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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
165/283

襲来するは、巨大な魔物です

 遥か遠くにそびえ立つ大きな山。

 その頂の遥か上空に、魔方陣が浮かび上がる。

 そして、そこから四本の長いものが垂れ落ちる。


ズズウウウウウウウ!


 それによる振動だけで、山が砕かれ地面が揺れる。

 その大きさは、一つで山脈ほどの大きさがあるだから当然だろう。

 その長いものは、被さった土を払って浮かび上がる。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 払った土が地面に落ちていく。

 その中から現れたのは、大きな塊から伸びる四つの蛇の首。

 正確には五つだが、そのうちの一本が切り落とされている。

 その四本の首は、口に大量の魔力を貯める。

 そして…。


ズゴーーーーーーーン!


 四本の口から、強力な光の線が放たれる。

 その光の線は、大陸の各地を破壊する。

 うち一つは、大きな山を消し飛ばす。

 うち一つは、森を焦土へと変える。

 うち一つは、近くの島を沈める。

 そして、最後の一本が王都へと直撃する。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 その光の線を、透明な壁が受け止める。

 しかし、その箇所からヒビが広がっていく。

 更には、その衝撃だけで城壁が削れていく。

 その事実に、王都がざわめきだす。

 崩れる城壁の破片から逃げる騎士達。

 その中から、一つの影が飛び出す。


「いい加減にっっっ。」


 そう叫びながら、飛び出したオルティがパドルを振る。

 それにより出来上がった空間が光の線を受け止める。


「せーーーーーーいっ!」


 そう叫びながら、パドルを振り抜く。

 それと共に、光の線が返っていく。

 元の、迫る光の線を押し退けながら進んでいく。

 そしてそれは、光の線を放ってた首へと直撃する。


 それから光の線は飛んでこない。

 どうやら、どうにかなっようた。

 しかし、王都では混乱が続く。


「今のは何なんだ!」

「尋常ではない力だ。直撃していたら終わったていたぞ。」


 その威力は、見ていただけで明らかな程だ。

 怯えてしまうのも無理はないだろう。

 しかし、本当の恐怖は終わりではない。


「おい。あれを見ろ! あいつが撃ちやがったんだ。」

「あれは魔獣か? しかし、相当の距離だぞ? 普通なら見える筈がない。」

「それだけ大きいって事だろ。非常識にも程がある。」


 砕けた城壁の間から見える、四つの首の蛇を見る騎士達。

 遠く離れた場所からでも見えるような大きさだ。

 どれ程までに大きいのかが伺える。

 そして、それをフィー達も見に来る。


「あんなのがいるなんてな。あいつも魔族の手下なのか?」

「どうでしょう。操れる程の存在には見えませんが。」


にゃ。


 言うこと聞くのかな。

 知能があるのかも分からないし。


 あのような存在を、従わせられるものがいるのだろうか。

 それだけ、その魔獣が異常な存在だという事だ。

 そんな魔獣を見ていると、後ろからキュリアが現れる。


「あーあ。あんな奴まで出してくるなんてねぇ。お陰で結界がボロボロだよん。」

「あいつを知っているのか?」

「まあね。先の大戦でお世話になったからねー。」


 そうなんだ。

 って、あれと戦ったって事!?


 お世話になったという事はそういう事だろう。

 あんなものを出されては、止めるしかあるまい。

 すると、今度はリュノが現れる。


「魔界で、暴れている時に、遭遇したん、だよね。とても、強かった、よ。」

「それはまぁ見れば分かるが。大丈夫なんだよな?」

「うん。あれは、ただ暴れてる、だけだよ。」

「心配しなくても、あいつらの仲間じゃないよん。」


 少なくとも、帝達に従っている訳ではない。

 自由気ままに暴れているだけだ。

 しかし、暴れているのは事実だ。


「いや、心配はするだろう。こっちを攻撃してきたんだぞ?」

「まあね。どうにかしないと、とは思ってるけどね。」

「つまり、対策は無いと。」

「あったら既に倒してるよん。」


 まぁそうなるよね。

 どうにか出来なかったから生きてる訳だし。


 こうして現れている事が答えのようなものだ。

 つまり、対抗する手だては見つかっていないという事だ。

 しかし、それだけでは終わらない。


「え? これってまさか。」

「どうした? カミーユ。」

「瘴気の濃度が…高まっている。」


 瘴気が?


