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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
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武将達の本気です

「やるぞぉおおおおおお!」

「おう!」「良いとも!」


 魔獣化した武将達が動き出す。

 そして、一気に距離を詰めて剣を振るう。


「迎え撃つよ!」

「あぁ!」「おう!」「うん!」


 それに対して、キュリア達も動く。

 まずは、グルマドーナが六本の腕で繰り出す突きをスタークが拳で受ける。


「おらあ!」「ふんっ!」


 拳と剣が激しくぶつかり合い押し合う。

 その反対側では、蛇の足でうねるように迫るメイカーラの剣をファウストが受ける。


「はあっ!」「させないよ!」


 しなるように振るわれる剣と聖剣がぶつかり押し合う。

 その真ん中では、飛び込むように迫るオーディルの剣をリュノが受ける。


「受けれるものならっ、受けてみろ!」

「来なっ!」「支えるよん!」


 勢いのある人工聖剣と斧がぶつかり押し合う。

 その後ろから、キュリアが魔法で支える。

 そうして、しばらく押し合う両者。

 しかし、すぐに武将達が押し始める。


「そんなんで防いでるつもりかいっ?」

「ぐうっ。しつけぇぞ。」


 ひっきりなしに迫る剣を防ぐスターク。

 反撃しようにも、隙は一つも見つからない。

 そして、それはファウストも同じ。


「得意の速さはどうしたんだい?」

「心配どうも。」


 蛇の体を生かした剣撃により、上下左右どこから来るか分からない。

 その対処で、どちらに動けば良いのか分からない。

 そうしてついに、二人が押し負ける。


「ぐあっ。」「くっ。」


 大きく後ろへと吹き飛ぶ二人。

 そこから何とか着地するも、そこに武将達が襲いかかる。


「貰った!」「貰ったよ!」


 体勢を崩した隙を狙ったのだろう。

 一気に距離を詰めて剣を振るうが…。


「こっちのっ。」「台詞さっ!」

「「何っ。」」


 隙が出来たのは、向こうも同じだ。

 剣を振りかぶった隙を狙って反撃に出る。

 そして、同時に相手を吹き飛ばす。


「何だ、たいした事ねぇじゃねぇか。」

「それはどうかな?」

「は?」


 声がする方を見ると、吹き飛ばした二体の武将が起き上がる。

 しかも、グルマドーナは激しい炎を纏って。

 更に、メイカーラは砂の鎧を纏って。


「まだまだこれからだよ!」

「存分に楽しむと良いね!」


 そうして、更なる力を付けた二体が斬りかかる。

 すると、今度こそ受けた二人が吹き飛ぶ。

 それを横目で見たキュリアが驚く。


「二人が押されてるよんっ。」

「こっちも精一杯だっ。どうにかしてもらうしかない。」


 こちらも対処で精一杯だ。

 助けに向かう余裕はない。


「そうだとも。お前達の相手は我だろう。無視はしないでもらいたいな。」

「あんたは魔獣化しなくて良いのかい?」

「悲しきかな、こっちの方が戦いやすいのでな。」


 人型の姿の方が戦い慣れているのだろう。

 その為、オーディルだけ魔獣化しなかったのだ。

 だからといって、勝てる訳でもない。


「つまり、今の私達は化ける程の相手ではないと?」

「そんな事はない。追い込まれたら化けるさ。追い込まれたらなっ!」

「ぐっ。」


 そう言いながら、剣を振り抜くオーディル。

 それにより、二人が後ろへと吹き飛ばされる。

 そんな二人へと、オーディルが剣を振りかぶる。


「しかし、私にはこの剣がある。化ける必要などないだろうがなっ!」


 そう叫びながら剣を振ると、先から光る斬撃が飛んでいく。

 人工聖剣の力で放ったものだ。

 その光の斬撃は、キュリアとリュノを襲う。


「ちょっ。」


 そのまま二人へと、光の斬撃が直撃。

 大きな爆発が二人を巻き込む。

 それでも、結界で防いだ二人が現れる。


「溜めずにこの威力。ここまで再現されてるなんてね。」

「だからこそ、敵の手に落ちたのが悔やまれるな。」

「今さら言っても仕方ないけどね。」


 そう言いながら、再び迫る光の斬撃を結界で防ぐ。

 すると、それに紛れてオーディルが斬りかかる。

 それにより結界が破壊されると、二人は飛び退くように下がる。


