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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
182/283

死闘の果てに

「…っ!」「はあっ!」


 何度目かの剣のぶつかり合いが起こる。

 しかし、今度は互角だ。


「力が上がったか。では、お手並み拝見と行こうかっ。」


 笑いながら、もう片方の剣を振るうオーディル。

 それに対し、接している方の剣を流すように一回転して相手の横へと抜ける。

 そうして、もう片方の剣を避けると同時に剣を振るう。


「…っ。」「ふんっ。」


 その剣を、オーディルが剣で防ぐ。

 そこから数回の打ち合い。

 そして、オーディルを後ろへと押し込む。


「…っ!」


 相手に隙が出来た。

 そこに向けて、剣を振るうフィーだが…。


(利き手には気を付けろ。)


 その言葉が思い浮かぶ。

 押し込んだのは、人工聖剣の方だ。

 次の瞬間、強烈な一閃がフィーを襲う。


「ふんっ!」

「っ!?」


 見えない程の激しい一撃。

 咄嗟に気づいたフィーが剣で受け流す。


「フィーさん!」


 心配する声が聞こえてくる。

 事前の情報が無ければ危なかっただろう。

 それでも、体勢を大きく崩してしまう。


「よくかわしたな。しかし、それだけだっ!」


 その隙を狙ったオーディルが剣を振るう。

 それをフィーが逸らす。

 すると、一回転した相手がもう片方の剣を振るう。

 そして、それもフィーが逸らすが…。


「では、これはどうかなっ!」

「っ!」


 今度は、振り下ろしによる一閃。

 咄嗟にそれを、フィーが肩で担いだ長剣で受ける。


「ほう。そう来るか。」


 激しい衝撃が肩にのしかかる。

 それでも、相手の剣は止めた。

 今度はこちらの番だ。


「風よ。」


 溜めた風を一気に放つ。

 すると、爆発的に放たれた風がオーディルを押す。

 そこへ向けて踏み出すフィー。


「この程度!」

「…っ!」


 体勢を崩しつつも、迫る剣を自身の剣で防ぐオーディル。

 そうしてすぐに、その剣を払う為にもう片方の剣を振るう。


「はっ!」

「…っ。」


 その剣を、一回転して避けるフィー。

 しかし、横ではなく後ろへ跳んでフワリと浮く。


「氷よ。」

「なっ。」


 浮いている間に、氷の魔法を放つフィー。

 それにより、相手を氷に閉じ込める。

 そして、地面に着いたと同時に前へと踏み出す。


「…っ!」


 前に出たフィーは、凍った相手へと長剣を振るう。

 その長剣は、氷ごと相手の胴体を叩き斬る。


「ぐうっ。」

「やった! フィーさんが!」


 ついに、オーディルへと傷を負わせる事が出来たのだ。

 そんなオーディルは、後ろへと大きく滑る。

 その口に、笑みを浮かべながら。


「そうだ。それで良い。」


 斬られたのにも関わらず、余裕を崩さない。

 それどころか、嬉しそうに見える。


「それでこそ、斬りがいがあるというもの。」


 そう言いながら、全身から瘴気を漂わせるオーディル。

 吹き荒れるように漂う奥で、口の端を上げる。


「期待に答えてくれよ。限界超過!」


 次の瞬間、瘴気がオーディルに収束していく。

 そして、その瘴気がオーラと化してオーディルを包む。


