13.光明
王太子の側近の仕事に戻ったドミニクは、人を雇いジュリアの捜索を続けていた。
本当は自ら探したかったが、重職にあるのでひと月休めただけでも破格の取り扱いだったのだ。
あれから数ヶ月が経ち、ドミニクは心労で食べ物も口に出来ない状態だった。
頬はこけ、体重も激減した。
王太子は心配し、とうとう少し休むように言ったが、ドミニクはまるで自分を罰するように仕事に打ち込んだ。
そんなある日、騎士団長のヒューゴ・サンダースが王太子に謁見を求めた。
ヒューゴも王太子の友人であった。
執務室へ入って来るなりヒューゴは言った。
「どうも引っ掛かる事があってね」
ヒューゴの野生の勘は鋭く、今まで何度も窮地を救われたので、王太子アーロとドミニクは何事かと息を詰めた。
「王都西のブライアント伯爵領の事なんだが、ここ数ヶ月で急に作物の収穫量が凄い事になったのは知ってるよな?」
ヒューゴの問いかけにドミニクが冷静に答える。
「土地改良が上手くいき、大量に作物を収穫出来る様になったと報告が来ている」
「それっておかしく無いか?
あの荒地が肥沃な大地に生まれ変わったんだよ?
10ヶ月前は草1本生えていなかったのを、俺は見てるんだ!
岩や石がゴロゴロしてたよ。
あそこがそのひと月後に急に肥沃な大地って、魔法か何かとしか考えられないだろう?」
アーロが聞き返す。
「肥沃な大地にひと月で変わったと言う事か?」
「俺が任務帰りにブライアント伯爵領を通ったのが10ヶ月前でそのひと月後には、ブライアント伯爵領産の作物が市場に出回り始めてたのさ」
ドミニクが報告書を開き中身を確認して呟く。
「確かに9ヶ月前には土壌改良がなされたと報告されているな。
しかし魔法でもと言ってもこの世界に魔法は存在しないからな」
アーロは小さな声で呟いた。
「魔法は存在しないが、聖女が現れたなら」
ヒューゴが笑いながら頷く。
「そう、それ。
聖女光臨なら辻褄合うだろ?
それにどうもあながち夢物語と言う訳でも無さそうなんだ。
ブライアント伯爵領の領民は皆口を閉ざしているらしいが、小さな子どもが、みんな聖女様のおかげだね、と言っていたらしい。
まぁ、子どもの言った事と言われりゃその通りなんだが」
ヒューゴはドミニクを指差して言った。
「調べたところでは9ヶ月前から伯爵邸に住み込み始めた令嬢がいるらしい」
ドミニクは手に持っていた報告書を取り落とした。
「ジュリア、か?」
ヒューゴは親指を立て笑った。
「ご名答」




