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リクルートスーツ姿の女性に萌える魔王の話

作者: 守 秀斗

 私は魔王だ。

 この世界を名目上支配している。

 実際支配しているのはお妃様である嫁のほうで、私は尻にひかれているだけだ。

 情けないけど私より嫁の方が圧倒的に強いからな。


 さて、我が魔王城はバカでかく、メイドさんたちも大勢いるのだが全員上下黒いジャージ姿。それもダブダブでどんくさい恰好をしている。

 嫁が嫉妬深いので、浮気防止対策でそういう格好になってしまった。


 正直、見栄えが悪いのではないかと思い嫁に言ってみた。

「あのジャージ姿のメイドさんたちがウロウロしているのを外部からのお客人たちに見られたら、みっともないんじゃないか」

 すると、

「あら、あなた。そう言って、メイドたちをいやらしい服装にしたいんじゃないの。あなた浮気したいんじゃないの」と嫁がにらみつけてきた。

 

 私は震えながら、

「違うって、もう少しマシな恰好にさせたらどうだと言ってるんだ。服装は君が決めればいいじゃないか」と慌てて言った。

 嫁が怒りだして、ボコボコにされると私は千年間ベッドで寝たきり状態になってしまうからなあ。

 怖い、怖い。


 と言うわけで、嫁がメイドたちの制服のデザインをきめた。

「男装させるわ。あなたが浮気しないようにね」


 どうやらメイドさんたちは黒いスーツに白いシャツ、下は黒いズボンとそっけない恰好になったらしい。

 ん? それはリクルートスーツってのに似ているだと?

 何じゃ、それは。

 知らんぞ、わしはそんなもの。

 まあ、ダブダブ黒ジャージの上下姿よりは見栄えがいいんじゃないかな。


 さて、ある日、魔王の間で年一回行われる部下たちへ訓示式が行われることになった。

 まあ、どうでもいい儀式だな。

 部下たちがぞろぞろと魔王の間に入って来る。


 そこにメイドさんたちも入ってきた。

 全員、黒いスーツ姿なのだが、これがなかなか良い。

 地味な恰好なのが、かえってそそられるものがある。

 肌は顔や手くらいしか露出していないが、胸のふくらみや尻の出っ張りはやはり女性なので目立つ。

 見えないだけに想像する楽しさがある。


 おっと、いかんいかん。

 メイドを眺め続けていたら、嫁がまたヒステリーを起こす。

 メイドさんたちが瞬殺されかねん。

 チラっと隣に座っている嫁を見たが、部下と談笑していて気づいていなかったようだ。

 危ない、危ない。


 さて、くだらん儀式が終わった後、また嫁が支配地域に視察へ行ってくると言い出した。

 仕事熱心だね。

 まあ、まかせるわ。


 私は魔王の間に座って、さっきのスーツ姿のメイドさんたちを思い浮かべる。

 むふふ、スーツを脱がすのを想像するのを楽しんでいたら、そこになんとメイドさんが一人魔王の間に走り込んできた。

 かなりの美人でスタイルもいいぞ。


 って、おいおい、こんなとこ見られたら、

「あなた! メイドと密会してたわね」とか嫁に因縁つけられてボコボコにされちまうよと私が焦っていると、

「魔王様、勇者が侵入してきました」とそのメイドさんが告げた。


 また、勇者かよ。

 うざい連中だ。

 とりあえず叩きのめしてやるか。


 勇者たちが魔王の間に乱入してきた。

 四人いる。

 

 けど、珍しく全員女だね。

 女冒険者によくある意味なく肌を過剰に露出した恰好だ。

 エロいですな。

 しかし、今の私は趣味が変わったのだ。

「お前は後ろに下がっていろ!」とメイドには言った。


 私は空中に浮かぶ。

「ハッハッハ! 勇者たちよ、かかってこい。全員、瞬殺してくれよう」


「覚悟しろ! 魔王」と女冒険者どもが飛びかかってくる。

 勇者たちと戦闘になった。


 ……

 …………

 って、あれ、意外と強いね、この人たち。

 やられそうだぞ。

 うーん、やばいぞ。


 焦っていると、そこへ後ろに下がっていたメイドが突然、強力な魔法を繰り出した。

「魔王に歯向かうとはこの無礼者が!」とそのメイドさんが叫ぶ。

 あっさり勇者全員をやっつけた。


「おいおい、何者なんだよ、お前は」とびっくりしてメイドに話しかけると、

「あたしよ」

 なんと顔が嫁に変わっているではないか。


「視察に行こうとしたら、あの連中が乱入してきたので、メイドに化けてあんたが浮気しないか観察していたのよ」

「なんでスーツ姿なんだよ」

「連中がいきなり来たから、とっさにメイドに化けて、魔王の間に誘導しただけよ」

「お前だったら、あんな連中その場ですぐに瞬殺できるだろ」


「浮気テストよ。あんな半裸姿の女たちをみたら、あんたが欲情するかと思ったら、意外と真面目に戦っていたわね」

「そ、そりゃそうだよ。私が愛する女性は君だけだよ。助けてくれてありがとう。やはり君は最高だ」

 私は嫁を抱きしめ、その場で押し倒そうとする。


「ちょ、ちょっと寝室に行きましょう。なんかやたら興奮しているわね、あなた」

「いやあ、久々に強い勇者たちと戦ったもんだからさ、なんか体が熱くなってさ」


 本当はスーツ姿の嫁に萌えたのだが、まあ黙っておこう。

 そんなこと言ったら、メイドさんたちがまたダブダブの黒ジャージ姿に戻されかねないからね。


(終)

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