話あいます
「と、いう事があったんだ。」
「つまり、ママを助けるのと主催者を捕まえるのを同時にする必要があるんだね。」
「そういう事だ。」
「なるほど。」
それを聞いたココルは、納得したように頷いた。
そして、呆れるように溜め息をつく。
「まさか、二人してそんな事をしてたなんてね。」
「黙っててすまないな。」
にゃ…。
すみません…。
はい。
一日過ぎて次の日の事だ。
俺達は、一番上のランクの戦士に宛がわれる個室にいる。
今日一日休みを取る事にした俺達は、知っている情報の整理をする事にした。
まず最初にと、潜入した時の事をココルに伝えたのだった。
「でも、それぐらいなら教えてくれてても良かったんじゃない?」
「それはまぁ、ココルが暴れて敵に突っ込まないようにって。」
「…真っ先に敵陣に突っ込んだフィーさんに言われたく無いけどね。」
「……返す言葉もない。」
にゃー。
あらら、一本取られちゃったね。
「にゃんすけさんもだよ? 黙ってた同罪だからね。」
にゃ…。
ごめんなさい。
あ、頬っぺたつつかないで頂けると…。
あ、はい…。
ココルによる圧に屈する俺達。
言い返せずに身を縮こませる事しか出来ないのだった。
しかし、真っ先に潜入をしたフ俺達に言われても説得力がないのは確かだ。
「ところで、どうして私の上に乗っかっているんだ?」
「決まってるでしょ。フィーさんを休めさせる為だよ。」
今のココルは、フィーの膝上に座っている。
昨日無茶をしたフィーを無理矢理にでも休ませる為だ。
「いや、私ならもう…。」
「ん?」
「いや、何でも…ないです。」
否定しようにも、ココルによる圧で黙らせられてしまう。
余計な事を言えば、勝手に無茶をした事を詰まられるからだ。
弱味を握られたフィーは、黙って従うしかないのだ。
「無茶してたの心配したんだからね?」
「あぁ、本当にすまなかった。リュノも黙っててすまないな。」
そう言って、横で黙って聞いていたリュノを見る。
そんなリュノは、問題ないとばかりに横に首を振る。
「いいよ。僕の、事は、気にしない、で。潜入の、事は、知ってた、し。」
「そうか、知ってたか。…ん? 知ってた?」
え? え? ん?
思いがけない言葉に、リュノに聞き返す俺達。
すると、リュノは楽しそうに自身の耳を指で叩く。
「通信、魔法、だよ。これで、向こうと。あぁ、メイドの人を、通じて、連絡しあって、るんだよ。」
どうやら、カミーユ側と連絡を取り合っているようだ。
ならば、フィーと俺の事を知っているのも頷ける。
「そうなのか。声まで飛ばせるとはな。本当に便利な物だな。魔法って。」
「まぁ、人を飛ばせる、ぐらい、だからね。声ぐらい、飛ばせる、よ。」
「まぁ、確かにだな。」
だね。
人を飛ばせるなら、それよりも軽い物も飛ばせるよね。
人だろうと声だろうと物は物だ。
魔法で飛ばせる物に変わりはない。
質量も軽い声なら、尚更飛ばせるという事だ。
「そういえばだけど、リュノさんの方の調査ってどうなったの?」
「あぁ、昨日の戦いで何か気づいてた風だったが。」
昨日の最後で行った戦いの事だ。
当然異変を起こした大物を見て、何かに気づいていたのを口にしていた。
「うん。大体、はね。気づいて、た? 三つ首の、子、死んでたの。」
「死んでた? 戦った時の事か?」
「うん。合体、した時、全部ね。」
合わさって一つの生き物になった時の事だ。
リュノによると、一匹残らず死んでいたらしい。
「まさか。じゃあ、どうして動いてたんだ? おかしいだろう。」
「うん。死んだら普通動かないよね。」
にゃ。
だよね。
俺達の疑問ももっともだろう。
死ねば動かなくなる。
普通の生き物ならば当然だ。
「うん、動かないよ。普通、ならね。」
「普通なら?」
「普通なら…まさか瘴気か?」
「正解…だよ。」
昨日の三つ首の犬は、普通と違い瘴気を纏っていた。
それが、死んだ三つ首の犬を動かしていたらしい。
「まさか、瘴気には死んだ者を生き返らせる力がある?」
「ううん、そうじゃ、ないよ。死んだ者を、動か、すんだ。」
「動かす?」
ゾンビ映画的な?
異世界だしありそうだけど。
魔法なんて物がある世界だ。
死者を動かす物があっても不思議ではない。
瘴気がまさにそれの事のようだが…。
「動ける死体、って、奴かな。魔界には、一杯、いるよ。」
「いる…のか。」
「うん、いる。」
「…いるんだね。」
にゃあ。
いるのかぁ。
瘴気が漂っている魔界では当たり前のようだ。
何やら背筋が凍る感覚を味わう俺達だった。
そんな中、昨日の別の会話を思い出すフィー。
「でも、一匹一匹がこっちの生き物って言ってたよな。」
「そうだよ。今までのって、魔界って所の話でしょ? 何で、こっちの生き物が瘴気ってのを漂わせてたの?」
にゃ。
うん、どういう事なのさ。
ここまでの話は全て魔界での話だ。
しかし、実際にはこっちで起きているのだ。
説明になっていない。
「だから、こそだよ。」
「だからこそ?」
「うん。だから、それ、そのものが、敵の目的、だよ。」
ありえない事が起きている。
誰かがしない限りありえない事だ。
それをしている者は考えるまでもない。
「多分、だけど、生き物に、瘴気を注入、しているんだと、思う。」
「つまり、死んだものを生き返らせてるのか。どうしてだ?」
「そこまでは、ね。でも、実験、みたいのを、してるのは、確かだ、よ。」
相手が何をしているのかは理解した。
しかし、それだけだと目的までは分からない。
何故なら、それだけでは無いからだ…。
「それなら、ママを拐って師匠を操ってるのは何で? 全然結び付かないよね?」
「それもまだ、分からない、かな。でも、関係ないとは、思えない。」
「同感だ。だから、絶対に止めなくてはな。」
「うん!」「うん。」
にゃ!
だね!
その為に来たんだもん。
必ず助けなきゃね。
相手が何を企んでいるのかは分からない。
だからといって、歩みを止める必要もない。
「でも、気を、つけてね。この祭りが、実験場と、するなら、決勝で、何かをして、くる筈だよ。」
「勿論だ。明日になれば体調も回復する。」
「私やリュノさんもいる。」
「負ける事は、ない。だね。」
にゃん。
その通り。
ここまで来たら勝つよ。
絶対にね。
助ける為に。
勝つ為に。
そう決意を固める俺達。
「では、明日勝つ為に出来る事をしないとな。」
「フィーさんはちゃんと休んでね?」
「……はい。」
ココルに戒められ、縮こまるフィー。
とにかく、各々が明日を万全な状態で挑む為の準備で一日を過ごす。
そして、ついに決勝の日がやって来る。