表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
158/283

最強の襲来です

 迫る偽物のゴーレムの拳を下がって避けるフィー。

 そんなフィーを魔族が笑う。


「どうしたどうした。攻撃しなくて良いのかい?」

「攻撃しないと。やられちゃうよ?


 攻撃が出来ないと分かった上での煽りだ。

 実際に、フィーは攻撃の手が出ずにいる。

 それなのにも関わらず、向こうの攻撃は止まらない。


「どうすれば良いんだ。どうすれば止めれるっ。」

「止めるには、術者か中の人をどうにかするしかないよん。でも、どちらも出来るなら苦労はしてないよねぇ。」


 術者を攻撃しようにも、偽物のゴーレムが邪魔をする。

 その上、偽物のゴーレムをどうにかするには中の人間をどうにかするしかない。


「やはり、ゴーレム自体をどうにかしないとか。」

「そうなんだけどね。一応やってはいるんだけど、凍らせても砕かれちゃってねぇ。」

「力も、凄い、からねっ。」


 どうにかするには、ゴーレムの動きを止めるしかない。

 しかし、拘束しようにも力ですぐにほどかれてしまう。

 なので、全く手出しが出来ないのだ。


「ゴーレムをどうにかするのは駄目。なら、術者かな。そうなると…。リュノ君!」

「分かってる、よっ!」


 キュリアとリュノが前に駆け出す。

 そして、目の前の偽物のゴーレムを吹き飛ばす。

 それを見たフィーが叫ぶ。


「おい! どうする気だ!」

「決まってるよん!」「決まってる、ねっ!」


 そう言いながら、前ヘ向かっての激しい衝撃波を繰り出す二人。

 そうする事によって空いた空間に突っ込んでいく。

 そして、その先にいる帝達へと飛び込む。


「邪魔なら退かせば良い!」

「要するに、ごり押し、だねっ!」


 そうして、武器を構えながら落ちていく。

 そして、そのまま突っ込むように武器を振るうが…。


「ふんっ。」

「ぐっ。」「ぐうっ。」


 迫る二人へと、帝が雷を放つ。

 それを、咄嗟に魔法で防ぐ二人。

 そのまま耐えるも、後ろへと弾かれる。


「そうやすやすと近づけさせるとでも?」

「あははっ。やっぱり無理かー。」

「手強い、ね。」


 突っ込んでくるぐらい、向こうも考えるだろう。

 そうと分かれば、対策を取るのは当然の事だ。

 こうして、唯一の手段も封じられてしまう。


「それで? 今度はどうするつもりだ? まさか、もう終わりとはいうまいて。」

「言ってくれるねー。勿論、これで終わりなんて言わないよん!」


 それでもと駆け出すキュリア。

 そして、先程のように帝達へと迫る。

 そんなキュリアへと、先程のように帝が雷を放つ。


「闇雲か?」

「だと思うじゃん?」


 一見、出来るまで続けようとしているように見えるだろう。

 しかし、その雷を防いだキュリアの背後からリュノが飛び出す。


「ブラフ、だよっ!」

「ほう?」


 入れ替わるように飛び出したリュノが斧を振るう。

 しかし、帝によって受け止められてしまう。


「小賢しいな。無駄だと分からぬか?」

「分かってる、さ。」


 そう言いながら、リュノが飛び退く。

 すると、それと入れ替わるようにキュリアの姿が現れる。

 その手の先には、瓦礫の塊が浮いている。


「貰ったよん!」

「何っ?」


 帝達へと腕を振るうキュリア。

 その動きに合わせて、瓦礫の塊が帝達を襲う。

 その塊が直撃すると、激しい音と共に粉塵が帝達を包む。


「この程度!」

「充分だよん!」「充分だ、よ!」


 その粉塵を、帝が雷で振り払う。

 その直後、左右から現れた二人が武器で斬りかかる。


「今度は二人で!」

「止めれる、かなっ?」

「ぐっ。」


 その二人の攻撃を、帝が両方の腕で防ぐ。

 すると、二人の武器が帝を押し始める。


