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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
151/285

状況確認です

 魔族が引いた事により、魔物や屍の数も減っていく。

 そして、あらかた収まった頃に主要な者達が合流する。


「ごめーん。逃しちゃった。」

「いや、何事もなくて良かったよ。私達も無事だったしな。」

「そうですね。」


 戻ってくるキュリアとリュノを、集まった者達が迎える。

 敵は逃してしまったものの、惨事にならなかったのは喜ばしい事だ。

 兵士長もまたフィーに同意する。


「そうだな。初めに比べれば充分な進歩だ。今は目的は達成したのを喜ぶべきだな。」

「あぁ。ここまで来るまでが理想だったからな。これ以上を求めるのは贅沢だろう。」


にゃ。


 そうだね。

 被害が無いのが一番だよ。


 初めは、ここまで来れるかどうかすら分からなかったのだ。

 それを達成出来ただけでも充分だろう。

 それを聞いて安心するキュリア。


「そうかい? なら、お言葉に甘えさせて貰おうかな。」

「そうするといい。それで、これからどうするんだ?」

「このまま私とリュノ君で王都に突撃かな。誘われちゃったしね。」


 キュリアがリュノを見ると、リュノが黙って頷き返す。

 当初の目的通りに、戦える二人で挑むのだろう。

 しかし、それで済まないであろう事にカミーユが気づく。


「誘われたって、罠じゃないんですか?」

「そうかもね。せめて中がどうなっているかは知りたかったかな。」

「ならば、逃げてきた者に聞けばいい。」

「いるの?」


 聞かれた兵士長は、返事をする代わりに後ろを見る。

 すると、全身を鎧で覆われた者が現れる。

 避難民に付き添っていた騎士だろう。


「何があったか話してくれないか?」

「はい。本日の日が昇ったぐらいに、急に空が暗くなったんです。そうしたら、空から雷と共に大量の魔族が現れました。それで、王都中がパニックになりまして。」


 いきなりの襲撃だったようだ。

 そうなると、慌てて何も出来なくなるのも仕方ない。


「へぇ、帝が直接乗り込んで来たんだね。よく逃げれたねー。」

「騎士団長と精鋭の皆様が止めて下さったお陰です。その間に住民を集めて避難しました。全員とは行きませんでしたが。」

「なるほどねぇ。となると、まだ住民はいるって事だ。」


 逃げれた住民は一部だけ。

 相手が相手だけに、全員とはいかなかったようだ。

 それだけ、苦戦をしているのだろう。

 すると、カミーユが質問をする。


「それで、王家の人達は? 今まで見た様子は無いですけど。」

「え!? えぇ、恐らくまだ中です。王様の命令で住民の避難を優先させてたので。」

「そう…ですか。」

「はい。申し訳ございません。」


 住民の避難を優先させたのに、まだ避難できていない者がいる。

 そうなると、まだ中にいるのは明白だ。

 それを聞いたキュリアの顔が一層険しくなる。


「ふうん。そうなると、ちょっと不味いかな。」

「というと?」

「王家の人はまだ中。それを守る騎士団長も中。その上で、私達を中に誘った。つまり、最悪の事態を考えられるよね?」


 戦っている途中なら、援軍を招く余裕はない筈だ。

 それでも、キュリアとリュノを中に誘った。

 これから考えられる事は一つ。


「まさか、騎士団長が負けた? そんな筈はっ。」

「気持ちは分かるよん? 大陸の最高戦力である剣聖だもんね。でも、結果が証明しているんだから仕方ないよね。」


 それ即ち、騎士団長の敗北である。

 それを聞いた騎士は、ありえないかのように首を横に振る。

 そんな騎士を無視したキュリアがリュノを見る。


「どうする? 現状はまずそうだけど。遅刻しやがってるあの馬鹿を待つかい?」

「向こうが、待ってくれないと、思うよ。それに、こっちも、住民をほっとけ、ないしね。」

「だよねー。すぐに攻めるしかないか。」


 どうやら、いつ攻めるかを悩んでいるようだ。

 住民がいる以上、時間をかけてはいられない。

 だからといって、二人で攻めるには厳しい現状だ。

 すると、それを聞いていたフィーが割り込む。


「悩んでいるところ悪いが、何が問題なんだ?」

「このまま戦えば、住民を巻き込んじゃうって事かな。大規模な戦いになると思うし。」

「どこで、どうなってる、かも、分からない、し。」


 どこに住民がいるかは分からない。

 そして、どこが戦場になるかも分からない。

 そうなると、巻き込んでしまうのは避けられない。


「兵士を送るんじゃ駄目なのか? 折角こんなにいるのに。」

「残念だけど、厳しいかな。王都の中にも敵はいるだろうしね。もしそれが魔族の軍勢なら手も足も出ないだろうね。」


 攻撃が当たらなければ、数が増えても意味がない。

 倒せなければ、助けるどころではない。


「そんなになのか?」

「そんなにだよん。」

「私でも駄目なのか?」

「いや、うーん。弱いのなら行けるかな?」


 頭を横に傾けて悩むキュリア。

