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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
146/284

陣地拡大です

「これで、全部!」


 最後の一匹をフィーが斬る。

 これで、全ての魔物を討伐する事が出来た。

 そんなフィーへと、兵士の長が近づく。


「どうやら、お互い上手くいったようだ。作戦に乗って良かったよ。」

「だな。これを繰り返せば、いずれ王都までたどり着く。」

「あぁ。と、言いたい所だが、このまま突っ込むと今度は私達が囲まれてしまうぞ?」

「そう言えばそうだな。」


 このまま進んじゃうとね。


 繰り返すほど、王都へと伸びていく。

 その代わり、今度はこちらが左右から挟み撃ちにされてしまう。

 しかし、そのような事は考案者も承知の上だ。


「だから今度は斜め十字に別れる。んだよん。」

「斜め十字?」

「そ。最終的には王都を挟む予定だからね。」

「つまり、陣を縦横無尽に広げるという事か?」

「そういう事だよん。」


 真正面から突っ込む必要がないのは、王都でも同じ事だ。

 とにかく、挟んで挟んで挟みまくる。

 そうして、王都を囲えるまでに広げていくのだ。


「ならば、四方に兵を分けよう。それで、送った先で二手に分かれさせれば良いんだな?」

「そういう事。話が早くて助かるねー。んじゃ、頼んだよ?」

「あぁ、任せてくれ。」


 そう言うと、兵士の長が去っていく。

 他の兵士へと、指示をしに行くのだろう。

 それを見送ったフィーがキュリアを見る。


「では、私達もまた分かれようか。」

「いんや。私達は正面突破だよ。」

「えっ? 言っている事が違うんだが。」


にゃ。


 ほんとだよ。

 どういう事?


 楽に戦う為の作戦のはずだ。

 それを無視してしまえば意味がない。

 それでも突っ込むと言うのだ。


「良いかい? 今回上手くいったのは、王都から離れているからだよ。王都に近づけば近づく程、敵も当然増えていく。それに、瘴気を持ったのも当然増える。」

「そういえば、濁った力が漏れでたのがいたのを感じたわ。」

「そうなのか?」


 魔術師のセイラには、瘴気を持った魔物がいたのが分かったのだろう。

 つまり、敵が送り込んだものが混ざっていたのだ。


「そうだよ。そんで、そんな奴らも増えていく。そうなると、ただの兵士では対処が難しくなるだろうね。」

「そんなになのか?」

「うん。魔物の中にも、こっちの獣のような大物がいるからね。」

「あー。そういえば、そんな話もあったな。」


 魔界にも、人の形ではないのも存在する。

 そういったものは、ただでさえ強いのに瘴気持ちだ。

 実力があるものでなければ勝てないだろう。


「そういったものを先に駆除しなきゃいけないからね。私達が先に出るしか無いんだよ。」

「でも、他の陣地にも出るんだろ? そういう奴らが。」

「だから真っ先に突っ込んで引き付けていく。無理なら引いて合流を待つ。それなら…。」

「三ヶ所から敵を叩ける。って訳ね?」

「そゆこと。流石に数が増えれば倒せるでしょ。」


 突っ込むからといって、全てを相手にする必要はない。

 無茶だと思えば、合流を待てば良いだけだ。

 そうなれば、三ヶ所から叩く事が出来て優位に立てる。


「ならば、我々も同行しよう。」

「え?」


 声がした方を見ると、先程の兵士長がいた。

 後ろには、数人の部下が着いている。


「丁度、その件について話そうとしててな。私達が出ようとしたのだが。」

「君達には、陣地取りを優先させたかったからね。ま、良いか。こんだけいれば、他は勝手に任せても良いかな。」

「だろうと思って指示は出してある。」

「へぇ。相変わらず、話がお早い事で。」


 元から出る気で指示を出し終えているようだ。

 こうして話はまとまり、班分けが完成する。


「そんじゃ始めようかね。号令は任せたよ?」

「うむ。では…各班っ、出撃せよっ!」

「「「おおおおおおっ!」」」


 兵士長の指示で、各班が四方に分かれていく。

 後は任せても問題ないだろう。

 それを見送った俺達は、王都への道を見据える。


「では、我々も行こうか。」

「厳しい道だけど無茶は駄目だよ?」

「えぇ。あくまで抑えて。」

「そして、冷静に。だな。行くぞ!」


にゃっ!


 しゅっぱーつ!

