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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編
112/285

という訳で潜入です

 闘技場は、一日を通して観客の歓声で賑やかになる。

 しかし、夜になると静寂に包まれる。

 そんな中、闘技場の通路に立つフィーと俺。


「という訳で潜入だな。」


にゃ。


 潜入です。


…にゃあ?


 …どういう訳なの?


 辺りは、昼の喧騒が無かったかのように静まり帰っている。

 そんな静かで真っ暗な通路でふんぞり返るフィー。

 そして、そんな姿を呆れるように見上げる俺。


「今の所、次の戦いを待つしかない。だが、そんなのを待ってられるような私ではない。そこで、潜入だ。私達と言えば潜入だからな。」


 …だそうです。

 だろうと思ったけどね。


 フィーとの付き合いはそこそこ長い。

 なので、何もしないでじっとするような性格ではないと分かっている。

 そうなると、こうなる事ぐらいは想像出来る。


「なんか不安そうな顔だな。しかし、大丈夫だ。昨日と今日見てみた所、幸いにも見張りはいても見回りはいないみたいだからな。まさに、潜入しろと言ってるようなものだ。」


にゃん。


 言ってないと思うよ。

 でも、見回りがいないのは俺も気になってたけどね。


 通路を通る際、数人の職員がいるのを見る事が出来た。

 しかし、どれも通路の扉の前だけだ。

 それ以外で、職員を見た事がない。

 実際、近くの扉を見ても昼にいた警備員はいない。


「ここに警備はいない。潜るなら今だ。早速行こう。」


にゃ。


 行こー。

 こうなったら行くしかないよね。

 不安だけど。


 警備員がいない扉を潜り奥へと目指す。

 そこにあるのは、曲線の通路と等間隔の扉だけ。

 その途中には、シャワーや食事処といった部屋の扉が挟まれている。

 フィー達がいる低ランク体の場所と似たようなものだ。


「ここは上のランクの場所か。ここにウィロが…いや、今日の戦いでまた上に上がったのだったな。」


 らしいね。

 どんどん引き離されていくよ。


 負けた俺達と違って、ウィロは次々とランクを上げている。

 つまり、ここにはもうウィロはいない。

 なので、見向きもせずに次へと向かうが…。


「あれ、行き止まりか。」


 ほんとだ。

 ただの壁だ。


 進んだ先には、立ち塞がるように壁がある。

 つまり、ここから先への道は繋がっていないのである。


「これより上のランクの宿舎は逆側か。それ以上の情報はなし。まぁ、ただの寝床だしな。こんな所に秘密があるはずもないか。」


にゃ。


 だね。

 人の多い場所にわざわざ秘密なんて隠さないもんね。


「うむ。探すとすれば、もっと人の少ないところか。闘技場の方に行ってみよう。」


にゃー。


 行ってみよー。


 人の目に付く場所に、わざわざ隠し事を隠すとは思えない。

 そう判断した俺達は、壁の前から引き返して寝泊まりする部屋とは逆側の扉を開く。

 戦士達が闘技場へと向かう時に使われる扉だ。

 そこから、奥の様子を覗き込む俺達。


「ここにも見張りはいないか。恩恵を受けている身でなんだが、守る気はあるのか?」


にゃ。


 あったら見張りを置いてるでしょ。

 まぁ、ここに盗むような物は無いからだろうけど。


 こんな何も無い場所に、盗みに来るような奴などいないだろう。

 そう考えると、見張りを置いていないのは頷ける。

 そう決断し、扉を潜る俺達。


「さて、進んでみたがどう探そうか。」


にゃ…。


 考えて無いんだね…。

 予想はしてたけどね。


 先程も言ったが、そこそこ長い付き合いである。

 後先考えていないのもお見通しだ。

 呆れるような俺の視線に気づいたフィーが慌て出す。


