何を読んでいると?」


 横に飛びでた帝が、その力を避ける。

 それと同時に、オルティへと雷を放つ。


「それはこっちの台詞かなっ。」


 その雷を払ったオルティは、魔法で距離を縮める。

 それに対して、帝はもう片方に溜めていた雷を放つ。


「はっ!」「はっ!」


 そのままぶつかり合う両者。

 お互いの力をぶつけるも、大きく弾けて吹き飛ぶ。


「やるねぇ。」

「まだだっ。魔獣化!」


 その身を獣へと、かつ雷をその身で纏う帝。

 それと同時に、その姿がかき消える。

 そんな帝は、あちこちに姿を現しながらオルティへと迫る。


「クラエッ!」


 どこからともなく現れた帝が、オルティへと雷を放つ。

 それに気づいたオルティは、その方へと槍を振るう。


「ハッ!」

「くっ。」


 なんとか受ける事が出来た。

 それでもすぐに、帝の姿が消える。

 それと同時に、空中のあちこちで雷が弾ける。

 そして、その度に雷がオルティを襲う。


「ほっ、はっ、よっと。」


 軽いステップで避けていくオルティ。

 避ける事自体は難しくない。

 すると、槍の中の兎がその光景を見る。


「きゃっきゃっ、綺麗だねっ。」

「そうだねぇ。っと。」


 会話しながらも、避け続けるオルティ。

 兎と一緒に、この光景を見る。 

 そんなオルティの背後に帝が現れる。


「ズイブント、ヨユウダナ?」


 そうして、再び雷を放つ帝。

 しかし、寸前で気づいたオルティが槍を振るう。

 そうして受け止めたオルティが笑う。


「懐かしいね。昔を思い出すよ。」

「シラン。イチイチオボエテナドイナイッ。」

「ふーん。つまり、それぐらい悔しかったと。」


 その言葉に、眉をしかめる帝。

 すると、一度下がって距離を取る。

 そして、一気に溜めた雷を解き放つ。


「オボエテイナイト、イッテイルダロウッ!」


 図星なのだろうか、怒りのままに雷を放つ帝。

 次の瞬間、帝とオルティが入れ替わる。


「ほい、入れ替わり。学ばないねぇ。」

「ソッチガナ。」

「ん?」


 その言葉に疑問を持つオルティ。

 次の瞬間、後ろから熱波に気づく。


「まさかっ。」


 振り向くと、巨体の大蛇の口に溜めっている魔力の塊に気づく。

 一つの首からとは言え、その大きさは凄まじい。

 そして、それに気づいた時には既に放たれていた。


「ちょおっ!?」


 咄嗟に、その魔力の光線へと槍を振るうオルティ。

 それを受け止めるも、耐えるのに必死で動けない。

 そんなオルティへと、帝が雷を溜める。


「オマエノイレカエハ、ツカッタスグニハツカエナイノダロウ?」

「はっ、正解っ。」


 オルティへと雷の竜を放つ帝。

 前には魔力の光線で、その後ろからは雷の竜。

 前後からの挟み撃ちだ。


「やるじゃん!」


 それでもオルティが槍を振るう。

 それにより、魔力の光線を反射し後ろの雷の竜へとぶち当てる。


「どう? こっちもやるもんでしょ?」

「アァ。デハ、コレナラドウカナ?」


 帝の声と同時に、光線を受けた雷の竜が砕ける。

 すると、その砕けた雷の竜が複数の矢となって四方に分かれる。


「イカズチのヤヨ!」


 複数の雷の矢がオルティへと迫る。

 それに対して、オルティが槍を振るう。


「今更その程度で!」


 槍にぶつかった雷の矢は、あっさりと霧散する。

 と思いきや、散った雷が四方に分かれていく。


「ソノテイドガナンダッテ? イカヅチノアミヨ!」


 そうしてオルティを囲ように分かれた雷から線が伸びていく。

 その雷の線は、オルティへと襲いかかる。


「くっ。流石にきついけどっ。」


 それでもオルティは、槍で大きく振るって雷を払う。

 すると、今度は至るところに雷が散らばっていく。


「ヤルナッ。デモ、モウオシマイダ! ナニセ…。」


 散らばった雷同士が繋がっていく。

 そして、牢のような姿に変わる。


「フセグコトナドデキナイノダカラナァ! イカヅチノロウヨ!」


 前後左右、あらゆる角度から雷が迫る。

 もはや、槍で払うどころではない。