「闘気とは、固める程に強くなる。こんな風になっ!」


 先程よりも速い速度で駆けるオーディル。

 そして、フィーに向けて剣を振るう。


「おらっ!」

「っ!」


 その剣を受けるフィー。

 それでも、すぐに弾かれてしまう。


「そこだっ!」


 その隙を狙っての一撃。

 それでも、フィーが無理に剣を戻して受け流す。


「貰った!」


 流したばかりのフィーへと、剣を叩き込む。

 それを受けたものの、後ろへと吹き飛ばされてしまう。

 そして、そこを目掛けてオーディルが剣を振るう。


「聖剣よ!」


 その剣の先から、斬撃が飛ぶ。

 その斬撃を、フィーが横に避ける。


「良く受けたものだ。」


 一連の攻撃を避けられたのだ。

 それでも、楽しそうに笑っている。

 それを見たフィーは、オーディルの真似をする。


「全身圧縮。」


 その言葉と共に、自身の体から出る聖火が体へと収束される。

 そして、先程のオーディルのように全身がオーラに包まれる。


「まだ強くなるのかっ。良いだろうっ!」


 そんなフィーへと駆けるオーディル。

 そして、先程と同じように剣を振るう。

 その剣を、フィーが逸らす。

 更に来るもう片方の剣も逸らす。

 そうして、今度はフィーが斬りかかる。


「…っ!」

「ぐっ。」


 それを相手が防いだ所で一回転。

 それによる強い一撃で、相手の防御をこじ開ける。

 そして、その隙を目掛けて踏み込んでからの一振り。


「させんっ!」

「っ。」


 そんなフィーへ、強力な一閃を振るうオーディル。

 しかし、咄嗟に気づいたフィーが逸らす。

 そうして、剣を止めた代わりに長剣を振るう。


「…っ。」

「ぐっ。」


 その長剣でさえも止められる。

 それでも、それを察したフィーが勢いそのままに長剣を振り下ろす。

 そして、その勢いを利用したフィーが浮遊する。

 宙へ浮いたフィーは、体を回すように長剣を振るう。


「…っ。」

「ぐうっ。」


 それを受け止められるも、更に体を捻って長剣を振るう。

 それを止められても、また長剣を振るうの繰り返し。

 そして、相手の剣を押し始めた所で高速の横回転。

 その度に、何度も何度も長剣を叩き込む。


「まずいっ、腕がっ。」


 腕に限界が来たのだろう。

 それを察したフィーは、最後に大きな一振を叩き込む。

 そして、着地した瞬間に前へと踏み出す。


「っ。」


 力を込めてからの一振り。

 それにより、今度こそ相手の剣を振り払う。

 その隙を、フィーは逃さない。


「っ!」


 まずは、相手の胴への一振り。


「ぐっ。」


 更に、そこからの一回転による一振り。


「ぐうっ。」


 そうして、後ろへと滑る相手へと踏み出してからのジャンプ斬りを叩き込む。


「があっ!」


 それを受けた相手が吹き飛ぶ。

 それでも相手は、笑いながら立ち上がる。

 そうして再び瘴気を放つ。


「限界超過!」


 更に闘気を強めた相手が迫る。

 そして、一気にフィーを斬り飛ばす。

 それを剣で受けるも下がっていくが…。


「全身圧縮!」


 負けじと、闘気を強めたフィーが駆ける。

 そして、剣で受けたオーディルを吹き飛ばす。

 それでもすぐに、オーディルは前に出る。

 そして、フィーもまた前に踏み出す。


「っ!」「はあっ!」


 両者の剣が激しくぶつかる。

