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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
159/283

乱入者の実力です

「只今、到着。じゃないんだよ。さっきの魔法、うちらを巻き込む所だったんだけど?」

「まぁまぁ、キュリアちゃん。久しぶりの再会に細かい事は無しじゃない?」


 先の魔法の範囲に、キュリア達も入っていたのだ。

 しかし、魔法を放った本人は悪びれる様子はない。

 代わりに、立ち上がったフィーが慌てる。


「いや、それどころじゃないだろうっ。ゴーレム飛んでいったんだが、大丈夫なのか?」

「まー、大丈夫っしょ。何とかなるって、フィーちゃん。」

「ノリ軽いなっ。本当に大丈夫なのか? って、私の名前?」


 フィーの知り合い?

 そうじゃなさそうだけど。


 ゴーレムの心配をするフィーをよそに、その乱入者はカラカラと笑っている。

 どうやら、その乱入者はフィーの事を知っているようだ。

 そんな術者を、帝が静かに睨む。


「あの時からどれくらい経っただろうか。その顔、二度と見たくは無かったぞ。」

「おんや? どうしたん? そんなに暗い顔をしちゃってさ。ほら、笑って笑って。折角の再会なんだからさ。パーッと盛り上がろうって。」

「そういったところが嫌だと言っておるのだよ。分からんかね?」


 乱入者を見た帝は、嫌そうに顔を横に振る。

 どこまでも明るく振る舞う相手に、嫌気を感じているようだ。

 そんな帝の様子を見ても、乱入者は表情を変えない。


「あ! もしかして、あの時の事を根に持ってる? でもさ、だからって今回の事はやりすぎたと思うよ?」

「下らぬな。こちらがどう動こうが、お前に関係はあるまいて。」

「あるっしょ。実際に、こうして迷惑を受けてるんだからさ。」


 今回の騒動は、あの時の戦いの仕返しだろうか。

 理由はどうあれ、こちらが迷惑を受けているのは事実だ。

 文句を言うのは当然だろう。

 そんな乱入者は、帝を見据える。


「それともさ、あの時、ボコボコにしたのを忘れちゃった?」

「っ!?」


 乱入者の顔は笑っている。

 それでも、なんともいえない冷たい気に帝が動揺する。

 すると、そんな空気の中にキュリアが介入する。


「ごめん。それ、私が先に言ったよん。」

「えっまじで? じゃあ、王都を返して貰おうか。」 

「それも言ったよん。」

「えー。じゃあ何と言えと?」


 情けなく指をさした姿の乱入者は、ジト目でキュリアを見る。

 そんなキュリアは、呆れるように見返す。


「取り敢えず、それっぽい事でも言っとけば?」

「そう? じゃあ。帝よ! 正義の名の元に…。あー止め止め。柄じゃないって。」


 乱入者は、頭をかきながら諦める。

 そして、姿勢を改めて帝を見る。


「手っ取り早く、こいつらを追い出す。そんで、王都を取り戻す。以上!」

「…言ってくれる。あの時と同じだと思わない事だ。」


 笑いながらも睨み合う両者。

 すると、帝の前にゴーレムが現れる。


「まずはうちらが。」

「ゴーレムの控えなら、まだあるよ。」


 どうやら、控えのゴーレムを待機させていたようだ。

 次から次へと、地面の下から現れる。

 それを見たフィーが構える。


「まだいたのか! 手助けするぞ。えーと。」

「オルティだよ。気持ちだけ貰っとくよ。遅れた分、キッチリと働くからねっ。」


 そう言いながら、オルティが駆け出す。

 そして、ゴーレム達もまた駆け出す。


「やっちまいな!」「やってしまうと良いよ。」

「おっと、それは困るねっ。」


 急に立ち止まったオルティは、目の前に手を伸ばし何かを掴む。

 そして、布をはたくように手を上下に振る。

 すると、歪んだ空間が波のように突き進む。


「何だ? あれは。」

「見ての通り、波さ!」


 波のような歪みは、偽物のゴーレム達を襲う。

 すると、その波に押し上げられるように飛んでいく。


「なっ、ゴーレム達が!」

「良い吹き飛びっぷりっ。」


 そう言いながら、吹き飛んだ偽物のゴーレム達の高さへとオルティが跳ぶ。

 そして、再び手を伸ばして空間を掴み取る。


「散らばったもんはっ。」


 空間を掴んだオルティが一回転。

 すると、その手に合わせて空間の歪みが伸びていく。

 そして、その歪みが偽物のゴーレム達をトリモチのように掴んでいく。


「まとめなきゃねぇ!」


 そうして、歪みに絡まった偽物のゴーレム達を一つにまとめる。

 それを更に歪みでくるむと、そのまま地面へと投げつける。


「ほらよっと。」


 投げつけられた偽物のゴーレム達が地面へと落下。

 その上に、オルティが降り立つ。


「良い仕事っと。そんでっ。」


 その状態から空間を掴むと、手前に引っ張る。

 すると、それに合わせて空間が伸びていく。


「な、何を!」

「忠告しとく。前方注意。」

「なっ。」


 次の瞬間、オルティが伸ばした空間から手を離す。

 それにより、伸びた空間が一瞬で縮むと同時に何かが飛び出る。

 それは、衝撃となって帝達を襲う。