「他の奴では荷が重いか。」

「私達でどうにかするしかないかな。」

「だろうな。それじゃ、行くよ。」


 そうして、オーディルと向き合う二人。

 この武将を止められる者は、二人しかいないだろう。

 そうしている間にも、他の二体の武将の猛攻が続く。


「おらおらっ。もっと盛り上がるよ!」

「君達ももっと踊ってごらん?」


 攻撃の頻度が増えていく。

 更に、その強さも増していく。

 その攻撃に、スタークとファウストが耐え続ける。


「こいつっ、強くなっていきやがるっ。」

「そろそろ、耐えれなくなりそうかな?」


 あまり攻撃に防戦一方だ。

 反撃の隙などありはしない。

 それでも更に強くなる。


「もっとだよ! もっともっともっともっともっともっとぉ!」

「動けば動くほど、力が沸いてくるぅ!」


 次第に、グルマドーナが纏う炎が強くなる。

 更に、メイカーラの土の鎧も分厚くなる。

 これにはたまらず二人は飛び退く。


「こいつぁやべぇ。ちょいと、勝てそうにねぇな。」

「君にしては弱気だね。でも、同感だよ。」

「珍しく気が合うな。でも、負けるつもりはねぇがな。」

「それも同感だね。」


 勝てる見込みは全く無い。

 それでも、諦める気も全く無い。

 そうして、再び武器を構える。

 それを見た武将達が笑う。


「へぇ、まだまだやれるってのかい!」

「じゃあ、もっともっと踊ってもらおうかな!」


 そう言って、勢いよく剣を振るっていく二体。

 その攻撃を受ける二人は、後ろに下がりながらも耐えていく。


「とは言っても、このままでは変わらないかな。」

「なにか策を打たねぇとな。…ん?」


 攻撃に耐えていると、後ろからの足音に気づく。

 しかも、一つや二つではない。

 多くの足音が、囲うように迫ってくる。


「団長が追い込まれているぞ! 我々も戦うんだ!」

「これだけいれば、遅れも取らないだろう!」


 その正体は、周りにいた騎士達だ。

 二人を守るべく、攻撃を仕掛けていく。

 そして、二体の武将を追い払う。


「なんだぁ? ちっさいのがわらわらと。」

「なんとも邪魔だね。」


 剣を振るって騎士達を払う二体。

 それでも、騎士達は攻撃を仕掛けていく。

 そのうちの一人が、解放されたファウストに並ぶ。


「団長! お供します!」

「だ、駄目だ! 君達では…。」

「さぁ、一斉にかかれ!」

「お、おい!」


 ファウストの静止も聞かずに、駆け出す騎士達。

 攻撃が効かなくても、果敢に攻めていく。

 しかし、そんな騎士達の攻撃を黙って見ている相手ではない。


「しつこい奴らだねぇ。」

「そんなに死にたいなら殺してあげるよっ。」


 そう言いながら、武将達が反撃に出る。

 迫る騎士達を一振りでなぎ払う。


「強いっ。でも、怯むなっ!」

「団長の為にも、少しでもダメージを多くいれるんだ!」


 それでも、諦めずに攻める騎士達。

 斬られても吹き飛ばされても立ち向かう。

 それでも、相手には傷一つつかない。

 それを見たファウストが奥歯を噛み締める。


「くっ、みんなっ。」

「おら、見てる場合かっ。折角あいつらが粘ってんだぞ。」

「当然だ。これ以上の犠牲は許さない!」


 そうして、ファウストもまた駆ける。

 そして、聖剣に光を灯すと騎士達と共に斬りかかる。

 部下が戦っているのに、団長たる自分が戦わない訳にはいかないのだ。


「みんなっ、一緒に戦うぞ! 我ら騎士の誇りを見せつけろ!」

「「「おおおおおおおおっ!」」」


 ファウストの言葉に、騎士達の士気が上がる。

 一人では無理でも、大事な部下と一緒なら戦えられる。

 そして、それを見たスタークもまた動く。


「良い気合いだ! 俺も負けてらんねぇなっ!」


 騎士達の気合いに感化されたようだ。

 騎士達に混ざって、先程よりも強い攻撃を与える。

 そうして、武将達を押し始める。

 だからと言って、どうにかなる相手ではない。


「はっ、雑魚が増えたところでさ。」

「こんなので止められると思われるのは心外だね。」

「そうだねぇ! これからッテノニサアッ!」


 そうして、グルマドーナの炎が更に強く燃え出す。

 本体の姿が見えなくなる程に。

 近くにいるだけで焼けてしまう程に。


「止められルマデハッ、トマラナイカラネェ!」


 そうして、メイカーラの腕が伸び纏っている鎧が分厚くなる。