 すると、両者が衝撃で押されて後ろへと滑る。

 どうやら、互角の力のようだ。

 そこから更に、互いが闘気を強める。


「全身圧縮!」「限界超過!」


 闘気を強めたと同時に駆ける両者。

 まずは、オーディルが剣で斬っていく。

 その振りは、一つ一つが一閃級だ。

 それでも、それを防いだフィーが剣の振りからの突きを繰り出す。

 それを防いだオーディルは、フィーへと剣を振るっていく。

 それを逸らしたフィーは、長剣を交えて斬っていく。

 そんな、押して押されての攻防が続く。


「そうだ! これなのだ! 剣を振って無駄なものを削ぐのにも限界が来ていた。そこで私は考えた。剣を削ぐには、何かにぶつけてこそだと。削いで、己の力を研ごうと。」


 そうして、語りながら攻防を続けるオーディル。

 そもそも、何かを研ぐには削る物が必要だ。

 しかし、どんな物でも良いわけではない。


「しかし、どんな物もこの一閃で真っ二つだ。これでは、研ぐどころではない。だから私は探していた。この力、技、全てを削いで、究極の一振へ至らしてくれる者を。」


 自分と互角にぶつかり合って、己の無駄な物を削いでくれる相手。

 そんな相手をずっと探していた。

 しかし、自身のあまりの力にその相手は見つからない。

 そのせいで、その望みは叶わない。

 だから、自分と打ち合ってくれるフィーの存在が嬉しいのだ。


「感情はとうに削いだ筈。しかし、胸の奥底から湧いてくる。お前の剣が、私を昂らせる!」


 長年求めた相手がそこにいる。

 その者との打ち合いを、心の底から楽しむ。

 そうして、己の力を研いでいく。

 しかし、それは長くは続かない。


「さぁ! 我を剣の道の先へ…ぐうっ。」


 突然、オーディルの胸が激しく痛む。

 そして、胸の傷から瘴気が漏れる。

 そうなると、外に流れる瘴気も減ってしまう。


「まだだ! まだ終わらせる訳にはいかん! まだ私を戦わせてくれ! 魔獣化ぁっ!」


 その言葉と共に、体が大きくなり獣の姿となっていく。

 更に、胸の傷が消えていく。

 失った瘴気が戻っていく。

 しかし、それだけではない。


「あ、足がっ。」

「体がいう事をきかないっ。」


 生徒会のメンバー達の体の力が抜けていく。

 そのせいで、地面に膝を着いてしまう。

 その周りでは、上空の魔物達が落ちては地面に叩きつけられていく。

 全ての生き物が、オーディルの近くにいるだけで脱力する。


「コノスガタニナルト、マワリノモノガヨワクナル。ダカラ、ナリタクハナカッタノダガナ。オマエハ、ソウジャナイコトヲイノロウ。。」


 強い者との打ち合いを望んでいる。

 それなのに、相手が弱くなると意味がない。

 まさに、オーディルの目的に反する力だ。

 それだけでなく、体の震えも止まらない。


「まずいね。このまま…意識が…飛びそうだよ。」

「体が…持ちません。」

「しっかりして。耐えるのよ。フィーさんの勝利を…見届けるのよ。」


 飛びそうになる意識に耐える生徒会メンバー。

 それでも、フィーの勝利を見届けるの為に耐えていく。

 そうして、意識をはっきりと満たせるが…。


「無茶をするねぇ君達。」

「ここから先は、超常の戦い。死にたくなかったら後ろにいな。」


 生徒会メンバーの前に、キュリアとリュノが立つ。

 そして、庇うように立ち塞がる。


「貴方…達。あれ、体が。」

 

