森を抜けた先での光景です
悲鳴が聞こえる方へと走るフィー。
その横に、魔法でワープしてきたキュリアが現れる。
そして、そのままフィーと並走する。
「忘れもんだよん。」
「忘れ物?」
走るフィーへと、棒のようなものを投げるキュリア。
飛んでくるそれをフィーが掴む。
あ、それって。
「これは、私の剣か。」
「拾っといたよ。それでも無いよりましでしょ?」
「…あぁ。助かる。」
先程の戦いで折れてしまった剣だ。
元の半分程の長さしかない。
そんな剣でも、無いよりかはましだろう。
「んじゃま、一暴れしちゃいましょう。」
「あぁ!」
にゃ!
暴れちゃうよー!
そう言いながら、速度を上げて駆けていく。
その少し先の自然エリアでは、町の兵士が魔物と戦っていた。
「さっきの爆発といい魔物といいどうなっているんだ! うわっと。」
「今は魔物を倒すのが先だ。口より手を動かせ!」
「分かってるよ!」
魔物達を倒していく兵士達。
しかし、その数は多い。
平和な町に配属された兵士では対処が難しい。
「押せ押せ! 一般人の場所までいかせるな!」
「何があっても引くんじゃないぞ! 進め!」
それでも、町の人達を守る為に戦い続ける。
そこへ、フィーとキュリアが乱入する。
「はあっ!」
にゃ!
おらよっ。
飛び込むように、俺とフィーが魔物を倒す。
「狙い撃ちぃ!」
その後ろで、キュリアが空の魔物へと光の玉を投げ飛ばす。
そんな俺達に兵士が気づく。
「やめなさい。一般人はっ…。」
「ハンターだ。救援に来た。それなら文句は無いだろうっ。」
「っ! そうか、頼むっ。」
兵士が戦場へと戻っていく。
それを見届けたフィーが剣を半回転し逆手で持つ。
「さぁ、かかって来いっ。」
剣を構えるフィーへと魔物が向かう。
まずは、手前の魔物の拳をいなして横顔に剣を突き刺す。
更に、次に来る魔物の拳もいなして首へと剣を突き刺す。
「おらっ。」
その突き刺した魔物を蹴り飛ばすと剣を回して持ち直す。
その影に隠れながら次の魔物に接近。
そのまま、接近した魔物の首を横から一突きする。
しかし、そこに魔法の攻撃が迫る。
「っ!?」
「させないよん。」
その魔法の攻撃を、キュリアが魔法で打ち消していく。
更に魔法の攻撃で追撃を与えていく。
「空の魔物はどうにかするよん。君達は地上の敵の相手をしちゃってよ。」
「助かる!」
フィーと俺が地上の魔物を。
キュリアが空の魔物を倒していく。
「ほいよっ。」
キュリアが生み出した氷のつららが魔物を貫いていく。
「にゃんすけ、合わせろ!」
にゃ!
いつでもどうぞ!
複数来る魔物の拳をいなしていく。
そして、その魔物達を軽く蹴飛ばしていく。
そうして生まれた隙にフィーが突いていく。
「だいぶ減らした筈だが。」
にゃ。
減ってないね。
「うーん、どうやら奥から来てるね。」
減っても減ってもいなくならない。
その理由は、町の外から魔物が現れるからだ。
それを止めねば魔物はいなくならないだろう。
「援軍か。止めた方が良いな。」
「じゃあ突っ込む?」
「だな。私達は援軍を止めるっ。まかせて良いかっ?」
「あぁっ! これぐらいなら俺達でっ!」
そう言って、魔物を斬り続ける兵士達。
初めより数は少ないので何とかなるだろう。
それを見届けたフィーは俺を見る。
「一気に突っ込む! にゃんすけ!」
にゃ!
あいよっ!
