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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
178/284

心装の実力です

 周りを見渡すフィー。

 崩壊した地面。

 宙を浮く沢山の魔物。

 倒れた仲間に寄り添う者達。

 そのアルティスの涙。

 そして、異様な姿に変貌した武将達。


「ダレカトオモッタラ、サッキノザコカイ。ダサイメンナンカカブッチャッテサ。」

「ククッ。ヤクニタタナイノガハズカシクテ、カオヲカクシテルンダロウネ。」

「ハハッ。ナサケナイヤツダネ。」


 フィーの姿を見て笑う二体の武将達。

 その真ん中で、オーディルが目を細める。

 しかし、笑われたフィーは動かない。

 そんなフィーを見て、武将達が憤る。


「ナニダマッテルンダイ。モシカシテ、バカニシテルノカイ?」

「フザケタヤツダヨ。ムリヤリダサセテモイインダヨ? ソコニイルヤツラミタイニネ。」「イイネェ。コイツラノヒメイハオモシロカッタ。オマエハ、ドンナヒメイヲキカセテクレルンダイ?」


 一言も喋らないフィーを煽り続ける二体の武将達。

 それでもフィーは動かない。

 ただ紫の羽衣が、風に揺れるだけだ。

 そも様子を見たスタークが疑問に思う。


「嬢ちゃん、どうしちまったんだ? まるで感情が無いような。」

「無いんじゃなくて、表に出てこれないだけだよん。」


 そう言いながら、キュリアが何処からか降ってくる。

 フィーに何が起こっているか知っているようだ。


「あんたか。表に出てこねぇってのは?」

「見る限りだと、フィーちゃんとにゃんすけちゃんの感情が同時に出ようと争ってるせいだね。フィーちゃんの魔力核を使ってない影響かな? うむむ、興味深い…。」


 二つの感情が同時に出ようとしている。

 しかし、感情を出す為の体は一つだ。

 そのせいで、どちらも出れなくなっているのだ。

 そうなると、一つの疑問が浮かび上がる。


「おいおい。そんなんで、まともに戦えるのか?」

「大丈夫だよん。体を動かすのは、フィーちゃんに委ねているようだからね。」


 争っているのは感情だけだ。

 どう動くのかは、今まで通りなのだろう。

 だから、戦うのに問題はないのだ。

 そうなると、問題は別にある。


「キュリアちゃん、剣聖さんの治療を。」

「ん? あららー。ド派手にやられたね。傷は塞がってるようだけど。」

「傷はなんとか。でも、これ以上は無理だ。」

「なるほどね。それじゃフィーちゃん、治してる間そいつらの事は任せたよん。」


 リュノに促され、ファウストの様子を確認するキュリア。

 頼まれたフィーは、静かに頷いて武将達を見る。

 すると、見られた武将達がフィーを睨む。


「ナンダイ。ヒトリデヤロウッテイウノカイ?」

「イイジャナイカ。ソレジャ、ミセテモラオウカナ。ホラ! オマエタチ!」


 グルマドーナの命令で、空の魔物が一斉に動く。

 そして、フィーに対して突っ込んでいく。

 その数は、かなりの数だ。

 それを見たスタークが叫ぶ。


「危ねぇ!」

「大丈夫だよん。」


 この数を相手にするのは無理だ。

 その数がフィーに押し寄せる。


 次の瞬間、フィーを中心に突風が起こる。


 激しい突風が魔物達へと襲いかかる。

 それだけではない。

 その風を受けた魔物達が凍っていく。

 更に、突風は嵐となり氷の粒を含み吹雪となる。


「ナ、ナンダッ!」


 驚く武将達の前で、吹雪は魔物達を襲う。

 それを受けた魔物達が凍っていく。

 そして、その吹雪は広がっていく。

 その上、凍った魔物達を雷が貫いていく。


「オイオイオイッ。コレガニンゲンノマリョクッテノカ?」

「ナニヲシテイルッ。チラバルナ! カタマッテセメルンダヨ!」


 散らばったままでは、凍らされるだけだ。

 それを防ぐ為に、一つの塊となってフィーへと向かう。

 そのお陰か、凍るのは表面だけで中の魔物は無事だ。

 そのまま襲い来る魔物達。

 それに対して、フィーは剣をくるっと回して掴む。

 そして…。


「圧縮。」


 そう呟くと共に、剣先の聖火を固めていく。

 そして、それと同時に剣を振るう。

 すると、その先から出た聖火の斬撃が魔物達の塊を真っ二つ。

 更に、その斬撃を追うようにフィーが飛ぶ。


「ポイントダッシュエア。」


 ある程度飛んだ所で、下駄の下で爆発を起こす。

 そのまま真っ直ぐ飛んで魔物を斬る。

 そこから更に爆発を起こして移動する。

 それにより、縦横無尽に空を駆ける。

 それと同時に、魔物達を斬っていく。

 そんなフィーを止めるべく魔物達が囲んでいくが…。


「分身よ。」


 囲んだ直後に、大きな爆発が起こり魔物達が吹き飛ぶ。

 そして、その中から複数の猫の形をした火の玉とそれを漂わせたフィーが現れる。

 そうして、フィーが火の玉に囲まれたままで再び斬り始める。

 その光景に、スターク達が驚く。


「つえぇ。」

「あれが本当にお嬢さんなのか?」

「あぁ! これなら勝てそうだぜ!」


 異様な強さに勝利を確信するスターク達。

 その間にも、フィーが魔物の群れを斬っていく。

 しかし、それを許す武将達ではない。


