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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編
109/284

第一回戦開始、戦いの始まりです

 一人、また一人と、光の中へと進んでいく。

 そして、フィー達もまた頷き合って光へと進む。

 すると、光が晴れて戦場へと踏み入れる。


『選手が次々と入場ーーっ! 出てくる奴等は底辺ランクの戦士達っ。上を目指して目をたぎらせるっ! 上のランクに進むのはどこのチームだああああっ!』


 選手が現れる度に、歓声が強くなっていく。

 しかし、フィー達が現れた瞬間どよめきへと変わっていく。


『おーっと。見慣れない顔に、動揺が広がっていくうーーっ。現れたのは、ペットと子連れの女の子っ。家族旅行の記念のつもりかーーーっ!』

「「「あははははっ。」」」


 観客は、どよめきから爆笑へ。

 闘技場が笑いに包まれる。

 そんなフィーは、司会者を恨めしく睨む。


「私はまだ十七だっ。子を連れるほど老けてはないっ。」

「まぁまぁ。」


 悪態つくフィーを鎮めるココル。

 その間にも、戦士達が散らばっていく。


『はっはっはっーっ。さーって。新人もいる事だし、改めて闘技場のルールを説明するぜっ! ルールは簡単! まずは、生きて生きて生き残る事! そんで、最後に出る大物を倒したチームが上へと進むっ。簡単だろうっ?』


 ルールはシンプルに、生き残って強い相手を倒す事。

 勝ち残っただけでは意味がない。

 勇姿を見せつけた者だけが正義なのだ。


『そんじゃ、説明も済んだことだし始めようかっ。魔物ども出てこいっ!』


 司会者の言葉と共に、戦士達が出てきた方とは逆の鉄格子が開く。

 すると、その奥から見慣れた奴等が大量に現れる。


「ピグルン。やはり、出てきたね。」

「あぁ、間違いない。だが、多いな。」


 牧場を襲った因縁の相手だ。

 しかし、その数は比べ物にならない程だ。

 それを見て、一層に身構える。


『死ななきゃ回収はしてやるさ。でも、死んだらそこで終了だ。覚悟は良いなっ? 戦いに飢えた馬鹿どもよっ。底辺らしく足掻いて見やがれっ!』


 大量に現れたそいつらに合わせて、戦士達が武器を取る。

 そして、今か今かと前に出るように身構える。

 そして…。


『そんじゃあ、本日の第一試合っ。始めーーーーーーーーっ!』

「「「うらああああああああっ」」」


 観客達の歓声の中、戦士達が雄叫び上げて進んでいく。

 それに合わせて、フィー達も進んでいく。


「にゃんすけ、今回、お面は無しだ。折角、戦いの技術を教わったからな。どこまでやれるか試したい。」


にゃ!


 剣士としてのデビューって訳だねっ。

 じゃあ、いつも通りで!


 自分がどれくらい強くなったのかを知りたいようだ。

 そのまま、雄叫びを上げながら進む戦士達に混じって突き進む。

 そして、ついに戦士とピグルンが衝突する。


『ぶつかったーーーー! 戦士達が魔物達を吹き飛ばしていくうっ!』


 戦士と衝突したピグルンが空へと舞っていく。

 この程度にやられるような戦士ではないのだ。


「おらおらっ、突き進めーーーーっ! 他の奴よりも前に出るんだ!」


 ピグルンと衝突してもなお、その勢いは止まらない。

 前に現れるピグルンをはね除けながら進んでいく。

 その後に遅れるように、フィーも追いつく。


「はあっ!」


 目の前のピグルンを目掛けて、踏み出し加速する。

 そして、複数のピグルンの群れを斬り飛ばす。


「フィーさん、まだです!」

「あぁ!」


 ココルの呼び掛けで、迫るピグルンに気づくフィー。

 飛びかかってきた二匹のピグルンに対して、後ろへと踏み込む。


「はあっ!」


 その踏み込みによる勢いは、体を通って剣へと伝う。

 それにより放たれる一撃が、迫るピグルン達を真っ二つに斬り裂く。

 しかし、その隙を狙って他のピグルンが来る。


「くっ、にゃんすけ!」


にゃっ!


 待ってましたっ!


 フィーの指示で俺が跳ぶ。

 迫るピグルンをポイントダッシュで蹴り飛ばしていく。


「助かった!」


にゃ!


 どうも!