「まぁ待て。先程の考え通りだと、人が通る場所には秘密はない。つまり、あるとすれば奥の方だろう。」


 まぁ、そうなるよね。

 今まで通りなら。


 戦場へと繋がる道もまた曲がっている。

 しかし、寝床の通路と違って左右の道が一つに繋がっている。

 戦士達が入る為の戦場の入り口があるからだ。

 そうなると、当然人目は増えるだろう。

 つまり、向かうべきはその反対の道だ。


「向こうになら、設備の部屋もあるかもしれない。探すならそこだろう。どうだ? 私だってちゃんと考えているんだぞ?」


にゃー。


 今思い付いたよね。

 バレバレだよ?


「むぐっ。まぁ目的が分かればこっちものだ。行ってみよう。」


にゃっ。


 あっ、はぐらかした。

 まぁ、当てもなく迷うよりかは良いのは確かだけどね。


 秘密があるとすれば、戦士が立ち入る事が出来ない場所。

 戦場の入り口とは違う方向へと歩き出す俺達。

 すると、目の前に扉の付いた大きな壁が現れる。


「またか。警備が薄いわりに、しっかりと区分けされてるじゃないか。いや、区分けされてるからか?」


にゃ。


 なるほどね。

 戦士達がいる場所とは分けられてるから、見張る必要もないって所かな?


 本来見張るべき場所と、戦士達がいる場所は分けられている。

 ここの通路に見張りがいないのは、見張る必要がない方の場所だからだろう。


「そうなると、鍵が掛かってそうだな。」


 立ち入ってはいけない場所ならば、鍵が掛かっていても可笑しくはない。

 そう思いながらも確認の為にドアノブを回してみた時だった。


「あれ、開いてる?」


 開いてるね。


 鍵が掛かっていると思っていた扉があっさりと開いていく。

 どうやら、鍵は掛かってないようだ。

 ゆっくりと扉を開くと、奥を覗き込む。


「見たところ人はいないな。行ってみよう。」


にゃ。


 大丈夫かな。

 ここまで来たら行くしかないけど。


 ここからは、関係者がいてもおかしくはない場所だ。

 今度こそ、警戒が必要だろう。

 そんな事もあって、恐る恐る扉を潜る俺達。


「ここは通路か? その割には広いけど。」


にゃー。


 ほんとだね。

 通路って言うより、一つの建物みたいな。


 今までの一直線の通路と違い、大きな空間が横へと延びている。

 天井は二階の上に届く程高い先にあり、ガラス張りの窓からの月の光が空間を照らす。

 所々には椅子が並べられており、人が生活しているような感じがする。


「ここの職員の寝床だろうな。思ったより充実してるじゃないか。」


 なんかずるいなー。

 まぁ、ここの経営を支えてる人達だから仕方ないだろうけど。


 あまりの広さに見上げてしまう程だ。

 植物といったり、寛げる場所なのが見て分かる。

 その空間を見ていた時だった。


「ぐえっ。」


 ちょっ。


 椅子に躓いたフィーが、そのまま椅子へのダイブを決めた。

 顔面を椅子の座る所へと打ち付ける。


「ぐうっ。」


にゃ。


 こんな所でやらかすとはね。

 大丈夫?


「あぁ。柔らかくて…助かった。」


にゃー。


 それは良かったけど。

 って、いや、良くはないけどさっ。

 

 俺達は見つかってはいけない身だ。

 そんな時に大きな音を出しては、気付かれる可能性が高まってしまう。

 それが分からないフィーではない。


「すまない。気を付けるよ。」


 ほんとだよっ。

 潜り込んでる立場なんだか…。


 そう言おうとした時だった。

 その場所にある一つの部屋の扉がかちりと開く。


「っ!?」


 っ!?


 誰かが扉から出てきたのだろう。

 扉が開き、そこから人影が現れる。


「誰かいるのか?」


 その人物は、ゆっくりとフィー達のいる方へと近づく。

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