「ははっ。やるじゃん。」


 どうにもならない状況に、オルティは笑うしかない。

 そんなオルティを巻き込むように、四方からの雷がオルティを貫く。

 その光景に帝が笑う。


「ヤッタカ。」


 あれほどの雷を受けたのだ。

 無事では済まないだろう。

 そう思った次の瞬間、煙の中から鎖が伸びていく。


「魔装、アチェット・コーツ。」


 その言葉と共に、煙の中から現れるオルティ。

 その手からは、一本の鎖が握られている。


「そんじゃま、こっちも本気で行きますか。」

「行け行けゴーゴー!」


 鎖を持った手を振ったオルティが前に出る。

 それと同時に、鎖の先を帝へと投げつける。


「おらっと。」

「ハッ。」


 それを避ける帝。

 すると、鎖がその横を抜ける。

 そんな帝をオルティが見る。


「どうして避けるのさ。」

「ソレニフレルト、ソンザイガコテイサレルノダロウ? ウケルハズナドナイ。」

「それはまぁそうなんだけどね?」


 触れた相手を、その場に固定する鎖。

 少し触れただけで、終わってしまうような代物だ。

 そんなものに、わざわざ触ってくれはしないだろう。

 それならば、当たるまで振れば良い。


「それなら、こっちから当てに行くよっ。」


 そう言いながら、再び鎖の先を投げるオルティ。

 すると、鎖が伸びながら帝へと向かう。


「オソイナ。」


 それでも、軽々しく避けられてしまう。

 やはり、雷相手に投擲の速度は敵わない。


「ヨウハ、フレナケレバイイダケダ。」

「それでも、前回のあんたは負けたけどね?」


 その言葉と共に、通過した鎖が方向を変える。

 そうして、帝を後ろから襲いかかる。


「クドイッ! イカズチヨ!」


 その鎖を避けたと同時に雷を放つ帝。

 それに対して、オルティが反対の方の鎖を掴んで振るう。

 すると、それに触れた雷が消える。


「その程度かなっ?」


 そのまま、雷を消した方を投げるオルティ。

 その鎖を帝が避けようとするが…。


「キエタ!?」


 帝の前で、鎖の先が消えたのだ。

 すると、帝の横で鎖の音が聞こえてくる。


「ヨコカ!」


 その鎖の音に、急いで飛び退く帝。

 その直後、どこからか現れた鎖が帝の近くを通る。

 そして、また鎖の先がどこかに消える。


「クッ、ドコカラダッ。」

「後ろかな?」


 その言葉通り、帝の後ろから鎖が現れる。

 そして、また鎖の先が消えてしまう。


「さてさて次は、何処でしょう。」

「クッ、ナメヤガッテ。イカズチヨ!」


 このままだと、何も出来ないと悟ったのだろう。

 隙を見つけた帝が、オルティへと雷を放つ。

 しかし、どこからか飛び出した鎖が雷を消す。

 そうしてまた、何処かに鎖先が消える。


「あらら、残念。」

「クソッ。」


 そうしている間にも、鎖が帝へと襲いかかる。

 消えては現れての繰り返し。

 しかも、通った鎖は残っている。


「クッ、ニゲバガッ。」


 逃げた先には、鎖が待ち受けている。

 それを避ける先にも鎖。

 そして、帝が逃げる度に鎖が増えていく。

 その度に、逃げる場所が減っていく。

 そんな帝の背後に、オルティが現れる。


「こっちだよ。」

「ナッ。」


 急に現れたオルティは、反対の方向の鎖を振るう。

 それに対して、帝が光速で鎖の外へと逃げていく。

 それを見たオルティは、鎖が走る真ん中に着地する。


「ねぇ、驚いたでしょ。前回の戦いでは見せなかったもんね。」

「クッ、ダカラシラヌトッ。」

「あれ? まだしらばっくれるんだ。そりゃそうか、戦いが終わるまで待ちぼうけだったもんねぇ。」


 触れただけで戦えなくなる。

 そうなれば、戦うどころではない。

 それを、前回の戦いで目の前の帝が受けてしまったのだ。

 悔しくて何も出来ない惨めさで、記憶の隅に追いやったのだろう。


「シュミガワルイチカラダ。シカシ、ウケナケレバモンダイハナイ。ヨケツヅケレバ、イズレショウキハアラワレル。」

「へぇ、じゃあやって貰おうじゃん? ほい、入れ替えっと!」

