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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
144/284

初陣です

「どうしてここに?」

「勿論、一緒に戦う為よ。」


 諦めてなかったんだね。


 どうやら、一緒に来るつもりのようだ。

 先生に止められたにも関わらずだ。


「どうりでワープが重くなった訳だよ。」

「知ってて移動したのか?」

「そりゃ術者本人だし?」

「だしって…。そこは止めてくれよ。」

「無理! 飛ぶ直前に乱入されたからね。」


 流石のキュリアも、飛ぶ直前で止める事は出来ない。

 そこを狙って、セイラが乱入してきたようだ。


「そこまでして来たかったのか?」

「えぇ。魔法学校の皆の事を思うと、いてもたってもいられなくて。」


 見知った者達が辛い目にあっているかもしれない。

 そう思うと、自分だけが安全な場所にいる訳にはいかないのだろう。


「いきなりって事は、さっきの先生にも言っていないんだよな?」

「えぇ。今頃驚いていると思うわ。」

「だよなぁ。どうしたものか。」


 向こうもこの事に気づいてるだろう。

 そうなると、心配されているのは間違いない。

 それでも、セイラは一緒に行きたいのだ。


「まぁ良いじゃん? 来ちゃったもんは仕方ないって。それで君は?」

「私はセイラ。魔法学校の生徒会長よ。」

「おー。それはご立派。ちなみに私はキュリアだよん。」

「キュリア? …え? まさか貴方が?」


 キュリアの名を聞いて驚くセイラ。

 知っている名前のようだ。


「有名なのか?」

「えぇ。魔法学校を入学して一つの巡りが来る前に卒業した有名人よ。」

「それって凄いのか?」

「普通は三つの巡りだもの。その三分の一…いや、それより短い期間で卒業してるのよ。」

「それは、凄い。のか?」


 いわゆる飛び級って奴だね。

 まぁ実力は確かだけど。


 常識はずれの卒業だ。

 有名になってるのも頷ける。

 それを聞いた本人は、懐かしそうに記憶を辿る。


「あったねー。確か、学校を実験で吹き飛ばしたら無理矢理卒業させられたんだよね。そのせいで、どれだけ母上に怒られたものか。」

「なるほどな。扱いがぞんざいなのもそのせいなんだな。」

「それだけじゃないけどねー。」


 要するに厄介払いか。

 怒られるのも無理はないよ…。


 散々やらかしているようだ。

 それに振り回された結果に行き着いたのが卒業だ。

 実質、追い出されたと言っても良いだろう。


「それで、後輩ちゃんは来るの? 来ないの?」

「行くわ。その為に来たんだから。」


 決意は既に決まっている。

 それを聞いたキュリアは、満足そうに前に出る。


「ふーむ? そうと決まれば行くしかないね。って事で、今度こそ出発ー!」

「お、おいっ。」


 そう言いながら、浅い丘から飛び降りるキュリア。

 フィーの言葉は完全に無視だ。


「そういう事よ。それじゃあ行きましょう。」


 その後に続くようセイラが飛び込む。

 その動きに迷う様子はない。


「はぁ。どうなっても知らんぞ。」


にゃ。


 仕方ないね。

 どうにでもなれって感じだよ。


 そして、その後に俺達も続く。

 そうして、三人と一匹で戦場に飛び込むのだった。

 そのまま追い付いた俺達は、二人と並走する。


「それで、どうやって戦えば良いんだ? 別々って訳にもいかないだろ。」

「そうだね。魔力の消費を押さえたいし、魔法は後輩ちゃんに任せちゃおうかな?」

「えぇ、期待に答えて見せるわ。飛んでいるのを狙えば良いのよね?」


 上の存在とやりあう為に、魔力を残しておきたいのだ。

 つまり、セイラが宙に浮かぶ魔物を討伐。

 その間に、他の者達で地面の魔物を叩く。


「上手くいくと良いが。」

「やってみない事にはね。丁度敵が見えてきたし試してみようか。さぁ、初陣だよん!」

「了解だ。」「了解よ。」


にゃ。


 りょーかい!

 物は試し、ってね。


 走っている俺達の前に、魔物の群れが見えてくる。

 試すには丁度いい。

 なので、止まる事なく突っ込んでいく。


「先手頼めるかい?」

「任せて。火よ!」


 突っ込む前に、セイラが手を前に構える。

 その手から火が飛び出ると、魔物へと向かう。


「良い感じ。挟むよん!」

「あぁ!」


 火の攻撃で魔物の視線がセイラに向く。

 その前に別れた俺達が左右から襲う。


にゃ!


 とりゃ!


「はあっ!」


 俺が蹴り込んだ魔物をフィーが斬る。

 そして、目の前の群れへと突っ込む。


「えやっ!」


 その反対側で、どこからか杖を取り出すキュリア。

 そのまま、その中に仕込んだ剣を抜いて魔物を斬る。

 すると、魔物が二人を見るが…。


「火よ!」


 その隙を狙ってセイラが魔法をぶつける。

 それにより、魔物達が混乱する。


「今のうち!」

「決めるぞ!」


にゃ!


 ぶっ飛べー!


