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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
大蛇祭る隠れ村 フラリア王国編
10/282

再び襲撃に合いました

「ミランの父が言っていたのはこの道だな。」


にゃ。


 そうなるね。

 わざわざ整備もされてるし。


 左右に整備された道が伸びている。

 近くに人が住んでいる証拠だろう。

 つまり、この整備された道の先を目指せば良いのだ。


「分かりやすくて良いな。これなら迷わないだろうな。」


 そうだね。

 これで迷ったら相当のもんだよ。


「ただ、村は遠いって言ってたな。暗くならないと良いが。」


にゃ。


 確かに。

 それまでに着くと良いんだけど。


 道に沿って、ごこまでも歩いていく。

 先は全然見えない。

 しばらく歩いていると、海が山に隠れてしまう。


「随分と長い山だな。」


 俺もそう思う。

 ずっと先まで山が続いているし。

 もしかしたら、大陸を包んでしまうくらい長いかもね。 


「こんだけ長いと、野犬でも出そうだな。いない事を祈るしかないな。」


 ゴブリン以外にも、ちゃんとそういうのもいるんだね。

 じゃあ俺も魔物に見えたりするのかね。


「にゃんすけとか食べられるかもだしな。」


にゃっ!?


 そっち!?

 まさかの餌の方!?


「ははっ。心配しなくても冗談だ。たぶんだが。」


にゃ!?


 そこは言いきってくれる!?


 曖昧な返事に驚きを隠せない。

 しかし、フィーは余裕そうに笑っている。


「まぁ実際に人が住んでるようだしな。その辺は問題ないだろう。」


 そういえばそうか。

 人が住んでいるなら、狩られているだろうし。


 襲い来る相手を放置しておく訳はないだろう。

 そうなると、やはり狩られていると考えるのが自然だろう。

 そう思い、気楽に歩みを進めていく。

 それから、どれくらい歩いたか。

 ただひたすら前に進んでいく。

 いつしか太陽はてっぺんに。


 あー、お腹すいた。


「にゃんすけ。この辺で休憩しようか。」


にゃー。


 さんせーい。

 自覚はないけど結構歩いたはず。

 でも、こういう時は大抵進んでないものなんだよね。

 確かめる術がないから何とも言えないけど。


 幸いにも、近くに樹々は沢山ある。

 休憩所に悩む事はないだろう。

 手短に、近くの樹の下に二人で座る。


「はぁ、疲れた。旅とはこんなに大変なものなのか。」


 そりゃあね。

 元箱入り娘には、きついのかな。

 俺は平気だけど。

 まぁ、そのうち慣れると思うよ。

 

 ボトルを開けて一服。

 乾いた喉が、ミックスジュースで潤っていく。

 フィーも同じように寛いでいる。

 

「さて、休憩終わり。行こう。」


 フィーが立ち上がった。

 土を払って日陰から出る。

 

 もう終わりかぁ。

 さらば日陰。

 次もまたよろしくね。


 休憩は終わりだ。

 名残惜しみながらも木陰から離れる。

 その時、どこからか物音が聞こえてくる。


かさかさ。


 ん、なんだ?

 何かの音がする。


かさかさ。


 やっぱりする。


 その物音に耳をすませる。

 間違いなく、音は聞こえている。

 けど、フィーは気付いていない。


「どうした、にゃんすけ。もう行くぞ。」


にゃあ。


 分かってるけど。


 音は、後ろから聞こえた。

 こっそりと、そちらを見る。 

 近付いてくる度に、後ろに下がっていく。


「にゃんすけ?」


 フィーは、まだ気付いていないようだ。

 でも、明らかに近づいてくる。


がささっ。


「にゃんすけっ!」


 今までで一番大きい音。

 流石に気付いたか。

 来るっ。


「なっ。く、熊っ!?」


 まさかの熊だ。

 勢い良く飛び出して立ち上がる。

 とても大きい。


「…いやいや待て待て。まさか、こんな所に熊なんているわけがないよなー。うん。」


にゃー。


 流石にねー。うん。


グォーーーッ!


「って、やはり本物かっ!?」


 ですよねー!


 大きな声で吠える熊。

 どうやら荒れているようだ。

 こちらを強く睨んでいる。


「にゃんすけ、どうする? 戦うか?」


 どうするって、言葉とか通じなさそうだし。

 熊は、速いから逃げるのも駄目だし。

 戦うしかないよねっ。

 

 次の瞬間、熊が襲いかかってきた。

 考える時間は作ってくれないようだ。

 その熊の視線はフィーに向いている。


「くるかっ。」


 きてるね。

 えーい、ままよ。


にゃっ!


 熊の横顔に飛び蹴り。

 見事に直撃。

 でも、熊は耐えた。

 しかし、止める事は出来た。


にゃん!


「っ! 分かった!」


 フィーに横目で合図。 

 ボトルも捨てて身軽に。


にゃ!


 さぁ、ついてこいっ!


 懐に入ると、お腹と顎に点が浮く。

 そこを目掛けて、ポイントダッシュ。

 最後に顎を蹴って、上体を反らせる。

 その勢いのまま離脱する。

 その代わりにフィーが前に出た。


「喰らえっ!」


 お腹を斬った。

 でも、傷は浅い。

 さすが熊、肉が分厚い。


「固いな。手応えがない。」


 だろうね。

 ぞこらのゴブリンとは段違いだよ。


 再び立ち上がる熊。

 また来るようだ。

 それならばと、俺もまた立ち上がる。


 いいよ、何度でもやってやる!


