第11話:賢者クラウド
俺達の目の前に現れたのは賢者クラウドだった。
勇者パーティー随一の頭脳を持ち、最も智謀に長けている。さらに心優しき賢者として周りからの信頼も厚い。
尤も、それは外面だけの話であり、本当はワガママで自分の思い通りに行かないとすぐに癇癪を起こす。
平民を見下し、佞臣を好み諫言を嫌う。
典型的な暗君気質の皇太子であった。
ちなみに俺達の勇者パーティに参加したのは魔王退治の業績を得るためである。
ただし、彼を一つだけフォローするなら賢者としての能力値はかなり高い。
彼は『未来を見通す能力』を持っている。
未来予知。
それに近い能力を持っており、俺達が魔王軍に挟撃された時も彼の予知のおかげで危機を脱した事がたびたびある。
そういう意味では彼を信頼していたけれど、例の追放事件があって以降はまったく信用できなくなってしまった。
クラウドは俺の姿を発見するとニヤリと笑い、足音を鳴らしながら俺達の目の前まで迫ってきた。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「俺は賢者クラウド。シルドマルク帝国の心優しき『皇太子』ですよ」
クラウドは『皇太子』というキーワードを強調して答えた。
エリアルは姿勢を正して気品よく挨拶をする。
「クラウド殿下とは知らずに大変失礼しました。お会いできて光栄です。私はエリアル=パークスと申します。以後お見知りおきを」
「……パークス? もしやクラール侯爵の御子息の方ですか?」
「はい、私の父でございます」
エリアルの正体が侯爵令嬢と知って俺は驚愕する。
貴族だろうと漠然と考えていたが、まさか国の中でも最高位に位置する侯爵家の令嬢とは考えもしなかったのだ。
侯爵>伯爵>子爵>男爵>騎士>平民
これが帝国の爵位ランクである。
エリアルはその最高位である侯爵家令嬢だったのだ。
「おいおいアレス。その様子だとエリアルの事を何もわかっていなかったんだな。お前のような平民風情がお話できるような方じゃないんだよ」
クラウドは腕を組んで、ふんぞり返りながら人を見下すような表情で嘲笑する。
エリアルはクラウドの尊大な態度を見て、口には出さないが、やや顔をしかめた。
ベッドの上にはエリアルが持参した弁当箱。クラウドは弁当箱にサンドイッチが入ってる事に気がついた。
信じられない事に、クラウドは本人の許可も取らずにサンドイッチを勝手に手に取った。
ハムサンドを口へと運んで、くちゃくちゃと音を鳴らしながら咀嚼する。
「えっ……? あのっ……殿下……これはアレスさんの……いや、なんでもないです……」
「喜びたまえエリアル。皇太子の俺に食してもらう料理ほど名誉なものはこの世にないだろう」
「は、はあ……す、すごく光栄です……」
相手が皇太子という事もあり、エリアルからは何も言えないようだ。
ただ、クラウドの行動には心底ドン引きしており、エリアルの紅い瞳には嫌悪感のようなものが宿っていた。
「専用のシェフが作ったハムサンドと比べると味が二段階ほど下だな。30点……と言ったところか」
しかも勝手に点数までつけ始めた。さらに採点したあとはハムサンドをゴミ箱に投げ捨てた。これは本気で救いようがないのかもしれない。
「あ、アレスさん。クラウド殿下って賢者の二つ名があったような気がするんですが、私の記憶違いでしょうか」
エリアルは俺の耳元でヒソヒソと囁く。
「残念ながら当たってるよエリアル」
「なんだかショックです……。こんな方だったなんて思いませんでした……」
エリアルはクラウドから若干距離をおいた。
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