「ぐうっ。この程度っ!」

「耐えられぬ程ではなっ…。」


 衝撃を交差した腕で防いだ二体を武将がオルティを見る。

 しかし、そこには誰もいない。

 代わりに、二体の間から声が聞こえてくる。


「そこで、大人しくしてな?」

「「っ!?」」


 突然の声に驚いた二体が振り向こうとする。

 しかし、体が動かない。


「ぐっ。」

「体がっ。」


 まるで、空間に固定されているように動かないのだ。

 そんな二体の間をオルティが抜ける。


「覚悟は良いかい?」

「くっ、雷よ!」


 急接近するオルティへと雷を放つ帝。

 それでも気にせず前に出るオルティ。

 その時だった。


「き、消えた?」


 当たる直前に、雷が消えたのだ。

 そんな雷の代わりに、オルティが現れる。

 そして、そのまま帝の顔面を殴り飛ばす。


「ぐうっ。」


 一撃を受けた帝は、衝撃と共に吹き飛ぶ。

 殴った際に、衝撃を発生させていたのだ。

 そんな圧倒した力を見せつけたオルティにフィーが驚く。


「強すぎる。それに、何が起きたのか全く分からなかったんだが。」

「えぇ。私も魔法を使ったぐらいね。風の魔法っぽかったけど。」


 うん、全然分かんなかったよ。


 周りから見れば、ただ腕を振るっただけ。

 しかし、その度に何かの事象が起きていた。

 それが分かるのは、事情を知る者だけだ。


「空間を、弄ったん、だよ。」

「空間を弄った?」

「そうだよん。空間に働く力を自由自在に操作する力。」

「それが、僕達の、組織のNo.3。オルティの、力だよ。」


 空間を思うがままに扱う力。

 今見せた物は、その力によって引き起こしたものだ。

 そして、それを知っているのは仲間だからだ。


「やはり、お前達の仲間だったんだな。私の事を知っているのも教えたからだな?」

「頼りになる仲間でしょ? 時々、めんどくさいからって仲間を巻き込むけどね。」

「いや、それをお前が言うのか?」


 ほんとだよ。

 まさに、類友って奴だね。


 呆れるようにキュリアを見るも、そっぽを向かれてしまう。

 どうやら、自覚はあるようだ。

 そんな話をしていると、空へと雷が昇る。


「おっと、危ない危ない。」


 その雷を避けるようにオルティが飛び退く。

 そのオルティの周りに、キュリア達が集まる。


「大丈夫かい?」

「何とかね。」


 その目の前では、帝が起き上がる。

 その横では、二体の武将も動き出す。


「やってくれおるわ。」

「懐かしい一撃っしょ? よければ、もう一発どう?」

「ほざけ。お前達、あれを出せ。」

「あれですかい? でもあれはまだ調整中で。」

「良い。何かあったらワシが動こう。」


 帝の言葉に、武将の二人が困ったように見合う。

 そして、仕方ないと頷いた後に再びゴーレムを呼び出す。


「おんや? またゴーレム?」

「そうさ。でも、今までのとは違うよ。」


 その現れた偽物のゴーレムは一体だけ。

 しかも、他の個体よりも小さい。

 そして、その体には鎧のように岩が纏わりついている。

 そんな偽物のゴーレムがカクカクとした動きながら立っている。


「へぇ。確かに違うみたいだねぇ。その割には、動きがいびつだけど。」

「ふふっ。まだ、調整中でね。その分、危険だから気をつけた方が良いね。」

「忠告どうも。って、ん? あの手にあるのって。」


 オルティは、偽物のゴーレムの手にある一本の剣を見る。

 その剣は、魔力を常に纏っている。


「闘気? いや、違う。」


 魔力を纏う剣は、闘気によるものだ。

 ただし、もう一つ例外がある。

 その正体は…。


「聖剣っ!?」


 気づいた時には、聖剣が強く輝きだしていた。

 それを認識した直後、偽物のゴーレムが聖剣を振るう。


「まっ!?」


 その一振により、光の柱が空へと立ち上がる。

 その光が一直線に伸びると王都を端まで切断する。

 それを、かろうじて逸らしたオルティが手を降ろす。


「まさか、そんな物を持ち出すなんてねぇ。」

「そうなると、中にいるのは剣聖さんかな?」

「そうさ。中々面白いのがいたからね。実験させて貰う事にしたよ。」


 聖剣を扱えるのは剣聖だけ。

 そうなると、鎧のゴーレムの中の人を考えるのは簡単だろう。

 その事実に、リュノが首を傾ける。


「つまり、剣聖さんは、負けた? そんな事が?」

「そういえば騎士の見習いが言っていたな。王家の人が人質にされたせいで負けたと。」

「あーなるほどね。そんで、ゴーレムにされちゃったと。面倒な事になったねー。」


 面倒で済めば良いけどね。


 疲れたように項垂れるキュリア。

 目の前にいるのは、騎士団最強の存在だ。

 嫌になるのも分かるだろう。

 それでも、オルティは前に出る。


「ちょいとばかし、本腰をいれて王都を取り戻さないとするかね。キュリアちゃん、リュノ君、いけるかい?」

「いつでも良いよん。」「いつでも、良いよ。」


 そう言って、オルティの横にリュノとキュリアが立つ。

 そして、三者とも同じように武器を構える。

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