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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
155/284

魔を討つのは仲間との力です


「どうやら、化け物なのは見た目だけじゃないようだな。」


 みたいだね。

 強くなってるよ。


 その強さは、化けるよりも遥かに強い。

 図体にあった力を着けているようだ。

 その化け物は、大きく腕を上げる。


「はっ、今度はこっちの番だ! 直接行くぜ!」


 その化け物の拳は握られている。

 そのままフィー達を殴りつけるようだ。


「来る!」

「下がりましょう!」


 兵士達に従い下がるフィー達。

 そうして、化け物の拳を避ける。

 しかし、先程よりも大きい瓦礫が飛んでくる。


「うわあっ!」

「風よ!」「風よ!」


 飛んでくる瓦礫は、馬車からの魔法が散らす。

 それにより、避ける事が出来た。

 そんなフィー達は、距離を取って構え直す。


「何なんだあれはっ。この世のものとは思えん。」

「そうでしょうね。あれこそが魔族の最終兵器、魔獣化。あれを、ただの魔物と思って戦うと負けますよ。」

「あぁ、そうみたいだな。」


 普通じゃないもんね。


 見た目は魔物に近い存在だ。

 しかし、カミーユによると全く違う存在のようだ。

 そんな化け物は、ゆっくりと近づいてくる。


「どうした? 来ねぇのか? ん?」

「くうっ、どうしたものか。」


 向こうの力は圧倒的な上に、こちらの攻撃は通じない。

 あまりの強さに、攻め方が分からない。

 そんな風に攻めあぐねていると、アルティスが叫ぶ。


「逃げましょう! 勝てる相手じゃない!」

「逃げるのか? 良いぜ? まぁ、逃さねぇがよ。」

「だとさ。それに、こいつを放っておくと住民が逃げられん。」


 住民が逃げるのを、この化け物が許す筈がない。

 そうなると、住民を逃がす事が出来なくなる。

 だから、結局戦うしか無いのだが…。


「そもそもだ。私は諦めていない。」

「え?」

「諦める道理など、どこにある?」


 そうだよね。

 まだ何も終わっちゃいないよ。


 まだ全て出し切った訳でもない。

 それなのに、どうして諦めないといけないのか。

 そんなフィーを化け物が笑う。


「ひゃはっ。威勢だけは良いじゃねぇか。下がるしか出来ないくせによ。」

「様子を見ていただけだ。」

「そうか? じゃあ、見せてみろよ!」

「言われなくともっ!」


 そう叫びながら、フィーが踏み出す。

 それを見た化け物は、手を横に振るう。


「おらあ!」

「はっ!」


 それを、勢いのまま逸らすフィー。

 そこから更に踏み込んで、相手の胴体へと斬りつける。

 しかし、下がらせはしても効いていない。


「無駄だっ!」

「知っている!」


 フィーへと手を振り下ろす化け物。

 それに対して、フィーが一回転しながら避ける。

 そのついでに相手の腕を斬るが、効いていない。


「無駄っ、無駄っ、無駄ぁーーーっ!」


 そこから相手の拳が何度も迫る。

 そんな拳を避けていくフィー。

 そして、隙を見つけて胴体を斬る。


「ぐうっ。」


 その攻撃で、相手が怯む。

 そこへめがけての一回転。


「もう一撃!」


 回る途中で、剣を斧に変えて振り上げる。

 そうして、再び相手をひっくり返す。


「だから無駄だと!」


 それでも相手は起き上がる。

 そこを狙ってフィーは斧を振るう。


「はあっ!」

「ぐあっ。」


 相手が起き上がった瞬間に、首への強力な一撃。

 しかし、相手は跳ねのける。

 そして、フィーへと拳を振り下ろす。

 

「おら!」

「ふっ。」


 それを避けたフィーは、斧を槍へと変える。

 そして、相手のお腹へと突き出す。


「ぬあっ。」

「はっ!」


 そこから剣に戻して叩き込む。

 その勢いの一撃が相手を吹き飛ばす。


「はあっ!」

「ぬぐっ。おらあっ!」


 それでも耐えた相手が拳を振るう。

 それでもフィーが剣で逸らす。

 そんな攻防が続くが…。


「ちいっ、面倒くせぇ! いい加減にっ、しやがれっ!」


 そう言いながら、化け物が建物を掴み取る。

 そして、フィーに目掛けて投げる。


「ちょっ!?」


 そんなのあり!?


