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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編
124/284

猛者達の戦いです

「「「わあああああああああああっ!」」」


 闘技場の盛り上がりは最高潮だ。

 その勢いは、闘技場全体に響く。


「始まりましたね。私達も行きましょう。」


 カミーユの言葉に、他の付き人が頷いた。

 カミーユ達もまた、作戦の実行を始める。

 そうして、警備員ばかりの通路へと突入していく。



『第一ウェーブ突破! 良いね! そうじゃないとねぇ! んじゃ、次のウェーブ来いや!』


 司会者がそう叫ぶと共に、開いた鉄格子の向こうから獣の雄叫びが聞こえてくる。

 その直後、激しい足音と共に沢山の影が飛び出してくる。

 その正体は、四つ足の獣に乗ったピグルンの群れだ。


「おいおい、なんだこりゃ。随分と仲が良いじゃねぇか。」


 ピグルンの乗せた獣達は、こちらを惑わすように周りを回っている。

 どこからでも攻撃を仕掛けられるよう動いているのだろう。


「餌の事しか頭にない獣が、アホのピグルンと仲良しこよしか。」

「どうやら、それだけじゃ無さそうだがな。」


 スタークの言葉に、開いた鉄格子を見る一同。

 すると、その向こうから更なる激しい足音が聞こえてくる。

 その直後、同じく複数の獣に乗った上位種が現れる。


「でけぇののオンパレードか。楽しませてくれよ!」


 まず動いたのはスタークだ。

 その少し遅れて、他の戦士達も続く。

 それに対して、上位種を乗せた獣も走り出す。


「突っ込んでくるか。だが、やる事はかわらねぇなぁっ!」


 まずは、前に出たスタークが突っ込んでくる獣を受け止める。

 その勢いで少し下がるも、完全に受け止めてしまう。


「ふんっ!」


 その状態から、掬い上げるように持ち上げひっくり返る。

 それにより、吹き飛んだ上位種へと飛び込み顔面を掴み取る。


「おらっ!」


 そのまま下へと投げて地面へと叩きつけると、その上から拳の追撃。

 地面ごと相手の顔面を砕き割る。


『先手を取ったのはチャンピオン、スターク! 他の戦士はどう出る!』

「流石チャンピオンだ。」


 そう言いつつも、バレットもまた剣を振るって獣の横へと叩きつける。

 そして、落ちてきた上位種へと真正面から剣を叩き落とす。

 それに負けじと、フィーとウィロも続けて斬っていく。

 しかし、相手はまだまだいる。


「おらおら! まとめて来い! っ! いや、後ろか!」


 前に出ようとしたスタークが振り向く。

 すると、目前に小さいピグルンを乗せた獣が迫っていた。


「ちいっ。」


 迫るピグルンを、難なく殴り飛ばすスターク。

 しかし、その隙を狙って上位種の方が来る。


「目障りっだっ!」


 それを向かえようとするも、小さいのが襲ってくる。

 しかし、その小さいのを投げて怯ませている内に上位種を狩る。


「ったく、アホのくせにやけに統率されてやがる。」


 突っ込んでくる上位種と小さいのとの連携に、少しだけ手こずっているようだ。

 そして、それは他の戦士達もまた同じ。


「こざかしいっ!」


 バレットが獣を倒した隙に小さいのが来る。

 それを斬り飛ばして、上位種にとどめを刺す。


「いや、見せかけだね。動きは単調だっ。」


 獣の横から突っ込むウィロの横へと小さいのが迫る。

 それを殴り飛ばしている内に大きいのが迫る。

 それを横に避けたウィロが、獣の顔を足場に上位種の顔面を砕く。


「くっ、早いのはどうもなっ。」


 上位種へと向かう前の道を小さいのが塞ぐ。

 それを一回転して斬り飛ばすも、そこに上位種が迫るが…。


おらっ!


 間に合った俺が蹴り飛ばす。

 そして、その上を跳んだフィーが上位種を突き刺す。


「行くぞ! にゃんすけ!」


にゃっ!


 行くよ!


 これが俺達の戦い方だ。

 今度は二人して上位種へと向かう。


『圧倒的だ! 行け! やれ! ぶちかませ!』


 止まらぬ戦士達によってプグルンの数が削られていく。

 すると、開いた鉄格子の向こうから大きな音が聞こえてくる。


「なんだ?」


 今までの賑やかな音とは違い大きな音だ。

 しばらくすると、巨大な影が現れる。


「カウルンか。」

「カウルン?」


 別の魔物?