 それよりもっ。


 フィーの横へと着地する俺。

 そして、目の前のピグルン達を見る。


「数が多いな。」


にゃ。


 多すぎるよね。

 どんどん増えてくよっ。


「だが、これしきでっ!」


 迫り来るそれらを斬っていく。

 俺もまた、同じように蹴り飛ばす。

 それでも数は増えていく。


「きりがないな。他の連中も倒してる筈なのに。」

「いいや。よく見て、誘導、されてるよ。」

「誘導?」


 リュノに従い周りを見ると、こちらにピグルンが流れるように戦士達が戦っている。

 そのせいで、こちらにまとめて流れ込んでいるようだ。


『おーーーーっと。新人が囲まれたーーーーっ。古株による洗礼だあああっ!』


 経験もあれば、戦場を操る事も容易いものだ。

 そうして、何も知らないフィー達へと押し付けたのだ。


「悪く思うなよ新人。最初の戦いは、場所取りゲーム。出遅れたあんたが悪いっ。」


 他の戦士達も、生き残らなくてはならない。

 優位に立つには、安全に動ける場所の確保が必要なのだ。

 その為には、無知な相手も利用する。

 それに対処しようとするフィーだが、魔物が多い真ん中へと誘導される。


『おーーーーっと。追い込まれていくうううううっ。早速脱落かあっ!』


 三人と一匹で対処しながら下がっていく。

 もはや、引く事しか出来ない。

 そんなフィー達へとヤジが飛んでくる。


「おいおい。もうちょっと粘ったらどうだ!」

「つまんねぇ戦いしてんじゃねぇ!」


 観客達は、戦いを楽しみにしているのだ。

 追い込まれるような情けない戦いなど望んではいない。

 その悪い空気は、安全な部屋にいる者達にも伝わる。


「あらぁ? もう終わりかしら? 対した事無いわねぇ。」

「ほほっ。むしろ、ライバルが減って丁度良いですじゃ。」

「それもそうね。」


 ここにいるのは、戦士を雇ってる貴族達だ。

 蹴落とし合う相手が減るのは好都合なので嬉しいようだ。

 そんな中、カミーユは不安そうに見続ける。


「頑張って下さい。皆。」


 不安でも、信じ続けるしか無いのだ。

 そんなカミーユの視界の中で、フィー達が集まる。


「フィーさん、引いた方が良いよ!」


 そう言いながら、ピグルンを殴り飛ばすココル。

 どうやら、対処が仕切れないようだ。

 それでもフィーは、前に踏み込む。


「面白い事を言うな。この程度の雑魚相手にっ。」


 更に力強く踏み込む。


「引く道理などない!」

「フィーさん!?」


 勢いよく前へと踏み出すフィー。

 そして、一回転してまとめてピグルンを斬り飛ばす。


「にゃんすけ!」


にゃっ!


 あいよ!


 フィーが斬り開いた空間に降り立つ俺。

 そのまま、ピグルンの群れへと飛び込んだ。

 そして、ピグルンをポイントダッシュで蹴飛ばしていく。


にゃにゃにゃにゃにゃ!


 ほいほいほいほいほいっ!


 蹴飛ばしては、道を作っていく。

 すると、その道にフィーが入り込む。


「うおおおおおおおおっ!」


 俺が蹴飛ばしたのをフィーが斬っていく。

 時には流れるように斬り、またある時には一回転して斬り飛ばす。


『おーーーーっと、反撃だーーーーっ! 踊るように戦っているぞーーーー!』


 その動きは、舞うように。

 斬っては舞って、一つの芸術を作り上げる。

 その動きに、フィーへのヤジが治まっていく。


「なんだ、あの動きは。」

「知らねぇけどなんか。」


 その動きに、ざわめきだす観客達。

 気づけば、フィーの剣が描く軌跡を追いかけている。

 そんな中、フィーがよりいっそう強く回る。


「はああああああっ!」


 今までよりも強い斬りが、ピグルン達を斬り飛ばす。

 そうして生まれるのは、群れの中に広がる空間。

 その真ん中で、フィーが剣を空へと掲げる。


「私はここだっ! 斬られたい奴からっ、ここに来いっっっ!」


 雄叫びを上げるように叫ぶフィー。

 ここにいる全ての魔物への挑戦状だ。


『な、な、な、何て事だーーーーーっ! まさかの中央陣取り! こんな無茶な事があったろうか!』

「「「おおおおおおおおおおおっ!」」」


 それを聞いた観客が歓声を上げる。

 フィー達へのマイナスなイメージが、一瞬にしてひっくり返ったのだ。


『逃げるが勝ちの前哨戦! こんなふざけた大馬鹿がでるなんてぇっ! でも、観客的には大大大満足だーーーっ!』


 戦場の群れに出るのは、まさに自殺行為。

 しかし、それにより盛り上がりを戻す観客達。

 しかし、魔物達は違う。


ぷぎーーーーーーっ!


