山の秘密を解き明かしました
大きな空間の中に神殿が建っている。
要するに、山の中にある事になる。
こんな田舎村の上にあるような物ではないはずだ。
何でこんな所に神殿が?
ゴブリンが作った?
それは無いか。
「見張りはいないか。行ってしまおう。」
フィーと共に、神殿の中へ。
中は大広間になっており、真ん中には祭壇。
そこには、大きな卵のような物が置かれてある。
「あれが大蛇?」
だろうね。
だって、あんなに丁寧に奉られているんだもん。
大蛇を崇拝している程だ
そんなゴブリン達が、別の物を置くなんてあるんだろうか。
そう考えると、大蛇の卵で間違いないだろう。
「立派なものだな。しかし、どうして大蛇の卵だと分かったんだ?」
それは確かに。
一見すると、ただの卵だもんね。
辺りを見渡す。
すると、絵が描かれた壁に気付いた。
大蛇とその周りに人がいる。
にゃん。
「ん? あの壁がどうし、あっ大蛇! そういうことか。」
あの絵を見て卵の正体に気付いたんだね。
それより、大蛇の周りの人は何してんだろう。
「何かを置いて崇めてる? 一体なぜ。」
普通に見たら、供物を捧げている様に見えるけど。
でも、絵の大蛇は卵じゃないよ。
「あの卵は、あの絵の大蛇が生んだのか? いや、流石に古いか。でも、子孫的なのは間違いないだろうか。」
そうだね。
でもだからどうしたって話だけど。
「これ以上、得られる物はないか。なら、後は直接卵を調べるしかない。」
にゃあ。
祭壇に登った俺達は卵の前に。
まず、フィーが触って確かめる。
「何もないか。」
にゃ。
じゃあ、次はキックで。
くらえっ。
蹴り跳ばすように、勢いよく蹴る。
しかし、びくともしない。
にゃあ。
って、駄目だ固すぎる。
まるで岩だよ。
「そうか。収穫は無しか。あれ? そういえば、あのゴブリン達はどこ行った?」
あれ、本当だ。
もしかしてこっちに来ていない?
周りを集中して見る。
すると、外から臭いがしてくる。
「どうした? にゃんすけ。」
もしかしてゴブリンの臭い?
まぁ、いいや。行ってみよう。
考えるよりも、直接見た方が早いだろう。
そう思った俺は、急に駆け出す。
「どこに行くんだ?」
臭いのする方へ向かう。
神殿の出入り口で停止。
その後ろに、フィーが追い付く。
「一体何があるんだ?」
ごめん。ちょっと集中させて。
臭いが分からなくなりそう。
自分達の周りには、誰もいない。
多分残り香かな。
やっぱりここを通ったんだ。
間違いないよ。
臭いを追って走り出す。
神殿の横を通り過ぎて奥へ。
フィーも黙って追いかけてくる。
すると、横穴を発見する。
「横穴の中に横穴か。ここにいるのか?」
にゃん。
間違いないよ。
この中から臭いがする。
それと、フルーツの香り?
確かめるべく、横穴に入る。
横穴の中は、下へと延びている。
階段状になったそこを下っていく。
そして、外に出た。
「これは、果樹園か?」
辺り一面の果樹園。
それと、見張りのゴブリン。
数は多く、果樹園の中を歩いている。
「ここで間違いなそうだな。」
にゃん。
やはりいたね。
だけど、残り香はフルーツの臭いで消されている。
これから先は分からないかな。
「取り合えず、見つからないように行ってみるか。」
にゃ。
それしかないね。
障害物も多いし行けると思う。
覗きこんでた横穴から出た俺達は、果樹園の中に紛れ込む。
こっそりと見つからないように、ゴブリンの横を抜けていく。
果樹園の中を歩いていくと、複数の建物が見えた。
「建物? こんな所に?」
山の奥だよ?
ゴブリンの家?