「おや? さっきの威勢はどうしたんだい?」

「このまま、だと、押しきっちゃう、けどっ?」

「ぐぬう。」


 流石の帝も、二人からの攻撃には耐えられないようだ。

 しかし、そんな二人へと二つの影が襲いかかる。


「残念。忘れて貰っちゃ。」

「困るよね。」


 二体の武将が、二人へと武器を振るう。

 それを見た二人が後ろへと避ける。


「おっと。」「わっ。」


 帝から離れるように後ろへと下がる。

 そんな二人へと、二体の武将が斬りかかる。


「私達が帝様への攻撃をっ!」

「許すと、思っているのかいっ?」


 向こうは、帝一人で戦っている訳ではない。

 帝が押されれば、参加するのは当然だ。

 そんな二体の攻撃を二人が防いでいく。


「そうならないように攻めたんだけどね。」

「そうだね。お前達の襲撃が成功してたら私達も間に合わなかっただろうね。」


 そのまま二体の攻撃が続く。

 二人はそれに反撃できない。


「そのまま、諦めてくれると、思ってた、んだよ。」

「ふふっ。それは残念だったね。僕達が諦めると思うかいっ?」

「くっ。」「くうっ。」


 弾くように武器を振るう二体。

 すると、それを受けた二人が後ろへと大きく滑る。

 そんな二人へと魔族の一人が指をさす。


「後ろ。注意した方が良いね。」

「「っ!?」」


 その直後、二人へと影が落ちる。

 振り向くと、後ろで偽物のゴーレムが腕を振り上げていた。


「ちょっ!?」「いきな、り!?」


 咄嗟に左右へと避ける二人。

 すると、そんな二人へと雷が迫る。


「「っ!?」」


 それを魔法で受け止める。

 しかし、そこに偽物のゴーレムが迫る。


「うおっと。」「うわっ。」


 そして、それを避けた先に雷が。

 更に、それを避けた先に偽物のゴーレムが迫る。

 それを繰り返す二人を帝達が笑う。


「ほらっ、いつまで逃げられるかな?」

「ゴーレムを倒しても良いんだよ?」

「出来るのなら。ね?」


 煽りながらも攻撃を続ける帝達。

 一方、キュリア達は避けるしか出来ない。


「くそう。卑怯なり。」

「手出しできないのを、知ってる、癖にっ。」


 そうぼやきつつも、反撃をする余裕はない。

 そうして逃げ回ってる時だった。


「こっちだ!」

「「っ!?」」


 突然声がした方へと駆ける二人。

 そのまま飛び込むと、代わりにフィーが現れる。

 そして、迫る偽物のゴーレムの腕を斬る。


「無事か?」

「まぁね。助かったよん。」

「ありがと、ね。」


 無事で何よりだよ。


 疲れたように座る二人。

 その二人を守る為に、偽物のゴーレムをフィーが斬る。

 更に、迫る雷をセイラが土の魔法で受け止める。

 しばらくすると、攻撃が止まる。


「それにしても、あそこまでして届かないなんてな。」

「まさに、鉄壁の守りね。」

「あははっ。鉄壁過ぎて、むしろ笑っちゃうよね。」

「いや、笑えないんだが。」


 なんだか楽しそうだね。

 状況分かってるのかな?


 体験を当事者とは思えないほどキュリアは笑っている。

 というよりも、笑ってしまうほど呆れているのだろう。


「だよねー。ゴーレムも駄目、術者本人も駄目。いやぁ、流石に参ったかな。」

「じゃあ、どうするんだ? このまま諦める気か?」

「無理だと、思うよ。逃がしてくれるような、相手じゃ、なさそうだし。」

「そうなんだよねー。そもそも、王都を放っておけないしね。」


 逃げようとしても、偽物のゴーレムに追われるだろう。

 それに、魔族達を追い払う為に来ているのだ。

 このまま野放しという訳にもいかないだろう。


「結局は戦うしかない訳だな?」

「面倒だけどね。無理だと分かっていてもやるしかないよねぇ。」


 悩んだところで、選択肢など無いのである。

 そう結論付け、再び挑もうとした時だった。


ズシン!