 それだけ、フィーでは力不足なのだろう。

 すると、今度は兵士長が割り込む。


「魔族というのは、それだけの相手なのか?」

「うん。フィーちゃんは知ってるけど、まず攻撃が効かないからね。」

「攻撃が? では、君達はどうやって?」

「方法があるんだよ。まぁ、それが出来たら話が早く済んでるんだけどね。」


 その方法さえ知れれば、連れて行く選択もあるだろう。

 しかし、それを出来ないのが現実である。


「その方法とは?」

「闘気だよん。」

「闘気だと?」


 その言葉に反応したのはフィーである。

 何故なら、聞いたばかりの言葉だからだ。


「確か、町を襲った魔族が言っていたな。一体何なんだ?」

「早い話、魔力を体に纏って固めた物だよ。さっき説明したよね? 体の内側を流れる魔力の事。」

「身体能力を補う物だな。」


 セイラがやっていた物だよね。


 体中に魔力を巡らせて、動きを補う物。

 それにより、身体能力も上げられる。


「そう。それが肉体の限界を超えると、外に放出される。それを纏って固めたのが闘気。そして、魔力を流せれるのは?」

「魔術師だけだ。」

「そういう事。兵士の人、魔術の方は?」

「からっきしだ。」

「つまり、そういう事よん。」


 闘気を纏うには、魔力を扱えるのが絶対条件だ。

 それを出来るのは、魔術の才能があるものだけだ。

 そうなると、力のない兵士達では無理なのだ。


「では、私なら出来るのか?」

「出来はする。でも、修行する時間がなさ過ぎる。そもそも、実力者しか出来ないような力だしね。」


 そうなんだ。

 それだけ難しいんだね。


 それを為すには、魔力の量とコントロールが求められる。

 魔力を扱えるからといって、出来る事ではないのだ。


「そうか。才能がない私には無理という事だな。あれ? でも、闘気を纏えるのが向こうに沢山いるんだろ? それって不味いんじゃ?」

「そうだよ? だから困っているんだよん。」


 闘気を纏えるものがいる。

 つまり、その分実力者がいるという事だ。

 それは、数で覆るようなものではない。


「じゃあどうするんだ?」

「強行突破。しかないかな? 住民を巻き込んじゃうかもだけど。」


 だけどって。

 やっぱり避けられないんだね。


 実力者を相手にするには、被害が出るのは避けられない。

 ならば、巻き込むのを前提で戦うしかない。

 しかし、そんなものを見過ごせるフィーではない。


「ならば、私も行こう。」

「…話、聞いてた? そもそも、君の出番はここまでの筈でしょ?」

「それは、魔族を相手にするって話の事だろう? 避難民がいるなら話は別だ。」


にゃ。


 そうだね。

 そう言うと思ったよ。


 最初の作戦では、フィーの出番は王都の前までだ。

 それと同時に、避難民の事は含まれていない。


「そういう人達だったね。君達って。」

「まぁな。なに、ただ避難民を助けるだけだ。今までと変わらない。」

「そうだねー。それぐらいなら良いかな?」


 何も実力者の魔族と戦う訳ではない。

 住民を助けるくらいならフィーでも出来る。

 すると、リュノが話に割り込む。


「連れてくの? 危ない、よ?」

「分かってるよん。でも、彼女達の可能性にかけてみるのも良いんじゃない?」

「それは、まぁ、そうだね。」


 今までのフィー達がして来た事を見てきている。

 だから、ここまで来るのにも許している。

 自分達のサポートを任せられる程に信じているからだ。


「どうやら決まりだな。」

「では我々も…。」

「いや、君達はここの防衛。君達がいなくなったら、誰が魔物の流出を止めるんだい?」

「…そういえばだな。」


 まだ王都の外に魔物が向かうかもしれない。

 それを止める者達がいなくなれば、誰が守ると言うのだろうか。


「しかし、そうなると彼女は一人で戦う事になるが。」

「では、私達が行きましょう。」

「え?」


 声を上げたのはカミーユだ。

 どうやら彼女がフィーのサポートに出るようだ。

 正確には、彼女が操縦する馬車だ。


「カミーユこそ危ないだろう。」

「大丈夫です。今まで通り、ですよね?」

「え? それはそうだが。」


 フィー自身が言った事だ。

 今までと変わらないと。

 それを聞いたキュリアが笑う。


「あっはっは! 一本取られたねー、フィーちゃん。」

「一本って…。それで良いのか?」

「うん良いよ。彼女なら任せられる。それに、彼女も行きたいだろうしね。」

「そうなのか?」

「はい。よろしくお願いします。」


 カミーユにも、行きたい理由があるのだ。

 キュリアもまた彼女を信用しているようだ。

 そんな事もあり、王都に乗り込むメンバーが決まる。


「よし。そうと決まれば、早速乗り込むよ。準備は良いかい?」


 キュリアが一同を見る。

 すると、一同が頷き返す。


「そんじゃ、取られた王都、取り返しに行っちゃうよん。」


 こうして、王都奪還の戦いが始まるのだった。

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