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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
人魔大陸防衛大戦 フラリア王国編
140/283

始まりを告げる終焉の一撃です

「皆、構えて!」


 セイラの声で、生徒会のメンバーが手を構える。

 そして、その手に魔力を溜める。


「撃って!」


 そう指示すると、一斉に火の魔法を魔族へと撃ち込んでいく。

 そんな生徒会のメンバーを先生が止める。


「無駄です! 奴に魔法は効きません!」

「知ってます。」

「ならどうして!」


 生徒会は魔法学校で日々勉強しているのだ。

 魔族の事も当然知っている。

 それでも、魔法を撃ち続ける。


「そんなの決まってます。私達が生徒会だからです!」


 はっきりと迷わずに言うセイラ。

 それは、学校の代表という役目を勤める為。


「そうそう。生徒の皆がまだいるんだよ? なら守らなきゃ。」

「選ばれた事の意味。それを軽んじた事などありません。」

「だ、だから私達は、いつだって皆を先頭から導くんです。」


 誰もが自分の意思で戦っている。

 それは、代表に選ばれた事に誇りを持っているからだ。


「あ、貴方達…。」


 生徒会のメンバーの決意を聞いて狼狽える先生。

 そんなメンバーだが、彼女らの攻撃は魔族に傷一つ付けられない。


「そんな弱き力でどうにか出来ると思うたか? 舐められたものだ。」

「いいえ。今のは貴方の力量を確かめる為の物っ。本番はここからよ!」


 そうセイラが言うと、生徒会のメンバーが動き出す。

 そして、手を構えて魔力を灯す。


「さぁ、私達の力を見せてあげましょう! 放て!」

「火よ!」「風よ!」「火よ!」


 セイラの指示でアクティとソリューが火の魔法を放つ。

 その間から、フューリーが風の魔法を放つ。

 すると、風によって威力を増した炎が魔族を襲う。


「会長、今です!」

「えぇ!」


 三人の後ろにいたセイラへと呼びかけるソリュー。

 すると、今度はセイラが手を構える。


「土よ!」


 その言葉と共に、魔族の後ろに土壁が生まれる。

 その土壁は、魔族を覆うように姿を変える。


「そのまま焼けなさい!」


 土壁の中を炎が渦巻き温度を上げ続ける。

 魔物相手なら充分な威力だろう。

 普通の魔物ならばだ。


「下らぬ遊戯だ。化ける程でもない。」


 そう言いながら、魔族が拳を突き出す。

 すると、その拳圧が炎を払い生徒会のメンバーを襲う。


「ぐうっ。まだよ! 次!」

「水よ!」「水よ!」


 今度は、左右に別れたソリューとフューリーが水の魔法を出す。

 その水を浴びる魔族へとアクティが手を構える。


「ひえひえだよっ。さぁ凍っちゃえ!」


 アクティが氷の魔法を水に混ぜる。

 その度に水の水温が減り、氷へと変わっていく。

 しかし、魔族が軽く払った手により氷が砕ける。


「下らぬな。」

「そうでも無いよっ、さぁ皆!」

「「「風よ!」」」


 三人が砕けた氷を風でまとめていく。

 更に、風で押し固めて塊を作っていく。

 そうして、押し固められた氷が三つ出来上がる。


「さぁ混ざれ!」


 そこに、先程の炎で生まれた熱波を一気に混ぜるアクティ。

 その直後だった。


パーン! パーン! パーン!