 一応、攻撃は効いているのだ。

 それならば、通じるまで続ければ良いだけだ。

 そうして、次の攻撃へと対処をした時だった。

 

ズドン。


 え? なんの音?

 俺達は、何もやってませんよ? 


 どこからか、鈍い音が聞こえてくる。

 すると、熊が倒れる。

 それにより、熊の向こうが見える。

 そこにいたのは、ニタニタ笑うゴブリンの群れ。


「まさか、お前たちがやったのか?」


 そういう事だろうね。


 背中に複数の傷がある。

 もしかして、こいつらから逃げてきたのかな?


ふぎゃーーっ。


 先頭にいた奴がこちらに向けて、こん棒を振った。

 その直後、他のゴブリンが動き出した。

 熊に上ってこっちに来る。


「来るぞ!」


にゃ!


 分かってるよ!

 ならばっ。


 乗り越えて、飛び降りそうになったのを蹴り飛ばす。

 それにより、動きを止めたゴブリンに四匹のゴブリンが衝突。

 耐えきれず、先頭が落下。

 続いて、後ろの三匹が落下し先頭の上に落ちる。


 どんなもんだい!


にゃん!


「よし。任せろ!」


 フィーに合図。

 階段状に倒れたゴブリンを足場に、熊の上に飛び乗る。

 落ちなかった二匹を踏み台に、更にジャンプ。

 前に切り飛ばされた二匹は、フィーによって真っ二つ。


ふぎーーっ。

 

にゃん!


 空中を飛んでいる俺。

 先程、指示を出したゴブリンと睨み合う。

 だけど、相手が気付いたのが遅かった。

 一瞬で近づき、そのゴブリンを蹴り飛ばす。

 すると、ゴブリンは後ろの樹に叩きつけられた。

 そして、俺は華麗に着地。


ふぎゃーーあーーっ。


 怒っているようだ。

 その前を複数のゴブリンが立ち塞がった。

 なにか、おかしい。


「にゃんすけ。気付いたか?」


 フィーが追いついた。

 どうやらフィーは、何かに気付いたようだ。

 しかし、俺は何事かとフィーを見る。


にゃ?


 一体なにさ?


「よく見ろ。こいつら、統率が取れている。」


 そういえばそうだね。

 今思えば、連携が取れてたね。


 あんまり見てないけど、どいつも自分勝手に突っ込んで来てた。

 だけどこいつらは、指示で動いて、こうやって吹き飛ばされた奴を庇っている。

 まるで、リーダーとその子分みたいだ。


「頭が良いゴブリンか。厄介だな。」


 そうだね。

 さっき蹴飛ばされた二匹も突っ込まずに止まっていたし。

 頭が良いというのは厄介だよ。


ふぎゃーっ。


 リーダーらしきゴブリンが叫んだ。

 それと同時に、一斉に森の中に逃げていく。

 このまま逃がしたら厄介な事になっちゃうかも。


「にゃんすけ。追うぞ。」


にゃ!


 あいよっ!


 フィーも分かっているのか追いかける。

 一番手前のゴブリンを斬ろうとしたが。


「あっ。」


 あっ。剣が。

 樹に阻まれて斬れない。


 だろうね。

 うすうす気付いてたよっ。


ふぎゃっ。


 斬られそうになったゴブリンが、ニタニタ笑ってフィーに殴りかかった。

 その横っ面を俺が蹴飛ばす。


にゃ!


 任せたよ!


「っ。助かる!」


 俺の言葉に気づいたのだろう。

 そして、吹っ飛んだそいつをフィーが刺し殺す。

 そうしている間にも、他のゴブリン達は逃げている。


「よし、追うぞっ。」


 はいはーい。

 早く追いかけましょうね。


 幸いにも、森の外からゴブリンの群れは見える。

 外からそれを追いかける。

 すると、目の前に三匹のゴブリンが現れる。


 あっ。真ん中の奴、鼻血だしてる。

 さっきの三匹か。

 ならば、容赦をする必要はないだろう。

 

「邪魔だっ。」


にゃん。


 真ん中を蹴って、押し込んだ。

 端の二匹の注意を引いてる内に、フィーがまとめて斬る。

 真っ二つとはいかなかったものの傷は深い。


「くっ、倒しきれぬか。」


 やっぱ、包丁では駄目か。

 でも、ほっといてもいい傷かな。


にゃ!


 他のを追うよ!


「追うのか? 了解した。」


 死にかけの相手をしている時間はない。

 気を取り直して、俺達は逃げる相手を追いかける。


「待てっ!」


にゃっ!


 逃がさないよ!


 もう少し、先回りして森から追い払おう。

 すると、突然ゴブリン達の姿が消えた。


「なっ!?」


 消えた!?


 急な出来事で立ち止まる。

 足音も聞こえない。

 どこにも姿は見当たらない。


「何が起こった?」


にゃあ。


 さぁ。


 良く見ると霧だ。

 この先一面に霧がある。

 しかし、森の中だけだ。


「もしかしてだが、この霧のせいか? しかし、姿を消す程ではないが。」


にゃー。


 そうだね。

 一体何が起こったの?


 突然起きた出来事に、疑問は増えるばかりだ。

 何も出来ない俺とフィーは立ち尽くすしか出来なかった。

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