仕返しの一発です
「ふん、まだ竜と混ざっていないのがいたのか。いいだろう。お前達もすぐに仲間にいれてやる。やれ。」
指示を受けた二体の竜の戦士達が二人へと襲いかかる。
そして、その竜の戦士が振るった拳を武器で受け止める二人。
「見た顔があるな。斬ってしまっても良いものか?」
「全員がここの戦士達だからだろう。気にするな。後で文句を言われたら、鍛えてないのが悪いと言い返せばいい。」
「ふっ、了解だ!」
拳を逸らして胴体を斬り飛ばす二人。
すると、竜の戦士は吹っ飛んでいく。
そして、武器を構え直す。
「来い!」「来い!」
一連の動きを見て怯む戦士達へと告げる。
すると、魔族の顔が怒りに変わる。
「何をしてるっ。一斉にかかれーーーーーっ!」
「「「オオオオオオオオオッ!」」」
雄叫びをあげながら、今度は一斉に襲いかかる。
それに対して、二人もまた前に出る。
「おおおおおおおっ!」
まずはバレットが剣を振るい、先頭の戦士達をまとめて吹き飛ばす。
しかし、その隙を狙って戦士達が迫るが…。
「はっ!」
バレットの背中を蹴って飛び上がったフィーが空中で一回転。
そして、迫る戦士達に胴体をまとめて斬り飛ばす。
そのまま着地すると、そこにまた戦士が迫るが…。
「おら!」
今度はバレットが斬り飛ばす。
それでもまた、その隙を狙って戦士が来るが…。
「はっ!」
それをフィーが斬り飛ばすと、更にそこに迫る戦士をバレットが斬る。
そんな二人にまとめて迫る戦士達だが…。
「はあっ!」「ふっ!」
バレットの大振りとフィーの一閃に沈む。
どれだけ来ようが、この二人には通じない。
すると、今度は左右に分かれて武器を振るう。
「今度はこちらの番だ!」
群れに飛び込んだバレットが剣を縦に一回転。
その一振りに、多くの戦士達を巻き込み地面へと叩き込む。
「どうしたっ。誇りある戦士が聞いて呆れるぞ!」
そう言って、他の群れへと突っ込む。
そして、同じように斬り飛ばす。
そんなバレットの反対側で、フィーが剣を振るう。
「確かにな! 以前戦った方が活き活きしてて強かったぞ!」
そう言って、迫る拳を逸らしては胴体を斬る。
更に、同じように逸らしては胴体を斬る。
そんなフィーへと風の一線が迫る。
「あの時のか。」
じゃあ、今の攻撃って。
見上げると、以前戦った女の戦士が宙からフィーを見下ろしていた。
そして、一線を避けたフィーへともう一振りの風を飛ばす。
その風をフィーが前進して潜ると、女の戦士へと飛び込み斬り落とす。
「すげぇ、強すぎる。」
「数が減ってくぞ! 流石あいつらだ!」
後ろで見ている戦士達が、竜の戦士を減らしていく二人に感心している。
その一方、魔族は悔しそうに歯を食いしばる。
「くそっ、どうして敵わん! こうなったらお前達も行け!」
「「オオオオオオオオッ!」」
魔族の指示で、ウィロとスタークが動く。
小物では無理だと二人を動かしたようだ。
「ようやく来たか!」
フィーがスタークの攻撃を逸らす。
「待ちくたびれたぞ!」
バレットがウィロの攻撃を避ける。
そして、二人による反撃の一撃を叩き込む。
それでも、相手は間髪いれずに迫ってくる。
「よっと。」
フィーが迫る拳を避ける。
すると、拳圧による衝撃がフィーを襲う。
「まともに受けたら、ただじゃ済まないな。」
痛いじゃ済まないだろうね。
衝撃を生む程の一撃だ。
生身の体で受ければダメージは大きい。
「あぁ。しかし、そんなの今更だろう。」
同じように避けるバレット。
大きなダメージの攻撃など今まで何度もあったのだ。
今更、臆するようなものではない。
「確かになっ!」
そうだね!
そう言って、相手の攻撃を逸らすフィー。
それでもスタークは、肘、膝、拳、肩と連撃を入れていく。
それをフィーが逸らしていく。
それでも止まない攻撃を、逸らして逸らして逸らして逸らして逸らしていく。
そしてバレットも、避けて逸らしてとウィロの攻撃を流していく。
その度に、魔族の怒りも増していく。
「なぜだ! なぜ臆さぬ! なぜ引かぬ! 最強の戦士だぞ! どうして構わず前に出る!」
「「そんなの決まっている!」」
フィーとバレットが相手の攻撃を流して弾く。
「「こいつに!」」
二人してもう一方の手を握りしめる。
「「仕返す為だっ!」」
そして、その拳を目の前の相手の顔面へと叩き込む。
その一撃は、以前やられた一撃の分だ。
「くそがあああああっ!」
吹き飛ぶ二体の戦士を見て叫ぶ魔族。
それをした二人は、殴った拳を前に構える。
「すまないな、知り合いなのだろう? 思いきり殴ってしまったが。」
「構わん。私は殴る資格を無くしたからな。代わりに殴って貰って清々したよ。」
「そうか? なら、良いんだが。」
うん、上手く決まってたよね。
良い一発だったよ。
本当なら、フィーは自分で殴りたかった。
しかし、自身がウィロと同じ事をココルにしたと知って殴る資格を無くした。
だからこそ、代わりに殴ってくれた事にすっきりとしたのだ。
そんなフィーと違って、魔族の怒りは限界に達する。
「瘴気か。瘴気が足りないのか。分かった! そういう事なら、もっとくれてやろうではないか! さぁ! もっと暴れ狂え!」
そう言いながら、二本の針をウィロとスタークへと飛ばして突き刺す。
すると、強力な瘴気を漂わせながら立ち上がる。
「「ガ、グ、ゴ、ア、ガアアアアアアアアアアアッ!」」
苦しみながらも立ち上がる二人。
その体は、強力な瘴気で包まれる。
その瘴気の奥の眼光が、フィー達を睨む。
「瘴気が増えた? 何をするつもりだ?」
「禍々しい力だ。気をつけろよ。」
増えただけじゃ無さそうだもんね。
近づくだけで危険だと分かる程の瘴気だ。
それを警戒する二人だが、次の瞬間に二人の視界から消えてしまう。
「なにっ!?」「なんだとっ!?」
消えた!?