 ほどほどに暴れるよ。


 そうして、俺達も駆け出す。

 この先の道に待ち受けるのは強い魔物達。

 だからといって、怯える者はここにいない。


「前方に魔物の群れだ!」

「時間を取るまでもない。強い者は前へ! それ以外は討ち漏らしを!」


 この戦力なら、時間もかからないだろう。

 強い者を先頭に群れへと向かう。

 その直前…。


「その前に先手よ!」


 セイラが放った魔法が群れを襲う。

 その隙に俺達が突っ込む。

 そして、斬ったと同時に走り出す。


「このまま突っ切るぞ!」


 魔物がどうなったかを確認するまでもない。

 ついでのような感覚で群れを蹴散らす。


「次!」


 そのまま駆けて次の群れへと向かう。

 すると、群れの真ん中に大きいのが立っている。

 しかも、手には槍を持っている。


「中級が混ざっている!」

「私が行く!」

「ならば、切り開こう!」


 フィーの前に兵士達が出る。

 更に、その前に俺が出る。


にゃ!


 道を開けろっ!


 ポイントダッシュで更に切り開く。

 その分かれたのを兵士達が押さえる。


「今だ!」

「助かる!」


 その間を一気に駆け抜けるフィー。

 そこに、中級が槍を突き出す。


「避けろ!」

「分かっているっ!」


 突き出される槍を一回転して避ける。

 そして、再び前を向くと同時に横の槍を掴む。


「はっ!」


 その槍に剣を当ててへし折る。

 それと同時に俺が前に出る。


「にゃんすけ!」


にゃっ!


 あいよっ!


 俺が中級を蹴り飛ばす。

 そして、後ろに傾いた相手へと跳ぶ。


「はあっ!」


 そのまま首を槍で突き刺す。

 すると、その一撃で相手が倒れる。


「よし! 倒したぞ!」

「こっちもだよん!」


 振り返れば、小物の魔物が全員倒れている。

 どうやら中級の相手をしている内に倒したようだ。


「ならば次だ!」


 それからすぐに駆け出す。

 いちいち止まる必要はない。

 すると、二つの群れを見つける。


「また中級がいる! 魔法を使うのもだ!」

「分かれるぞ! 上のは魔術師に!」

「えぇ!」「やるよん!」


 キュリアとセイラへと呼び掛けたフィーが前に出る。

 そんなフィーへと魔法が迫る。


「撃ち落とすわ!」

「必要ない!」


 魔法を潜るように駆けるフィー。

 そのまま群れへと突っ込む。


「そうだったわね。じゃあ足場ね。土よ!」


 魔法を発動させるセイラ。

 すると、小物を押し退けながら土が盛り上がり中級への坂が出来る。


「助かる!」


 その坂を登って中級の下へ。

 そのまま斬りかかるも、相手が持つ棍棒に防がれる。


「くっ!」


 すぐさま後ろに跳んで着地するフィー。

 そんなフィーへと中級が棍棒を振り下ろす。


「遅い!」


 一回転して棍棒を避ける。

 それと同時に、相手の足を切り裂く。


「にゃんすけ!」


にゃ!


 任せて!


 膝を着いた相手を蹴り飛ばす。

 その隙に、相手のお腹を突き刺す。

 そして、降りてきた首を叩き斬る。


「良し!」


 中級を倒し剣の血を振り払う。

 それと同時に、頭上で爆発が起きる。

 

「完了! 戦い方は変わっても、がむしゃらなのは変わらずね? 貴方達。」

「そういう性分でな。出来た隙は任せたぞ?」

「最初からそのつもりよ。」


にゃ!


 頼りにしてるよ!


 そう言いながら駆け出す俺達。

 すると、同じタイミングで向こうも現れる。

 そして再び合流する。


「余裕はあるよな?」

「この程度で疲れるような鍛え方はしていないっ。」

「私もまだ行けるわ!」

「んじゃ、このまま進んじゃおうね。」


にゃっ!


 まだまだこれからだよっ!


 疲れるまでは、前に進み続けるだけだ。

 そうして、現れる群れを蹴散らしていく。

 その間、進むのを止める事はない。

 その筈だったが…。


「上来てるよん! 止まってね!」

「何っ!?」


 キュリアの指示で止まる一同。

 すると、こちらへ向けて大きな影が落ちてくる。

 その影は、大きな牙を向けて飛び込んでくる。

 それに向けて手を構えるキュリア。


「後輩ちゃん!」

「えぇ! 土よ!」「土よ!」


 影が来る方へと、土を盛り上げる。

 すると、そこへ何かが突っ込んでくる。

 土に阻まれた影は、それに顎を打ち付ける。


「フィーちゃん!」

「あぁ!」


 その土を駆けて跳ぶフィー。

 そのまま、影の正体へと剣を叩きつける。

 しかし、すぐに振り払われる。


「ぐっ。空でなければ落とせたが。」

「いや、充分だよんっ。」


 地を駆けて剣を振るうフィーでは、空の攻撃だと威力が落ちる。

 それでも、相手の頭からは血が出ている。

 そんな相手を兵士長が見る。


「ウルフか。血に釣られて来たのだな。」

「その割には物騒だがな。」

「それに大きいわ。」


 普通のよりも大きく、黒いもやに包まれている。

 普通の個体ではないのは明らかだ。

 その正体にフィーが気づく。


「瘴気か。という事は。」

「魔界に住んでた奴だね。来るよん!」


 飛び込んでくるウルフを避ける一同。

 破壊力のある牙が空を切る。


「まずは私が!」


 その隙を狙ってフィーが踏み出す。

 そして、剣を振るうが…。


「くうっ。」

「フィーさん!」


 危ないっ!


