第9話:風精霊と索敵
「す、すごい……」
オークを倒した聖剣の強さにエリアルは驚愕する。
俺が戦うところを見るのは今回で二度目となるエリアルも、俺の聖剣を見たのは初めてなので当然の反応だろう。
「アレスさんすごいです! あの強いオークを一撃で倒すなんてアレスさんすごいです!」
「全然すごくないよ。俺の聖剣と勇者紋がすごいだけだ」
俺は謙遜して聖剣を握ってない方の手をヒラヒラとさせる。
俺も自分の強さはキチンと弁えている。俺の本来の実力は《初級》。この強さは勇者紋から授けられたものだ。
神級>王級>上級>中級>初級と5つ存在するランクの中では最下位。冒険者時代の俺の役割も【荷物持ち】だった。
俺が強力なモンスターと戦えるのひとえに【勇者紋】のおかげである。
俺も調子にのる事はたまにあれど、勇者紋のおかげだという気持ちは一度も忘れた事がない。
「……って勢いで俺が獲物を横取りしちゃったけど、ごめんね」
エリアルの今回のクエストは屋敷内のオークをすべて殲滅する事である。
エリアルは首を振った。
「いえいえ、私は戦闘が不得意なのですごく助かってます。元々戦闘は友達にすべて任せていたんです」
そうなんだ。
言われてみればあんまり戦闘が得意って雰囲気じゃないかも。初めて出会った時もゴロツキに絡まれていた。
「エリアルは冒険者では何の役割を担当していたんだ?」
「私の役割は斥候です。風精霊のシルフィを操る事ができるので、風を操って敵の情報を探るのが得意です」
エリアルはそう答えると、手のひらに小さな妖精を召喚した。
妖精の背中には半透明の羽根が4つ。緑色の女の子で、翡翠色のワンピースを着ている。
キャハハと笑いながら周囲を自由に飛びまわる。
「すごくかわいいでしょう。私の契約精霊なんです」
お前の方がもっとかわいいよ。
という言葉がふいに脳裏を掠めたが、俺は口には出さずに大きく頷いた。
エリアルが風精霊に命令を下すと、フロアに冷たい風の流れが発生する。
「一階に3体いますね。今から地図を作成しますので少々お待ちください」
エリアルはそう答えると、スラスラと屋敷一階の地図を書き記していく。
「すごいな。そこまでわかるのか」
「えへへ。索敵には自信があるんです。アレスさんの力に慣れてよかったです」
索敵も優れているが、彼女が本当に優秀なのは空間把握能力だろう。
俺も風精霊と契約してるので索敵は一応できるが、エリアルのように何もないところから地図を生成するような芸当はできない。
そもそも俺の画力は壊滅的だ。馬を描いたつもりなのに「ネコ?」と言われたことがある。
俺の画力の話は置いておくとして、エリアルの地図のおかげでかなり動きやすくなった。
「そこの曲がり角を越えるとオークがいますね」
エリアルのサポート通り、本当にオークがいた。
うーん優秀。
オークは俺達を発見すると咆哮を上げて突進してくる。
俺は《勇者紋》の力で取得したスキルの一つである《スティンガー》を発動する。
聖剣に銀色の剣気が集まる。
同時に俺の脳裏にスティンガーの動きが想起された。
スティンガーを発動すると、先程までの俺の動きとは一線を画すほどの高速の突き攻撃が放たれた。
オークの胸部に直撃してオークを通路の一番奥まで吹っ飛ばした。
数秒後、オークは炎となって消えた。
そして、《オークの牙》だけがドロップした。
よしっ、二匹目のオークを仕留めたぞ。
オーク1体につき銀貨一枚となる。
そして、貨幣の価値は以下のようになっている。
銅貨一枚:パン
銀貨一枚:宿代
金貨一枚:馬一頭
これを目安に考えてもらえば問題ないだろう。
とりあえずの目標はクエストを達成して宿代を手に入れる事だ。
これらの素材だけだと銀貨に相当するものがないため、討伐クエストも合わせて達成する必要がある。
「流石ですアレスさん。この調子で残りのオークも倒していきましょう」
「うん、そうだね。一緒に頑張ろう」
俺達は順調に屋敷一階のオークを討伐していった。
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