懐かしの再開です
数時間のデータが一気に飛んだので書き直しました。
雑なところがあるかもです。
とまぁ、そんな訳でと。
「取ったぞー!」
取ったね。
周りに建物しかないけど。
宿を取る事には成功した。
しかし、奥の方にある宿屋だ。
ここからでは時計塔すら見えない。
「本当は中央エリアを見渡せられる場所が良かったが。まぁ、仕方あるまい。ここもここで良い場所だからな。」
にゃ。
それもそうだね。
中央エリアは見えない。
それでも、ここのエリアも芸術で溢れている。
楽しむには充分だろう。
「よし。宿も取れたし時間はまだある。もう一度町に向かうか。」
にゃー。
行こー。
寝るには早い時間だよ。
まだ時間は昼間だ。
夜を迎えるにはまだ早い。
そんなこんなで宿屋を出る。
「折角だ。宿屋の人におすすめして貰った通り、自然エリアから行くか。」
にゃっ。
そうだね。
折角だしね。
部屋を取った時に教えて貰った事だ。
教えて貰った通りにエリアを抜けて自然エリアへと向かう。
すると、目の前に芝生が見えてくる。
「おー。見えてきたな。相変わらず人も多い。」
にゃー。
ほんとだねー。
そこには、目に優しい草の色が一面に広がる。
その自然の色が見る人を癒す。
そして、その上で沢山の人が各々自由に満喫している。
「お。にゃんすけ、池だ。行ってみよう。」
芝生を避けるように続くレンガの道を歩いている。
すると、そこには大きな池が見えてくる。
そこにたどり着いたフィーは、池の周りの手すりに手を置く。
「平和だな。」
にゃ。
平和だね。
風にそよぐ草や、静かに揺れる池の水。
落ち始める夕日と照らされる時計塔。
そして、楽しそうに遊ぶ人達の笑い声。
「少し前まで命をかけた戦いをしてたとは思えないな。」
にゃっ。
そうだね。
夢でも見てたのかなって思っちゃうよ。
あんな事があったと思えないほどに平和な場所だ
そんな自然が溢れる場所で、戦いに疲れた俺達の心身を癒す。
「楽しい事もあったけど辛い事もあった。理不尽な世の中だ。でも、友が増えたのも事実だ。」
にゃ。
うん。
いっぱい会えたよね。
良い事も悪い事もある世界。
それでも、出会いや経験がフィーの心を満たす。
それが、フィーを次へと突き動かす。
「また、良い出会いがあるのだろうか。そう考えると、次の旅が楽しみになる。」
にゃ。
分かるよ。
それが旅の醍醐味だからね。
また辛い事があるだろう。
体を張る事もあるだろう。
それでも俺達は、旅を続けるのだ。
そんな風に黄昏ている時だった。
「はぁ、ようやく終わったわ。」
溜め息と共に足音が近づいてくる。
それに気づいたフィーがそちらを見る。
「あ。」
「え?」
ん? ああっ!
目が合う俺達。
そこにいたのは、見覚えのある人物。
「確か君は、馬車で会った?」
「え、えぇ。久しぶり。で、良いのよね?」
しばらく昔の事を思い浮かべる。
そして、考えがまとまったのか頷いた。
「セイラです。ようやく会えました。フィーさん。」
そう言って、フィーへと優しく微笑んだ。
「元気そうだな。」
「えぇ、貴方も。こんな所で会えるなんてね。」
旅に出たばかりの時に出会った人物。
そして、最初に仲良くなった人物だ。
「まぁ色々あってな。気づけばこんな所まで流れ着いたんだ。」
「じゃあ今も旅を続けているのね?」
「まぁな。」
にゃ。
何とか続いております。
「あら。にゃんすけさんも元気そうね。」
前に出た俺の頭を撫でるセイラ。
俺にもまた優しく微笑む。
すると、セイラが持つ剣がフィーの目に入る。
「それ、拾っておいてくれたんだな。」
「兵士の方が拾ったのを見てね。貴方に返そうって受け取ったのよ。」
大きな魔物と戦った時に無くした物だ。
それを、セイラが受け取ったようだ。
いつか再開した時に返せるように。
「懐かしいな。でかぶつと戦っている間にどっかいったんだったか。」
「えぇ。敵の魔法を真正面から突っ込んで行ってたわね。」
「あーあったあった。」
あったねー。
懐かしい。
大きな魔物の魔法を潜って接近したのだ。
その時、一緒に戦ったのを覚えている。
「あら、ランプはどうしたの?」
「無くなったよ。壊れてしまってな。」
「そう? まぁ、持ち歩くには大きかったしね。」
昔の話に盛り上がるフィー達。
懐かしい思い出が次々と浮かんでくる。
「でも、また出会えて良かったわ。いつ返せるかって思ってたもの。ただ…。」
「ただ? どうしたんだ?」
急に歯切れが悪くなる。
そんなセイラを不思議そうに見るフィー。
「実はこの剣って高級品でね。これを持っていたら、相当な家の娘と勘違いされちゃって。しかも、それで生徒会長にまで持ち上げられちゃってね。」
「そ、そうか。」
業物だしね。
それ。
そんな高級品の剣を普通の人は持たないだろう。
勘違いされるのも当然だろう。
「迷惑かけたみたいですまないな。でもそれ、にゃんすけに嫌われててな。」
「どうして?」
「まともに戦えないから。」
にゃっ。
そりゃあね。
ゴブリン一匹も倒せないし。
大振りになるせいで、振りの動きも遅くなる。
そのせいで、弱い魔物とも戦えない。
足手まといとしか言いようがないのだ。
「いや、ちょっと待てよ? 私はあの時より強くなった。もしかしたら振れるんじゃ? ちょっと貸してくれ。」
「え? えぇ。もともと貴方の物だから。」
大丈夫なの?
