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第19話:パーティ崩壊

 いったん魔族を退けることにどうにか成功した。


 俺達はロザリーの遺体の前に立った。

 ロザリーは全身血だらけで、目から生気が消えていた。


 ムードメーカー的な存在であったロザリーの死。最後の方はメンタルをやられて大人しかったが俺達に大きな衝撃を与えた。

 エルザはロザリーの死体に縋り付いて号泣していた。レスティアはオロオロと困惑していた。


 俺の顔をチラチラと確認するが俺は何も答えない。


 俺はというと一歩引いた立場で号泣するエルザを光景を眺めていた。

 他人のような冷めた関係になっていただけに、ロザリーの死に対してどうしても感情移入する事ができなかったのだ。


 むしろロザリーの死を通して、彼女ら二人をまとめることができないものかと、やや冷酷な発想さえ浮かんでいた。


 俺は二人を呼んでゆっくりと告げた。


「ロザリーが死亡したのは俺達がお互いを信用しなかったことが原因だ」


 エルザとレスティアの肩が震えた。彼らも心当たりがあったのだろう。


 もしロザリーがしっかりとレベル上げをしていれば、ロザリーは今の一撃で死ぬことがなかっただろう。

 ロザリーの死因は明白。レベルが低すぎるゆえの即死だ。

 死ぬ直前のロザリーのレベルは、レベル16。オークにだって勝てるかどうか怪しい。


 勇者パーティとして活動する中でレベルを上げる機会はたくさんあった。

 俺も最初の方は、彼らに戦闘を任せたり、彼らにトドメを譲ったりして彼らにも経験値が行きわたるように工面していた。


 しかし、彼らとの仲が悪化するにつれて俺は次第にそれをしなくなった

 正確には『できなくなった』といった方が正しいのかもしれない。

 ロザリー、エルザ、レスティアは『楽すること』を覚えてしまったからだ。


 俺の強さがわかるにつれて、俺にすべての戦闘を任せるようになってしまった。

 エルザの場合は、拗ねてしまったという側面が強いが、なんにせよ、彼らは後方で見てるばかりでレベルを上げるという行為を怠っていた。


 俺はそれを何度も指摘していた。だが、指摘した所で帰ってくるのは罵倒三連打だった。

 最後の方は俺にさえ任せておけばすべて解決するとまで考えていた。


 彼らは俺の事を見下していたが、勇者紋の強さだけはキチンと理解していた。

 その結果が今回のロザリーの即死だ。


 レベル上げを疎かにした結果の末路。因果応報ともいえる死。

 侯爵家の威光を傘に立てて専横な振る舞いを行い、傲慢で他人を侮辱し、プライドだけに固執して最終的に自尊心を崩壊した結果の即死。


 同情よりも仕方ないという諦めの気持ちが勝ってしまった。


「すべての責任はリーダーである俺にある。キミ達に責任を押し付けるつもりはない。魔王討伐後はロザリー死亡の責任はすべて俺が負うつもりだ」


 すると、レスティアはホッと安堵したようなため息を吐いた。




「そ、それなら安心ですね。それで、このあとどうするんですか? やっぱり一度王都に帰りますよね。私達のレベル上げもしなきゃいけませんしね」



 レスティアは上目づかいでそう訊ねた。

 俺は首を振った。


「なにを言っているんだレスティア。このまま魔王城に行くに決まってるだろう」

「え? で、でもロザリーが死んだんですよ! ここは一度退却して戦力を整えて……」

「時間が経てば経つほど魔王軍は戦力が回復していくんだ。叩くなら今しかない」

「で、ですが、私達の『レベル』は……!」

「レベルが……なんだ? 『半年間も猶予があったのに、自分達のレベルが低すぎるから戦闘に参加できません』て俺に言いたいのか?」

「……!?」

「ロザリーが死亡したのは明らかにレベル不足が原因だ。俺だってそれくらいわかる。だけど、そうなってしまった原因を作ったのは、キミ達自身じゃないのかい?」


 俺はそう告げた。慰めの言葉よりも現実を突きつける方が重要だと感じた。


「わ、私達はクラウドのアドバイスに従っただけです。魔王を倒せるのはアレスしかいないのだから、アレスを優先してレベルを上げるのが重要だって聞いたから」


 するとレスティアが言い訳を始めた。

 やはり自分に責任が及ぶのを恐れているのだろう。


「俺がレベル99になったのは二か月も昔の話だよ。キミ達もそれはすでに知っているはずだ」

「……ッ! そ、それは……!」

「もういいじゃないか、レスティア。元はといえば、私達がアレスの諫言に耳を傾けなかったのが全部悪かったんだ。アレスの言っている事はすべて正しい。私達二人の甘さがロザリーを殺したようなモノだろう」


 エルザは諦めたような口調でそう言った。その言葉に、今度は何も言い返せずに俯く。ロザリーの遺体を再度見て、彼女の中の何かが決壊した。


「あ、あああ、あああああああああああああああああああああ!!」


 レスティアは、美しい金髪を乱れ振り回しながら髪を掻きむしって発狂する。

 その姿は、もはや聖女とは言い難かった。しばしの狂乱後、レスティアはロザリーの遺体に覆いかぶさるように号泣を始めた。






ネタバレとなるので詳しくは言えませんがハッピーエンドタグをつけてるのでご安心ください。


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