表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/45

最終話:再会で終わる物語

追伸

2022/11/12

後日談をもう1話だけ追加します。

 俺とロザリーの出会いは決してよい出会いではなかった。喧嘩する事も多かったし、仲が良かった時期よりも、仲が悪かった時期の方が圧倒的に長かった。エルザのように『剣士仲間』として俺を敬愛していたわけでもなく、レスティアのように『妹』として俺を慕っていたわけでもない。

 俺達の関係は本当に0から始まったのだ。一時は0どころかマイナスにまでカンストし、お互いを嫌悪し合っていた時期もあった。


 それが今では、二人一緒に手を繋いで、森を散歩する仲になっていた。

 現在、俺達二人はハーケテュリア領に存在するとされてる大樹を目指している。大樹に向かうのは今回で二回目。前回行ったのはめちゃくちゃ最近で三日前だ。エリア浄化中にたまたま見つけた。

 一回目の時はレスティアが同行者で、今回はロザリーが同行者である。レスティアの時は浄化作業が中心でほとんど探検してなかったが、今回は火力要員のロザリーを連れて大樹の調査をしようと思う。


 まあ、調査といってもほとんどデートみたいなもんだけどね。ハーケテュリア領に到着してロザリーとこうして一緒に歩くのはめったになかった。今回はレスティアの勧めで取り計らってもらえたロザリーとのイチャイチャタイムだ。

 ロザリーがレスティアを尊重しているように、レスティアもロザリーをしっかりと尊重している。


 しばらく歩いていくと、30メートルはあろうかという大樹が見えてきた。

 この大樹はエルフ族の中では『世界樹』と呼ばれており、元はエルフ族が管理していたもので、この森もエルフ族が所有していたものだった。だが、バイオハザードの影響で、エルフ族は全員ゾンビ化してしまったので、世界樹だけが残された形になる。


 この辺一帯はすでに浄化が完了してるが、別エリアからゾンビが侵入してきたようで、3匹のゾンビが呻き声を上げながら近づいてくる。元はこの森で暮らしていた住人なので、彼らを倒すのは忍びない。

 俺は《ターンアンデッド》によって、彼らを来世へと送り返してあげた。


 その時、偶然、大きな突風が吹いた。風はロザリーの三角帽子を攫って世界樹の中腹へと飛ばした。



「突然やってきた人間の私達に、世界樹の精霊が興味を持っているのかしら?」



 ロザリーは冗談交じりにそう笑った。昔の彼女ならすぐに悪態をつきそうなものだけど、いまのロザリーは先程の不運も前向きに受けとった。



「今から樹に登って取ってくるよ」

「落ちないように気をつけなさいよ」



 風魔法で三角帽子を地面に落とすこともできたが、お気に入りの帽子みたいだから傷つけないように取ってこようと思った。

 世界樹の樹幹は物凄く太くて、俺とロザリーが手を広げても全然後方に届かないほどだ。

 木から落ちないように、凹凸のあるところに足を引っ掛けながら、ゆっくりと登っていく。

 こうやって木登りをしたのは子供の時以来かもしれない。あの時は両親も生きていて、クレアも俺の事を兄さんと親しく呼んでいた。あの幸せは長く続かなかったけれど、別に今が不幸だとは全然思っていない。

 ロザリーがいるし、エルザもいる。妹のクレアだってレスティアとして10年ぶりに再会できた。失ったものは多いけれど、かけがえのないモノを多く手に入れる事ができた。今の俺は本当に幸せだ。


 三角帽子は枝の上に乗っていた。この枝も結構太くて、人間くらいなら余裕で座れそうだ。

 帽子を取る過程で俺は『ある風景』に気づいて、目を見開いた。


 ただ、ここだったら中途半端だな。

 どうせ景色を見せてあげるなら……。


 俺は頭上を見渡して、ちょうど良さそうな場所を探す。10メートルほど上に、いい感じの太さの木の枝が、外に大きく伸びていた。


 木から降りる時は風魔法を使ってササッと飛び降りた。衝撃を緩めながらアクロバティックに降りる俺に対して、ロザリーは目を輝かせて絶賛した……わけではなく、真顔で注意された。



「調子に乗って飛び降りると怪我をするわよ」

「ごめん」



 ロザリーの注意に反省しつつも、俺はロザリーに見せたいものがあったので、今から木に登ろうと提案した。

 だが、ロザリーは橋から落ちた経験があり、それ以来高い所に苦手意識ができていた。だから最初はイヤイヤと拒否していたが、最終的に渋々といったような表情で承諾してくれた。


 俺はロザリーをお姫様抱っこして、絶対に落とさないようにしっかりと抱きしめる。ロザリーも俺の服にしがみ付いて、ギュッと引っ付いている。少しでもロザリーの恐怖を和らげるために、10秒ほど目を閉じてもらう。


 その間に俺は地面を蹴り上げて、枝の上を飛び移りながら目的の場所を目指す。

 目的地に到着後、ロザリーに「もう目を開いていいよ」と告げた。


 ロザリーは、おそるおそると目を開き、そして驚愕した。

 世界樹からは森全体を一望することができたのだ。浄化された地点は3割程度、まだ浄化が済んでいない地点が7割程度といったところだ。

 浄化が終わっている部分はキラキラと光り輝いているので、すごくわかりやすかった。


 目の前の景色は、『俺達の未来』を表わしているように感じた。

 何もせずに放っておけばまた汚染されてしまうかもしれない。でも、今のように毎日精一杯頑張っていけば、着実に良い方向へと繋がっていく。

 浄化されたエリアが逆転するのか、汚染されたエリアに飲み込まれるのか。それはすべて俺達4人の努力次第なのだ。


 俺はロザリーに告げた。



「まだ、完全には浄化できていないけれど、一年後ここに戻ってきた時は、今の景色よりもっと綺麗になっていると思うんだ」

「そうね、私もそう思うわ。一年後、ここに戻って来た時、浄化されたエリアだけが見えるような風景にしていきたいわね」

「うん」


 俺達は決意を新たにして、世界樹からハーケテュリアの森を、しばらく無言で眺める。

 すると、ロザリーが不意に口を開いた。


「今度は、誰かを仲間外れにするのではなく、最後までみんな一緒に頑張りたいわね」

「あはは……そうだね。個人的に追放はもうこりごりかも」


 冗談っぽく笑うロザリーに、俺は苦笑いする。


「ところでアレス。追放の反対は何かわかる?」


 ロザリーが悪戯っぽくそう聞いた。


「追放の反対か……再会かな?」

「大正解。ほら、あそこを見なさい」


 ロザリーは森のある地点を指差した。

 そこには、エルザ、レスティアといつもの二人の他にも、追放後に初めて友達になった『エリアル』も一緒にいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