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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
大蛇祭る隠れ村 フラリア王国編
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村人から情報を貰いました

 被り物のゴブリンを倒した。

 けれど、近くに他にもいるかもしれない。

 なにせ、見掛けた奴はこいつだけでは無いからだ。


「被り物のゴブリンは、他にもいたはずだ。にゃんすけ、警戒をとくなよ。」


 言われなくても分かってるよ。

 今のゴブリンは、今まで聞いたゴブリンとは違う。


「後、どれだけいるんだ?」


にゃあ。


 分からないよ。

 もしかしたら、村人が知ってるかもしれないけど。

 

にゃん。


「ん、建物?」


 指をさした方向の先には建物がある。

 どうやら気付いてくれたようだ。


「なるほど、村人か。何か情報を持ってるかも知れないな。」


 間抜けなのか情報を漏らしてくれる連中らしいし、何か聞いているかも。

 敵の数はともかく、少しでも情報が欲しいよね。


「その前にだ。」


 邪魔物を消さないとね。

 まだまだ、いっぱいいるし。


 指揮官は消えても、ゴブリンの群れは残っている。

 村人を助けるには、追い出さないといけない。


「かかって来い!」


にゃあ!


 おらぁっ、とっととこーい!

 それとも、ここから落とされたい?っ


 両手を挙げてにじりよる。

 すると、ゴブリンが後ずさる。


「ふっ。リーダーを失ってどうすればいいかが分からないんだろうな。」


 命令を聞いているうちに、自分で動くという事を忘れたって事か。

 これから死ぬというのに、それに抵抗する事さえも出来ないんだな。


「来ないなら、こっちから行くぞ。」


 フィーが、長包丁を構えて向かう。

 すると、ゴブリン達が逃げ出した。

 中には、崖から落ちる者もいる。


 まぁ、こうなるよね。

 人に頼りすぎるのも、ほどほどにね。


「これなら相手にする必要もないな。村人を助けよう。」


にゃん。


 そうだね。

 行こう。


 果樹園を出て建物の広場へ。

 何だか、見られている気配を感じる。

 しかも、複数の視線を感じる。


「おーい。誰かいないか?」


にゃーあー。


 取り合えず叫んでみる。

 すると、どこからか扉の開く音がした。


「あんたら。連れてこられた訳じゃねぇのか?」

「あぁ。ゴブリン達を倒しに来た。」

「そんな事したら、大蛇に食われるぞ。」

「大蛇はいない。正確にはまだ卵だ。」

「そんな馬鹿な。」


 やっぱり、信じてくれないね。

 村人達は、あの張りぼての正体を知らなさそうだし。


「どっちにしろ、もう遅いさ。派手に暴れてしまったし。」

「やっぱり、さっきから騒がしかったのはあんたらのせいか。管理をしているゴブリンが黙ってないぞ。」

「あぁ、喋る奴か。それなら一匹殺したよ。」

「何て事だ。お前達、早く逃げた方がいい。」

「逃げたら下の村人を大蛇に捧げると言われてな。だから、逃げずに潰す事にした。真正面からな。」

「そうか。そうなのか。」


 逃げろと言われてもね。

 守りたいものが出来たんだから仕方ないよね。


「それより情報が欲しい。知っている事があれば教えてくれないか?」

「分かった。入れ。」


 招かれて建物の中へ。

 そこには、六人の村人がいた。


「あんた達は家族なのか?」

「半分はそうだ。適当に詰められたからな、色々の家族が混ざってるんだ。」


 取り合えず、使えそうな人を片っ端から捕まえていたらしいからね。

 連れて来た人を、適当に分けたんだろう。


「なぁ、俺からも聞いていいか? 下はどうなっている?」

「大蛇に怯えているよ。君達と同じでね。ただ、君達は死んだ事になっている。」

「そうか。おっかさんに会いてぇなぁ。」


 村人は、肩を落として涙ぐんだ。

 むりやり引き離されたのだろう。

 辛そうにうつむいている。


 無理矢理引き離されたんだもんね。

 会いたくなるのも当たり前だよね。


「それよりだ。奴等について何か知らないか? 例えば被り物をしている奴等の数とか。」

「いや、知らねぇよ。基本、俺達の前に顔を出さないしな。お前達が倒したって言う奴ぐらいしか知らねぇ。協力出来なくてすまねぇな。」 

「そうか。いや、いいんだ。」


 閉じ込められているもんね。

 知らないのも仕方ないか。


「あっ、俺知ってるかもしれねぇぞ。何か他の奴と、もうすぐだとか、大陸中から呼び寄せるから、数を増やせって。」

