カミーユ達と合流です
「知り合いか?」
「あぁ、こんな所で会えるとは。っと、その前に魔物だな。」
まだいるからね。
片付けなきゃ。
まずは目の前の魔物を倒さないといけない。
しかし、リュノのお陰で大分楽になっただろう。
残った魔物を全て蹴散らす。
「何とかなったか。」
「今度からは、周囲も警戒しないとか。」
「そうだな。」
「なら、早速指示を出しに行こう。」
他の兵士へと報告に向かう兵士長。
魔物は、目に見える場所に現れるという事ではない。
その隠れた魔物を探す事も必要になるだろう。
そんな話をしている間にリュノが来る。
「やぁ、久し振り、だね。」
「まだ別れて数日だ。久し振りは早いだろう?」
「あー、そうだっけ? 時間が、経つのは、遅いんだねぇ。」
「ははっ、のんびりなのは相変わらずか。そうだ、リュノがいるという事は…。」
フィーがリュノの後ろを見る。
そこにあるのは一台の馬車。
そこから、兵士を連れた一人の女性が降りてくる。
「フィーさん!」
「お、お嬢様、お待ちよ。」
「カミーユ、やっぱりいたな。」
ご飯くれなかった人もいる。
って、そりゃそうか。
リュノは、元々カミーユと共に旅をしている。
なので、一緒にいるのは不思議ではない。
「フィーさん、にゃんすけさん、無事でしたかっ。聞きましたよ? 魔族と戦ったって。」
「どうしてそれを?」
「リュノさんを通じてキュリアさんから聞きました。」
「え? 知り合いなのか?」
にゃ?
そ、そうなの?
知り合いで無ければ連絡はしないだろう。
急な情報に、驚いたフィーがキュリアを見る。
「まぁ、彼女とは色々とね。リュノ君とは同じ組織の人間だし。」
「組織? って事は九人の一人か?」
「そうそう。」
リュノもまた、魔族と戦った内の一人。
だから、キュリアとも親交があるのだ。
当の本人を見ると、空を見ながら呆けている。
「そうは見えないが。しかし、助けられたのは事実だからな。」
にゃ。
だね。
見た目では、そんなに強そうには見えない。
しかし、助けられたのは事実。
信頼するには充分だろう。
すると、側で見ていたセイラにカミーユが気づく。
「あら? もしかして、フィーさんの知り合いですか?」
「え? えぇそうよ。えーと…。」
「じゃあ、私ともですね。よろしくお願いします。」
「え、えぇ。」
笑顔のカミーユがセイラへと詰め寄る。
それに対して、セイラは動揺している。
それを見たカミーユは慌てて離れる。
「あぁごめんなさいね。それよりその服、魔法学校のですね。では、王都から?」
「いいえ。魔科学の研究所で研修を行っていたわ。」
「じゃあ例の事件に…。あれ? でも何でここに?」
例の事件の被害者なら、町に残っている筈だ。
しかも、兵士でも何でもない一般人。
それが、こんな戦場のど真ん中にいるのが不思議のようだ。
「えーと。皆が心配なので王都へ向かう作戦に参加させて貰ったんです。生徒会長なので。」
「あらまぁそれは。って、え? 王都に? 作戦?」
あれ、知らないの?
それを聞いて、不思議そうに目を何度も開閉するカミーユ。
どうやら知らなかったようだ。
そんなカミーユを見たフィーがキュリアを見る。
「説明してなかったのか?」
「戦闘に集中したかったからね。こんなに早く会えるとは思えなかったし。」
後で知らせるつもりだったのだろう。
だから、こちらの事情を向こうは知らないのだ。
「えーと。それで、作戦って?」
「うん。そろそろ本題に戻りたかったし丁度良いか。んじゃ、フィーちゃんよろしく。」
「私が!? 今のお前が説明する流れだろう。まぁ、構わないが。」
押し付けられたね。
後はよろしく。
仕方ないので、フィーが説明していく。
王都までの魔物を倒していくこと。
キュリアを黒幕へと届ける事。
そして、それを実現させる為の作戦の事を。
「陣取り合戦ですか。それで皆さんもここにいるんですね。」
「そういう事だ。」
作戦の途中だからここにいる。
どうやら、今の現状を察してくれたようだ。
「そうですか。なら丁度良いですね。」
「え? 丁度良い?」
「えぇ。私達も目的は王都ですから。」
「ええっ!?」
カミーユ達の目的も王都だ。
だから、このような戦場で鉢合わせたのだ。
ただ、無闇に来たわけでない。
「あーでも、リュノがいるのならそうか。」
「えぇ、そちらと同じですよ。リュノさんを送り届ける必要がありますからね。それに、王都にいる私の家族が心配ですし。」
「そうか。王都出身だったんだな。」
カミーユは、王都の育ちだ。
つまり、家族もまたそこにいるのだ。
心配で見に行きたいのだろう。
そんなカミーユの横で、リュノがキュリアを見る。
「余計な事は、してない、よね?」
「してないよん。まだね。」
「おい。今、まだって言っただろう。」
「言ってないよん。」
言ったよね。
ボソッと言っても聞こえるからね?