 すると、生徒会メンバー達の震えが止まる。

 この二人が守ってくれたのだろう。

 その様子を見たキュリアがフィーを見る。


「この子達は、私達が守るからね。だから、安心して戦ってね。。」


 この二人がいれば大丈夫だろう。

 それを見たフィーは、オーディルと向き合う。

 そして、剣を構えるフィーをオーディルが見る。


「ソレデハツヅキヲハジメヨウカ。セッカクコノスガタニナッタノダ。スグニマケルヨウナコトハシナイデクレヨ。」


 そう言いながら、飛び込んでくるオーディル。

 それと同時に剣を振るう。

 それをフィーが受けるも、大きく後ろへと滑る。


「ドウシタ? コノテイドモウケレナイノカ?」


 そうして、再び飛び込んで剣を振るう。

 それを避けたフィーは、相手の横へと剣を振るう。

 それでも、簡単に弾かれてしまう。

 どうやら、相手の強さが一段と跳ね上がったようだ。


「ソンナモノジャナイハズダ。サァ!」


 こちらを煽るように、フィーへと剣を振るうオーディル。

 それを、フィーは後ろにフワリと跳んで避ける。

 それと同時に、フィーは前へと踏み出す。


「っ!」


 相手に迫ると同時に剣を振るう。

 それでも攻撃は弾かれる。

 それでも剣で叩き斬る。


「ソウダ。ソノチョウシダ。デハ、コチラモイコウカ。」


 攻撃を続けるフィーへと剣を振るう。

 それをフィーが逸らすも、剣が大きく弾かれる。


「モラッタ!」


 弾かれ動けないフィーへと、剣を振るう。

 それに対して、フィーは前に出ると同時に回転して避ける。

 そして、長剣を相手の胴へと叩き込む。


「グウッ。イイイチゲキダ。ソウデナクテハナ!」


 そうしてまたフィーへと剣を振るう。

 それを避けたフィーは、再び長剣を叩き込む。

 それと同時に、フィーは前へと踏み出す。


「っ!」


 そのまま、相手の胴へと一突き。

 すると、その剣先が相手の胴を貫く。


「イイゾッ!」


 そんなフィーへと剣を振るうオーディル。

 それを避けるも、すぐに傷口が塞がってしまう。

 それでもフィーは、再び前に出る。


「…っ!」


 フィーが再び斬る。

 すると、今度は剣が通る。

 それでもすぐに傷は治る。

 そうして、すぐに反撃に出るオーディルだが…。


「ソコダッ…グウッ。」


 振ろうとした瞬間、その場に膝を着いてしまう。

 そして、肩で息をしだす。


「キズハナオル。シカシ、ショウキノホウガゲンカイカ。」


 傷は治っても、斬られる度に瘴気は出る。

 つまり、斬られる度に弱くなる。

 それでもオーディルは笑う。


「マアヨイ。ショウキガモレナケレバ、ソレデジュウブンダ。」


 そうしてまた立ち上がるオーディル。

 しかし、これで相手は無敵ではない。

 斬ればいつかは倒れるだろう。

 そうしてまた、両者がぶつかり合う。


「コレデ、タガイノジョウケンハオナジ。エンリョナククルトイイ。」


 そう言って、剣を振るうオーディル。

 それを避けたフィーが剣を振るう。

 それを避けたオーディルが剣を振るう。

 どちらかが当たれば終わる。

 そのやり取りが続く。

 まさに、死闘と言って良いだろう。


「ハッ!」


 死を掻い潜りながらの攻防が続く。

 しかし、力は相手の方が上だ。

 次第にフィーが押されていく。

 すると、それを見たセイラが叫ぶ。


「頑張れフィーさん! 負けないで!」


 いてもたってもいられなかったのだろう。

 セイラが声援を送る。

 すると、他の生徒会のメンバーも叫ぶ。


「貴方なら勝てるわ!」

「思いっきりやっちゃって!」

「私達の分も! お願いします!」


 生徒会のメンバーの声援が、フィーへと届く。

 それを聞いたフィーは、しっかりと剣を握る。

 そして、前へと踏み出す。


「…。」


 一気に迫るフィー。

 しかし、そんなフィーに剣が迫る。

 それでも、その剣を意地で逸らす。


「…いっ。」


 そこからの踏み込み。

 そして、相手の腕を叩き斬る。


「クッ、ウデガ。マァイイ、キキテハノコッテイル!」


 利き手が無事ならまだ戦える。

 そうして、剣を振るうオーディルだが…


「…ないっ!」


 それを、再び意地で逸らすフィー。

 そして、相手の足を叩き斬る。


「グッ、マダダッ。」


 それでもまだ、オーディルは剣を振るう。

 それに対して、真正面から剣を振るう。


「負けないっ! 私達は、一人じゃないからだ!」


 そして、相手の剣をはね飛ばす。

 これでもう、相手は剣を振れない。

 そこに向けて、フィーが踏み込む。

 それを見たオーディルが軽く微笑む。


「オミゴト。」


 そうして、オーディルの胴体を叩き斬る。

 瘴気を吹き出しながら吹き飛ぶオーディル。

 そして、そのまま動かなくなる。


「負ける訳にはいかないんだ。私には、共に戦ってくれる友がいるからな。」


 仮面を持ち上げ、生徒会のメンバーを見るフィー。

 すると、生徒会のメンバーは笑顔でこちらを見返す。

 それを見るフィーの横へ、キュリアとリュノが降り立つ。


「それじゃ、後はカミーユちゃんを助けるだけだよん。行けるかい?」

「当然だ。今すぐ助けに行こう。」

「分かったよん。それじゃ、このまま乗り込もう。」


 そうして、仮面を下ろしたフィーが大きな蛇の待つ山を見る。

 後は、そこにいる帝を倒してカミーユを奪還すればおしまいだ。


「待ってろよ。カミーユ。」


 連れ去られた友を助けるべく、フィー達は移動する。

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