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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
141/283

ヤバイあいつの再来です

 大陸の中心にある王都。

 そこでは、多くの人が暮らしていた。

 どの人も、恵まれた環境での生活を楽しんでいた。

 そこに現れるは、暗黒の雲。

 そして、沢山の悪意。

 それにより、人々の生活が逆転する。

 逃げ惑う者達。

 それを庇いながら戦う者達。

 そこへと、複数の雷の竜が襲いかかる。



「はっ!?」


 フィーが目を覚ます。

 次に冷たい地面を感じる。


「ここは。」


 そして、何があったのかを思い出す。

 最後に見たのは、辺り一面を埋め尽くす破壊の光。


「生きている?」


 間違いなく巻き込まれた筈だ。

 死をも覚悟した。

 それでも生きている。


「どうしてだ?」


 そう思いながら、痛む体を起こして周りを見る。

 そこには、自分と同じく倒れた人達がいる。

 そして、自分の足元で倒れている者に気づく。


「にゃんすけ、起きろ。」


 激しくその者を揺するフィー。

 すると、俺が起きる。


にゃー。


 もう少し…。


「寝ぼけてる場合かっ。」


 はっ!


 更に揺すられて意識が戻る。

 そして、何があったのかを思い出す。


にゃ?


 あれ?

 そ、そうだ!


「ようやく起きたか。」


 急いで起き上がる俺も周りを見る。

 そして、今の現状を把握する。

 それと同時に、どこかから声が聞こえてくる。


「おや、ようやく起きたかね。」

「ん?」


 え?


 声がする方を見ても誰もいない。

 更に見渡すも、倒れている人達しかいない。


「こっちだよっと。」


 次の瞬間、地面の下から人の上半身が飛び出してくる。

 それを見た俺達が飛び退く。


「うわっ。」


 わっ。


「わって、酷いねぇ。人を見るなり。」


 いきなりの事で驚いたのだ。

 その反応を見て、地面から飛び出てきた人物は不満そうにしている。

 しかし、驚くのも無理はない。


「いやいや。いきなり地面から人が飛び出たら驚くだろう。」

「そう? じゃあ仕方ないね。あははっ。」


 その人物は、不満そうな顔を引っ込めて笑いだす。

 まるで、状況を楽しむかのように。

 それを見て呆れるフィー。


「全く、変わらずだな。キュリア。」

「お互い様だねー。」


 相変わらず変な人だよ。

 この人。


 その人物であるキュリアは、土の中で何かに背中を預ける。

 まるで、お風呂で寛いでいるかのように。


「ちなみに、どうして地面に埋まっているか聞いていいか?」

「え? そりゃ、土の中にいたくなったからだよ?」

「……だろうな。」


 聞くだけ無駄だよ。

 そういう人だもん。


 理由はいつだってその時の気分だ。

 自分の思うままに動くのは今更ではない。

 呆れてしまうのも無駄だろう。


「はぁ。それより、私達を助けたのはお前だな?」

「そうだよ。全ての人を見つけて隠してポイってね。いやぁ、大変だったよー。」

「そ、そうか。」


 大変だったのは分かるけど。

 そうは見えないのはなんでだろうね。 


 難しい事をしたのは分かるが凄みが感じられない。

 恐らく、地面の中で寛いでいるからだろうか。


「土のあたたかみー。」


 当の本人も、疲れを感じさせない程寛いでいる。

 しかし、助けて貰ったのは事実だ。


「とりあえず助かったよ。ありがとう。」

「どういたしましてー。」


にゃー。


 ありがとー。

 まぁ、いなかったら助かってなかった訳だしね。


 何がどうあれと、助けられた事にお礼を言う俺達。

 それでも、姿勢ひとつ崩さずに動かない。

 水に浮かぶように地面の中でたゆたう。


「そうだ。何があったのか聞きたいんだ…。」

「見つけましたよ!」

「ん?」


 フィーが喋ろうとしたが、誰かによって阻まれる。

 すると、今まで動かなかったキュリアが起き上がる。


「あ、ちょっと用事を思い出した。それじゃあね。」

「え、ちょっ…。」


 急に地面へと潜るキュリア。

 しかし、追いかけるように突っ込まれた手に首根っこを掴まれる。

 そして、地面の上へと引きずりだされてしまう。


「あやや。お久しぶりですお母様。ご機嫌うるわしゅー。」

「うるわしゅーじゃないわよ。まったく。」


 キュリアを引きずり出したのは魔法の学校の先生だ。

 情けなく丸まるキュリアを引き寄せる。


「連絡を一つも寄越さないと思ったら。」

「寄越そうとは思ったさ。気が向いた時にね。」

「気が向いた時っていつ?」

「さぁ。自分でも分かんなーい。あははっ。」

「でしょうね。」


 いつ気が向くかは、その時の気分次第。

 そんな自由気ままなキュリアに頭を抱える先生。

 その横で、二人の会話を聞いたフィーが驚いている。


「親子なのか?」

「そうだよ。以前言った筈だけど。」

「あぁ、言ってたな。」


 そういえば。

 言ってたね、うん。


 以前とが、村にいたときだ。

 そのような事を言っていた事を思い出す俺達。


「知り合いなの? 迷惑かけたでしょ。この子、自分の事を優先させる所があるから。」

「ま、まぁな。一応助けては貰ったが。」

「興味八割、目的二割なものなので。」

「威張らない!」


 目的の比率少ないね。

 もう少しあっても良いんじゃない?