 爆発した水蒸気が魔族を襲う。


「決まった!」


 かなりの衝撃が魔族を襲っただろう。

 しかし、傷一つ付かないままの姿で現れる。


「効いてないっ。」


 今の一撃でも、ダメージすら無かったようだ。

 平然と立ち続ける魔族は、拳を上に掲げる。


「哀れな物だ。爆発など、魔法を使うまでもない。」


 魔力の塊を地面へと叩きつける魔族。

 すると、それが爆発し生徒会のメンバーを襲う。


「「「「きゃあっ!」」」」


 その威力は、水蒸気を利用した爆発よりも遥かに上だ。

 その衝撃を受けた生徒会のメンバーが簡単に吹き飛んでいく。


「皆さん!」

「ぐうっ。」


 相当なダメージらしく、生徒会のメンバーは起きあがれない。

 そこへと、魔族が手を向け魔力を溜める。


「余興の礼だ。楽に死なせてやろう。」

「ぐっ、させない!」


 生徒達を守ろうと結界を張る先生。

 しかし、薄い結界に先生の顔が歪む。

 そこへ、魔力を放とうとした時だった。


「オーディル様! 見つけました!」

「ほう?」


 魔族の元に、一匹の魔物が近づく。

 その手には、沢山の魔科学武器を抱えている。

 それを見た魔族が魔力を散らす。


「これが例のか。たいした物には見えんがな。まぁ良いだろう。持っていけ。」

「はっ。」


 魔族の指示を受けた魔物が通路の奥へと向かう。

 すると、魔科学武器を持った大量の魔物が飛び出してくる。

 その魔物は、魔科学武器を持ったまま空へと去っていく。

 それを見送る魔族へと先生が叫ぶ。


「それを持ってどうするつもりです!」

「知った所で意味は持たぬであろう。」


 魔族は答えようとしない。

 これから死ぬ相手に教えても意味がないという事だろう。

 その間にも、魔科学武器が持ち去られていく。

 すると、一人の研究員が立ち上がる。

 

