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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編
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カミーユと合流しました

 職員らしき人物の足音が辺りを見渡す。

 しかし、フィーと俺の姿は見つからない。

 咄嗟にソファー型の椅子の後ろへと隠れた為だ。


「どうしたものか。」


 どうしようか。


 職員らしき人物に聞こえないように、ひっそりと話すフィー。

 それでも、足音が少しずつこちらへと近づいてくる。


「誰もいないのか?」


 少しだけ覗き込むと、周辺を見回っているのが見える。

 どうやら、音がした事を確信しているようだ。


「このままだと見つかってしまうな。いっその事、襲ってしまうか?」


 にゃ、にゃっ。


 だ、駄目でしょ。

 山の時とは事情が違うよ。


 あの時は、相手が単独で動いてから成立した話だ。

 職員が沢山いるであろう場所で暴れるのはリスクが高い。


「駄目か? だが、そうは言ってもいられないぞ?」


 え?


 気づけば、足音が真っ直ぐにこちらへと来ている。

 一通り見て、最後にこちらを確認するつもりだろう。

 悩んでいる時間は無いようだ。


「こちらが分からなければ良いだけだ。暗闇に乗じて、さっと襲って気絶させる。それだけだ。」


 それだけって、無茶すぎるよ。

 でも、それしかないか。


 ようするに、こちらの正体がばれなければいい。

 つまり、姿が見つかる前に気絶させれば良いだけの話だ。

 今出来る事はそれしかない。


「行くぞ? せーのっ。」


 えーいっ、ままよっ!


 そうして、息を合わせて飛び出そうとした時だった。


「静かに。」


 どこからか、声が聞こえてきた。


「え?」


 え?


 その声に気づいた瞬間、フィーの口が塞がり膝が折られる。

 その結果、フィーの動きが止まり地面へと膝をつく。


「大丈夫です。動かないで。」


 押さえられているフィーは、動こうにも動けない。

 もちろん俺も、その様子を見て動けないでいる。

 そうしてついに、職員らしき人物と目が合うが…。


「誰もいないな。気のせいだったのか?」


 そう一言だけ言い残し、元いた部屋へと去っていく。


 ええっ!?

 目があったのに?


 確かに、俺達と目が合った筈だった。

 それなのに、まるでこちらが見えていないかのように無視をした。

 そうして、そのまま部屋へと戻ると扉を閉じる。


「もう良いですよ。」


 そう言って、押さえているフィーから手を離す。

 すると、解放されたフィーが溜まった息を吐き出す。


「ぷはっ。ぐうっ、一体何が起きたんだっ。」


 そう言いながら、自身を押さえていた人物へと振り向く。

 そこにいたのは、メイド服を身に包んだ女性だ。


「メイド? ここの従業員か?」

「いえ。こことは関係ありませんよ。」

「関係ない? じゃあ、なんでこんな所にメイドがいるんだ?」

「それは…なんと言いましょうか。」


 怪しい…。


 働いてるからここにいると考えるのが普通だろう。

 しかし、実際には関係が無いようだ。

 そうなると、怪しいと思ってしまうのが普通だが…。


「その説明は、私がした方が良いですかね。」

「え?」


 え?


 どこからか、新たな声が聞こえてきた。

 その声の方を見ると、見知った顔がそこにあった。


「カミーユ?」

「はい。こんな場所で会えるなんて奇遇ですね。」


 そこにいたのは、カミーユと二人の兵士だ。

 そんなカミーユは、フィーと目が合うとにっこりと笑った。

 そして、後ろの兵士へと振り向く。


「念の為、見張っておいてくれますか?」

「了解です。」「任せて下さい。」


 指示を受けた兵士が、部屋の扉を見張る。

 それを見たカミーユは、再びフィーへと向き直す。

 

