第21話:人の本質
ルーゼンベルグに帰宅後、俺は宿屋で今後の計画を練っていた。
「最短で安全にレベルを上げるには、どう行動すべきか……。ううむ、悩ましいところだな」
レベル1に戻ったのでまた99までレベルを上げる必要が出てきた。元の強さに戻るまで期間にして4カ月弱といったところか。
討伐完了まであと一歩というところまで来ていただけに、ここでのレベルリセットは案外堪える。
不幸中の幸い、四天王ならすでに全滅させてるので魔王軍の戦力はほとんど残っていない。
魔王軍による人間界への侵攻も現に止まっていて、彼らは自分達の身を保つので精一杯になっている。
戦況だって王国軍が随分と優勢だ。レベル上げのために半年くらい回り道をしたところで急に戦況が悪化したりはしないだろう。
個人的にレベル上げうんぬんよりも、俺が『レベル1』だと魔王軍に気づかれるほうがマズイと思っている。
売国賢者クラウドを懐柔して内部崩壊を画策してきた奴らだ。俺がレベル1だとわかれば、彼らは『あらゆる方法』で俺を潰しにかかってくるだろう。
また、敵はなにも魔族だけでない。
人間側にも俺を疎ましく思っている連中は多い。
勇者としての役目をほとんど果たして魔王軍が弱体化した今、強大な武力を持っている俺を始末しようと考える輩が現れても不思議ではない。
魔王を狩るために勇者は有用だが、魔王を討伐すれば勇者はお役御免となり、目の上のたんこぶのような存在として扱われる。
内憂外患。
勇者の敵はあらゆる所にいるのだ。外に見える賊は滅しやすいが、内に隠れた賊は滅しがたい。
とはいえ、その辺は明日からしっかり考えよう。
まずはレベリングだ。
敵の強さから考えて《ルーゼルフォレスト》でレベル上げをするのが一番効率的だと結論を下した。
今日はもう遅いし寝ようかな。
ベッドに横になろうとすると玄関からノック音が聞こえてきた。
声の主はロザリーだった。返事をするかどうか一瞬迷ったが、彼女の方からやってくるのは珍しいので俺は彼女を部屋に入れた。
ロザリーはオドオドしながら部屋に入ってきた。フリークス魔法学校での一件を今も引きずっているのがわかる。
それでも部屋にやって来たのを見るに何か俺に伝えたい事でもあるのだろうか。
「あ、あの……」
昔の尊大な口調が嘘のように思えるほどロザリーの話し声は弱々しかった。
「一人でやってくるなんて珍しいね」
「ご、ごめんなさい」
「別に怒ってないよ。立ち話もなんだからそこのソファに座ろうか」
ソファへと案内すると、ロザリーは俺の隣にちょこんと座った。
俺が思っていた以上にロザリーは小さかった。
同時に、勇者としてロザリーとやり取りする事はあっても、アレスとして会話をした事はほとんどなかったと気づいた。
俺の立場的に仕方ないとはいえ、随分と遠ざけられてきたんだなと実感した。
ロザリーの肩は恐怖で震えていた。何か俺に言おうとしてるのはわかった。
パーティを抜けたいとかそんな感じだろうか。そう思うのも無理はないだろう。俺も別に止めたりはしない。
そもそも俺は今回の戦い一人で行くつもりだった。上からの圧力がめちゃくちゃかかっていたので仕方なく三人を引き連れたが、今回の件もあるので次からは同行を辞退できるだろう。
上手く喋れないロザリーに対して、俺はその事をロザリーに伝えた。
するとロザリーは首を振った。
え? じゃあなんで来たんだろう?
リザレクションの事でも聞きに来たのかな。
個人的にそれが一番あり得るかな。
それを伝えようとするとロザリーの方から口を開いた。
「今までごめんなさい」
と、ぽつりと呟いた。
今までという部分は、たぶん半年間の事を指すと思う。
彼女の行いがその一言だけで清算できるとは思えないが、
自分の行いを反省するという行為ができなかった彼女にとっては大きな進歩と言えるのかもしれない。
そういう意味ではリザレクションを使ってよかったと思う。
まあ、一時的に改心しただけで数日後には戻っている可能性も大いにあるけれども。
俺は常々、『人の本質は変わらない』と考えている。
クラウドが最後まで自分の事しか考えられなかったように、ロザリーの本質も基本的に同じだろう。
貴族ロジックが基本で平民の気持ちはわからない。俺はそう考えている。
我ながら勇者の発言とは思えないな。
だが同時に、もしかしたら変わるんじゃないのかという期待も完全には捨て切れなかった。
半年間一緒に旅をした情がどこかに残っているのかもしれない。
いずれにせよ、リザレクションはすでに使った後なのでロザリーが改心したと信じるしかない。
「ロザリーの言葉をすぐに信じる事はできないけど、ロザリーが本当に反省してるなら特別に許してやらなくもないよ」
俺はあえてクラウドの時と同じ言葉を使った。
「なっ……! 平民のぶん……ううん、アレスの言うとおりかもしれないわね。信じてもらえるように努力するわ」
いま平民の分際と続けようとしたのは明白だったが、なんとか堪えたようだ。100点満点の解答ではなかったが、30点くらいはあげてもいいのかな。
すると、ロザリーは何を思ったのかベッドの上にごろんと横になった。
「し、証拠として勇者のアナタを受け入れるわ」
「は? え、あの、キミ。突然なにを言ってるの?」
「わ、私はそのためにパーティに入れられたようなものですもの。本当は嫌だけど……アレスには命を救われたわけだから受け入れるわ」
ロザリーの意味不明な言葉に俺は耳を疑う。
たしかに言われてみれば装飾品とかは全部外れており、生地の柔らかそうなローブとインナーだけになっている。
いやいやいやいや、冗談だろ?
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