 カミーユは、周りの瘴気を感じとる。

 体質のカミーユがそう言うなら、間違いないのだろう。

 すると、キュリアもまた探りだす。


「本当だ。場所は分かんないけど。どこから感じる?」

「全体です。」

「全体?」

「はい。大陸中からです。」


 た、大陸中から!?


 大陸中のあちこちから、瘴気の気配を感じているのだ。

 それが、少しずつ高まっているようだ。


「大陸中から? どうしていきなり?」

「分かりません。ただ、吐き出されるように増えて…。いえ、まさか。」


 どうやら、思い当たるものがあるようだ。

 それもそのはず…。


「私達が巡った場所!」

「っ!?」


 それって。


 それを感じるのは、まさに大陸を回って訪れた場所だ。

 思い当たるのも当然だろう。

 その事実に、流石のキュリアも驚いている。


「魔界と繋がる門がっ!」

「まずい、ねぇっ。」


 カミーユ達は、それを封じる為に旅をしていたのだ。

 そこから、大量の瘴気が溢れている。

 それはつまり…。



 大陸中にある、大陸と繋がる門。

 開かないように厳重に封印されている。

 そこから押し出される大量の瘴気。

 それが、門の封印へとダメージを与えていく。

 そして、ついに封印が引き千切れる。


ゴオオオオオオオ!


 封印が千切れた事により、溜まっていた瘴気が一気に溢れる。

 それと共に現れるのは大量の魔物達。

 瘴気と共に溢れた魔物は、四方へと散らばっていく。



「っ!? 封印が!」

「破られたみたいだねぇ。」


 キュリアの顔には、いつものような余裕がない。

 そんなキュリアへと、フィーが詰め寄る。


「封印が破られただと? どういう事だっ。」

「言葉通りだよ。今、大陸中のあちこちが魔界と繋がった。」

「何だと? それじゃあ。」

「大量の魔物が雪崩れ込んでくる。だね。」


 門が開けば、向こうにいる者達が雪崩れ込むのは当然だ。

 しかも、大陸中となるとその数も多いだろう。

 そうなると…。


「ま、魔物だああああああっ!」


 空を見上げた騎士の一人が叫んだ。

 そこには、空を覆い尽くさんばかりの魔物が飛んでいる。


「なんて数だっ。」

「見ている場合か! 動ける者は武器を取れ!」


 大量の魔物に対処しようと、騎士達が慌ただしくなる。

 その光景に、フィーもまた動揺しだす。


「何なんだ。一体何が起こって…。」

「先手を打たれたんだよん! やってくれるねぇ。」


 笑いながらも、悔しそうに目を細める。

 当然、この事態が偶然起きたものではないのは明らかだ。

 つまり、魔族側が仕組んだもので間違いない。


「くっ。私達も行くぞ! あいつらを止めるんだ!」

「無茶です! 落ち着いて下さいフィーさんっ。」


 慌てるフィーは、今にも飛び出しそうとしている。

 そんなフィーを、カミーユが止める。


「良いですか? 外にオルティさんが出てた筈です。フィーさん達は合流して下さい。」

「カミーユはどうするんだ?」

「馬車を出して、兵士の方と向かいます。」

「作戦通りという訳だね。時間は無いよん。すぐに行こう。」

「急ぐ、よ。」


 こうしている間にも、魔物は次から次へと増えていく。

 ゆっくりしていると、結界を攻撃されるだろう。

 そうなると、ヒビが入った結界では受け止める事は出来ない。

 そんな事もあり、フィー達が急いで走り出す。


「お願いしますね! っと、それじゃあ私も。」


 フィー達を見送ったカミーユもまた城へと戻っていく。

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