 その建物の瓦礫を後ろへと跳んで避けるフィー。

 その直後、フィーがいた場所で激しい轟音が響く。


「どうした! 来いよ!」

「くっ。流石にあれを食らうのはまずいか。」


 あれ程の塊を食らえば終わりだ。

 しかも、避けるのも難しいそうだ。

 悩むフィーの横に、兵士達が並ぶ。


「大丈夫ですかな?」

「なんとかな。ちなみにあれを受けれるか?」

「いやぁ、流石に無理でしょうな。」

「だよなぁ。」


 流石の二人も無理でしょ。

 っていうか、止められる人間なんているの?


 瓦礫が落ちる勢いは強い。

 普通の人間には、受け止める事は無理だろう。

 そんな話をしていると、再び化け物が建物を掴む。


「ビビってんかぁ? はっ。じゃあ、こっちから行ってやんよ!」

「来るぞっ! 避けろ!」


 掴んだ建物を投げる化け物。

 その時、フィー達の前にセイラが飛び出す。


「風よ!」


 セイラが放った風が瓦礫を散らす。

 すると、散らばった瓦礫は四方へと飛んでいく。


「セイラ!」

「瓦礫は私が何とかするわ!」

「頼む!」


 流石だよ!


 瓦礫が来ないならこっちのものだ。

 セイラと共に、化け物を攻める。

 そして、そんな様子をアルティスがあ然と見つめる。


「どうしてあんなに。相手が怖くないの?」

「怖いよりも、誰かを思う気持ちが勝っているから。そうして、沢山の人を助けてきた。だから、今更怖がるような事はしません。そして、その強い思いは周りを惹きつける。そういう人なんですよ。」


 怖くもあるし震えもする。

 しかし、それ以上に誰かを思う気持ちが突き動かす。

 その思いが、こうして強敵へと立ち向かわせてくれる。


「強い思い、ですか。」

「思いの強さは己の強さ。そして、結びつく強さです。」

「結びつく強さ。ですか。」


 アルティスの前で、フィーが剣を振るう。

 それに続いて、兵士の二人が続く。


「奴の手は我々が止めますぞ!」

「無理はするなよ!」

「分かってますとも! だから、攻撃を続けて下され!」


 化け物が手を振り上げると、もう片方の腕を兵士が叩く。

 その間に、フィーが胴体へと斬りつける。


「ちょこざいな!」


 それに怒った化け物が建物を掴む。

 しかし、振りかぶったと同時にセイラの魔法が瓦礫を砕く。


「させないって言ってるでしょ!」

「くそっ、くそっ、雑魚の癖に! ぐあっ。」


 そう叫ぶ間にも、フィーの攻撃に吹き飛ばされる。

 完全にこちらが優勢だ。

 だからといって、攻撃が効いている訳ではない。


「くうっ。テメェら! 偉そうにしてるが、こっちは傷一つ着いちゃいねぇぞ!」


 これだけ攻撃しても、相手の体には傷一つ着いていない。

 相手の攻撃はどうにか出来ても、防御の固さをどうにか出来た訳ではない。


「ちっ、こんなに叩き込んでいるのに。」

「そうだろうと思って呼んでおいたわ。」

「誰をだ?」

「頼れる私の仲間よ!」


 そう言ったと同時に、セイラが空へと魔法を撃つ。

 すると、その魔法が音を立てながら空で強く光る。


「なんだ?」

「一体なんの真似だぁ?」


 光? 誰が?