猫の耳は誤魔化せないよ?
するかしないかはキュリア次第。
そんな風に言い合う横で、カミーユは何かを悩んでいる。
そして、暫くして両手を打ち合う。
「分かりました。私達も参加します。」
「え? 良いのか?」
「えぇ、目的は同じですからね。」
目的は同じ王都だ。
ならば、協力しても問題は無いだろう。
「良いですね? リュノさん。」
「うん、良いよー。楽になるに、越した事は、ないし。」
あっさりと受け入れるリュノ。
リュノとしても、仲間が増えるのは良い事なのだろう。
「と、いう訳です。」
「訳です。って、あっさりだな。他の仲間に聞かなくて良いのか?」
「えぇ。皆さんも同じ意見の筈ですから。ね?」
「勿論ですとも。我等はお嬢様に従います。」
隣で話を聞いていた兵士が頷く。
元より、その為の付き人だ。
それに、彼らとしても楽になるのを拒む必要はないだろう。
そうと決まったと同時に兵士長が来る。
「あの。そろそろ向かいたいのだが。」
「そうだな。陽動の筈が遅れてしまったな。急ごう。」
思いがけず、長話となってしまった。
既に他の陣地の戦士は、先に行ってしまっただろう。
そうして、作戦に戻ろうとしたのだが…。
「ちょい待ち。」
「どうした?」
「折角だし、作戦変更するよん。」
「作戦変更?」
駆け出そうとしたフィーを止めるキュリア。
どうやら考えがあるようだ。
「そうだよん。折角乗り物があるんだしさ。利用しない手はないでしょ。」
「利用するってどうやってだ?」
「あの上だよ。上に魔術師を乗っけて撃って貰うのさ。」
あー、固定砲台って奴?
上とは馬車の上の事だろう。
そこに魔術師を乗せて、周りへと魔法を撃って貰う。
しかし、提案したキュリアをフィーが呆れた目で見る。
「…自分が楽したいだけでは?」
「したい。と、言いたいけど、流石に前線に出るよん。乗せるのはセイラちゃん。そろそろ着いてくるのも辛いでしょ?」
「いいえ。まだ行けるわ。と、言いたい所だけど。」
流石の連戦で、疲れが出始めたようだ。
こうなると、周りから集めた魔力だけでは補えない。
どうやら、限界が来ているようだ。
「やっぱりね。カミーユちゃんもそれで良いでしょ?」
「良いですよ。ついでにアイナも乗せましょう。」
「んじゃ決まりだね。という事で準備開始! なるはやで!」
こうして準備を始める。
まずは、今までの者と兵士達が前線に立つ。
そこに、リュノと付き人の兵士が参加する。
「ふふ。よろしく、ね?」
「あぁ。頼りにしてるぞ。」
フィーとリュノが笑い合う。
その後ろで、付き人の兵士と俺が睨み合う。
「まさか、共に戦う時が来るとはな。」
「足を引っ張るんじゃないぞ?」
にゃっ。
そっちこそねっ。
考えている事は同じ事。
どちらも負けじと気合いを見せ合う。
そんな俺達の後ろに馬車が止まる。
「準備出来ましたよ!」
その馬車の指示席にはカミーユが座る。
その上には、セイラとアイナが掴まっている。
「よろしくね?」
「は、はい、こちらこそ。」
上品な出で立ちのアイナに、セイラが物怖じしている。
それでもと、横に並んで先を見据える。
そして、それを見たキュリアと兵士長が前に出る。
「あはっ。負ける気がしないね。そんじゃ、二回戦の開始だよん。号令よろしくね。」
「諸君! このまま一気に突き進むぞ! では、出撃!」
「「「おおおおおおおおおおっ!」」」
兵士長の指示で一同が走り出す。
二回戦目の戦場へと、最強の部隊が突き進む。