「行ってみよう。」
にゃん。
賛成。周りには、見張りがいないし。
中を見れば分かるでしょ。
さて、一体何がいるのか。
数あるうちの一つの建物に近付いて窓から覗きこむ。
そこでは、複数の人が寝ていた。
まさかの人発見。
「監禁されているのか。やはり、奴隷なのか?」
そう考えるのが一番正しいと思う。
大方、ここの果樹園で採取でもさせられているんだろう。
「しかし、良かった。死んでいないなら助けられる。でも今は、無理だな。」
見張りが多いもんね。
人を庇いながらなんて無理だし。
「ここから逃がすとなると、人手が欲しいな。」
この数の兵士を相手するとなると、俺達では無理だろうね。
それに、被り物をした奴に見つかったら大変だよ。
「仕方ない。ここは一旦引き返そう。カンテラに使う魔力も少ないしな。」
それは大変だ。
ここまでこれたのは、そのカンテラのお陰だ。
無くなったら確実に道が分からなくなる。
元の道を戻って横穴に。
その途中で、フィーが鞘を気にぶつけた。
「あ。」
あ。
フルーツが落っこちてゴブリンの前へ。
そうなると、流石のゴブリンも気づくだろう。
そのフルーツを持ったゴブリンは、不思議そうに頭をかく。
や、やりおったぁーっ!
「す、すまんっ。」
すまんじゃないよ。
見張りのゴブリンがこっち来てるよ。
戻るよっ!
見つかる前に、逃げなくてはいけない。
そうして建物の方に戻るも、そっちからゴブリンが来ている。
いや、四方から来ている。
「くそっ。囲まれたか。」
どうすんのさ。
見つかったら終わりだよ?
周りを見て出口を探す。
だからといって、何かが見つかる筈はない。
駄目かっ。なら、強行突破しかないかなっ。
にゃっ。
「考えがあるのか?」
落ちたフルーツを拾って駆け出す。
目の前に一匹のゴブリンが現れる。
ふぎゃっ?
見つかったが遅い。
フルーツを相手の顔に投げて気絶させる。
その先は山の斜面。
「まさかっ。」
にゃ!
そのまさかだよっ!
他に方法がないしね。
恨むんなら自分のポンコツを恨めっ。
気絶したそいつを蹴飛ばして山の下へ。
そして、俺とフィーも飛び降りる。
「くぅっ。」
山の斜面を滑り落ちていく。
止まらない。
しばらく滑り落ちると、整備された道に出る。
そして、とっさに現れた手すりに捕まる。
ゴブリンは更に下へ。
「はぁ、死ぬかと思った。」
ほんとだよ。
こりないよね、あなた。
今回は無いと思ったのに。
「本当にすまなかった。」
にゃうん。
まぁ、過ぎた事は仕方ないね。
それよりここはどこ?
「さてと、どうしたもんか。一応道があるけど。」
片方は上に延びて、もう片方は下。
道があるって事は、村に通じているはずだけど。
「上ってまさか、さっきの建物の所に繋がってるんじゃないか?」
言われてみれば確かに。
この上に向かっているなら、さっきの所に通じているのかも。
「ほら。私のおか、いたっ。」
脛をしばいておきました。
さっきのへまが無くなった訳じゃないんだよ?
反省は、して下さいっ。
「・・・戻ろうか。」
にゃっ。
今日は大人しく下へ。
フィーの魔力も少ないのでこれ以上は無理だ。
まさか最後にハプニングが起こるとは。
どっと疲れたよ。
「さて。村人が生きていたのは分かったけど、どうやって助けるかだな。」
問題はそこだよね。
道を降りながら考える俺達。
少なくとも、二人で出来るようなものではない。
「助けるには、村人の力が必要だ。なら、この事を伝える必要があるが。」
信じてくれないよね。
あんなに怯えてたし。
それに、大蛇は実際にいる訳だしね。
「うーむ。どう説明するべきか。そもそも、説明する事自体正しいのかすら分からんな。」
にゃー。
下手に怯えさせてしまうからね。
知らなければ良かったなんて事もある。
「どうする、にゃんすけ。」
にゃっ。
さぁ、どうしようかね。
謎は明らかになったのに、どう解決するかが分からない。
「私達でやるしか。あっ、にゃんすけ見ろっ。」
どうしたの?
あ、村だ。
やっぱり通じてたんだね。
降りた先には村がある。
村に繋がっているという予想は当たっていたようだ。
「ふぅ、帰ってきたか。」
整備された道を下りて村へ。
山道を出て村に到着する。
「魔力の消耗がこんなにもしんどいとは、今日はもう寝たい。」
同じく。
自分は魔力を使ってないけどね。
戦闘の疲れが取れてないよ。
家に到着。
カンテラを切って中に入る。
そのまま、布団にダイブ。
「あぁもう無理だ。」
瞼が重い。
体が睡眠を求めている。
布団に寝転んだ瞬間、一気に疲れが襲い来る。
目を閉じると、意識が無くなっていく。