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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
179/283

リュノVSメイカーラ

「二人とも、この剣を。」


 二人へと魔法陣が書かれた短刀を投げ渡すキュリア。

 そして、自身の短刀も何処からか取り出す。


「使い方は簡単。近づくだけで発動するからね。」

「それと、オーディルの利き手に注意しろ。人工聖剣の方だ。」

 

 フィーへと助言を与える二人。

 それを聞いたフィーは頷く。

 そして、短刀を構える三人をオーディルが見る。


「何をするか分からんが、もう動いて構わないな?」

「おっと。わざわざありがとねー。それじゃ、行くよん。」


 キュリアの言葉と共に、一斉に駆け出す三人。

 それに対して武将達も駆け出す。

 そうして、三体の武将とぶつかる時だった。


「ワープ、発動だよん。」


 短刀が光り一同を包むように広がる。

 直後、一同が消えていなくなる。

 それから遥か離れた場所にリュノが降り立つ。


「よっと。上手くいったな。」


 遠くに見える王都を見つめるリュノ。

 それにより、ワープの成功を察知する。

 そして、その後ろにメイカーラが現れる。


「ナンダ。タダノワープカ。モシカシテ、ボクタチヲヒキハナスタメカナ?」

「見れば分かるだろ。こっちの方が戦いやすいからな。」


 三体と戦うよりも、一体を相手にした方が楽だ。

 その為に、ワープでそれぞれ別の場所へと飛んだのだ。

 それを聞いたメイカーラがニタリと笑う。


「ヘェ。デモサ、キミモヒトリダヨネ? スウニンデタタカッテモムリダッタノニ、ヒトリデダイジョウブナノカイ?」

「心配どうも。でもな、こっちの方がってのは俺一人でって意味でもあるんでな。」


 先程のリュノの攻撃は、相手に一切通じなかった。

 それでも、一人で戦いたいと言うのだ。

 それを聞いたメイカーラは納得する。


「ナルホドネ。ジャア、エンリョスルヒツヨウハナインダネ?」

「今更だろ。そもそも、一人の方が強いんでね。」

「ソウカイ。ジャア、ホンキデイクネ。シヌジュンビヲスルトイイヨ!」


 そう言いながら、蛇の足で迫るメイカーラ。

 そのまま、リュノへと剣を振るう。

 それを、リュノが斧で防ぐ。


「そんなもんじゃなかったろ?」

「イワレナクトモッ!」


 煽られたメイカーラは、腕を鞭のように振るいだす。

 それにより、剣の速度と威力を上げる。

 