「やめろ。それは、私達の努力の結晶。魔物ごときが使って良いものじゃない!」


 その研究員は、魔科学武器の保管庫で出会った者だ。

 魔科学武器とは彼らの子供のようなもの。

 怒るのも無理はない。


「今すぐ返せ! さもないと。」

「どうなるというのだ?」

「こうするんだよ!」


 長く大きな箱を開けて、その中から剣を取る。

 それは、人工の聖剣だ。

 そこに魔力を注いで起動させる。


「そんな棒切れで何をするつもりだ?」

「決まっているだろ!」

「やめなさい!」


 先生の呼び掛けを無視して駆ける研究員。

 そのまま、人工の聖剣を振るうが…。


「食らえ!」

「ふんっ。」


 それを魔族が手で受け止める。

 それでも傷一つ付けるには至らない。

 代わりに、人工の聖剣の波動で地面が割れる。


「なっ。」


 地面を大きく真っ二つに割るほどの威力だ。

 それでも、魔族にダメージを与えるには至らなかったのだ。


「ほう。今度は面白そうだ。」


 割れた地面を見て笑う魔族。

 そして、そのまま剣を掴んで振るい研究員を振り払う。


「ぐうっ。」


 そちらを気にせずに、魔族が剣の持ち手を握り魔力を流す。

 それによる輝きは先程以上だ。


「ふははははっ! 気に入った。これは私がいただこう!」


 笑いながら、人工の聖剣を見る魔族。

 そんな魔族へと、研究員が掴みかかる。


「やめろ! 返せ! 私のだ!」

「邪魔だ!」


 掴みかかる研究員を魔族が払う。

 そして、魔族が人工の聖剣を振り上げる。


「試し切りといこうか!」

「駄目っ!」


 研究員へと振り下ろすつもりだ。

 その時、火の魔法が魔族に直撃する。


「ん?」


 火の魔法が飛んできた方へと視線が集まる。

 そこでは、セイラが震える足で立っていた。


「セイラさん!?」


 倒れそうになる足を胸で抱える剣で持ちこたえる。

 そして、顔を上げて魔族を睨む。


「私は皆と違って実力で選ばれた訳じゃない。実力も何もかも偽物。でも、選ばれた事には変わらない。だから、最後まで立つ。私が倒れたらっ、誰が皆を導くの!」


 そう叫びながら、構えた手に魔力を込める。

 すると、そこに混ぜる魔法が乗った別の魔力が宿る。


「うんうん、それでこそかいちょー。」


 声がする方には、アクティが倒れたまま手を伸ばしていた。

 すると、更に別の魔力がセイラの魔力に宿る。


「お供しますよ。」


 今度は、倒れたままのソリューが手を伸ばす。

 すると、更に別の魔力がセイラの魔力に宿る。


「私達も気持ちは同じだから。」


 今度は、倒れたままのフューリーが手を伸ばす。

 すると、セイラの魔力が複数の魔力と混ざって一つになる。


「この力があれば。」

「どうにかなると? 所詮は小さき力が集まっただけの事。」

「そんな容易い力じゃ無いわ!」


 その力は、ただの魔力の塊ではない。

 それぞれの思いが乗った力。

 それが、魔力の力を高めていく。


「そうそうっ。魔力は気持ちで高まるのだ!」

「貴方なんかには分からないでしょうね!」

「私達の気持ちはあの時から一緒だから!」


 生徒会を結成した時の事だ。

 それぞれ思いは違えど気持ちは同じ。

 その気持ちが魔力を高めていく。


「良いだろう。試してみろ。」

「くっ、余裕ぶるのも今のうち…よっ!」


 そうして出来た魔力の塊を魔族へと投げる。

 魔法ではない純粋な魔力の塊。

 それを、魔族が手で受け止める。

 それでも魔力は消える事なく魔族を押す。


「これがその力とやらか。柔いな。」

「いえ。では、後はお願いします。」

「何っ?」


 セイラの言葉と共に魔族へと影が迫る。


「フィーさん!」


 その正体は、前へと踏み出したフィーだ。

 そのまま、残り続ける魔力へと剣を振るう。


「はっ!」


 魔族の手へと剣がぶつかる。

 それでも傷は付かない。

 代わりに、魔力がフィーの剣へと収束される。


「何がっ。」


 ここに来て初めて魔族が動揺する。

 予想外の攻撃のようだ。

 その事象をアクティが説明する。


「その剣は集める力を持っているっ!」


 剣の持つ集める力が、生徒会のメンバーの魔力を収束させているのだ。

 それによる一撃は、先程よりも強力だ。

 少しずつ魔族を押し始める。


「ぐうっ。」

「託しましたよ! 私達の気持ち!」

「あぁ。皆の代わりに一撃をっ!」


 ぶちこもう!


 フィーが更に踏み込む。

 すると、魔族が足で踏ん張りだす。


「うおおおおおおおおおおおっ!」


 更に押し込むフィー。

 そこに、自分の気持ちも乗せて相手にぶつける。

 しかし、押されているはずの魔族が笑う。


「お見事だ。しかし悲しきかな。そんな剥き出しの力では。」


 次の瞬間、剣が二つに割れてしまう。


「我ら魔族には通らんよ。」


 剣が割れた事により、フィーが前へと倒れる。

 そこへ、魔族の拳が突き刺さる。


「があっ。」

「フィーさん!」


 一撃を受けたフィーが吹き飛ぶ。

 今度こそ立ち上がる事は出来ないだろう。


「さて、ここも用済みだ。終わらせようか。」


 そう言って、奪った人工の聖剣を天へと掲げる魔族。

 すると、激しい光が人工の聖剣を包む。


「なんて力なの!」


 その力は、魔法に精通している者が驚くほどだ。

 それでも更に光が強くなっていく。


「見事な物だ。これを作った者も。先程の一撃も。儚き命でも、こうして我らを驚かす者達がいる。その灯火が作る淡き光、認めよう。」


 そう言いながらも、更に魔力を込めていく。

 もはや、人工の聖剣が見えない程に膨れ上がっていく。


「そんなお前達を評して教えよう。我が名はオーディル。雷の帝に仕えし三武将が一人。さぁ、始まりを告げる終焉の一撃を見届けよ!」


 そう言って、魔族が人工の聖剣を振り下ろす。

 それにより、大地が光で包まれる。

 その光の中に大きな影が現れる。

 その直後に起こるのは、全てを無にする無慈悲な破壊。

 その一撃で、町の三分の一が消し飛んだ。


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