生徒会メンバーと研究所の見学です
翌日、宿屋のベッドで目を覚ます。
「にゃんすけ、今日も良い天気だ。早速町に出るぞ!」
にゃ。
速いね。
もうそんな時間?。
町に出るのが楽しみなのだろう。
今にも飛び出そうな勢いだ。
そんなフィーを横目に入れつつ背伸びをしてベッドから降りる。
よし準備完了。
では。
「さぁ行こう!」
にゃー!
行こー!
勢いのまま宿屋を飛び出し町へと繰り出した。
そして、今日もまた出店エリアで腹ごしらえ。
そのままお店を冷やかしながら、研究所エリアへと移動する。
「少し早く来すぎたか?」
にゃ。
まだ昼前かな。
誰もいない。
研究所とは思えないお洒落な施設の前で立ち尽くす。
周りを見ても、人一人見当たらない。
と思っていたのだが。
「あーっ、面白そうな人発見!」
「ん?」
え?
声がした方を見ると、制服を着た少女が立っていた。
セイラと同じデザインの服から魔法学校の生徒だと分かる。
しかし、セイラと違って着崩している。
「ねーねー。どうしてここにいるの?」
「えぇと。一緒に見学する約束をしててな。」
「へーへー。でも、見学は昼からだよ? あ、もしかして早く来ちゃった? どじっ子だねぇ。まぁ、私もおんなじだけどね。あははははっ!」
「あ、あぁ、そうだな。はは。」
な、何この子。
テンション高すぎ。
あまりの明るさに引き気味になる俺達。
その少女は、目を輝かせてこちらを見ている。
すると、その奥から新たな人物が現れる。
「ちょっと、まだ生徒会の仕事は終わってません。すぐに戻りなさい!」
「えーー。もう見終わったじゃん。こっちは早く研究所に入りたいのにっ。」
「仕事が先です! 会長が待ってるので戻りなさい。」
「やだ。すぐに昨日の続きするんだー。」
「わがまま言わない! ったく、どうしてこんな人が副会長なの。」
なんか大変そう。
眼鏡をかけた少女は、項垂れるように肩を落とす。
それでも、明るい方の少女は引くつもりがない。
その少女はしばらく口を尖らせていたが、何かを思い付いたかのようにフィーを見る。
「そうだ。ほらほら、お客さんだよ。案内しないと。」
「一般の方の見学はまだ先です! って、私達の仕事でもないでしょう。ごめんなさいね。迷惑かけて。」
「い、いや。」
フィーにしがみつく明るい方の少女を眼鏡をかけた少女が引っ張る。
しかし、離さないようにとがっちりとしがみつく。
「は、離れない…。」
「いいじゃんいいじゃん。行こうよー。ね?」
「ちょっ、迷惑をかけない。ほら、離しなさい!」
今度は強く引っ張る。
それでも離れようとしない。
「やだー。折角見つけた面白びっくりコンビだもーん。一緒に来て貰うまで離さない!」
「なっ!?」
「お、おもしろっ!?」
コンビって言った!?
俺もなの!?
「う、うちのがごめんなさーい!」
眼鏡をかけた少女の絶叫が響く。
こうしてしばらく攻防が続くと、眼鏡をかけた少女が手を離す。
「ぜぇぜぇ。わ、分かりました。一応先生に許可を取ってみます。」
「やったー! だいしょーり!」
「はぁ。本当にごめんなさいね。少しばかり付き合ってあげて下さい。」
「そうしたいんだが、約束をしてて…。」
「大丈夫だって。ほら。」
「え?」
明るい方の少女が指をさす。
その先を見ると、二人の少女が近づいてくる。
その片方はセイラだ。
「先に来てたのね。仕方ないから生徒達を先に自由時間に…ってあれ? フィーさん?」
セイラがフィーを見つけて固まる。
というより、現状を見て固まっている。
そして、俺達もまた固まる。
そんな中、明るい方の少女が得意気な顔をする。
「まさか、会長の知り合いとは。」
「知らなかったの?」
「むしろ貴方は知ってたのですね。」
「うんうん。だって昨日一緒にいた所見たし。」
「言いなさいよ。まったく。」
そう言いながら、施設の廊下を歩いていく。
昨日の自然エリアの時の時だろう。
セイラを迎えにきた時に、フィーを認知していたようだ。
「会長も会長です。約束があるなら言って下さいよ。知ってたらすぐに対応出来たのに。」
「ごめんね? 私個人の話だったから。」
フィーは学園とは関係ないので、個人的な付き合いとしていたようだ。
だから、生徒会の仲間には話をしていなかったのだ。
「それでも、会長が戻るまでの報告は出来た筈ですよ。」
「えぇそうね。次からは気を付けるわ。」
申し訳なさそうに謝るセイラ。
しかし、どうやら話はまとまったようだ。
ただ一人を除いては…。
「えーと。会長の友人で。皆とも。あれ? それでどうして他の皆さんと?」
もう一人の、おどおどした少女が疑問を抱く。
セイラではなく他のメンバーと仲良くしてたのが気になるようだ。
「副会長が迷惑をかけたからです。貴方もちゃんと謝りなさい。」
「はーい。あ、着いたよー。」
「ちょっ。」
返事をしながらも、部屋の扉を開ける。
そして、中を覗くと扉の中へと入る。
「ほーこーく。生徒達は皆解散。後で勝手に来るよ。」
「ごくろうさま。あら? その子達は?」
どうも。
お邪魔するよー。
部屋の中にいた大人の女性が、部屋へと入った俺達に気づく。
すると、不思議そうに俺達を見る。
「会長の知り合いだって、これから一緒に見学するんだよ。」
「これからって、生徒会の仕事は? それに部外者を…って、その剣。」
「ん? これの事か?」
その剣がどうかしたの?
