いざ戦場へです
魔物を倒し終えた俺達は、森を抜けて元の場所へと戻る。
すると、兵士の一人がフィーに気づく。
「おぉ、ご無事でしたか。」
「こっちは問題ない。それで、ここにいる魔物達は全て倒したのか?」
「なんとかですが、制圧できました。お陰さまです。」
おっ、やれば出来るじゃん。
見渡す限り、起きている魔物はいない。
戦っている兵士もいない。
どうやら、魔物達を制圧できたようだ。
「いや、役目を果たしただけだ。だが、これで終わりとはいかなそうでな。」
「どういう事です?」
「周辺の魔物が荒れているようだ。」
「周辺の魔物がですか?」
魔族の襲撃によって魔物達が暴れている。
そうなると、一回追い払ったぐらいでは諦めないだろう。
「もしかしたら、また来るかもしれないとの事だ。」
「そうなんだよね。その内わんさか来ちゃうよ?」
「わんさかですか…。」
うん、
わんさかだったね。
嫌そうな顔をする兵士。
先程のがまた来るかもしれない。
そう思うと、嫌になるのも仕方ない。
「まぁでも、自分が選んだ道ですからね。やるからには、きっちりとやりますよ。…怖いですけどね。」
「そうか。まぁ頑張れ。」
「はい、頑張ります。」
がんばれー。
自分で選んだ兵士の道から逃げるような事はしない。
それでも怖いものは怖いのだろう。
そんな、決意を固める兵士と別れて来た道を戻っていく。
そうして、広場で待っている先生と合流する。
「やぁ帰ったよー。」
「どうでした?」
「すでに戦争だね。仲間に聞いたら王都を取られてたって。」
「お、王都が!?」
王都は大陸の中心部。
そこには、あらゆる対向手段がある。
そんな場所が取られたというのだ。
驚くのも無理はない。
「魔法学校の皆さんは?」
「さぁ? さっきも言ったけど、情報が無いからね。」
「そんな。どうしましょう。私が離れなければ。」
「母上が離れなかった所でだけどねー。」
王都にある対向手段で止められなかったのだ。
凄腕の魔法使いが一人増えたところで足りないだろう。
「それで、貴方はどうするんです?」
「取り合えず、フィーちゃん達と一緒にかちこむよん。」
「かちこむ? まさか、王都に?」
「そうだ。と、言いたいところだが魔物の討伐だ。身の程くらい弁えているさ。」
流石にね。
あれだけボコられたし。
自分が乗り込んだ所で、足手まといになるのを知っている。
そんな無茶をして迷惑をかけるつもりはないのだ。
それを聞いた先生がキュリアを見る。
「貴方はそれで良いの?」
「うん。正直、道中が楽になるのは大歓迎だからね。知り合いを助けたい彼女と一緒に戦いながら進んでいく。そんで、それに乗じて私が王都まで楽に進む。」
「そういう訳だ。」
にゃ。
そういう訳です。
実際に、一緒に行く事でお互いにメリットが発生する。
それならば、否定する必要も無いだろう。
すると、どこからか声が聞こえてくる。
「それなら…私も…連れて行って…下さい。」
「え?」
声がする方を見ると、セイラが立っていた。
意識を取り戻したようだ。
震える足で立っている。
「私も行きます。生徒達を助けな…きゃ。」
「いや。そんな様子では無理だろう。」
「大丈夫。だから…。」
立つのも精一杯だろうか。
それでも、王都に残った生徒の心配が勝っているのだろう。
しかし、それはセイラだけではない。
だからといって、許される物ではない。
「授業じゃないのよ? 沢山の命が散る危険な場所なの。」
「分かっています。聞いてましたから。その上でお願いしています。」
セイラは、王都の現状を知っているのだ。
という事は、先程の会話を聞いていた事になる。
その上で言っているのだ。
「はぁ、危険な場所に大事な生徒を送れる訳ないじゃない。駄目よ、駄目。」
「そ、そんな。」
それでも許せる訳ではない。
責任者として、大事な生徒を戦争に送る事はできない。
「ちなみに母上は?」
「勿論行きたい所だけど。流石に、王都まで歩くのはね。」
「あぁ。年だからね…。」
パシーン!
「いっ!?」
先生がキュリアの背中を強く叩く。
すると、キュリアが地面へとダイブする。
「大丈夫か?」
「だ、だいじょばない。」
「そ、そうか。」
大丈夫そうだね。
地面に倒れたキュリアは起き上がらない。
しかし、冗談を言える余裕はあるようだ。
そんな娘を無視してフィーを見る先生。
「そういう事なので、私は着いていく事が出来ません。娘をよろしくお願いしますね。」
「あ、あぁ。むしろ、こっちが世話になると思うが。」
王都まで向かうとなると戦場に突っ込む事となる。
そんな場所に馬車に乗って向かうのは不可能だ。
「ま、そんな訳でさ、母上はゆっくり待っててよ。お茶でも飲んでさ。って、それじゃあ本当に年寄りにっ…。」
パシーン!
「ぐへっ。」
起き上がろうとしたキュリアの背中を再び叩く先生。
そして、キュリアもまた再び地面へとダイブする。
「凄いな。キュリアがいいようにされている。」
「フィーさんも何かあった時は叩きなさい。親の私が許しますから。」
「そ、そうか。」
それはそれでどうかと。
手を振る先生をに恐怖を抱く俺達。
その振りに容赦はない。
自分の娘であろうと容赦はない。
「恐るべし、母上。」
にゃ。
自業自得だよ。
地面に倒れたままのキュリアの肩に手を置く俺。
先程の二発は、完全にキュリアのせいである。
そんな倒れたままの娘を先生が見る。
「そういえば良いの? 戦い始まっているのなら時間は無いと思うけど。」
「おっとそうだった。さぁ行こう。新たな冒険が我々を呼んでいる!」
「切り替え早いなっ。」
そうだね。
でも、時間が無いのはそうだしね。
こうしている間にも戦火は広がっているだろう。
いつまでもこうしている訳にはいかない。
そんな事で、戦場へ向かおうとするが…。
「おっと、母上、お耳を拝借。」
「ん? どうしたの?」
先生の耳へと口を近づけるキュリア。
そして、何かを伝えている。
「え? えぇ、それぐらいなら。」
「んじゃ、頼んだよん?」
何かを確認し合う二人。
先生に布のような物を持たすと、再びキュリアがこちらへと来る。
「待たせてごめんねー。んじゃ、一気に飛んじゃうよん。近づいて。」
俺達が一ヶ所に集まると、キュリアのワープの魔法で移動する。
そうして、一瞬の内に先生の前から消える。
「頼みましたよ。それじゃ、私達も戻りますよ。セイラさん。そろそろ、皆さんも起きる頃でしょう。あれ、セイラさん?」
見渡しても、そこにいた筈のセイラがいない。
近くに隠れれるような場所はない。
そうなると、考えられる事は一つだけ。
「セ、セイラさん!? セイラさーん!」
それに思い至った先生が叫ぶ。
そうあって欲しくないと願いつつ。
それから先の戦場が見える場所へと俺達は降り立つ。
「相変わらず便利だな。その魔法。」
「どうもどうも。」
一瞬だったね。
文字通り、あっと言う間に移動したのだ。
初めての移動に驚く俺達。
「さて、それじゃあ出発だよん。」
「はい。」
「あぁ。って、え? ええっ!?」
えーーっ!?
俺達は、ここにいない筈の人物に驚く。
「さぁ、皆さんを救いましょう!」
その人物であるセイラは、剣を抱え直して俺達を見る。