剣を受け取ったフィーは、鞘から剣を抜く。
そして、構えてから集中する。
「はぁ!」
勢いよく剣を振る。
以前より少し速い一振り。
と、共にフィーが飛ぶ。
「あ。」
「あ。」
あ。
そのまま地面へとダイブする。
「フィーさん!?」
「ぐ、ぐぬぬ。やはり無理か。」
残念。
というか酷くなってない?
早さどころか一振りすら出来ない。
もはや、戦いどころではない。
「す、すまない。もう少しだけ預かってくれないか?」
「え、えぇ。それは良いけど。生徒会長の仕事にも慣れたしね。ふふ。」
剣を受け取りながら苦笑いを浮かべるセイラ。
この剣があれば、生徒会長も安泰だろう。
「あー、まぁあれだ。ここにいるって事は、ここに学園があるんだな?」
「いいえ。学園があるのは王都よ。ここには授業で来てるの。就職先に有名な場所だから見学にね。」
「へぇ。」
校外学習って奴だ。
将来の為に勉強しに来たんだね。
魔科学の分野の勉強は、魔法学校でもされているのだろう。
就職の前に、どのような場所かを見に来ているのだ。
「ちなみに、どんな物を見るんだ?」
「主に、魔科学を生活に馴染ませるかね。朝は町の探索ね。さっき時計塔の中を見学したわ。それで、昼から研究所を訪問よ。そこで本格的なものを学んでるの。」
どうやら数日にわたって授業を受けているようだ。
そうして、未来の構想を作り上げているのだろう。
「ねぇ知ってた? 時計塔の中に大きな仕掛けが組み込まれてるのよ。それで、太陽や月の光が届く角度を調べて対応する場所に針を動かしてるの。」
「じゃああれは、太陽の角度を現しているんだな。」
へぇ。
確かに数字が書かれてないね。
針も一つだし。
この世界の時計は、時刻を表すものではない。
だから、数字もいらなければ針も一つで充分なのだ。
「面白いでしょ。気になったらフィーさんも見学に来る? 一般人向けの見学コースもあるからね。まぁ、私達みたいに奥には入れないけど。」
「そうか。私は行ってみたいが、にゃんすけはどうだ?」
にゃ!
行ってみたい!
興味あるよ。
「だそうだ。私達も覗いていくよ。」
「そう? それは良かったわ。その時は一緒に見ましょう。積もる話もあるしね。」
「だな。」
こうして明日の予定が決まる。
未知の探検に期待が膨らむのも無理はない。
そんな話をしていると新たな足音が近づいてくる。
「会長、時間ですよ! 戻りましょう!」
「今戻るわ! では、迎えが来ているのでこの辺で。また明日会いましょう。」
「あぁ、また明日。」
にゃー。
またねー。
俺達と別れたセイラは、同じ服を着た人達と合流する。
そんなセイラを手を振りながら見送る俺達。
「さ、私達も帰ろうか。」
にゃ。
そうだね。
もう遅いし。
辺りはもう暗くなっている。
どうやら、気づかぬうちに夜になったようだ。
エリアで遊ぶ人達も帰り始めている。
「今日は楽しかったな。」
にゃ。
楽しかったね。
人混みに紛れて宿へと向かう。
その道中、いきなり着いた明るい光が夜道を照らす。
「ん?」
にゃ?
何?
光源を探すと、お洒落なランプの光だと分かる。
色とりどりのランプの光だ。
それを見た俺達は立ち止まる。
「明日は研究所の見学。魔科学のご飯もまだ食べていない。まだまだ楽しめるものはいっぱいある。楽しみつくすぞ。にゃんすけ。」
にゃっ!
勿論だよ。
楽しもうね。
そうして再び歩き出す。
その興奮に歩む足を弾ませながら。