どうやら、フィーの剣が気になるようだ。
鞘ごと抜いたフィーは、それを大人の女性へと渡す。
すると、明るい方の少女も割り込んでくる。
「その剣面白いでしょ?」
「面白いかはともかく懐かしいわね。これをどこで?」
「とある村の巫女から貰った物だ。」
「その子は元気?」
「ん? あぁ、元気だったが。」
「そう。そうなのね。」
大人の女性は、懐かしそうに剣を撫でる。
そして、すぐにフィーへと返す。
「良いでしょう。生徒への指示はやっておくわ。皆さんは彼女達を案内してあげて。」
「ほーい。さー出発だよー!」
あっさりと決まったね。
まぁ良いなら良いんだけど。
明るい方の少女について部屋を出る。
そんな少女は、楽しそうに鼻歌を歌っている。
その背中を見ながら、セイラがフィーへと寄る。
「ごめんなさいね。こんなの騒がしくなるとは思わなかったわ。」
「いや、構わない。嫌いじゃないからな。」
にゃ。
うん。
こういうのも良いよね。
いつの間にかの大人数だ。
それでも、人と一緒にいるのは嫌いじゃない。
そんな話をしていると、明るい方の少女が歩きながら振り向いた。
「そーそー、そういえば自己紹介がまだだったね。どうもアクティだよ! では次。」
「いきなりですね。ソリューです。最後どうぞ。」
「えぇと。フューリーです。」
各々が順番に自分の名を名乗る。
ここにセイラを加えた全員が生徒会のメンバーだ。
「私はフィー。で、こっちがにゃんすけだ。」
にゃ。
よろしくです。
フィーと俺もまた挨拶を返す。
すると、アクティが口を押さえて笑いだす。
「あはは。これで君達も探検隊の一員だ。さぁ、準備は良い? んじゃ、しゅっぱーつ!」
「お、おぉー。」
にゃー。
おー。
アクティの明るさに押されながらも、見学へと出発する。
そこで見たのは、水や火や土を生活に活かす魔法を生み出すアイテムの研究だ。
研究員達がアイテムから生み出される物を調べている。
「凄いな。火や水が大量に生み出されていく。」
「注いだ魔力を転換しているのよ。」
「そーそー。それが出来る人って一握りだしねー。」
へぇ。
魔法が使える人って少ないんだね。
魔力はあっても魔法は使えない。
何故なら、相当な知識が必要だからだ。
おいそれと出来る物ではない。
「誰もが変換出来たら世の中便利になると思わない?」
「確かに。生活とかだいぶに楽になるだろうな。」
水や火を自由に出す事が出来るのだ。
そうなれば、どれだけ生活が楽になるだろうか。
「それが魔科学の主な研究テーマなのよ。」
「ほう。良い事づくめだな。」
だね。
まだまだこれからなんだろうけど。
人々の生活を豊かにする為の存在なのだ。
このまま、生徒会の説明を受けながら見学を続ける。
そうして、一通りの物を見終える。
「どうだった?」
「出来るのが楽しみだな。」
「そうね。私達もいつか関われたらと思うわ。」
その為の勉強だもんね。
頑張れ!
魔法が使えれば、生活のあらゆる物が楽になる。
いつか、そういう時が来るのだろう。
「色々と考えられてるんだな。勉強になっ…。」
「ちょっと待った。」
「ん?」
話をまとめようとしたフィーをアクティが止める。
見学は一通り終わった筈だが…。
「まだまだ。もう一つ、見せる物があるんだよね。」
「え? 見せちゃって良いの?」
「うんうん。あの部屋の研究員とは知り合いだしね。興味持つと思うよ。」
そう言ってニヤリと笑うアクティ。
そして、最後の見学へと俺達を導く。