 同じ二足歩行だけど。


 体の構造はピグルンとにている。

 しかし、ピグルンと違い大きな顔を持っている。

 更には、顔の両側から大きな角が生えている。 


『ウェーブはまだ終わって無いぜ? 次に行きたきゃ突破してみな!』


 第二ウェーブ最後の相手だろう。

 巨大なカウルンは、角を前に向け走り出す。

 そして、ピグルンの上位種をはね飛ばしながら突っ込んでくる。


「はっ、的が大きくなっただけだっ!」

「同感だね。」


 スタークとウィロが臆する事なく前に出る。

 どんな相手だろうと引くような者達ではない。


「させん!」

「遅れはとらん!」


 その後をバレットとフィーも続く。

 止まらぬカウルンの突進。

 しかし、止まらないのは戦士達も同じ事。

 カウルン目掛けて一斉に高く跳ぶ。


「「「「うおおおおおっ!」」」」


 繰り出される四つの武器。

 それを顔面に受けたカウルンは、ひしゃげながら吹き飛んでいく。


『吹き飛んだーーーー! 第二ウェーブ突破! 良いでしょう! 次のウェーブ! 始めちゃって頂戴!』


 司会者の声で、開いた鉄格子の向こうから何かが飛び出してくる。

 すると、そのまま地面に落ちている死骸に飛び込んだ。

 その正体は大きな虎。


「いきなりか。休ませてくれないなっ。」


 連戦だね。

 しかも、大物が相手だよ。


 現れた一際大きな獣達は、貪るように死骸を食べている。

 その途中、その中の一匹が戦士に気づくと吠え始める。


「来るか! いつでも来い!」


 前に出た獣に合わせて戦士達もまた前に出る。

 その時、それらをまとめて飲み込もうと地面の下から大きな口が現れる。


「どうやら、まだいるみたいだな!」


 横に跳んで避ける一同。

 直後、砂を飲み込むように口が閉じられる。

 その正体は、人を飲み込めるサイズの大きな鰐。


「こいつは一匹みたいだね。これで全部かな?」

「はっ、そんな生ぬるい場所な訳ないだろうが。」


 スタークの言葉通り、次から次へと影が現れる。

 長い胴体の鼠、蛇、熊、鳥といった生き物達。

 当然ながら、どれも人を飲み込める程大きい。


『さぁ、第三ウェーブ。肉食獣の祭典だ。食うか食われるか。果たしてどっちだい?』


 どの生き物も、肉を主食とする生き物だ。

 ただの人が踏み込めば、一瞬にして命はない。

 しかし、ここにいるのは普通の人ではない。


「そんなの決まってらぁ!」


 同時に動く戦士達。

 迫る鰐の口を避けたスタークは、その口を脇で抱えて持ち上げる。

 そして、ひっくり返すように地面へと叩きつける。


「ただ図体がでかいだけだ!」


 飛び込んでくる虎を剣で受け止めるバレット。

 そのまま押し返して地面へと叩きつける。


「遅いよ。」


 飛んできた鳥の翼を回転して避けるウィロ。

 そのまま翼へと裏拳を当てて地面へと落とす。


「蛇なら嫌な程戦い慣れてるさ。」


 そうだ、ねっ!


 俺が顔を蹴飛ばした隙にフィーが下へと潜り込む。

 そのまま踏み込むと、首を剣で叩き斬る。

 そして…。


「うらっ!」「だあっ!」「ふっ。」「はあっ!」


 首を貫くようなスタークの指突き。

 引き裂くようなバレットの剣。

 頭をかち割るウィロの拳。

 首を裂くようなフィーの斬り上げ。

 それぞれの強力な追撃が獣を沈める。


「後は二体。」


 駆けたフィーが熊を斬り飛ばす。

 そこに、とどめを与えようと剣を振るが…。


「点が入るのも二人、だな。」


 当然現れたスタークがフィーの剣を受け止める。


「なっ、腕でだと!?」

「気合いの拳は何物でも砕けぬのさ。覚えておくんだな、戦闘狂の新人。」


にゃ!


 これなら!


「無駄だ!」


 かったい!