 剣の速さと威力を高める程に。

 今まで以上に、攻撃が読めなくなる程に。


「タタカウホドニツヨクナル!」

「コレガワレラノチカラ!」

「「ソノチカラニ、ゲンカイハナシ!」」


 そう言いながら、武将達が進軍をする。

 その度に、騎士達が吹き飛んでいく。

 そこに広がるのは、一方的な惨劇。

 その光景に、ファウストが憤る。


「それ以上は止めろおおおおおおっ!」


 惨劇を止めるべく、ファウストが斬りかかる。

 そのまま、光を込めた聖剣を叩き込む。

 しかし、呆気なく吹き飛ばされてしまう。

 それを見たスタークが叫ぶ。


「ファウスト! くそっ、こうなったら俺がっ!」


 今度は、スタークが殴りかかる。

 それでも、呆気なく吹き飛ばされてしまう。

 もはや、この二人では止められない。

 それどころか、誰にも止められない。

 その光景に、絶望が広がる。


「こんなのって、あり得ないだろ。」

「この二人でも通用しないなんて。」

「もう、終わりだ。死ぬしかないんだ。」


 最強の二人をしてこのざまだ。

 たかが一騎士に、どうにか出来る筈もない。

 しかし、それだけでは終わらない。


「退け。邪魔だ。」


 その言葉と共に、奥から激しい光が飛んでくる。

 それから逃れるように、キュリアとリュノが現れる。

 そして、その目の前からはオーディルが現れる。


「口だけか。もう少しやると思ったのだが。」

「全くだねぇ。ここまで強いなんて想定外だよん。」

「そうか、残念だ。ならば、もう用はない。消えろ!」


 そう言いながら、光の斬撃を飛ばす。

 それに合わせて、横の二体の武将も剣を振るう。

 それだけで、多くの騎士達が吹き飛ばされていく。

 残ったのは、最初に戦っていた四人だけ。


「きついなぁ。武将達の力、舐めすぎてたかな。」

「あんたらでも無理なのか。こりゃ、今度こそ終わりか?」


 武将達の力を見れば、心が折れてしまうのは当然だ。

 実際に、対抗できる手段はない。

 しかし、戦えるのはここにいる者達だけだ。


「いや、そうはいかない。民を見捨てて諦めるのはお断りだ。」

「じゃあ死ぬまで戦うか? まぁ、俺はそれでも構わねぇが。」

「それも駄目だよ。僕達が負けたら皆も終わりだからね。」

「おいおい、だったらどうすんだよ。」


 ここで負ければ全てが終わりだ。

 そうなったら、誰が大陸を守るのだろうか。

 そのやり取りを聞いていたリュノが呆れる。


「このままだと埒が明かないな。なぁ、キュリアちゃん。どうにか出来ないか?」

「そうだねぇ。どうにかする方法…ね。」


 問われたキュリアは、しばらく考え込む。

 そして、自身の後ろを横目で見る。


「可能性に…かけてみるかな。」

「あるのか? どうにかする方法が。」

「無い事はないよん。でも、時間が欲しいかな。」


 どうやら策はあるようだ。

 しかし、時間がかかる事らしい。

 それを聞いたスタークが立ち上がる。


「要するに、時間を稼げば良いんだな?」

「出来るかい?」

「やれと言うならな。」


 別に倒す必要はない。

 ただ、時間を稼ぐだけだ。

 それならばと、ファウストも立つ。


「僕も乗るよ。その可能性に。」

「絶対じゃないんだよ?」

「充分だよ。何もしないで死ぬ方が嫌だからね。」


 必ず勝てるとは限らない。

 だからといって、唯一の可能性を無視する訳にもいかない。

 それを聞いたキュリアが頷く。


「そこまで言うなら分かったよん。ここは任せるからね?」

「おう!」「あぁ!」


 気合いを込めて返事をする二人。

 それを聞いたキュリアがリュノと目を合わせて頷き合う。

 その直後、キュリアは一瞬にして姿を消す。

 そして、それを見送ったリュノがオーディルを見る。


「さて、やろうか。」


 そう言いながら、斧を構えるリュノ。

 その横で、スタークとファウストもまた構える。

 すると、それを見たオーディルが睨む。


「まだやるのか? どうやら、そんなに滅ぼされたいようだな。」

「ナラ、エンリョハイラナイヨネェ。」

「コンドコソ、オワラセテヤロウジャナイカ。」


 そうして、武将達が剣を構える。

 そして、命をかけた時間を稼ぐ為の戦いが始まる。

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