 その直前に、迫る牙に足を止める。

 それからすぐの牙を下がって避ける。

 すると、そこに火の魔法が飛んでくる。


「今よ!」

「あぁ!」


 行けっ!


 その魔法を受けて怯む相手へと踏み出す。

 そして、足を斬った後に首へと剣を刺す。


「はあっ!」


 そのまま剣を押して首を切り開く。

 すると、その傷口から血が吹き出す。


「やったわ!」

「いや、まだだね。」


 それでもウルフは立ち上がる。

 傷や血を気にする様子は見られない。


「瘴気持ちは、血よりも瘴気だよん!」

「そうだったなっ。」


 忘れてたよっ。


 瘴気を持った魔物は、瘴気で動き続ける。

 だから、血を失った所で意味がない。

 それを聞いた兵士長が前に出る。


「ならば、無くなるまで斬り続ければ良いだろう!」

「その通りだ! 一斉にっ…。」


 一同が前に出ようとした時だった。

 小さいウルフの群れが大きいのを囲う。


「子供か。親が押されているのを見て出てきたな。」

「どうするの? 同時に相手は難しいわよ?」

「それはそうだが…ん?」


 足音?


 言いかけた所で、周りから聞こえる音に気づくフィーと俺。

 すると、沢山の足音と共に矢が飛んでくる。


「戦っているぞ!」

「急げ! すぐに合流だ!」

「今行くぞ!」


 左右から合流してきた兵士達だ。

 仲間がいるのは向こうだけではない。

 その兵士達は、矢を撃ってウルフ達を牽制していく。


「増援はお互い様って所だなっ。」

「だねっ。引き付けるよん!」


 合流するべく下がっていく。

 そんな俺達をウルフ達が追いかける。


「土よ! 土よ! 土よ!」


 それを、セイラの魔法が止めていく。

 そうしている間にも、左右から兵士達が攻めていく。


「子供は俺達が!」

「その間に親をだな! 今度こそ一斉に斬るぞ!」


 フィーの指示で飛び込む一同。

 まずは、セイラの魔法が相手の目を焼く。

 更に、俺が蹴り飛ばす。


 ついでだよっ!


 攻撃を受けた相手は、たまらず顔を背ける。

 こうなると、自慢の牙どころではないだろう。


「良いぞ!」

「更に隙を作るよん! 続いてね!」


 その隙に、フィーとキュリアが足を斬る。

 そして、前に倒れるウルフの親へと兵士達が剣を刺していく。

 その度に、血と共に黒いもやが飛んでいく。


「これで、終わりだ!」


 とどめの一撃をフィーが刺す。

 すると、相手は倒れて動かなくなる。

 

「倒したぞ!」

「「「うおーーーーっ!」」」


 うん。

 なんとかなったね。


 フィーが剣を掲げるのに合わせて盛り上がる兵士達。

 これで一難は去っただろう。

 その筈だったが…。


「敵の増援!」

「まだ子供か!?」

「いえ、人型です!」

「何!?」


 気づけば、先程までの魔物達に囲まれていた。

 ウルフに夢中で気づかなかったのだろう。

 背を向けるように、中央に集まっていく。


「騒ぎを聞きつけてきたな。」

「次から次へとっ。」

「面倒な事になったね。もっぺん吹き飛ばそうかな?」


 囲むつもりが囲まれていたのだ。

 このままだと、乱闘は避けられない。

 それをどうにかしようと、キュリアが手を構えた時だった。


スゴーーーン。


 渦巻く突風が地面を走る。

 それにより、魔物達が飛んでいく。

 

「キュリアか?」

「違うけど…。」

「そうね。それに、この魔力反応は…。」


 突風は外から起こったのだ。

 内側のキュリアではないのは明らかだ。

 原因を確かめるべく、突風が起きた方を見た時だった。


「騒が、しいと、思った、ら。」


 その先には、斧を振り上げた姿の小さな影があった。


「あいつはっ。」


 まさかっ。


 そこにいたのは、共に戦ったばかりの人物。

 その人物を知らない訳がない。


「リュノ!」


 小さな影の正体はリュノだ。

 そんなリュノは、嬉しそうに斧を降ろす。

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