一瞬の事で理解が追いつかない。
フィーの頭の上にいる俺以外には。
ガタガタ!
上!
「っ、上か!」
「なっ。」
フィーの声に合わせて、上へと剣を振るう。
そして、上から来たそれを逸らすが…。
「「ガアッ!」」
逸らされた二体による追撃の蹴り。
それを受けた二人は、吹き飛ばされる。
「ぐうっ。」「がっ。」
地面へと落ちる二人。
そんな二人の目の前に、飛び込んでくる二つの影が現れる。
「「ガアッ!」」
「ぐっ!」「ちいっ!」
すぐさま起き上がった二人は、飛び起きるように避ける。
攻撃を避ける事は出来たが、そんな二人へと影が迫る。
「はっ!」「らあっ!」
一瞬の出来事だ。
それでも二人は、迫る攻撃を逸らす。
更に逸らす。
また来るも逸らしていく。
「何とか体勢は直したがっ。」
「早すぎるっ。」
動きが早すぎて、逸らすので精一杯なのだ。
一瞬の隙でも見せればやられると本能が察知する。
その状況を見て楽しそうに笑う魔族。
「ひゃっはっは! やはり、瘴気こそが全て! 持たぬ人間に負ける訳がないのだ!」
実際に、瘴気を打ち込んでからの力は圧倒的だ。
その力に、フィーとバレットが追い込まれていく。
その様子をココルが悔しそうに見る。
「こんなのおかしいよ。師匠は駒でも何でもない。ないのに…。」
気持ちでは分かっても止める事が出来ない。
ただ見ているだけしか出来ないのだ。
そんなココルの横で、空飛ぶ竜も戦いを見つめる。
キュルルン…。
悲しそうな鳴き声をあげている。
そんな空飛ぶ竜の顔をココルが撫でる。
「君も親が取られてたんだね。でも、力が無いから助けれない。私と同じだ。酷い事言ってごめんね。」
空飛ぶ竜もまた、親を人質に取られていたのだ。
自分と同じ境遇だから、その辛さが分かるのだ。
「私にも力があれば。あれ? そういえば、他の子は戦士の人と混ざってたよね? もしかして君にも?」
キュルン。
ココルに答えるように頷く空飛ぶ竜。
他の空飛ぶ竜と同じく、この竜も同じ物が仕込まれているのだ。
「やっぱりそうだ! 私、家族を助けたい。でも、私一人では出来ない。だけど、君の力があれば出来るかもしれないの。お願い、力を貸して。」
ココルと空飛ぶ竜の目が合う。
その目を通して伝える。
自分達は、同じ気持ちをもった者同士だと。
それさえあれば、返事などは必要ない。
「ん? おい、どこに行くんだ! 危ないぞ!」
止める声を無視して歩き出すココルと空飛ぶ竜。
一方、フィーとバレットがついに押し負ける。
逸らしきれない隙を狙われ追撃を食らう。
「くっ。随分と元気になったものだな。こっちは疲れてるというのに。」
「疲れ知らずか。このままだと負けるぞ。」
「分かってるさ。それでもだっ。」
「だな。」
押されてもなお武器を構える二人。
そんな二人へと、二つの影が飛びかかる。
向かい合う両者。
その時、その間にココルと空飛ぶ竜が割り込んだ。
「きゃあっ!」
「ココル!」「おい!」
横から突っ込んで攻撃を逸らした筈だが、押し足りなくて吹き飛んだ。
そんなココルへとフィーが駆け寄る。
「あいたたた。やっぱり無理か。」
「無事か? ココル。」
「うん大丈夫だよ。」
そう言って立ち上がるココル。
その横で空飛ぶ竜も立ち上がる。
「無理するな。下がっていろ。」
「大丈夫、戦うよ。フィーさんと一緒に。」
「ココル?」
そう言いながら、空飛ぶ竜と前に出る。
そんなココルへと二つの影が迫るが…。
「私達も戦う!」
そう言ったココルと空飛ぶ竜が光りだす。
そして、その光が二つの影を押し返す。
その光の中で、目を合わせたココルと空飛ぶ竜が頷き合う。
「さぁ行くよ。」
「ココルっ、何をするつもりだ!」
眩しいっ。
ココルはそれに答えない。
代わりに光の中から飛び出し、二つの影を殴り飛ばす。
「私も皆を守りたい。だからっ。」
そうして、ココルの姿が現れる。
見た目はウィロと変わらない。
しかし、違う所が一つある。
「だから、一緒に戦おう!」
そう言って、紫の光沢を帯びた鎧を纏った姿で構えを取る。