 その光を、フィーと化け物が見上げる。

 そして、カミーユ達もまたその意味に気づく。


「これは光魔法?」

「位置を知らせる時に使うもの。まさか!」


 光を空へと撃つことにより、居場所を伝える魔法だ。

 気づいた時には、周りが騒がしくなっていく。


「こっちだ!」

「見て! 誰か戦ってるわ!」


 その声は、次第に大きくなっていく。

 その度に、雑音もまた増えていく。

 そして、その音の正体が現れる。


「やっぱりここだ!」

「来ましたよ! 会長!」

「共に戦いましょう!」


 その者達は、皆が同じ服を着ている。

 そして、セイラと同じ服。

 その者達を、フィー達が見回す。


「一体これは?」


 セイラと同じ服だ。

 って事は。


「そう。魔法学校の生徒達よ。」


 集まってくるのは、魔法学校の生徒達。

 フィー達を囲うように姿を現していく。

 そんな光景を、化け物があざ笑う。


「なにかと思えば、うっせぇ雑魚が増えただけじゃねぇか。」


 戦力が増えた所で、相手に敵う訳ではない。

 しかし、それはセイラも承知の上だ。

 笑みを無くさないセイラへと、フィーが尋ねる。


「どうするつもりだ?」

「決まってるじゃない。こうするのよ!」


 そう言いながら、セイラがフィーの前に出る。

 そして、生徒達に見えるよう手を掲げる。


「生徒の皆さん! 生徒会長の名の下にお願いをします! 私に魔力を貸して下さい!」

「「「おおおおおおおおっ!」」」


 セイラに答えるように、生徒達が魔力を送っていく。

 それらの魔力は、セイラの下へと集まっていく。


「さぁ、フィーさん! 剣を掲げて!」

「こうか?」


 セイラに従い、剣を掲げるフィー。

 そこにセイラが、集めた魔力を送っていく。

 それにより、剣が輝き出す。


「これは、あの時の?」


 生徒会の力を利用した奴だね。


 その光景は、以前の魔族との戦いで見たものだ。

 最後の攻撃での一撃。

 だけど、届かなかった時の一撃。

 そこへと、兵士達もまた魔力を送る。


「我々も手伝いますぞ!」

「だから後は頼みますよ!」


 その二人の魔力によって、剣の輝きが増していく。

 そこへと、さらなる魔力が注がれる。


「アイナ! 私達も!」

「はい!」


 カミーユとアイナもまた魔力を注いでいく。

 そして、それを見たアルティスもまた魔力を注ぐ。


「この人達ならっ。もしかして!」


 そうして魔力がフィーの剣へと集まっていく。

 その光景に、化け物が目を見開く。


「なんだ、それは!」

「お前が見下したものの可能性だ。」

「何だと?」


 そう言いながら、フィーは剣を降ろす。

 そして、その側面へと手を添える。


「あの時は失敗した。でももう間違えない!」


 添えた手で、フィーは一気に剣を擦り付ける。

 そうして、集めた魔力を闘気で覆う。

 そして出来上がるのは、元の刀身の一本の剣。


「決着を着けようか。」

「くそっ、何が可能性だっ。ふざけんなっ!」


 化け物がフィーへと拳を振るう。

 それを避けたフィーは、前へと踏み出す。


「まずは一撃っ!」


 懐に入ったフィーは、相手の胴体を切り払う。

 すると、切り口から大量の瘴気が吹き荒れる。


「ぐうっ。」

「もう一発!」


 今度は、前に踏み込んでの一回転。

 その勢いを乗せた一撃で斬り飛ばす。


「ぐあっ! くっ。なんだ、この力は。ありえねえっ!」


 吹き飛んだ化け物は、すぐに体勢を直す。

 そして、迫るフィーへと拳を振るう。


「はっ!」


 その拳を回って避けたフィーは、ついでに腕を叩き切る。

 それにより、相手の胴体が落ちてくる。


「くっ。」

「はあっ!」


 そこへと、踏み込んだフィーが斬り上げる。

 すると、受けた相手は再び吹き飛ぶ。


「があっ、何で人間ごときにっ!」


 拳を横へと振るう化け物。

 それをフィーが避けるも、そこへと拳が落ちてくる。


「貰ったぁ!」

「ふっ。」


 それでもと、迫る拳を潜って避けるフィー。

 拳を見越して、避けたと同時に踏み出していたのだ。


「はっ!」

「ぐっ。」


 そうして距離を詰めると、相手の胴体へと剣を突き刺す。

 そのまま横に切り払うと、剣を返して斬り飛ばす。


「があっ。どうして勝てない! こんな素晴らしい力を手に入れたのに!」


 起き上がった化け物は、体中から瘴気を放出する。

 そして、体を更に肥大化させる。

 それでもフィーは前に出る。


「簡単な事だ。」

「何がだっ!」


 そう言いながら、化け物が拳を振り下ろす。

 それに対して、フィーが剣を振るう。

 そのまま拳に打ちつけると、そのまま相手の腕をへし折る。


「いでぇえええええっ!」


 化け物の腕が変な方向へと曲がっている。

 フィーの一撃に耐えられなかったのだろう。

 そんな化け物へと踏み出すフィー。


「お前の敗因は一つ!」

「ぐっ。」


 化け物をフィーが斬り飛ばす。

 そこから更に、前へと踏み出す。


「お前が一人でっ!」

「がっ。」


 そこから更に斬り飛ばす。

 すると、化け物は後ろの建物へと打ち付けられる。

 そこへと更に、フィーが踏み出す。


「戦って! いるからだっ!」


 とどめとバカリに、強力な回転斬りを叩き込む。

 その一撃を受けた化け物は、建物を突き破りながら吹き飛んでいく。

 そうしてフィーと化け物は、広場へと辿り着く。


「「フィーちゃん!?」」

「何だ?」


 その広場の一同の視線がそちらへと向く。

 その視線の中で、フィーが剣を振って瘴気を払う。

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