「ッ!?」


 オルティの魔法で、帝とオルティが入れ替わる。

 オルティは走る鎖の外。

 そして、帝は鎖の中。

 そうして、オルティが何処からか現れた鎖を掴む。


「逃げるもんなら逃げてみなっ。ほらっ。」


 そう言いながら、鎖を引っ張るオルティ。

 それに合わせて、鎖が一つの塊になろうとする。

 それにより、鎖同士の隙間が小さくなっていく。

 更には、小さくなるのに合わせて空間そのものが帝を押し潰す。


「どうしたんだい? 避け続けるんじゃないのかな?」

「クソガアッ! フザケルナーーーッ!」


 怒りのままに、雄叫びを上げる帝。

 それに合わせて、体中の雷が解き放たれる。


「コレイジョウ、ヒトゴトキニ、ナメラレルワケニハイカナイッ!スベテマトメテキエサレーーーーー!」


 叫ぶと同時に、雷の威力が上がっていく。

 そして、迫る鎖を押し退ける。

 そのまま押し続けると、遂に鎖を吹き飛ばす。


「まじかっ。結構頑丈な筈だったんだけどねぇ。」

「フハハッ。ザンネンダッタナッ。コレゾショウキ! ミツケタリィッ!」


 そう叫びながら、オルティへと突っ込む帝。

 オルティには、防げる程のの鎖は無い。

 それでも、避けたオルティが鎖の塊へと着地する。


「勝機を見つけたのは、こっちの台詞っ。」


 そう言いながら、オルティが帝へと鎖を放つ。

 しかし、帝は呆気なく避けてしまう。


「オソイッ、ソノテイドノクサリ。コワクモナントモナイ。」

「それはどうかな?」

「ナニッ?」


 鎖を克服されたと言うのに、オルティは余裕な表情をしている。

 それを見て疑問を持つ帝の後ろへと指をさす。


「う、し、ろ。」

「ウシロダト?」


 その方を素直に見る帝。

 すると、後ろの巨体の大蛇へと鎖が絡まっているのが見える。


「マ、マサカッ。」

「そのまさかだね。」


 それに気づいた二人の前で、巨体の大蛇に絡まる鎖が伸びていく。

 それだけでなく、至る所から鎖が現れる。

 そして、それらが巨体の大蛇に絡まると大きくなっていく。


「ヤ、ヤメロ! セッカクテニイレタチカラガ!」

「おっと。他所の心配をしている場合かな?」

「ナッ、シマッ…。」


 気づいた時にはもう遅い。

 帝の体に鎖が巻き付く。

 そして、巨体の大蛇のように身体中に鎖が巻き付いていく。


「カアアアウオアアイッ。」

「どうだい? 久し振りの鎖の味は。」

「ウフアエウアッ。ハアエ!」

「離せと言われて、離す奴がいるかい?」


 鎖に絡まれた体は、指一つ動かせない。

 動かせないと言うより動かない。

 まるで、動くというものが存在しないかのように。


「あんたの負けだよ。帝。前回は生かしたけど、今回はそうはいかない。前回、邪魔をした大蛇もあの様だからね。それじゃ、人間を舐めた事を後悔しながら散ってくれな。」

「マアアッ! マアアエウ!」

「それじゃ、さようならってね。」


 その言葉と共に、帝に絡む鎖が動き出す。

 片方の先から片方の先へと滑っていく。

 その度に、鎖が帝の体を擦っていく。


「コオエイオ!」


 当然、この程度では終わらない。

 次第に鎖の速さが速くなる。

 その度に、鎖が熱を帯びていく。

 そして、帝の体を焼き斬っていく。


「コオエイオエッ。コオエイオエーーーーッ!」


 そう叫んだ直後、帝の体が複数に裂ける。

 そして、硬直したままの形で四方に散らばる。


「さようなら。古き思い出と一緒にね。」


 そう言いながら、帝へと背を向けるオルティ。

 そんなオルティの近くに、三つの影が降り立つ。


「やぁオルティ。帝は倒したかい?」

「倒したばっかだよ。フィーちゃんが来る前に、帝と大蛇の動きを止める。無事に完了って事で。」

「りょーかい。それじゃ、次はとうとうカミーユちゃんの救出と行きますかね。」


 フィー、オルティ、キュリア、リュノ。

 遂に揃った四人が、鎖に捕らわれた巨体の大蛇を見上げる。


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