一話
「おい、沼田!目を開けろ!」
その声が聞こえて目を開けると目の前に姉弟子の茶色の短髪で活発そうな顔があった。
「ち、近いですよ、良子さん」
彼女は俺の通っている道場の姉弟子で皆藤良子さん、元の世界の友達だった奴の面影のある人だ。
俺が初めて出会ったのは、高校の友達五人卒業卒業旅行で行った京都でふざけての山の中で遭難し、
クマに襲われ逃げているときに出会い助けてくれた。
彼女に従って下山するとそこはさっきまでいた京都と少し異なる街だった。
俺は尋ねた
「あの…、ここは京都の稲荷山ですよね?」
彼女は「ここは清神街だよ、何なんだその京都とか稲荷山って?」
と不思議そうに答えた。
「えっ、俺は稲荷山の近くの山で遭難したはずです」
「神隠しにあったみたいだな」
「まじで、スマホつながるかな?つながるなら皆に連絡しよう」
スマホをチェックすると電波が届いていないようだった
「どうしよう今日の泊まるはずのホテルもなくなっちゃった」
「良ければ家に泊めようか」
と彼女が言ってくれたのでやっかいになることにした。
彼女の家は、街はずれのボロイ一軒家だった。
「ボロイけど気にせずに入ってよ」
「ありがとう。君の家族は?」
「一人暮らしで、私の名前は皆藤良子よ、良子と呼んでね」
これが彼女との出会いだった。
今、俺と良子さんが稽古場として使っている道場で物思いにふけっていると、
袴をはいた着物姿の綺麗な黒髪の女性が入ってきた。
「おい、良子、沼田の稽古はどうだ?」
「雅さん、沼田もだいぶ動けるようになりましたよ」
彼女はこの道場主の高田雅さんだ。
「よし、それなら武器の使い方を聖に教わっとけ、おい、聖!」
「何ですか~?」
間延びした声と共に部屋に入ってきたのは、俺の腰ぐらいしかない女の子だった。
「はじめまして~。あなたが沼田直也さんですね~。私の名前は赤塚聖です~、まずは~、刀の使い方を学びましょうね~」
聖はそう言うと抜身の真剣を向けられた。
「聖さん、初めての稽古で真剣を使うのか?危ないぞ?」
「本物にも慣れとかないと本番で危ないですよ~、つべこべ言わずに始めますよ~、構えて下さ~い」
そういうと彼女は俺の首めがけての鋭い袈裟斬りを繰り出し、ギリギリのところで俺は受け止めることに成功した。
「集中しないと~死んじゃいますよ~」
そう言うと聖は逆袈裟斬りからの刀を流れるように返して左袈裟斬りを繰り出す二連撃を受けきれずに
斬られてしまった。衝撃で消えゆく意識の最中、聖と雅の話し声が聞こえた。
「そんな強さじゃ~、なー君元の世界に戻る前に本当に死んじゃいますよ~」
「もっと強くなってもらわないとな」
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