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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編
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突然の嵐です

 食事を楽しむ従業員達を強い風が襲う。


「あら、一風来そうね。」

「嵐ですか?」

「そうね。可能性はあるわ。」


 長年の経験からだろう。

 嵐が迫るのを察知したようだ。

 それを聞いたココルが立ち上がる。


「じゃあ、今日はもう終えた方が良いね。」

「えぇ。それと、一応嵐の対策もね。」


 嵐が来るとなれば、被害が出てしまう。

 なので、対策が必要だ。

 立ち上がるマレーヌをフィーが見る。


「何か手伝える事は?」

「無いわ。そのまま一休みしておいてね。」


 そう言って、ココルと共に従業員の元へと向かう。

 ここからは、素人に出来る仕事はない。

 従業員の元へと辿り着いたマレーヌは、大きく手を叩く。


「皆。嵐が来るから今日の仕事はおしまいよ。食べ終わった者から、嵐の対策に向かってね。」


 マレーヌが指示を出すと、返事をした従業員から動き出す。

 一部の者は、家畜を小屋に戻していく。

 また他の者は、畑を布で覆っていく。

 そうしている間にも、辺りが暗くなる。


「すぐに降りそうね。急いで!」


 暗くなった原因は、空に雲がかかったからだ。

 今にも降りだしそうな気配をしている。

 そして、風もまた強くなってくる。


「こちら終わりました!」

「こちらもです!」

「分かったわ! 終わった班から家に戻って!」


 各場所から、仕事を終えた報せが飛び交う。

 そして、終えた順から建物へと避難を始める。

 それを最後まで見送ったマレーヌが、最後に牧場を見渡す。


「これで全員かしら。」

「ママも早く!」

「えぇ!」


 確認を終えると、マレーヌも建物の中へ。

 風に耐えながら、しっかりと扉を閉める。

 そんなマレーヌへと、ココルが布を差し出す。


「お疲れー。ママの予想通りだったね。はいこれ。」

「ありがとう。ここまで早く来るとは思わなかったけどね。」


 渡された布で髪を拭くマレーヌ。

 髪を拭きながら外を見ると、激しい風と雨が吹き荒れていた。

 間一髪で間に合ったようだ。


「間に合ったのは良かったけど、何だか薄気味悪いわ。」

「どういう事?」

「何て言うか、いつもの風じゃ無いような。そんな気がするのよね。」


 外を駆ける風を、マレーヌは不思議そうに見ている。

 嵐は別に珍しいものではない。

 しかし、何かが引っ掛かるようだ。

 そんな話をしていると、ウィロとフィーと俺が合流する。


「やぁ。何事も無いようで何よりだよ。」

「こんなの手慣れたものよ。それよりもごめんなさいね、フィーさん、にゃんすけさん。折角、手伝いをしてくれてたのに。」

「構わない。ココルも休めさせれるし良かったんじゃないか?」


 牧場が休みになるという事は、ココルも休めるという事だ。

 良くも悪くも、丁度良いタイミングなのかもしれない。


「それで、皆はどうしてる?」

「回収した洗濯物を畳んでいるよ。」

「そう。じゃあ、私も合流するわ。皆は休んでてね。」

「あ、私も行くー。」


 そう言って、奥の部屋へと引っ込むマレーヌとココル。

 牧場主として、休んでいる暇はないのだ。

 それを見送った俺達は外を見る。


「派手に荒れてるねぇ。」

「そうだな。そういえば、旅に出てからは初めての嵐か。」


にゃ。


 そうだね。

 雨はあったけど。


 旅の途中で嵐にあうのは、大変な事になるのは想像がつく。

 今まで無かったのは、天気に恵まれていたお陰だろう。


「気をつけた方が良いよ? 岩陰で一泊は確実だからね。寝床を探すのに苦労するんだ。」

「ははっ、想像したくもないな。だが、いつしかそういう時が来るだろうな。」


 だね。

 旅をしている以上は仕方ないよ。


 旅をする以上は、悪天候に巻き込まれる事は当然ある。

 その時は、今回みたいに建物があるとは限らない。


「うん。対策は必要だろうね。でも、こういう時は魔物が出ないからね。逆に安心は出来るのはあるんだ。」

「ほう。さすがの魔物も天気には弱いか。」

「そりゃあね。まぁそんな訳だから、しばらくは襲撃の心配は必要なさそうかな。」


 こんな時に出歩く生き物はいない。

 そうなると、昨日の魔物が来る事もないだろう。

 災害と引き換えに安全が保証されるという事だ。


「それは良い事だな。しかし、そうなるとする事が無いな。」

「外に出れないからね。どうせだ。折角、同業者にあったんだし話でもしないかい?」

「良いな。では、経験者の話を聞かせて貰おうか。」

「経験者って程じゃ無いけどね。じゃあ、行こうか。」


 同業者の話となると、得られるものもあるだろう。

 時間を潰すにはうってつけだ。

 早速、話が出来そうな場所に向かおうとした時だった。


ずどーーーーん!


 外から激しい音が聞こえてくる。


「な、何だ!?」「何の音だ?」


 なになに?

 どうしたの?


 急な音で外を見る俺達。

 音がする方を見ると、そこにあったのは家畜の小屋だ。

 その場所を、フィーが指をさす。


「あれを見ろ! 家畜が!」


 小屋を見ると、一部が半壊している。

 そして、そこから家畜が逃げている。


「大変だ。マレーヌさんに知らせないと…。」

「どうしたの?」


 牧場の危機だ。

 この事を、牧場の主に知らせようとしたと同時に本人が現れる。


「あれを!」

「あれ? …まぁ! 大変!」


 ウィロが指さす方を見たマレーヌが口を押さえて驚いた。

 そうなるのも無理はない。

 すると、ココルもまた現れる。


「何々? って、うわっ!」


 ココルもまた驚いてそこを見る。

 解き放たれた家畜達は、縦横無尽に走り回っている。


「急いで戻さなくちゃ! ココル! 大人の人を集めて!」

「分かったよ!」


 奥の部屋へと戻っていくココル。

 その間に、マレーヌが外に出ようと玄関へ向かう。

 その後ろを、俺達も続く。


「僕も手伝うよ。」

「私もだ。客人だからと言っている場合では無いからな。」


にゃん。


 そうだよ。

 任せて。


「…そうね、お願いするわ。」


 仕方ないと、マレーヌは納得する。

 助け合うのに、理由は必要ない。

 家畜を戻そうと外に出た時だった。


ぴしゃーーーん!


 激しい音と共に雷が落ちる。

 そして、その明かりが望まぬ客人を映し出す。


「…待った、マレーヌさん。」

「え?」


 それに気づいたウィロが、マレーヌの肩に手を当てる。

 そのまま、マレーヌの前へと出る。

 その横に、フィーと俺が並ぶ。


「見えるかい? 二人とも。」

「あぁ。」


にゃ。


 見えるよ。

 魔物だね。


 暴れる家畜の中にいる異物。

 見間違える筈がない。

 そいつは、武器を振るって家畜を襲う。

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