 という音が広場で響く。

 それと共に、地面が大きく揺れた。

 

「なっ、敵が動いたかっ。」


 帝達による次の攻撃だろう。

 そう思い帝達を見るが、何かをしたようには見えない。

 セイラもまた、魔力の反応を探知する。


「違うわ。あいつらの魔力からの反応は無いわね。」

「奴らじゃない? では何が。」


 なんだろう?


 見渡しても、原因は分からない。

 その間にも、地面が連続した揺れが始める。


カタッ、カタッカタッカタッカタッカタッ。


 連続した揺れが続く。

 まるで振るえるように。

 王都が怯えるように震え続ける。


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。


 連続した揺れは大きく、かつ小刻みになっていく。

 もはや、揺れというよりも振動だ。

 その様子に、帝達も辺りを見渡す。


「なんだ。一体。」

「私達では無いですよ。」

「えぇ。外部からの干渉を受けているね。」

「外からだと?」


 武将達の魔法とは関係が無いものだ

 この場にいる者達が、揺れの原因を探している。

 その中で、キュリアとリュノだけが笑う。


「来たね。」

「うん。ようやく、だね。」

「随分な遅刻だねー。…って、あれ?」


 何かに気づいたのだろうか。

 一瞬にしてキュリアの笑みが消える。


「これってまさかっ。皆、しゃがんで!」

「え?」

「早く!」


 キュリアの指示でしゃがむフィーとセイラ。

 すると、大きく続いていた揺れが収まる。

 その直後だった。


ゴオオオオオオオオオオオオッ!


 という激しい音と共に、衝撃が空へと昇った。

 そして、何かに叩きつけられるような感覚がここにいる者達を襲う。


「ぐうううううううっ。」

「何っ、これ!」


 何々? どうしたの?


 あまりの衝撃に、動く事が出来ない。

 そして、その衝撃があらゆるものを吹き飛ばす。


ズドーーーーーーン!


 瓦礫や砕けた地面の欠片。

 あちこちにある魔族を閉じ込めた結晶。

 そして、沢山の偽物のゴーレム達。

 余すことなく、全てが吹き飛んでいく。

 まるで、強力な嵐が起きたような光景だ。


「一体っ、何なんだーーーーーっ!」


 衝撃で身動き取れないフィーは、ただ叫ぶしか出来ない。

 それでもまだ収まらない。

 それは、帝達もまた同じ。


「ぐうっ。何という力っ。この力、尋常ではない!」

「魔族の仕業かい?」

「まさか。このような力を持ったのはいなかったね。」


 この力は、魔族の中でも上位の力に値する。

 しかし、自身が知る仲間の魔族にそんな者はいない。


「では誰が。」

「いや、知っている。覚えているぞ! この力!」


 怒りのままに顔をしかめる帝。

 忘れる筈もない。

 この力の正体を。


「出てこい! 人間!」


 そう帝が叫んだ直後だった。

 衝撃が一ヵ所へと集まり拡散する。


キーーーーーーーーン。


 それと共に集まった、砕けた地面の砂が飛んでいく。

 そして、それと共に音もまた飛んでいく。

 辺りに広がるのは静寂。

 飛んだ砂も、空中で制止する。

 まるで、その箇所の時間が止まっているように。

 その中で、誰かの足音が聞こえてくる。


「やぁやぁ皆。お元気そうで何よりだね。」


 静止したような空間で、誰かが奥から歩いてくる。

 その人物は、近所に遊びに行くような足取りで歩いている。

 顔立ちは中性的。

 身長は高くラフな格好だ。

 その人物は、そのまま広場に到着する。


「真打ち、只今到着。ってね?」


 そう言って、にこりと笑って肩に担いだパドルを担ぎ直す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