表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編
116/283

闘技場の闇です

「貴方達、ここまで来ちゃったのね。」

「あぁ、ウィロを追ってな。ココルも来てる。」

「あの子まで? 何て事…。」


 久し振りにあったと言うのに、その顔は沈んでいる。

 再開を喜んでいるようには見えない。


「マレーヌさん、何があった? 誰がこんな事を。」

「主催者の方です。私を捕まえて人質にしてるのよ。そのせいで、ウィロさんが…。」

「人質だと!?」


 人質だって!?

 無茶苦茶だよっ。


「ふざけたまねを。では、ウィロが闘技場に出てるのもそのせいか?」

「たぶん。何か実験をしているらしくて、協力したら私を離すと言ってたわ。それ以外の事は私がいないところで交わされたから知らないけど。」

「そうか。くそっ。」


 ひどい。

 こんなのが許されて良いの?


 マレーヌを人質にされたせいで、ウィロは抵抗できなかったようだ。

 闘技場で戦っているのも脅されたからだろう。

 そんな怒るフィー達の後ろで、カミーユがとある事に気づく。


「脅されて? そういう事なんですね。」

「どうしたんだ?」

「フィーさんが戦ってた時の事です。ウィロさんの主の貴族を見た事がないと。その貴族が主催者なら納得がいきます。」


 主催者なら観客席にいなくても戦いをみれるだろう。

 なので、わざわざ観客席に向かわなくても問題はない。

 これが、ウィロを駒として主を見なかった理由だ。


「主催者がこんな酷い事を。流石に見ていられません。アイナ!」

「了解。」


 カミーユの指示でアイナが扉を確かめる。

 鍵を魔法で開ける為だろう

 しかし、鍵は開かない。


「駄目です。魔法錠です。」

「魔法錠?」

「特別な魔法の鍵でのみ開閉出来る錠です。小手先の魔法では開かないでしょう。」


 そんな。

 じゃあ、助けられないの?