 怒るように、フィーへと向かうピグルン達。

 それをフィーが斬っていく。

 そこから更に現れるのも斬っていく。


「あああああああああっ!」


 数なんて関係ない。

 現れたと同時に斬りつける。

 舞うように斬っていく。

 それでも対処仕切れないのを俺が蹴る。


にゃ!


 負けないよ!


 華麗に着地して、フィーと背中を向け合う俺。

 そして、すぐに魔物へと迫る。

 斬っては回っての大演舞。

 その度に、観客が盛り上がる。

 しかし、それを良しとしない者達もいる。


「派手に目立ってんなぁ。おい、ちょいと邪魔しろよ。」

「おう。」


 端で見ていたパーティの男が弓を構える。

 そして、その弓につがえた矢をフィー達がいる真ん中へと放つ。


「なっ!?」


 えっ!?


 咄嗟に気づいたフィーは、矢を剣で斬り落とす。

 そして、飛んできた方を睨む。


「私は魔物じゃないぞ!」

「はっ。この戦いってのは、結局人同士の蹴落としあいだぜ? 邪魔して何が悪い!」

「くっ。」


 確かにそうだけどさ。

 でも、ひきょーものー!


 悔しさに口元を引きつらせるフィー。

 この戦いは、次のランクに行く者を選ぶ戦い。

 魔物討伐は、その手段でしかない。

 その戦士の男の言葉が正しいのである。


「ならばっ。」


 だからといって、黙って見過ごすフィーではない。

 近くの魔物の首を跳ねると、矢が飛んできた方へと放り投げる。

 すると、先程の戦士の男が踏んづけて転んでしまう。


「ってぇ! 何しやがる!」

「人同士の蹴落とし合いだろ? 邪魔して何が悪い。」

「く、くそう!」


 ナイス!

 ざまーみろ!


 にやりと笑うフィーに憤る戦士の男。

 向こうがしても良いなら、こちらもして良いという事だ。

 そして、それを見ていた周りが盛り上がる。


『ついに始まるか、人同士の戦いが! これには観客も大喜びだ!』

「いいぞ! やれやれぇ!」

「もっと争えーーーーっ!」


 もはや、フィーが暴れた時よりも盛り上がっている。

 そして、盛り上がるのは二人も同じだ。


「やんのかおい! やるならやったろうか!」

「良いだろう。受けて立つ!」

『いけいけやったれ! でも、争う理由が小さすぎるのは気のせいでしょうか。』

「「ほっとけ!」」


 魔物を掻き分けながら距離を詰める二人。

 しかし、その間に魔物が雪崩れ込む。


「くっ、邪魔だ!」


 距離を詰めるには、敵の数が多過ぎる。

 その数に苦戦するフィー。

 そして、それは向こうも同じ事。


「ちいっ、面倒なっ。」

「いや、待て。行ってはならん。」

「えっ、でもよ。馬鹿にされたままで良いのかよ。」


 戦士の男を、同じパーティの大男が止める。

 抗議する男だが、大男の睨みで黙ってしまう。


「目的をはき違えるな。それに、そろそろ来るぞ。」

「来る? もうそんな時間か?」


 二人して、魔物が出る方の鉄格子を見る。

 そこからは、鈍い大きな音がする。

 その音に、周りのパーティが反応する。


「来るぞーーーー!」

「場所的にはこっちが有利! すぐに出れる準備を!」


 先程から見ていただけのパーティが動き出す。

 そんな中、鉄格子が動き出す。


『盛り上がってるとこ悪いがお時間だ! 出るぞ! 今日の大目玉! さぁ、来い!』


 司会者の言葉と共に、奥から鎖を引きずる音が聞こえてくる。

 そして、その姿が一同の前に露になる。


「こいつを倒せば良いわけか。」


 その姿は、筋肉質の猿のような魔物だ。

 今日の戦いの目的の相手でもある。


『生きるか死ぬかの大勝負! 残るのは、人か魔物かどっちなんだ! 上を目指したけりゃ死ぬ気で戦え! さぁ、化け物よ! 暴れろーーーーっ!』


がああああああああああああああっ!


 観客の歓声をかき消すように、魔物の雄叫びが闘技場に響く。

 それを、フィーと俺が見据える。


「行くぞ、にゃんすけ!」


にゃっ!


 燃えてきたね!

 行くよ!


 ついに、今回の目的の敵が現れた。

 これを倒した者が、上のランクへと行けるのだ。

 それを目指す為に、フィーと俺が構える。

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