6.決意
ドミニクは急ぎ王宮騎士団へ向かい、団長のヒューゴ・サンダーズに面会を求めた。
旧知の仲であるドミニクはすぐに団長室へ通された。
「ドミニク、久しぶりだな。
随分と身辺がきな臭いようだが、その件か?」
流石に察しが良い。
「その通りだ。
ジュリア・エドワーズの拐かし事件について調査して欲しい。
裏で糸を引いたのは、イブリン・キャンベルとブレイク・キャンベルで間違いない」
ヒューゴは苦笑いしながら言った。
「もうお前の婚約破棄は王都中に広がっている。広めたのは無論お前の母親と弟だ。
これだけいろいろやっていれば、証拠はすぐに手に入るだろうよ」
ドミニクは無言で頷く。
「ジュリア嬢はどうしている?
婚約破棄は撤回したんだろう?」
ドミニクは後悔の念に苛まれながら言った。
「ジュリアは行方不明だ。
でも必ず探し出して謝るつもりだ。
悪いが、お前も手伝ってくれないか」
ヒューゴは驚いて唸った。
「行方不明?
わかった。手は貸すが高いぞ」
ドミニクは少し眉を上げて言った。
「それは怖いな。
でもどうしてもジュリアを見つけ出し謝らなけばならない。
許してくれるなら、直ぐにでも結婚する」
ヒューゴは口笛を吹き笑った。
「お前、本当にベタ惚れだからな。
ジュリア嬢の事になると見境がつかなくなる。
でもそれは克服しないと、お前の最大の弱味になるぞ」
「わかっている。
だが、今はジュリアの無事を祈るのみだ」
ドミニクは次に王宮に戻り、王太子に謁見を求めた。
すぐさまやって来た王太子アーロにドミニクは言った。
「休みを頂きたい。
ジュリアは勘当され行方不明です。
探し出して謝罪し、許して貰えるならやり直したい」
吐き出すように休暇を願い出たドミニクにアーロは静かに命じた。
「行け、ドミニク。
ジュリアを急ぎ見つけ出せ。
このままでは私までグレイシーに婚約破棄される」
こぼすアーロにドミニクは尋ねた。
「グレイシー様は何と?」
「ジュリアが行方不明だと聞いて心配している。お前やお前の母親と弟、エドワーズ男爵家、皆んなを懲らしめてやると息巻いている」
少なくともグレイシー様はジュリアを信じ大切に思ってくれている。
ドミニクは感謝した。
「グレイシー様にお伝えください。
必ずやジュリアを無事に探し出しますと。
そしてジュリアを陥れた者を必ず処断致しますと」
アーロは頷き言った。
「大切な人を見つけ出し、ひたすら謝れ。
それしか無い」