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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
152/283

王都へ侵入です

 王都の中心地。

 そこにいる者達が一斉に同じ方向を見る。


「来たか。」


 そう呟いた直後、王都の入り口で爆発が起こる。

 その爆発は中心地へと伸び、そこにいる魔族達を吹き飛ばしていく。


「やぁやぁ、お招きどうも。」

「来て、あげた、よ。」


 爆発と共に、キュリアとリュノが現れる。

 そして、そこにいる者達を見上げる。


「わざわざ来ていただいたのに、招かぬのは失礼というもの。して、何用でまいったのかね?」

「あははっ。言わなくても分かるくせに。」

「さぁて、貴様らのような小物の考える事なんて分かるまいて。」


 冗談を交えながら笑い合う双方。

 しかし、その目には研ぎ澄まされた戦意が宿っている。


「小物、ねぇ。以前ボコられたのを忘れたのかい?」

「さてな。」

「それは、残念。僕達は、覚えてる、よ。」

「それはそれは申し訳ない。」


 こちらを見下ろす魔族は、とぼけ続けている。

 かつて自分達を倒した相手が目の前にいる。

 それなのに、一切の余裕を崩さない。


「じゃあ、簡潔に言うね? 王都返せこのやろう。」

「野蛮だな。返せと言われて返す奴がいるか?」

「いないだろうね。だから私達が来たんだよ。」


 向こうが返す気が無いのは承知済み。

 だから、この二人が来たのだ。

 むりやり奪い返す為に。


「失礼な奴らだ。お引取り願おう。」


 そう言って、杖を取り出す魔族。

 その杖から、雷を迸らせる。

 それに対して、二人もまた武器を構える。


「装身。」「装身。」


 その直後、激しい爆発が中心地にて起こる。



「始まったか。」

「はい。私達も始めましょう。」


にゃ。


 作戦開始だよ。


 中心地で起こる爆発音を横目に、フィー達が王都へと潜入する。

 すると、あちこちが崩落した光景が目に入る。


「酷い有様だな。」

「そうですね。それほど激しい戦いが起きたのでしょう。」


 そうだね。

 普通とは思えないよ。


 あまりにも悲惨な光景が、戦いの悲惨さを物語る。

 しかも、武器を持った魔物のような者があちこちにいる。


「あれは魔物か?」

「いえ、あれは魔族よ。」

「あれ全員がか。」


 セイラによると、魔物ではなく魔族のようだ。

 その見た目は、異形さが減っており人に近い。


「あれ全部が闘気を纏える訳では無いんだろ?」

「流石にそんな事は無いわ。」

「えぇ。所詮は知恵をつけただけの魔物。強い者もいれば弱い者もいます。」


 元を正せば、同じ魔物には間違いない。

 なので、中には弱いのも当然いる。

 むしろ、弱いのがほとんどだろう。


「でも、私のような魔術師みたいに、常に瘴気が体中を巡ってるって授業で習ったわ。普通の魔物より強いのは事実だから気をつけて。」

「分かった。」


 魔族の体には瘴気が流れている。

 魔界にいるうちに、瘴気が蓄えられているからだ。

 納得をしたフィーだが、ふと馬車の上を見上げる。


「ところで、どうしてセイラがいるんだ?」

「え? だって、今までと変わらないんでしょ? 仲間外れは良くないわ。」

「…聞いてたのか。」


 聞いてたんだね。

 気づかなかったよ。


 どうやら、このまま着いてくる気のようだ。

 カミーユを許した手前、セイラに来るとは言えない。

 しかし、馬車には他にも頼れる仲間がいる。


「大丈夫ですよ。彼女も我々が守ります。」

「そうですとも、一般市民の彼女には指一本触れさせませんぞ。」

「その通り。兵士は肩書でない所を見せてしまいましょう。」


 なんだかんだ、俺を纏ったフィーに着いてきてたもんね。

 強くはあるんだろうね。


 セイラの横にはアイナ。

 馬車の前には、付き添いの兵士達。

 頼れる者達が守ってくれるだろう。

 そんな事で、カミーユは手綱を強く持つ。


「さて、そうと決まれば行きましょうか。フィーさん、にゃんすけさん、準備を。」

「分かった。行くぞ、にゃんすけ。」


にゃっ。


 分かったよっ。

 どんどん暴れちゃって!


 お面になった俺をフィーが頭に着ける。

 そして、目の前の敵へと走り出す。


「救出作戦開始っ。まずは、目の前の敵だ!」

「着いて行きます!」


 剣を握ったフィーが飛び出す。

 そして、その後を兵士と馬車が追いかける。

 そのまま、群れている魔族へと斬りかかる。


「はあっ!」

「ふんっ!」「ふんぬっ!」


 剣を振るったフィー達が、魔族達を斬り飛ばす。

 しかし、手に重い感触が返ってくる。


「重いなっ。」


 普通の魔物よりも、その身は固い。

 体に流れる瘴気のせいだ。


「押し負けたら反撃が来ますぞ。」

「気を抜かぬように。」

「そうだなっ。」


 押し込むしかないね。


 兵士の言葉に、剣をしっかりと握るフィー。

 そして、他の魔族を斬っていく。

 周りのものは、馬車の上から飛び出る魔法で吹き飛ばすが…。


「くっ、効いてない!」

「魔法では倒しきれません。とどめを!」

「分かった!」


 その身は、魔法すらも防いでいく。

 ならば、動きを止めている間に斬ればいい。

 そうしながらも、魔族の群れを蹴散らす。


「どうですか? フィーさん。」

「きついな。しかし、このような固さなら何度も斬ってきた。」


 相手は確かに固い。

 しかし、それを斬るのは初めてではない。


「頼もしいです。では、その調子で住民を探しましょう。」

「そうだなっ。」

 