「なんだって?」


 情報来たっ。

 人質の前で喋るなよ。

 ありがたいけど。


「もうすぐって、大蛇の事だな。」

「本当にまだいないのか?」

「信じてくれなくていい。私達で止めるからな。ただ。」


 もうすぐって事はそういう事だよね。

 大蛇の事だとすると。


「時間が無さそうだ。すぐに、卵の破壊にいった方が良いか。でも、孵すのを早めるだけになるか。」

「どっちにしろ、駄目って事か。」

「いや、方法ならある。山を崩してしまえばいい。」


 なるほど。

 わざわざ、山の中にあるんだもんね。

 生き埋めにしちゃえばいいと。


「でもどうやって。」

「知らん!」

「「「えっ。」」」


 えっ。

 何言ってんの? この人。

 皆思わず、声が出ちゃってるよ。 


「ただそれしかない以上、やるしかあるまい。」


 そうだけどさぁ。

 そもそもどうやって登るの。


「こうしては、いられない。早速行こう。」

「ちょっ。」

「世話になったな。にゃんすけ、行くぞっ。」


 まじですか。

 まぁ、ここで時間を取るわけにはいかないしね。

 

 時間が無いので急いで扉へと向かう。

 すると、慌てて村人の一人が呼び止める。


「ちょっと待った。あんた、双子の子を見なかったか?」

「あぁ、世話になった。」

「元気だったか?」

「そうだが、まさかあの子の親か?」

「そうだよ。手を離した時に離ればなれになってね。その時に連れてこられたんだ。そうかそうか。うん、無事なら良いんだ。」


 良かったね。

 出来るなら会わせてあげたいんだけどね。


 嬉しそうに涙を流す村人。

 それを見届け建物を出る。

 そして、再び果樹園の中へ。

 ただひたすら、走っていく。

 向かう先は、神殿の上。


「とにかく時間がない。急いで崩してしまおう。」


にゃっ。


 分かってるよっ。

 とにかく、目指すのが先だよ。


 果樹園を抜けた。

 横穴に入らずに壁を登る。

 しかし、落っこちてしまった。

 思ったより滑るようだ。


「無理か。他の高い場所に登って飛び移ろう。」


にゃん。


 別にここが一番高い場所じゃない。

 登れないなら、登れる場所から行けばいい。


 壁沿いに離れていき、登れる場所を目指す。

 しばらく走ると、緩やかな場所が。


「ここだなっ。」


 そこから上を目指していく。

 神殿より高い場所に到達。

 そこから、神殿の上に向かって走っていく。


「なんか、こぶみたいだな。」


 確かに、上から見たらよく分かる。

 その部分だけ、変に盛り上がっているね。

 どこから見てもこぶにしか見えない。


「よし、にゃんすけ。」


にゃん。


 こぶの上にジャンプ。

 そして、こぶの上に生えてある樹を蹴ってポイントダッシュ。

 樹と樹を渡りつづけていく。


「なるほど、なら。」


 フィーが、樹に登っていく。

 そして、てっぺんで鞘を構える。


「いいぞ。」


 ちょうど良い高さだ。

 そこに向かってジャンプ。


「せーのっ。」


 フィーが俺を打ち上げた。

 そして、落下。


 要するに、リーダーゴブリンを倒した技だね。

 これが一番火力があるからね。


「もう一度っ。」


 再び鞘に。

 今度は振り下ろす。


「せーのぉっ。」


 フィーも全力で振り下ろす。

 俺も全力で鞘を蹴る。

 そして、すぐさま体勢を変える。


 くらえっ。

 真下に向かって全力キックっ。

 うおらっ。


 ズドンと衝撃音。

 土煙が、宙を埋め尽くす。

 しかし、傷一つない。


「駄目か。」


 全然びくともしていない。

 どうなってんだ。


「もう一回行けるか?」


にゃん。


 まだまだ行けるよっ。

 無理なら何度でもっ。


 もう一度、ポイントダッシュで樹を渡りついでいく。

 威力が貯まった所で再びフィーの鞘へ。

 再び高く上がる。


「さっきから。」


 急な殺意。

 どこからっ。


「うるさいゾっ。」


 どこからか飛んできた炎に直撃。

 意識が一瞬飛んだ。


「にゃんすけっ!」


 落ちる直前に、フィーがキャッチ。

 そのまま、フィーが落っこちる。


「貴様らっ。神聖な場所で好き勝手暴れおって。」


 フィーが、声の正体を探す。

 近くにいるのは間違いない。


「どこだっ!」

「こっちだ。」


 声のする方を向く。

 上だ。

 そこには、被り物をしたゴブリンが七匹。

 宙に浮かんで俺達を見下ろしている。


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