「オラオラッ。アオッテオイテ、ナニモシナイノカイッ?」


 振る度に、速度と威力が上がっていく。

 しかし、次の瞬間リュノが斧を降ろして前に出る。


「はっ、それで止めてるつもりか?」

「ナニッ。」


 そう言いながら、迫る剣を避けていくリュノ。

 そして、迫ると同時に飛び込んで斧を振るう。


「今度はっ、こっちの番っ。」

「ソレハドウカナ?」


 斧が直撃する瞬間、メイカーラが消える。

 そのまま、リュノの横から後ろへと回り込む。


「ヘビノハヤサ、ナメナイホウガイイヨ!」

「くっ。」


 回り込むと同時に、大きく剣を振るうメイカーラ。

 斧を後ろに回して受けるリュノだが、勢いに負けて吹き飛ぶ。


「やってくれるな。」

「マダマダッ、コンナモンジャナイヨッ!」


 その言葉と共に、足を猪の体へと変えるメイカーラ。

 そして、勢いを着けての前進。

 体勢を崩したリュノへと突っ込む。


「クライナッ!」


 その勢いを活かしての剣の一振りがリュノを襲う。

 その剣をリュノが受け止めるが、勢いに負けて後ろへと滑っていく。


「ドウシタドウシタッ! アマリニモカルスギルッ!」

「ぐうっ。耐えられんっ。」


 このまま耐え続けるのは不可能だ。

 なので、リュノは斧で突きを逸らすと共に横へと逃げる。

 すると、メイカーラはそのまま真っ直ぐ駆け抜ける。


「ソレデヨケタツモリカイ?」


 駆ける途中で前足を固定し体を半回転。

 そして、そのまま後ろ足をばたつかせる。


「ナンドヨケテモッ、ムダナノサ!」


 そう叫びながらの前進。

 再びリュノへと襲いかかる。

 それに対して、リュノが斧を構える。


「みたいだな。そんじゃこっちはと。装身っ。」 


 その言葉と共に、斧に黒いものが覆い被さる。

 すると、斧がいかつい見た目へと変化する。

 それと共に、斧の周辺の地面がえぐれる。


「ミタメガカワッタトコロデ!」

「なら、試して見るか? ガンッ!」


 そう言いながら、斧を振るうリュノ。

 それに対して、メイカーラも剣を構える。

 直後、両者が激突するが…。


「軽すぎる。」


 相手の剣を粉砕する。

 そして、相手の猪の体をも砕く。


「ナニッ!?」


 纏う物を失ったメイカーラが地面へと落ちる。

 それでもすぐに、土を纏って別のものに作り替える。


「ムダムダッ! ウシナッタラ、ツクリカエレバイイダケダヨッ!」


 鳥のような鎧を纏い、腕を翼のようなものに作り替える。

 そして、すぐに空へと飛び立ち羽ばたく。


「サァ、ドッチカラセメルデショウカ?」


 リュノの上空を回るように飛ぶメイカーラ。

 そのままリュノの視界から消えると同時に滑空する。


「ザンネン、コッチカラサ!」

「くっ。」


 迫ると同時に、翼でぶつかりに向かう。

 それを何とか避けるも、メイカーラはすぐに空へと飛び立つ。


「ドンナニブキガツヨクテモッ!」


 そう叫びながら、先程のように視界の外から迫る。

 そして、先程のように避けられ空へと逃げる。


「ウケナケレバ、イイダケダヨネッ!」


 斧がどんなに強くても、当たらなければ意味はない。

 実際に、鳥の鎧は無傷だ。

 そうして、再びリュノへと迫るが…。


「要するに、視界の外から来るんだろ?」


 そう言いながら、リュノが飛ぶ。

 そして、そのままメイカーラの背中へと着地する。


「ナッ、ハナレロッ!」


 捕まるリュノを払うべく暴れるメイカーラ。

 しかし、それが止まった瞬間を狙ったリュノが踏みつける。


「おらっ!」

「グッ。」


 更に踏みつける。


「もう一発!」

「グウッ。」


 そこから、勢いよく斧を振り下ろす。


「落ちろ! ガツン!」

「グアアアッ!」


 鳥の鎧を砕かれたメイカーラが地面へと落ちる。

 その目の前にリュノが着地する。

 それを見たメイカーラは、腕を立てて上体を起こす。