「ごきげんよう。フィーさん、にゃんすけさん。」

「あ、あぁ。」


にゃ。


 どうもです。

 まさかの再開だよ。


 慌てる事なく挨拶をするカミーユにつられて挨拶を返す俺達。

 こんな所なのにも関わらず冷静な様子だ。

 そんなカミーユへと詰め寄るフィー。


「どうしてここに? 説明してくれるんだろうな?」

「こっちがして欲しい所ですけど…。まぁ、ただの潜入ですよ。フィーさんもですか?」

「そんな所だ。じっとしてられる性格では無くてな。」

「気が合いますね。私もです。ふふっ。」

「全くだな。ははっ。」


 まさかだよ。

 気が合うとは分かってたけど、ここまでなんてね。


 考えが一致した事に笑い合う二人。

 お互い、こうなるとは思わなかったのだろう。

 しかし、すぐにフィーが手で自身の口を塞ぐ。


「おっと。静かにしなくては。」

「大丈夫ですよ。アイナ…えーと、私のメイドが音を消してくれてる筈なので。」


 ちらっと、カミーユがメイドの方を見る。

 すると、アイナと呼ばれたメイドがこくりと頷いた。


「えぇ。音を消す魔法を周りに張ったので、ここでの音が周りに聞こえる事はありません。 


 魔法によって、一定の距離で音が消されてしまうのだ。

 つまり、ここでの会話が職員達に届く事はない。


「そうか、魔法が使えるのか。じゃあ、さっきのも魔法なのか?」

「そうです。音を消す魔法に、姿を消す魔法も重ねてありますので。」

「ほう、便利なものだ。お陰で助かった。」


 ほんとだね。

 それが無ければどうなってた事か。


 その魔法が無ければ、事を荒立てるしか方法は無かった。

 そうなると、大事になっていた可能性もあっただろう。

 そのやり取りを聞いて、再びカミーユが笑い出す。


「本当に驚きましたよ。人を検知する魔法に反応があったと聞かされたと思ったら、人と小さな獣を検知したって。それを聞いて、すぐに見に行っちゃいました。」

「そ、そうなのか。」


 そんな事が…。

 分かりやすい体で良かったよ。

 

 ほとんど、俺の小さい体で気づいたようなものだ。

 そうでなければ、無視をされていたかもしれない。

 今一度、自分の小さな体に感謝する俺。


「まさか、派手に転んだのもか?」

「えぇ、ばっちりと。」

「そ、そうか。」


 まぁ、どんまい。


 楽しそうにしているカミーユと対照的に落ち込むフィー。

 恥ずかしい姿をばっちりと見られてたのだから仕方がない。


「それはともかく、折角こうして出会えたのですから、これからは一緒に行動しませんか?」

「ともかく…。でも良いのか? 邪魔になると思うが。」

「構いませんよ。私の側近が守ってくれますので。ですよね?」


 後ろに待機していた兵士を見るカミーユ。

 すると、兵士たちは自信満々に頷いた。


「えぇ、勿論ですとも。お嬢さんの一人ぐらい増えても問題ありませんよ。」

「その通りですとも。」


 ちょっ、俺が入ってないんですけど。

 まぁいいけどね。


 もしかしたら、俺の実力を認めての事かもしれない。

 どちらにせよ、俺達で進むよりかは安全だろう。


「そうか。そういう事なら、一緒に行かせて貰おう。にゃんすけもそれで良いな?」


にゃ。


 良いよ。

 俺達で進んでも、先程の二の舞だからね。

 誰かさんのせいで。


「だそうだ。少し呆れるような目線で見られている気はするが…。」


 するどい。


 どうやら、悟られたようだ。

 しかし、事実だから仕方ない。

 そんな俺達のやり取りを見て笑うカミーユ。


「ふふっ。仲が良くて羨ましいです。では、行きましょうか。」


 行こー。

 もう、へんな事に巻き込まれませんように。


 そう願いつつも、仲間を増やし他の部屋へと向かう俺達。

 向かうのは、闘技場の中央。

 つまり、戦士が入る場所とは逆の場所だ。



「ここは一段と広いな。」

「えぇ。ここの設備が全て詰まった場所のようなので。」


 この場所は、大きな倉庫のような場所だ。

 少し、扇状に広がっているのが分かる。


「闘技場を上から見て貰った所、大きな指輪のような形をしていたそうです。ですよね?」

「はい。今いる地点は、指輪の上層部に設置された宝石の部分で間違いないでしょう。」


 正確には、指輪のように上の部分が盛り上がっているのだ。

 そこに、指輪に付けられた宝石のように建物が連なっているのだ。

 その一番大きい建物の中を感心するように見回すフィー。


「指輪とはまたお洒落だな。それで、これからどこに行くんだ?」

「私達の目的は二つ。ここの主催者に会うこと。それと、魔力の乱れを探すこと。」

「最初に言っていた奴だな?」

「はい。その通りです。」


 元々は、魔力の乱れを追って闘技場まで来ているのだ。

 こうして中に潜り込めたのは、それを探す絶好の機会なのだろう。


「それで、見つかったのか?」

「えぇ、乱れの方は。こっちです。来てください。」


 歩き出すカミーユの後をついていく俺達。

 そうして向かったのは、真ん中のにある大きな階段の場所だ。


「なるほど、地下か。この先には何が?」

「向かうのはこれからですよ。先程入ろうとした所にフィーさん達が現れたので。」

「うっ、それはすまない。」


 邪魔しちゃってたんだね。

 お陰で助かったけど。


「まぁ、先か後かの話なだけですよ。では、いざ、出発です。」


にゃ!


 出発です!

 冒険っぽくて、少し楽しみかも。


 階段の先は、暗くてよく見る事が出来ない。

 しかし、何があるのかと思うと興味が湧いてくる。

 そんな場所へと、一同は降りていく。

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