第20話:リザレクション
俺の役目は魔王を討伐する事だ。仲間と仲良しごっこをする事ではない。魔王を倒す期間が長引けば長引くほど国内に被害が及ぶ事を理解しなければならない。
国を想えば、個人の感情を捨てて、今すぐにでも魔王城を目指すべきだろう。
しかし、俺は魔王城へと向かわずに遺体の側で詠唱を行う。
「リザレクション」
ロザリーの遺体に向けて《リザレクション》をかけた。
ロザリーの体が、金色に眩しく光り輝く。
数秒後、ロザリーが負っていた傷が全部なくなった。それに合わせてロザリーがゆっくりと瞼を開いた。
先程まで死んでいたはずのロザリーが蘇生したのだ。これにはレスティアとエルザも驚愕する。
あんぐりと口を開けて、唖然となったまま、ゆっくりと上体を起こすロザリーを眺めていた。
「い、いたた……。あ、あれ、どうしたの二人とも?」
ロザリーは茫然としてるレスティアとエルザを見て困惑する。
彼女の問いかけに対して返事をしたのはエルザ。彼女は大声でワンワンと泣き始めた。
レスティアもロザリーに抱きついた。
その顔は大粒の涙で歪んでおり、喜びと罪悪感が入り混じったような表情だった。
レスティアは震える声で何度もロザリーに謝った。
その懺悔の言葉は真実味があった。怠惰と欺瞞で塗り固められた言葉ではなく、心からの謝罪の言葉だった。
意外な事に、先に泣き止んだのはエルザだった。レスティアは子供のように今も泣いている。あの様子だと、しばらくはロザリーから離れそうにないな。
「アレスよ。いったい何をしたんだ? ロザリーは確かに死んでいたはずだ」
エルザが俺に尋ねた。
「俺はなにもやってないよ」
エルザが困惑するのも無理はないが、あえて正直に答えずに彼女らに背を向けた。
リザレクション
死者を蘇生させる最高クラスの聖法術。
レベルによって成功率が変わるが、レベル99の場合は成功率は99%と言われている。
俺のレベルは99。
ほぼ100%の確率で一人の人間を蘇生させることができる。
だが、強力な効果を持つ代わりに代償も大きい。
ステータスを表示させて自身のステータスを確認する。
―――――――――
名前:アレス
レベル:1
―――――――――
俺のレベルは初期値のレベル1に戻っていた。
レベル1はモンスターを一匹も倒していない状態だ。勇者紋があるとはいえ、レベル1とレベル99とでは天と地の開きがある。レベル99で《聖竜王》と互角だった現状を考えると、今魔王と戦えば俺は間違いなく負けるだろう。
俺は魔王を倒せるかどうかのチャンスをみすみす捨ててしまったのだ。
これが勇者失格と言わずになんというだろうか。
レベル1に戻った以上、魔王退治は一時的に中断となった。
レベル1になったことを魔王軍に気づかれる前に素早く去ろう。
俺はエルザとレスティアに撤退する事を伝えた。また、エルザにはロザリーを担ぐように命じた。
またパニックになったら困るしな。
ちなみに先程理由を答えなかったわけだが、敵の残党がどこで耳を潜めてるかわからないからだ。
もしここで事情を説明すれば俺がリザレクションを発動したことが魔王軍に漏れてしまう。
情報が漏れるのはギリギリまで避けたい。
俺の想いが伝わったのか、三人が俺に理由を尋ねてくる事はなかった。
その後、俺達は素早くルーゼンベルグまで引き返した。
町に到着後は宿をとって一旦解散とした。
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