「ド、ドウヤッテタイミングを…。」

「この斧でだよ。この斧からは、常に振動が出ていてな。それのお陰で威力は上がるし、お前さんの居場所も分かるって事だ。」


 斧の威力が上がったのは、その振動によるものだ。

 更に、周囲に何があるのかも振動で分かってしまう。

 つまり、常に全ての方位を見ていられるという事だ。


「シカシソレハ、チジョウデノコトダロウ。ナラバ、ツチノシタカラセメルノミ!」


 そう言いながら、今度は角が生えた鮫の鎧を纏う。

 そして、そのまま体を回転させながら土へと潜る。


「コンドコソイバショハッ!」


 回転をして角で掘り進めながら急転回。

 そのまま、地上のリュノの足下へと接近する。

 そうして、大きな口でリュノを襲うが…。


「イナイ!?」


 飛び込んだ先にリュノはいない。

 それどころか、地上のどこにもいない。


「食えるもんなら食ってみな。」


 上空からメイカーラを見下ろすリュノ。

 当の本人は、空高くへと飛んでいたのだ。

 これなら、何処から来られても避けられる。


「クッ。デモ、ズットクウチュウニハイラレナイハズ!」


 そう言いながら、再び地面へと潜るメイカーラ。

 そうして、地面の下を掘り進める。


「オチテキタトコロヲセメル! コレデオワリダ!」


 魔法もなしでは、いずれは下に落ちてしまう。

 そこを狙うメイカーラは、再び地上へと向かう。

 しかし、そんな事も分からないリュノではない。


「良いのか? そんなに空洞を作ってさ。おらッ、ズシンッ!」


 落ちるリュノは、そのまま斧を振り下ろす。

 それと同時に、メイカーラが地上へと飛び出そうとする。

 その直前、重力を伴う土がメイカーラを押し潰す。


「グウウッ!」


 それでも、抵抗を続けるメイカーラ。

 しかし、流れ込む土が押してくる。

 そうして、空いた穴を埋めるように沈む土に飲み込まれる。

 その上に、リュノが降り立つ。


「だから言ったのにさ。」


 土の下で暴れるのなら、土ごと相手を押し潰せば良い。

 高く飛んだ理由は、その為でもあったのだ。

 それでも、これでやられるような相手ではない。


「ソレデカッタツモリカイ?」


 何処からか声がする。

 次の瞬間、地面の土が盛り上がる。

 そして、巨大な人の上体が出来上がる。


「イッテタヨネ? ヒトリノホウガタタカイヤスイト。」


 そう言いながら、胸にあたる場所から現れるメイカーラ。

 そのお腹の下は、巨体の中に埋まっている。


「ソレハ、コチラモオナジコト。コノスガタダト、ホカノナカマヲマキコムカラネ。」


 その巨体から作り出される力は相当のものだろう。

 敵味方問わず、飲み込んでしまうだろう。

 その力を放つ為に、巨体が腕を振り上げる。


「サア、コンドコソオワリダヨ! コンドハオワエヲ、ウメテアゲルネ!」 


 そう叫びながら、上げた拳を振り下ろす。

 そのまま、リュノのいる地面へと激突。

 直後、地面が割れて空へと昇る程の土の波が巻き起こる。

 しかし、それだけでは終わらない。


「ネンニハネンヲ! ソノミガクダケルマデ、ナグッテヤルサァ!」


 そう言いながら、今度は逆の腕を振り下ろす。

 そうして、再び土の波が空へと昇る。

 それでもと、続けてもう片方の腕が振り下ろされる。


「オラオラオラオラオラッ! ツブレテ、クダケテ、コナトナレ!」


 何度も何度も振り下ろされる。

 その度に、土の波が空へと昇る。

 周囲の大地が揺れ続ける。

 地盤ごと地面が大きく動いていく。

 そんな中、リュノが小さく呟く。


「魔装、ダ・ダイン。」


 その言葉の直後、大きな衝撃が土を跳ね上げる。

 そして、巨体を大きく後ろへ逸らす。


「ナ、ナンダ!」


 咄嗟に、衝撃が来た方を見下ろすメイカーラ。

 そこには、奥へと続く大きな空洞が出来ていた。

 その中から、リュノが歩いてくる。