 開閉するには、特別な鍵が必要な錠。

 それ以外に開く方法は存在しない。

 つまり、どうする事も出来ないのだ。


「くそっ、こうなったら主催者とやらを問い詰めるしかない!」


 鍵が必要なら、持っている相手を問い詰めればいい。

 そう思い立ち上がるフィーの前に、カミーユが立ち塞がる。


「駄目です。人質にされている以上は、手出しする訳にはいきません。」

「では、放っておけと言うのか。こんなのおかしいだろ。」

「そうです。ですけど、アイナの検知に反応があったのは一人だけ。主催者はここにはいないという事でしょう。」


 ここにいるのなら、アイナの魔法に引っ掛かっている筈だ。

 しかし、引っ掛かかる事は無かった。

 闘技場にはいないという事だろう。


「でも、朝になったら来るだろう。その時を待てばいい。」

「待ってどうするのです? 何かあったら彼女が殺されます。それで良いんですか?」


 静かにかつ熱く睨み合う二人。

 しかし、それ以上に発展しないのはフィーも分かっているからだろう。

 怒りを堪えるように、悔しそうに俯くフィー。


「折角会えたってのに何も出来ないなんて。ふざけやがって。」


にゃん。


 気持ちは分かるよ。

 でも、どうする事も出来ないよ。

 本当に、ふざけるなだよ。


 マレーヌが前にいるというのに、何も出来ずにいる。

 その事実に、フィーの怒りが増していく。

 そんなフィーへと、鉄格子越しに寄りそうマレーヌ。


「大丈夫よ。知ってるでしょ? 牧場を一から作ったのは私よ。それに比べれば、こんなの対した事ないわ。助かる方法はきっと見つかる。それまで待つわ。待ってやるわよ。」


 優しく諭すように、フィーへと語りかけるマレーヌ。

 その顔には、絶望など微塵も感じない。

 それを見たフィーの顔が弛む。


「そうだったな。誰よりも辛い状況を乗り越えて来たもんな。うん、マレーヌさんなら出来る気がしてきたよ。」


にゃ。


 そうだね。

 誰よりも強い人だもん。

 きっと、大丈夫だよ。


 牧場を一から作り、困った人達をまとめて助けてきた。

 その心は、誰よりも強いのだ。

 そんなマレーヌが、この程度の事でまいる訳がない。


「でも、ココルには内緒でね?」

「どうしてだ?」

「だって、聞いたら絶対無茶するから。」

「確かにするだろうな。」


 どの口がだね。

 まぁ、絶対荒れそう。


 マレーヌの居場所を知れば、絶対に荒れるだろう。

 自分で取り戻すと動く筈だ。 

 そんな話を聞いて、ある決断をするカミーユ。


「分かりました。ではこうしましょう。私が彼女を助けます。今すぐには無理ですけど。」

「出来るのか?」

「つてはあります。代わりに、フィーさん達は主催者を追って下さい。」


 どうやら助ける方法があるらしい。

 もし助ける事が出来るのなら、主催者とも向き合えるのだが…。


「それはありがたいんだが、どうやってだ?」

「向こうはウィロさんを闘技場に出している。そして、ウィロさんはそれに答えて勝ち進んでいます。きっと、優勝が目的でしょう。ならば、最後の決勝が決まった時に現れる筈です。」


 ウィロの目的は主催者の目的だ。

 それが果たされた時に、必ず現れるだろう。


「良いですか? 祭りの決勝にフィーさんとウィロさんが勝ち上がる。そして、主催者を戦場に誘き出す。それまでに、彼女を連れた私が現れる。これが条件です。」

「要するに、勝てば良いわけだ。もう遅れを取るつもりはない。任せてくれ。」


にゃー。


 任せてくれー。

 もう負けるつもりはないよ!


 ただ勝ち進めば良いだけだ。

 それさえ分かれば充分だ。

 もう負けないと、闘志を目に宿す俺達。


「では、また決勝で会いましょう。」

「あぁ。だから、マレーヌさんの事は頼んだぞ?」

「勿論です。必ず間に合わせます。」


 二つのチームが成功しての作戦だ。

 カミーユ側も、成功させなくてはいけない。

 その事実に、カミーユもまたやる気を溢れさせている。

 そんな、手を合わせて誓う俺達をマレーヌが暖かく見守る。


「無理はしないでね。」

「いや、無理はさせてもらうさ。また、マレーヌさんの料理が食べたいからな。」


にゃ!


 同じく!


「そう? なら、たんと腕を振るわなきゃね。まずは牧場を建て直さないとだけど。」

「それなら大丈夫だ。牧場の皆が心配するなってさ。誰に似たんだかな。」

「あら? 誰かしらね。ふふっ。」

「ははっ。」


 軽く笑い合うと、マレーヌとは一度別れる。

 今度は皆と笑い合う為に。

 一層の決意を持って部屋を出る。



 そして、次の日が来る。

 昨日と同じように、フィー達は戦場に立つ。

 そんなフィーの横にココルが立つ。


「フィーさん、今度は勝とうね。今日は私も頑張るから。…フィーさん?」

「ん? あぁ、勿論だ。一緒に頑張ろう。」

「?」


 心ここにあらずなフィーに疑問を持つココル。

 その間にも、魔物側の鉄格子が開いていく。


『今日も今日とて戦いだ! もうへばってはいないよなぁ? これからが最高潮! どんどん盛り上がってこうぜぇ!』

「「「わーーーーーっ!」」」


 盛り上がる闘技場と共に現れる魔物達。

 フィー達にとって負けられない戦いが始まる。


『それじゃあ、今日の第一回戦。始めちゃって頂戴な!』

「よし、行くぞ!」


 開始の合図と共に、フィーが駆け出す。


『おおっと。今日の新人は特攻! 昨日の雪辱を晴らす勢いだ!』


 その言葉通り、フィーの剣の一撃一撃が重い。

 昨日の悔しさをぶつけるような勢いだ。

 しかし、それだけではない。


(言いたいことは沢山あるがっ。)


 勢いよく剣を振るうフィー。


(この闘技場は許せないっ。)


 俺が怯ました魔物を斬っていく。


(でもそれ以上に、何も出来ない現状に腹が立つっ。)


 次から次へと斬っていく。


(このもやもや、目の前の奴等にぶつけさせてもらうっ!)


 斬って斬って斬っていく。

 すると、鉄格子が開き昨日の大きな猿が現れる。


『今日もまた現れたぁ! 説明はもういらないよなぁっ! んじゃ、命を賭けたやり取り見せてくれやあっ!』


うごおおおおおあっ!


 雄叫びをあげる大きな猿。

 そして、目の前の群れに飛びかかろうとした時だった。


うごあっ。


 次の瞬間、大きな猿の右腕と首が跳ね飛んだ。


「その前に、まずは一人で抱え込む馬鹿を殴り飛ばすのが先だな。」


 そう言って、フィーが剣を振って刃に付いた大きな猿の血を払った

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