「カテルダト? ナメタクチヲ!」

「タダ、ヨワイヤツラヲタオシテイルダケジャナイカ!」

「アァ! ホントウノツヨサッテノヲミセタゲルヨ!」


 そう言いながら、纏う力を翼に変えて飛ぶ武将達。

 すると、それを見たフィーが空へと逃げる。

 その手に、高密度の炎を圧縮させながら。

 そんなフィーを、武将達が追い続ける。


「ニゲルンジャナイ!」

「スグニオトシテヤルヨ!」


 逃げるフィーへと叫ぶ武将達。

 すると、呼ばれたフィーが空中で停止する。

 それを見た武将達が笑う。


「トマッタゾ!」

「ヤルキニナッタカイ?」


 そのままフィーを目指して飛んでいく。

 そんな武将達へと振り返ったフィーは、手を空へと掲げる。

 すると、手の中に収まる炎が大きくなる。


「「ンナッ!」」


 その大きさは、二体の武将を軽く飲み込む程だ。

 今さら気づいてももう遅い。

 そんな武将達へと手を振り下ろす。


「ドラゴンブレス。」


 その手の振りに合わせて、炎の塊が落ちていく。

 逃げようにも間に合わない。

 そして、その炎の塊は武将達に直撃。

 その直後、武将達や魔物達を巻き込む大きな爆発が起こる。


「アアアアアアアアアアッ。」

「ウアアアアアアアアアッ。」


 巻き込まれた武将達は、地面へと落下する。

 そして、勢いよく地面へと叩きつけられる。

 それでも、なんとか立ち上がるが…。


「ヤッテクレルネェ!」

「ッ! グルマドーナ! ウエダヨ!」

「ナニッ!」


 フィーの攻撃は終わらない。

 見上げたばかりのグルマドーナを蹴り飛ばす。


「グアッ。」

「グルマドーナ!」


 吹き飛ぶグルマドーナを見るメイカーラ。

 すると、そんなメイカーラをフィーが斬り飛ばす。


「グウッ。」


 同じように吹き飛ぶメイカーラ。

 それでも、二体の武将達はすぐに立ち直る。


「チョウシニノルナヨ!」

「コノテイドデ、タオセルトオモッテナイヨネ!」


 当然、この程度の攻撃でやられる二体ではない。

 すぐに体勢を直して、フィーへと斬りかかる。

 すると…。


「氷よ。」


 巨大な氷が地面から生まれる。

 広がるように現れる氷のトゲに動きを止める武将達。

 それでもすぐに、剣を振るう。


「「ナメルナァ!」」


 剣で氷を叩き斬る。

 それにより砕け散る氷。

 しかし、その先にフィーはいない。


「ナンッ。」

「ダトウ!」


 その事に、驚く武将達。

 すると、そんな二体の後ろにフィーが現れる。

 そして、伸ばした剣を振るう。


「グアッ!」「ガアッ!」


 悲鳴を上げながら、武将達が吹き飛ぶ。

 それを見るフィーだが…。


「ふんっ。」


 その背後から、オーディルが現れる。

 そして、そのままフィーへと剣を振るう。

 しかし、その剣をフィーが剣で受け止める。

 それでも吹き飛んだフィーは、一回転して着地する。

 その前に、オーディルも着地する。


「さて。お前なら、私に剣の道の先を見せてくれるのか?」


 そう言いながら、フィーを見据えるオーディル。

 そんなオーディルの横に、二体の武将達が並ぶ。


「ズイブント、コケニシテクレタネ。」

「コノカリ、キッチリトカエサセテモラウヨ。」


 フィーを睨む武将達。

 そんなフィーの左右に、二つの影が降り立つ。


「それはこっちの台詞だ。」

「手間を取らされた分、きっちりと返すよん。」


 フィーとキュリアとリュノ。

 オーディルとグルマドーナとメイカーラ。

 双方が並びあって睨み合う。


「コンドハアンタタチカイ? イイカゲン、アキラメタラドウナノサ。」

「それはこっちの台詞だよん。」

「ハッ。ナニイッテヤガル。サッキマデボコラレテタクセニ。」

「じゃあ、今度はそっちがボコられるばんだな。」


 お互いに、引く気は全く無い。

 その時を、今か今かと待っている。

 それを見たスタークが立ち上がる。


「俺達も戦うぞ!」

「邪魔だ。足手まといは引っ込んでろ。」

「な、なんだと!?」


 軽くあしらうリュノに怒るスターク。

 そんなスタークを止める為に、キュリアが説明する。


「まぁまぁ。こっからは、私達も本気で出るって事。それに、君達には剣聖くんを治す魔法陣を見てて貰わないとね。」


 術者が離れる今、魔法陣を見る者が必要だ。

 それを出きるのは、スターク達だけだ。

 それを聞いたフラリア王がスタークを止める。


「ここは引こう。彼女の言う通り、私らはファウストについてあげなくてはな。」

「…そうだな。後は任せたぞ。」


 ここで我が儘を言うようなスタークではない。

 スタークもまた、ファウストの事が心配なのだ。

 それを聞いていたオーディルが前に出る。


「どちらでも構わんさ。どうせ次で決着だからな。グルマドーナ、メイカーラ、やるぞ。」

「イツデモイイヨ!」

「コッチモ、スグニアバレレルヨ!」


 そう言いながら、武器を構える武将達。

 それに対し、フィー達もまた武器を構える。

 そして、オーディルが叫ぶ。


「さぁ、決着をつけようぞ!」


 そうして、お互いがぶつかり合う。

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