「好き勝手殴りやがって。」

「危なかったなぁ。ご主人。」

「あぁ、お陰で助かったよ。」

「これぐらい、お安いごようってもんさぁ。」


 斧に宿ったものと話しながら出てくるリュノ。

 地上に出ると、大きな巨体を見上げる。

 そして、それに向かって複数の蝙蝠を放つ。

 その蝙蝠を、メイカーラが見上げる。


「ナンダ? コレハ。」


 空に浮かんだ蝙蝠達は、スピーカーのような姿に変貌する。

 そして、そこから一定のリズムを出し始める。

 それを見続けるメイカーラへと、リュノが飛び込む。


「見ている場合か?」

「オット。」


 手を突き出すメイカーラ。

 すると、巨体から土が飛び出し迫る斧を防ぐ。


「タダノオトリカッ。ナラ、ネライハカエナクテイイネ!」


 何もしてこないと気づいたのだろう。

 すぐに、払ったリュノへと腕を振り下ろす。

 それに対して、リュノがの蝙蝠を出す。


「吹き飛べ! ショット!」


 目の前の蝙蝠に向かって斧を振るうリュノ。

 すると、斧がぶつかった蝙蝠が膨らむ。

 直後、蝙蝠の口から飛び出した衝撃が巨体の腕を削る。


「ナッ。デモ、コレグライ!」


 すぐに、巨体の腕を直すメイカーラ。

 そうして再び、リュノへと拳を振り下ろすが…。


「もう一度、飛ぶぞっ!」


 斧を振るうと同時に、斧から衝撃が出続ける。

 そして、その勢いを利用して一直線に飛んでいく。

 そのまま腕を避けると、衝撃の向きを変えて突っ込む方向を変える。


「このままっ!」

「クドイ!」


 先程のように、土を飛ばすメイカーラ。

 今度は、先程よりも沢山だ。

 それに対して、リュノが横へと衝撃を走らせる。

 すると、その勢いで横へと激しく回転。


「うおおおおおおおっ。」


 その勢いで、斧で土を払っていく。

 そうしながらも、メイカーラへと急接近。


「食らえっ!」

「グッ。」


 迫るリュノへと焦るメイカーラ。

 それでも、その口は笑っている。

 直後、横から現れた巨体の腕が斧を止める。


「何っ。」


 流石の斧も、巨体の腕を砕くにはいたらない。

 斧を止められたリュノは、腕を足場に後ろへと跳ぶ。

 そんなリュノを、メイカーラが笑う。


「ザンネンダッタネェ!」

「まだまだっ!」


 それでもリュノは、複数の蝙蝠を展開する。

 そして、順番に蝙蝠を叩いていく。


「ショット、ショット、ショット、ショット!」


 それにより、複数の衝撃が腕へと飛んでいく。

 すると、その衝撃で巨体の腕が削れていく。


「もう一押し! 展開せよ!」


 リュノの言葉と共に、蝙蝠達が輪になるように並んでいく。

 そして、真ん中に一匹の蝙蝠が収まる。

 そんな真ん中の蝙蝠へとリュノが斧を振るう。


「フルショット!」


 斧が真ん中の蝙蝠へと触れた瞬間、全ての蝙蝠から衝撃が出る。

 その衝撃は、一つの塊となって腕へと直撃。

 それにより、その巨体の腕がへし折れる。


「よし。今度こそ!」

「ソレガドウカナ?」


 今度こそ行けると、リュノが衝撃で飛んでいく。

 その瞬間、折れた筈の腕が元に戻る。


「なッ。」


 その腕にリュノが気づくがもう遅い。

 払うように振るわれた腕に直撃し、地面へとはたき落とされる。

 そんなリュノを見て、メイカーラが笑う。


「アハハハハハハッ! ボクノチカラハ、キオクドオリニ、モノヲツクリダスコト。シカモ、ハツドウチュウハ、ズットツクリツヅケルノサ。ダカラ、イクラコワシテモ、スグニモトドオリナンダヨネェ!」

 

 メイカーラは、その場で作り上げている訳ではない。

 以前に記憶した通りに、形成し続けているだけだ。

 なので、壊れても記憶した姿に戻してしまうのだ。

 

「コノ、サイキョウノチカラトボウギョ。コレコソガ、ボクノシンノチカラナノサ! コノチカラガアレバッ、オソレルモノハナニモナ、ナ、ナ、ナ、ナ、ナ、ナーーーーー……。」


