第5話:仲間との再会
冒険者とは、狩猟や採取を生業とする職業だ。
複数の国が加盟してる連合組織なので《冒険者カード》さえ持っていれば別の国でも同じように活動できる。
勇者になる前は俺も冒険者だったので冒険者には知り合いも多かった。
半年間という短期間で四天王を残り一体まで減らす事ができたのは、ひとえに俺が元冒険者だったからだ。
冒険者ギルドの情報網を駆使する事で、各地の魔物の頭数を把握できたので、とても効率よく行動できた。
今回、俺が冒険者ギルドを尋ねた理由は、【聖竜王】の情報を集めるためだ。
聖竜王とは四天王最後の一匹であり、最強のドラゴンと称されるほどの強大な力を秘めたモンスターだ。
聖竜王率いる《飛竜部隊》には、王国軍も大いに苦しめられており、できるだけ早く討伐するように求められている。
「俺が聞いた噂が正しければ、聖竜王は《竜の渓谷》にいるはずだ」
ギルドに併設された酒場で酒を飲んでいる冒険者の一人がそう答えた。
随分と酔っぱらっているようで、表情だけ見るとあんまり信憑性がない。
「それは本当か?」
俺は改めて尋ねる。
「ああ、間違いねえ。S級冒険者のシルアが『聖竜王は竜の渓谷にいる』と言ってたからな」
S級冒険者シルア。
【マップ】の情報スキルを持っている便利な男性。
魔王大戦時では各地の調査を任されているらしい。
おそらく聖竜王もマップのスキルで見つけたのだろう。
どうせなら俺の代わりに倒して欲しかったが流石にそれは酷か。
やはり四天王は勇者の俺が倒すしかない。
聖竜王のいるとされる竜の渓谷は俺も聞いた事があった。
多くの竜が暮らしている超危険地帯。
勇者紋があるとはいえ、聖竜王に一人で挑むのは無謀なので同志を募る必要があるな。
聖竜王の情報を集めるついでに《竜の渓谷》までついて来てくれないか交渉してみる。
「じょ、冗談だろ? 竜の渓谷なんかに行ったら俺達死んでしまうぜ」
「勇者様の力になりてえのは山々だが、俺達も命が惜しいんでな、他を当たってくれよ」
冒険者達は口々にそう答えた。
まあ当然の反応だよな。
俺だって彼らの立場だったら同じような反応をするだろう。
王国軍に要請するのもありだが、彼らは彼らで魔王軍本隊と戦っているらしいからちょっと頼みづらい。
また、ロザリー、エルザ、レスティアと対立してしまったのも俺にとってはかなりの痛手で、俺の立場をかなり不安定なものに変えてしまった。
彼らは魔導協会、剣武界、教会の重鎮の娘達である。
権力を敵に回せば今後の勇者生活で支障をきたすのは必須。
あの時は俺も感情的になりすぎてたし、いま思えば、すこし短慮すぎる行動だったかもしれない。
でもなー、俺は全然悪くないのに謝るのはちょっとなー。
頭では理解しても感情が謝罪を拒否している。
一時間ほど悩む。
最終的に俺は三人に謝りに行く事に決めた。
俺は勇者だ。国の大事を任された選ばれし者。
一時の感情で国を滅ぼすような事などあってはならない。
それに、魔王を倒せば俺も勇者としての使命から解放されて大金が入ってくるんだ。
ここはしばし我慢の時。
すべて未来の自分のためだ。
がんばれ俺。くそっ、胃が痛くなる……!
俺は何度も自己暗示をかけて、俺は街の外に繰り出す。
来た道を引き返しながら三人の行方を探しにいった。
◆ ◆ ◆
ロザリーとレスティアを発見したのはそれから一時間後の事だった。
どういう経緯でそうなったのかはさっぱりわからないが、彼らは水浸しになっており、朝に綺麗にセットされた髪型も今は完全に崩れていた。
「お前らなんで水浸しなんだ?」
俺はロザリーに尋ねた。
最初は答えたがらなかったが、しばらく問い詰めると渋々と言った様子で事情を説明した。
老朽化してる橋を渡ってる最中に橋が崩落して川に転落したらしい。
そのまま川を流されて今に至るという感じだ。
「ところで、さっきからエルザの姿を見かけないが、エルザはどこに行ったんだ? たしかエルザも一緒に落ちたんだろう?」
すると、二人はキョトンとした表情を浮かべて、お互いに顔を見合わせた。
どうやらエルザは行方不明になったようだ。
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