 そうは言っても聞くつもりは無いだろう。

 それが、キュリアという人物なのだから。

 そんな娘を見て尚更頭を抱える先生。


「それで、今回は何があったの? 魔族って事はまた襲撃?」

「まーそんなとこ。しかも、ここの大陸だけね。」

「そんなとこって…。以前貴方達が倒したんじゃないの?」

「一番上はね。他は逃げられたよ。残念ながらね。」


 また?

 倒した?


 こちらを無視して会話を進める親子二人。

 先生から逃れたキュリアが地面に立つ。

 それを聞いた俺達は、当然の事ながら疑問を持つ。


「ちょっと待て。何の話だ?」

「あーそうだね。君達は知らないか。以前、魔族に襲撃された事があるんだよ。世界規模でね。」

「世界規模? それなら報せが広まっている筈だ。」

「まぁこっちの被害は食い止めたからね。」


 規模を考えると、歴史に残ってもおかしくはない事件だ。

 それでも知られてないのは、発覚する前に止めたから。

 だから、フィー達が知らないのも無理はない。


「えーとだね。季節が二つぐらい回る前かな? 魔王と五体の帝が、部下をこの世界にある七つの大陸へと送り込んだんだよ。」

「部下を?」

「そう。後で自分達が進出する為にね。」


 目的は、この世界を乗っ取る為。

 簡単に乗っ取る為に、先に部下で荒らしたのだ。


「だけど、こっちもただではやられない。それに気づいたとある九人の人間が追い返したのさ。そんで、そのまま向こうに突っ込んで魔王を討伐。それでめでたく世界は平和になってめでたしめでたしって訳。」


 へー、そんな事が。

 どうりで知らない訳だ。


 それが実際に起こった事だ。

 世界の命運をかけた戦いが人目もつかない所で行われていたのだ。


「なるほどな。で、その一人がキュリアか。そういえば、世界を守る組織に所属しているとか言ってたな。」

「そうそう。その時の九人で作ったのがその組織だよ。」


 倒したついでに作った組織だ。

 倒したは倒したがまた来るかもしれない。

 それをどうにかする為の組織なのだ。


「で、その生き残りが現れたと。相手の規模は?」

「さぁ?」

「さぁって、他人事だな。」


 大陸の危機が迫っているのだ。

 それなのに、キュリアは慌てる様子がない。

 

「そうは言われても、情報が無いからね。まとめて来られたら間違いなく終わり。それで皆を集めようにも、間違えてたら他の大陸が狙われる。だから、情報が無い内は組織を動かせないんだよ。」


 向こうが全員で来るなら、こっちも全力で挑むしかない。

 しかし、他を動かせばそこの守りが手薄になる。

 そこを狙われたら対処のしようがないから動けないのだ。


「もしかしてだが、思った以上に危ない事になっているのか?」

「もしかしなくてもね。帝クラスを相手するとなると、組織の上の三人しか互角以上に戦えないし。」

「…ちなみにキュリアは?」

「六くらいだよ。詳しくは分かんないけど。」


 じゃあ無理って事だね。

 って、え? 本当にヤバイ?

 マジで?


 事態は思ったより深刻だ。

 場合によっては大陸も滅ぶ。

 それだけの相手が待っているのだ。


「とにもかくも情報が無いとね。」

「少なくとも、雷の帝はこっちに来てるわね。」

「だねー。それだけだと良いんだけど。」

「手伝える事は?」

「ない! さっき部下にボコられたのを忘れたのかい?」

「それは…そうだけど。」


 帝どころか部下にすら勝てない。

 そもそも、傷一つ与える事が出来なかったのだ。

 次に戦えば間違いなく命はない。


「いや、でも魔物ぐらいなら。」

「まぁ戦えるよね。でも、戦う必要があるのかい?」

「どういう事だ?」

「君が出来る程度の事は、普通の兵士でも出来る。いてもいなくても関係は無いよ。」


 もはや、上か下の相手のどちらかしかいない。

 上が無理なら下しかない。

 だけど、その程度なら兵士でも出来る。


「し、しかし…。」


 そうフィーが言おうとした時だった。


「うわーーーーっ。ま、魔物だーーーーっ!」


 どこからか悲鳴が聞こえてくる。

 それと、複数の破壊音。


「さっきの魔族か!」

「いや、奴は魔物を連れて引いてったよ。」

「えぇ、私も確認しましたよ。」


 先生として、安全の確認をしてくれていたようだ。

 そんな彼女が断言するなら間違いないだろう。


「じゃあ何が。」

「そんなの決まってるよ。」


 魔族はもういない。

 しかし、何かが襲撃に来ている。

 そうなると、考えられる事は一つ。


「始まった。って、事だよ。」


 大陸を狙った魔族が動き出した。

 恐らくは、その手下の魔物だろう。

 この間にも悲鳴は増えていく。

 それを聞いたフィーの目付きが変わる。


「行くのかい? さっきも言ったけど…。」

「すまない。理屈とか考えるのは面倒でな。」


 必要ないとか関係がない。

 ただ、助けたいから助ける。

 それだけの事だ。


「いてもいなくても良いんだよな? なら、いても問題は無いよなっ!」


 だねっ。


 そう言って駆け出すフィーと俺。

 その姿を見てため息を吐くキュリア。

 そんなキュリアを先生が見る。


「どうするの?」

「まあね。このままどこかの大陸に出て欲しいけど。」


 そう言いながらも、にやりと笑うキュリア。

 目的を考えると、フィー達には安全な場所に逃げて欲しいが…。


「それでこそ君だよね!」


 そう言って、キュリアもまた走り出す。

 興味の対象であるフィー達を追いかける。

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