 群れを蹴散らした俺達は、次へと駆け出す。

 崩れた地面を避けながら道沿いに進んでいく。


「アイナ、人の気配は?」

「瘴気が邪魔して検知にかかりません。近くの人なら何とかなりますが。」

「私も探してるけど同じよ。」

「そうですか。それなら。フィーさん! そのまま駆け回って下さい!」

「了解だ!」


 この広い場所から住民を探すには、検知の魔法が必要だ。

 しかし、検知出来るのは近くにいる人のみ。

 そうなると、かかるまで走り回るしかない。

 ただそうなると、魔族の群れと合う確率も増えてくる。


「前方に敵です!」

「魔術師はいないわ!」

「よし、突っ込むぞ!」


 戦いを避けるという選択肢はない。

 そのまま突っ込み斬っていく。

 そして、次の群れへと向かっていく。


「どうせ出会うんだ。全部斬るぞ!」

「我々は構わぬぞ!」

「着いて行く!」


 兵士の二人も、フィーに合わせて斬っていく。

 どうやら、二人とも順調に倒せているようだ。


「これぞ、我々の力!」

「お嬢様の世話焼きではない事を証明しようぞ!」

「す、すみません…。」


 戦う二人の言葉に、カミーユは恥ずかしそうにしている。

 迷惑をかけている自覚があるのだろう。

 そうしながらも、群れを蹴散らしている時だった。


「反応あり! 近くに数名! 固まって動いているもよう!」

「分かりました。では、向かいましょう。フィーさん! 着いてきて下さい!」


 戦っているフィー達の横を抜けて馬車が走る。

 そこに魔族が群がるが、フィー達が立ち塞がる。


「行かせん!」

「手出しはっ!」

「させぬっ!」


 そうして、魔族から馬車を守る。

 その間にも、馬車が崩れかけの建物の前へと止まる。


「誰かいますか!」

「その声は!」


 カミーユの声を聞いて、建物から騎士が現れる。

 その後ろには、住民達が待機している。


「どうしてこちらに?」

「助けに来ました。今すぐに避難を!」

「しかし奴らが!」

「大丈夫です。だから今のうちに!」

「は、はっ!」


 カミーユへと敬礼をした騎士が避難民の誘導を始める。

 その間にも、魔族を倒したフィー達と合流する。


「魔族は倒した。出口まで敵と会う事はないだろう。」

「ありがとうございます。さぁ急いで。」

「あ、ありがとう。」


 気をつけてね。


 お礼を言いながら避難する住民を見送る俺達。

 このまま進めば、無事に出口へと辿り着けるであろう。


「なぁ。さっきの騎士、カミーユを見て敬礼をしていたが。」

「気のせいです。」

「え? しかし…。」

「気のせいです。さぁ、次行きますよ!」

「あ、はい。」


 食い気味のカミーユに押されて黙るフィー。

 再び住民の捜索へと戻るべく走り始める。


「気のせいか。確かに、この国の王女は一人だものな。」

「そうですな。勘違いなどよくある事ですぞ。」

「まぁ、確かにな。」


 確かにあるけどね。

 でも、俺も見たような気がしたけど。


 気にはなるものの、首を振って意識の外へと追い出す。

 そして、すぐさま目の前の敵へと駆けていく。

 そうしながらも、同じように住民を逃していく。


「結構残っているな。」

「王都ですから。騎士の方が集めて下さっている事に感謝ですね。」

「だな。」


 流石は騎士ってとこだね。

 こんな状況でも住民を集めるなんてね。


 散らばった住民を探すには、時間と労力がかかる。

 しかし、そういったものは騎士が一通りしてくれている。

 だから時間はかからないが…。


「ただ、敵が多すぎるな。」

「えぇ、見渡す限り敵だらけだわ。」

「面倒だな。しかし、倒さぬ事には住民を逃がせんからな。」


 そうだよね。

 フィー達が逃げ道を作ってる訳だし。


 住民達の避難が出来ているのは、フィー達が倒しているからだ。

 なので、これからも倒さない事には避難は出来ない。


「そうですね。このまま続けると体力が持つか。そうだ。フィーさん、纏ってみませんか。」

「纏う? 何をだ?」

「決まってます。闘気をですよ。」

「え?」


 突然の事に、呆気に取られるフィー。

 そんなフィーへと、カミーユが楽しそうに呼びかける。

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