 意気揚々と語っていたメイカーラだが、急に動きが止まってしまう。

 その口は、何かを喋ろうと動いているだけだ。

 直後、意識を取り戻したのか大きく息を吐く。


「イッタイナニガ、イッシュンイシキガトンダガ。マサカ、コノオトノセイカ?」

「ちっ、ばれたか。」


 先程から飛んでいる蝙蝠達を見るメイカーラ。

 その蝙蝠から出ている音は、感情を高めた者のそれを更に引き上げ意識を奪う。

 更には、感情を出すほど知能を溶かすというおまけ付きだ。

 あれだけ感情を出せば、当然意識も飛ぶだろう。


「クッ、サイアクナオトダ。シカシ、キカナケレバイイダケダ。ツチノナカニハトドカナイカラナッ。」


 そう言いながら、巨体の中へと隠れるメイカーラ。

 すると、巨体の目が光り出す。

 その目を通して、外の光景を見る。


「トオスノハシカイダケ。コレナラオトハキコエナイ。コレデモウ、マケルコトハナイ!」


 唯一の弱点まで無くしたのだ。

 まさに無敵と言っても良いだろう。

 メイカーラは、再び巨体の腕を振り下ろす。


「オソレルモノハナニモナイ! サァ! コンドコソシヌトイイヨ!」


 そうして、再び地面を殴り始める。

 その腕を、リュノは衝撃で破壊しながら避けていく。

 しかし、すぐに元通りだ。


「こうなると、あいつを出すのも一苦労か。蝙蝠の数を増やすしかないか。」

「あいあいご主人。あれ以上の火力だと、装置の方がもたないってさぁ。」

「そこを何とか出来ないか?」

「残念ながら、そいつは無理ってもんさな。」


 あの衝撃を生む装置にも限界はある。

 いくらでも、引き上げられるものではないのだ。

 そうなると、こちらにはもう打つ手がない。


「なら、攻撃力で突破は無理か。そうなると…。」


 それでも、あの巨体をどうにかするには攻撃力が必要だ。

 腕を削りながらも、必死に対策を考える。

 すると、リュノはある事に気づく。


「そういえば、常に戻るんだったな。あれを、試してみるか。」

「何か、策があるんですかい?」

「まぁな。同じ事をして見るだけさ。」


 そう言って、動き出すリュノ。

 空に飛んでいる蝙蝠を集めていく。

 その様子に、メイカーラが気づく。


「ン? ナニカスルノカイ? トイッテモ、ナニモデキヤシナイダロウガサッ。」


 そう言って、再び拳を振り下ろすメイカーラ。

 その腕を砕かれて避けられるも、すぐに腕は元通りだ。


「イツマデモツカナ? イクラデモ、ツキアッテアゲルヨッ!」


 壊されては戻す。

 そして、すぐに振り下ろす。

 それを何度も繰り返す。

 その行為に限界はない。


「サァサァサァ! ミセテミナヨ! ソレトモ、コレデオワリナノカイ?」


 高揚した気分のままに、今までのように拳を振り下ろす。

 次の瞬間、その腕が激しく崩れ落ちる。


「ナ、ナンダ?」


 その崩れた腕を、咄嗟に見るメイカーラ。

 しかも、その腕は元に戻らない。


「ナニガオコッテルンダ。」


 その腕を見続ける。

 それでも答えは分からない。

 すると、今度は逆の腕が崩れ落ちる。


「ナニガアッ!」


 驚きのあまり、大きく叫ぶメイカーラ。

 当然、その腕も直らない。

 当然、原因は分からない。

 更に、視界が下がっている事に気づく。


「ナニガナニガナニガナニガナニガ。」


 下がっている原因は、巨体が崩れているからだ。

 正確には、巨体の体が削れている。

 その光景を見たリュノが笑う。


「分かんねぇだろうな。そんな場所に閉じこもってたらな。」


 そう呟くも、辺りに響く音にかき消される。

 巨体を削っているその音に。

 その音は、周囲に展開された蝙蝠が発しているものだ。

 そうしている間にも、巨体を削り続ける。


「音は、連続した振動。そいつを攻撃に回せば、こんな事も出来るのさ。」


 そう言いながら、前へと飛び出すリュノ。

 その前では、メイカーラが叫び続けている。


「ナニガナニガナニガナニガナニガナニガナニガッ。」


 混乱のあまり、同じ言葉を出し続けるしか出来ない。

 その間にも、視界は下がっていく。

 そして、目の前へと傾いていく。


「ナニガッ!」


 そう最後に呟いた直後、メイカーラが外へと投げ出される。

 そして、その前にリュノが現れる。


「よう。ようやく会えたな。んじゃ、さようなら。」

「ヒッ。」


 目の前に、リュノが迫ってくる。

 そうしてぶつかる直前、辺りが黒に囲まれる。


「ナッ、ココハドコダ?」


 見渡すも辺り一面が黒に染まっている。

 自分がどこにいるのかが分からない。

 そうして悩んでると、いきなり自分の腕が上がる。


「ウデガカッテニ? ドウイウコトダヨッ。」


 当然、自身の意思で上げてはいない。

 どうやら、何かに引っ張り上げられているようだ。

 すると、今度は自身の足が上がる。


「コンドハアシガッ。ヤメロッ。クッ、ウゴカナイッ。」


 抵抗しようにも、体が動かない。

 それどころか、体が大きく跳ね上がる。


「ナッ、ヤメッ。」


 何度も何度も跳ね上がる。

 まるで、糸で吊るされた人形のように。

 何かを演じるように、何度も跳ねる。

 直後、目の前に沢山の大きな顔が現れる。

 すると、その顔が一斉に笑い出す。


アハハハハハハハハッ!


 どの顔もが笑っている。

 無様に踊るメイカーラを笑っている。


アハハハハハハハハハハハハハハハハッ!


 面白可笑しく笑っている。

 そして、その顔が近づいてくる。


「タ、タスケッ、ダレカッ。」


 それらの顔に恐怖を覚えるが体は動かない。

 逃げたくても逃げられない。


アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!


 笑う顔に囲まれる。

 笑い声に囲まれる。

 その中で、永遠と躍り続ける。


「ダレカアアアアアアアアアッ!」


 叫ぶも誰にも届かない。

 誰も助けに来ない。

 恐怖はどんどん増していく。

 そんな中、どこからかリュノの声が聞こえてくる。


「怖いよな? 寂しいよな? それが、お前達に操られた奴らの気持ちだ。分かったか?」


 偽物のゴーレムにされた者達の悲しみや恐怖。

 それが、メイカーラへと襲いかかる。


「それじゃ、その気持ちを持ったまま散ってくれ。」


 その言葉と共に、リュノがメイカーラの本体を叩き斬る。

 操られた者達の分を込めた一撃だ。

 それを受けたメイカーラは、幻覚に囚われたまま地面へと沈む。


「思い知ったか。このやろう。」


 そう言って、斧を肩に担ぐリュノ。

 こうして、メイカーラとの勝負に勝ったのだった。


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