 残った魔物達を次々と斬っていく。

 そうなると、流石の上の魔物も俺達へと照準を向けるが…。


「そっちを見ている場合?」


 セイラが火の魔法をぶつけていく。

 よそ見をしている魔物には避ける事も出来ない。

 そうして、宙の魔物達を止めていく。

 その間にも、下の魔物達が減っていく。

 そして…。


「これでっ。」

「終わりだよっ!」


 残った魔物を二人で斬る。

 そうして、ついに魔物の群れを全滅させる。

 それを見届けたセイラが一息つく。


「大丈夫なのか? そういえばふらついてたが。」

「えぇ、魔力で補ってるから大丈夫よ。」

「そんな事も出来るのか?」

「魔法使いの基本よ。」


 魔力で体の活動を補っているのだ。

 そうする事によって、身体能力を補っているのだ。


「自分のではなく周りの魔力を取り込んで体に循環させる。そうする事によって、身体能力を上げたり魔法を早く構築出来る。」


 へー、そんな事も出来るんだね。


 魔力とは生命力の源だ。

 自分の魔力でも出来るが、空気に溶け込む魔力でも出来る。


「いわゆる、私たち魔術師の戦闘モードって奴だねー。自分の魔力に変換出来ないのが欠点だけど。でも、そのお陰で魔法使いでも戦場に立てるのさ。」


 魔法を構築する際に隙が出来てしまう。

 そうなると、自分の身は自分で守る必要がある。

 その時の為の自衛の力だ。


「身体能力か…。ちなみに、私にも出来るのか?」

「よくしてるじゃん。にゃんすけちゃんのだけど。」

「まさか、装身の事か?」

「うん。仕組みは同じだからね。」


にゃ?


 え? そうなの?


「自覚ないって感じだね。でも、分かってる筈だよん。」


 言われてみれば。

 なんか流れてるなーとは思ったけど。


 お面になった俺を被った際にフィーへと流れている力の事だ。

 フィーが限界を超えても動けるのはそのためだ。

 そんな話をしていると、魔物の群れが現れる。


「おっと、話している場合じゃないね。」

「しかも、今度はでかぶつもいる。気を引き締めろよ。」

「えぇ、先手いくわね。火よ!」


 先程のように火の魔法を放つ。

 しかし、今度は魔法で打ち消される。


「それならっ。火よ!」


 もう一度、火の魔法を放つ。

 それでも打ち消されてしまう。

 と、思ったが…。


「分かれて!」


 セイラの指示で火の魔法が分散。

 それらが魔物へと降り注ぐ。


「今よ!」

「はあっ!」「とうっ!」


 その隙に、俺達が魔物へと飛び込む。

 内側の火の魔法を受けて怯む魔物を狙う為だ。

 そうして、目を押さえる魔物を斬っていく。

 すると、大きな魔物が動き出す。


「来てるわ!」

「むしろ歓迎だっ!」


 手に持つ棍棒を振り上げる大きな魔物。

 あれを食らってしまうと終わりだろう。


「避けるぞ! あれ?」


 い、いない!?


 見渡してもキュリアがいない。

 そのせいで、棍棒がフィーへと向かう。


「ちょっ!?」


 魔物の群れに飛び込んで避けるフィー。

 その一撃で魔物達が代わりに潰される。

 すると、どこからかキュリアが現れる。


「ひゅーっ。ついでだけど、そのまま引き連れてくれると助かるかな。」

「おいっ! 他に言う事あるよなっ! というか、こうも魔物が多いと厳しいだろっ。」


 避けるのを邪魔されるかもしれない。

 そうなると、引き付け続けるのは難しい。


「じゃあ突っ込む?」

「それなら…賛成だっ。」


 だよねっ。


 逃げるのが難しいなら攻めれば良い。

 相手は棍棒を振り上げ突っ込んでくる。

 それに対して、二人と俺もまた突っ込む。


「はあっ!」「てやっ!」


にゃ!


 食らえ!


 同時に攻撃して相手を飛ばす。

 それを受けた相手は尻餅をつく。

 しかしすぐに反撃に出るが…。


「させないわ! 火よ!」


 火の魔法で、大きな魔物の手を焼く。

 その攻撃を受けた相手は、悲鳴を上げながら棍棒を落とす。

 その棍棒へと、キュリアが接近する。


「借りるよん!」


 棍棒を伸ばした影へと隠す。

 そして、すぐさま相手の上から落とす。

 それを受けた相手が悲鳴を上げる。

 そんな魔物へと、キュリアが手を構える。


「少し本気を出そうかなっ。」

「どうする気だ?」

「こうするんだよっ!」


 そう言うと同時に、棍棒から何かが伸びていく。

 それが伸び続けると、大きな魔物を巻き込んだ一本の樹に姿を変える。

 更に、他の魔物も巻き込んでいく。


「凄い。棍棒を魔法で成長させたのね?」

「せいかーい。んじゃ、何をするかも分かるよね?」

「えぇ。火よ!」「火よっ!」


 元の材質の木を成長させて大きくしたのだ。

 そんな樹へと、二人が同時に放った火が着火する。

 そして、絡み付いた魔物達ごと焼いていく。


「あははっ。良い肉になりそうだねーっ。」

「た、食べれるのか?」

「さぁ? だから食べたいんじゃない。君もどう?」

「…いらない。」


 何か分からないお肉はちょっとね。

 お腹が空いてもごめんかな。


 正体の分からないお肉に興味は湧かない。

 むしろ、食欲が無くなるだろう。

 そうこうしている間に、魔物達が焼けて炭になる。


「炭になったが。」

「火力を間違えたかな? まぁ仕方ないから次のを探すか。食べたフィーちゃんの反応が楽しみだー。」

「おい、今何を言った?」

「冗談だよ冗談。さー次行こう次。」

「ほ、本当だな? 本当なんだよな?」


 冗談に聞こえないんだよね。

 本当にやりそうな所があるからね。


 フィーを無視して歩き出すキュリア。

 その後を、フィーが追いかける。

 そんな二人を、セイラが呆れた目で見る。


「大変そうね。貴方達。」


にゃ。


 本当にね。

 巻き込まれないかヒヤヒヤだよ。


 フィーが巻き込まれたら相方の俺も一緒になるかもしれない。

 そんな悪い予感を振り払って、先に進んだ二人を追いかける。

 こうして、初陣を勝利で飾るのだった。

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