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第8話:エピローグ

 あれから20分ほどが経過した。

 レスティアもだいぶ落ち着いてきており、呼吸も安定していた。

 ハンカチで涙を拭いてあげて、こちらから声をかけると小さく頷いた。


 抱きしめていたレスティアを解いて、ゆっくりと地面へと降ろした。

 すると、レスティアは丁寧に頭を下げた。



「アレス。先程はお見苦しいところを見せて申し訳ありませんでした」

「ううん、俺もレスティアの気持ちを知ることができてよかった」

「そう言っていただけると私も心が軽くなります」



 どうやら心の安定を取り戻したようだ。



「それじゃあ二人を改めて捜そうか」

「はい、わかりました」


 レスティアと一緒に歩き出した。

 その時、俺達の間を冷たい風が吹き抜けた。木の葉が舞い上がり、レスティアの頭に一枚乗った。


 それを取り払うため、自然とレスティアの頭に手を乗せる形となった。

 レスティアの顔面が急に赤くなっていく。言葉も上手く出てこなくなっており、俯いて無言になった。左右の耳まで真っ赤になっている。


「あれ、レスティア……もしかして風邪でも引いたのかい?」


 夜風に当たりすぎて体調を崩したのかもしれない。お互いの額をくっつけて確かめるとレスティアの顔はますます赤くなっていった。


「か、風邪なんて引いてません」

「でも顔がすごく真っ赤だよ」

「これは……もう、とにかく風邪なんかじゃありません!」


 レスティアは怒り気味でそう答えた。本人が風邪じゃないと言ってるのならそうなんだろうけど、ちょっと心配だなぁ……。



 ◆ ◆ ◆


 ロザリーとエルザは森の奥にいた。

 ぼんやりと明かりが灯っていたのですぐに気づいた。


 俺達の足音に気づくと警戒した仕草を見せたが、俺達の姿に気づくと武器を下ろした。



「こんな所で何やっていたんだ?」

「えっと……なんと言えばいいのやら……」



 エルザは言葉をしどろもどろとなっていた。ロザリーも同じような感じだ。


「アレスがすごく心配してたんですよ」

「ごめん」「すまない」


 意外にも二人はすぐに謝った。

 俺が気づいたのは彼女の近くにある小さな鍋。キノコや山菜がグツグツと煮られていた。いくつか正体不明の食材が入っているが鍋料理っぽい雰囲気はあった。


「もしかしてその料理は二人が作ったのか?」

「ええ、エルザが素材を集めてきて、私がそれを鍋の中に入れたの。まだ練習段階みたいなもんだけど……」


 二人が料理を作ったという事実に驚いていた。

 ……というのも、彼女達は今まで一度も料理を作ろうとしなかったのだ。貴族だから料理を作る必要がないという理由もあるかもしれないが、彼女達が自分達の意思で調理をするなんて、いったいどんな風の吹き回しなんだろう。

 やっぱり昨日の一件が関係してるのかな。


「あ、あの、アレス……。よかったら一緒に食べる?」


 ロザリーは遠慮がちにそう尋ねた。


「俺も食事に参加していいのか?」

「う、うん。だって私達同じパーティでしょう? 昨日アレスが言ってくれたように、私も一からアレスとやり直したい」


 ロザリーはそう続けた。


「私もロザリーと同じ気持ちだ。昔みたいにまた剣を合わせてみたい。神級とか初級とか、もうどうでもいい。アレスと友達に戻りたい……」


 エルザもそう言った。

 二人で料理の練習をしていたのはそのきっかけ作りだろうか。

 だとしたらかなり回りくどいやり方だと思う。

 現に俺達を心配させてるわけで、要らぬ手間をかけさせたわけだ。


 だけど、彼らの気持ちは伝わった。


「……鍋だから体が温まりそうだな」


 俺のその言葉に、二人は嬉しそうに笑った。


 料理はやや薄味だったが案外美味しかった。キノコの出汁や山菜の旨みが出ていたおかげだろう。

 今回、料理の練習をしていた理由だが、俺と仲直りする理由の他にも落ち込んでいるレスティアを励ます意味合いもあったらしい。

 普段から一緒にいたせいか、レスティアがよそよそしくなっていた事に気づいたそうだ。

 レスティアはそのことを知ると料理中にまたメソメソと泣き出した。

 今日はなんか泣いてばかりな気がする。


 色々あったけど、お互いの仲が少し前進できたからヨシとしよう。


「そういえば、二人ともよく《ササドラダケ》と《ドクドラダケ》の識別ができたな。そこは素直に驚いたよ」


 俺は異次元ポーチからササドラダケを取り出しながらそう言った。ちなみにこのササドラダケはエリアルから貰ったものだ。

 ※第3話参照。


 俺の言葉に二人はポカーンとした表情を浮かべる。



「あ、アレス。ドクドラダケってなんの話だ? 私達が取ってきたのはこれだ」


 おそるおそるといった動作で、エルザは『ドクドラダケ』を取り出した。


「え? これササドラダケじゃないの? いつもアレスが入れてたから同じものだとばかり……。でもまあ大丈夫よ。名前が二文字違うだけじゃない」


 ロザリーは呑気にそう答えた。

 大丈夫なわけないだろアホ。ドクって思いっきり名前についてるだろうが!


 ドクドラダケには毒性があり、これを食べると数日間高熱が出ることで知られている。

 レスティアがすぐに浄化神法をかけてくれたから事なきを得たが、彼女達が料理をするときは、ちゃんとチェックしないと命がいくつあっても足りないな。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間関係という一度道を違えただけで切れることもある大事なものだということは理解しているがこの作品のようにやり直すのは珍しいからとても面白い
[良い点] 雨降って(土砂崩れして流されて散々な状態から?w)地固まる。 結構なポンコツオチもつきましたが、無事パーティの仲も固め直すことができ、ひとまず万々歳ですね! [気になる点] 額くっつけはと…
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