お面になった俺をフィーが頭に付ける。
そして、剣に聖火を灯す。
「確かあの時はこうやって。」
ちりーん。
フィーが聖火に意識を向けると鈴がなる。
すると、剣が伸びていく。
「わーお。」
それを楽しそうに眺めるキュリア。
それを無視したフィーは、前の森へと駆け出す。
「これならまとめてっ。」
その森から現れた魔物を斬り飛ばす。
更に剣を伸ばしながら回転して斬り飛ばす。
更に回転しながら剣を鞭へと変えて魔物をまとめて掴む。
「はあっ!」
それを一旦宙へと振り上げ叩き落とす。
それを利用して入れ替わるようにフィーが宙へと跳ぶ。
「潰れろ!」
そう言いながら、手元に戻した鞭をハンマーに変えるフィー。
そして、それを魔物達へと降り下ろす。
「よし。このまま森に入るぞ。」
「着いてくよん。」
ハンマーを短い剣に戻したフィーが森へと突っ込む。
その後ろからキュリアが続く。
「まずは呼ばないとな。」
このまま無視をされては意味がない。
なので、手前の魔物のお腹を突いて叫ばせる。
すると、森に潜む魔物達がこちらへと気づく。
「充分だ。」
短い剣を逆手に持ったフィーは、役目を終えた魔物の首を斬る。
そして、前から来る魔物へと剣を突き出す。
「確かあいつは、こうやってたなっ。」
その剣先が伸びて魔物の首を突く。
更に伸びると、樹の間を潜りながら魔物の首を突いていく。
いつか見た蛇を纏う男の戦い方だ。
「よし。上手く再現できた。」
そのまま剣を聖火に散らして戻すフィー。
しかし、そこに上から魔物が迫る。
「頼んだ!」
「あいさっ!」
キュリアが隠しておいた光を解放する。
その光は、複数の細い線の光になって森の空を自由に駆ける。
そして、空の魔物を貫いていく。
「凄いな。なんでさっき使わなかったんだ?」
「生体反応を追いかけさせてるからね。兵士の人も貫いて良いなら使うよ?」
「無しだ! 相変わらず物騒だなっ。」
追いかける生体反応に味方も敵も関係ない。
そんなものをぶっぱなせば、兵士ごと貫いていただろう。
そんな会話をしている横で、追加の魔物を俺が見つける。
ガタガタ!
来てるよ!
「おっと。行くぞ!」
「あーい。どこまでも着いてっちゃうよ。」
「それは勘弁だ!」
再びフィーとキュリアが走り出す。
そして、先程のように魔物を斬っていく。
「それにしても、面白い事になってるね。その武器。ユリーシャをそそのかして正解だったよ。」
そう言いながら、キュリアが光を放っていく。
「お前の仕業かっ! 聞いたぞっ、この武器は戦いに向いてないとっ。ユリーシャがそんな剣を渡すとは思えなかったがっ。」
そう言いながら、フィーが剣を伸ばす。
「だって、気になるじゃん? どれぐらい育つか。」
光を放ちながら、平然と答えるキュリア。
「それで戦闘中に折れたらどうするつもりだったんだ!」
伸ばした剣をしならせながら怒るフィー。
「そんときはそんときだよ。君なら大丈夫かなって。」
「憶測かっ! そんな理由で渡すなっ!」
「仕方ないじゃん? あの時は、剣の事しか考える気がなかったもん。あははははっ!」
「こ、こいつっ。やっぱり信用出来んっ!」
吐き捨てるように言いながら剣を振るうフィー。
一方で、悪びれる事なくキュリアが笑う。
何を言っても無駄だと思うよ。
そろそろそういう人だって学ぶしかないね。
改めてキュリアの異常性を確認する俺達。
そうしながらも、魔物を倒していく。
そして、そのまま森を抜ける。
「抜けたか…なっ!?」
そして、その光景を目にする。
あちこちで火が上がる異常な光景を。
「どうなってるんだ?」
なんなのこれ…。
見る限り、多くの場所で火が上がっている。
そして、そこにいるのは沢山の魔物。
いつしか、知らない内に事態は大きくなっているようだ。
「いつの間にこんな事に。」
その光景に唖然とする俺達。
すると、後ろから耳に手を当てたままのキュリアが現れる。
「だから言ったでしょ? 始まったって。」
「だからってこんな急になんて。」
早すぎるよ。
少しの時間での間の事だ。
こんな事が起きるなんて予想もつかないだろう。
「私だって驚いてるよ。すでに王都は取られたらしいからね。」
「王都が!? いくら何でも早すぎる。」
「うん、早すぎるね。以前よりも圧倒的に。」
以前の襲撃では、ここまで広がるまでに食い止めた。
それは、それだけの時間があったから。
ここまでの早さは、キュリアにとっても意外だったようだ。
「で、どうするの? やるの? やらないの?」
「…ちなみにだが、これは大陸各地で起きているのか?」
「いーや。まだ、王都周辺だよ。でも、いずれは…。」
大陸中が目の前と同じ光景になるだろう。
そしてそれは、フィーが訪れた場所も含めてだ。
それを聞いたフィーが黙っていられる筈がない。
「そうか。なら、進むしかないな。」
「でも、死ぬかもよ?」
「それでもだ。先程、お前が言っていた理由とやらが出来たからな。」
ここで行かねば、出会った友が命を落とす。
しかし、行った所で助けられる訳でもない。
それでも、進むには充分な理由だろう。
「私には守りたい者達がいる。だから、お前の力を貸してくれ。キュリア。」
自分一人では無理だろう。
しかし、出来る者が隣にいる。
それを聞いたキュリアが笑う。