 鉄でも蹴ってるみたいだよっ。


 俺の攻撃も軽く受け止められてしまう。

 生身の拳で剣と足を受け止めているのだ。

 俺とフィーは、一切の手加減なく攻撃してるにも関わらずだ。

 


「あまり、そう呼ばれたくは無いのだがな。」

「ふん、確かにな。噂とは裏腹に、お前の剣からは勝ちにいくという気配がしない。」

「っ!? …なんの事だ? 点数はほぼ互角の筈だが。」

「俺は戦闘に関しては勘が鋭くてね。そいつが、様子を見てるってーのを感じ取ってやがんだよ。」


 チャンピオンだけあって、人の動きを見るのが得意なのだ。

 その勘が、フィーの動きに気迫が無いと悟っているのだろう。


「…ただの実力の差だ。」

「そうか? まぁ良いや。それならそれでこいつを貰うからよっ!」


 勢いよく俺達の攻撃を弾いたスタークは、フィーと俺のお腹へとまとめて腕を掛ける。

 そして、そのまま遠くへと押し込んで吹き飛ばす。


「おらっ!」

「ぐうっ。」


にゃっ…。


 ぐえっ。


 その勢いは強く、俺達は空高くへと飛ばされる。

 その際、朝の会話を思い出す。



『私達の勝利の条件は二つ。マレーヌを助けてウィロを説得する事。もう一つは、相手の陰謀を暴いて邪魔する事だ。』

『うん。戦いに勝つ事が目的じゃ無いからね。』


 そうだね。

 それが出来れば最高だけど。


 闘技場での勝利が目的では無いのだ。

 皆を助ける事が出来れば、それにこした事はない。


『でも、場合に、よっては、ウィロさんを、勝たせなきゃ、ならない、よ。』

『暴く為に相手の思い通りにさせる。って事でしょ? 大丈夫。その時は助ければ良いだけだからね。』


 世話が焼けるよね。

 全く。


 最後まで分からなかった場合は、相手の目的を遂行させないといけなくなる。

 その時は、ウィロに何かが起きるのは間違いない。

 しかし、助けてしまえば問題ないのだ。


『それでは、私達は様子を見ながらウィロを優勝に導く。これで良いな?』

『うん。』

『私もだよ。頑張ろうね。リュノさん、にゃんすけさん、フィーさん。』



「フィーさーーーん!」

「はっ。」


 自分を呼び掛ける声で意識を戻すフィー。

 直後、柔らかい何かの上へと落下する。

 ココルが落ちるフィーを受け止めたのだ。

 その横で、俺はリュノの両手に収まるように落ちる。


「ふふ、キャッチ、だよ。」


にゃー。


 ナイスキャッチ。

 どうもです。


 何とか受け止められたお陰で地面に落ちずに済んだようだ。

 フィーを受け止めたココルは、フィーの顔を覗き込む。


「フィーさん、大丈夫?」

「大丈夫だ。意識は飛びそうになったが…。そうだ、獣は。」


 慌てて飛び起きたフィーは、倒れている筈の熊を見る。

 しかし、既にとどめをさされているのが見える。

 どうやら、取られてしまったようだ。


「取られてしまったか。まぁ私はいい。それよりウィロは…。」


 視線を交えて、もう片方の獣を見る。

 こっちに来なかったのは、そっちに集まっている筈だろう。

 すると、バレットを退けたウィロが獣にとどめをさすのが見えた。


「師匠の勝ち。何とかなったね。」

「あぁ。さて、次の戦いに備えよう。」


 そう言って立ち上がるフィー。

 それと同時に、司会者の声が聞こえてくる。


『これでも止まらないかっ。どうすりゃ止まるんだお前たち! ならば、次のウェーブに頼むしかないだろう! 第四ウェーブ、カモーーーーン!』


 そう司会者が叫んだと同時に、次の相手の足音が聞こえてくる。

 しかし、何かにぶつかったかのように大きな衝突音が聞こえてくる。

 入り口で詰まったのだろう。

 その直後、門が勢いよく吹き飛んだ。


『うおおおおおおっ。ド派手な登場だ! 一体お前は誰なんだーーー!』


 砂埃で何がいるのかが分からない。

 しかし、それは一瞬の事だ。

 すぐに、そいつが現れる。


「こいつは…竜か。」


 砂埃から現れたのは、翼のない巨大な竜。

 戦士達を見た瞬間、空高くへと力強く咆哮する。

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