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第3話:エリアル=パークス

 少女を困らせていた男達をすべて倒した後、俺は少女に声をかけた。


「怪我はないかい?」


 少女の頬は薔薇のように赤みを増しており、ぼんやりとした表情で俺を見つめていた。こちらの問いかけに対しても少しだけ間があった。

 我に返った少女は慌ててすぐに返事をした。


「助けて下さって本当にありがとうございます」


 少女は何度も頭を下げて感謝の言葉を繰り返した。

 その後、少女は俺に対して、とても丁寧に自己紹介をした。


「私はエリアル=パークスです。以後お見知りおきを」


 エリアルは優しく微笑む。その笑顔を眺めながら俺は改めてエリアルを観察する。 

 青髪ロング、瞳の色は深い紅色。胸は控えめに膨らんでいる。青白赤の三色を組み合わせたトリコロールカラーの制服を着ている。


「その制服、フリークス魔法学校の生徒だね」


 フリークス魔法学校とは、ルーゼンベルグに創設された伝統ある魔法学校の事で、優秀な精霊使いを多く輩出してきた超名門校。

 ただし、学費が高いので貴族や大商人の子女でなければ通う事は困難とされている。


「はい、その通りです。今は学園寮で暮らしています」


 エリアルは俺の質問に頷いた。

 たしかに言われてみれば、エリアルからは貴族の気品を感じられる。

 おそらく、どこぞのお嬢様だろう。


 そんな事を考えていると今度はエリアルから質問があった。


「僭越ながらアナタ様のお名前も聞いて宜しいでしょうか?」

「俺はアレスだ」


 家名はないので名前だけ伝える。

 

「アレスさんですか。とても素敵な名前ですね。えっと、改めて申し上げます。先程は助けて下さり、本当にありがとうございます、アレスさん」


 エリアルは顎を引き、姿勢を正して丁寧にお辞儀した。

 ここまで深く感謝されるとなんだかくすぐったいな。


 俺に家名がないことに対しても馬鹿にしたりせず人として平等に扱ってくれたし、素直に好感持てるよ。


「あの、もしよろしければ、ルーゼンベルグまで一緒について来て下さりませんか? ひ、一人ではちょっと不安なので、アレスさんが側にいて下さるとすごく安心します」

「うん、いいよ。俺もちょうどルーゼンベルグに向かうところだったんだ」


 俺は笑顔でそう答えた。


「あ、ありがとうございます!」


 俺とエリアルはルーゼンベルグに向けて出発した。


 2時間後、隣町のルーゼンベルグへと到着した。

 街全体をぐるりと囲むように三メートル程度の壁に囲まれており、四隅には侵入者を発見するためのやぐらが建てられている。

 正午ということもあり、街の入口には多くの人が並んでおり、入門審査が必要みたいだ。

 俺達はその最後尾に並んで自分の順番を待ち、20分ほどで俺達の順番になったので警備兵の前に出た。


「身分がわかるようなものはありますか?」


 兵士から身分を尋ねられた。


「俺は一応、こういう者です」


 俺ははっきりとは名乗らず、右手の甲に刻まれている【勇者の紋章】のみを警備兵に見せた。


「ゆ、勇者様!? これは失礼しました! 勇者様、ようこそ、ルーゼンベルグへ!」


 警備兵はすぐさま道を開けた。

 エリアルはというと、今のやり取りで俺の正体を知って驚愕していた。


「え? えええええ!? アレスさんって勇者だったんですか?」

「別に隠すつもりはなかったんだ」

「いえいえ、別に怒っているわけじゃないんですよ。アレスさんが勇者様かー。えへへ、すごくかっこいいですっ!」


 エリアルは怒るどころか、俺への尊敬の念をますますと強めた。

 別に俺がすごいわけではなく、勇者紋が珍しいだけなんだけどね。


「ルーゼンベルグに送ったし、それじゃあ約束通りそろそろお別れだね」

「そうですね……。アレスさんと別れるのはちょっと寂しいです……」


 エリアルは悲しそうな表情を浮かべた。


「機会があればまた会えるさ」


 俺は彼女を慰めてエリアルの頭を撫でる。

 エリアルは顔をますます赤らめた。

 ちょっと子供扱いしすぎたかもしれない。でも、喜んでくれてるようで安心した。


「ありがとうございます。えっと、これは私からのお礼です。ぜひ受け取ってください」


 エリアルは《ササドラダケ》を10個俺に渡した。


 ササドラダケは食用のキノコであり、焼いて醤油をつけると非常に美味しいキノコだ。

 研究のために採取してきたものをいくつか俺にくれるそうだ。

 ありがたく貰っておこう。


「ありがとう。今日の夕食にするよ」


 俺はエリアルにお礼を言った。

 その後、エリアルに別れを告げて、目的の冒険者ギルドを目指した。

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